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プレッシャーを!果てしなきプレッシャーを!(2004/11/28)
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土曜日のレアル・マドリとの試合が2日後と迫った木曜日、フラン・ライカーはいつもの通り朝早くカンプノウに到着している。多くのクラブ職員や関係者と挨拶をすませたあと、彼が向かうのはほぼ半日過ごすことになる監督室だ。それほど広くないその監督室の壁には、エウセビオやテン・カテなどのスタッフテクニコなどと一緒に次の試合に備えての作戦を練るために使用される大きなホワイトボードがかけられ、そして部屋の真ん中にはこれも大きなテーブルが配置されている。この日、彼が監督室に入ってきてまず目に入ったのは、その机の上に置かれている二枚のCDだった。 そのCDはスタッフテクニコの一人であるジョアン・マルティネス・ビジャセカが用意してくれたものだということを彼は分かっていた。レアル・マドリに関する情報がびっしりと入っているそのCD、そのメインとなるものは11月7日にマラガでおこなわれたマラガ対マドリ戦に関する試合内容についてだった。フィーゴがペナルティーを決め、そしてオーエンのゴールを加え0−2でレアル・マドリが勝利した試合、この試合内容をビジャセカは12分間という長さににまとめ一つの情報として完成させている。そしてもう一枚のCDもレアル・マドリに関するものだが、10分間の長さのこのCDではセットプレーだけに関して触れられているものだ。他のスタッフテクニコたちが到着する前に彼は約30分かけてCDの内容を観察していた。そう、検討していたというよりは観察という言葉の方が正確だ。それも非常に簡単な観察と言っていいだろう。レアル・マドリに関する最新の情報にはもちろんそれなりに興味はあるものの、クラシコの対戦相手がどのようなチームであるかということはすでに頭の中で整理されていたからだ。したがって、細かい分析をするというよりはあくまでも毎週一回はおこなう儀式に過ぎないものだった。少なくともレアル・マドリに関する情報は彼にとってあまり必要ないものだ。もう何週間も前から戦い方の基本は決まっていた。相手ディフェンスに対する可能な限りのプレッシャー、果てしないプレッシャーをかけること、これが彼の考えていた基本的なアイデアの一つだ。 したがって土曜日の試合直前に、選手控え室での選手を前にしてのアジテーションはCDの内容とは何の関係もないことだった。
選手たちに通路で最終的なメッセージを送ったのが珍しいことなら、フラン・ライカーが試合開始からベンチから出て立ちっぱなしでいる風景もこれまでなかったものだ。そう、彼は審判の笛が吹かれた瞬間から立ちっぱなしだった。普段の試合とは比較にならないような観客席からの怒濤の声援が、ベンチから送る選手たちへの指示を聞こえなくさせてしまっていた。 彼が立ちっぱなしだったのはそれなりの理由がある。それはチャビやデコが試合後に語る言葉がその理由を説明している。 デコに次の指令が飛ぶのはジオがフィーゴに抜かれるシーンが一度、二度と起きたあとだ。フラン・ライカーの頭の中にビジャセカが作ってくれたCDの内容が浮かび上がってきていた。 CD情報から得たものの中で“再確認”という意味で重要に思えたこと、それはレアル・マドリのデランテロにに関することだ。マラガ戦だけではなく多くの試合でゴールエリア付近でのフリーキックから多くのチャンスをつかんでいるレアル・マドリ。そのことは前もって認識していたし、CD情報でも再確認することができた。したがって二人の重要な選手、つまりプジョーとオラゲールには試合前からすでに二つの指示が出されていた。一つ、それはロナルドはゴールを背にしてボールを受け取ることが多いだろうが、そのさい決して振りかえらせてはいけないこと。つまり顔と顔を合わせるような状態にしてはいけないこと。二つ、ゴールエリア付近でのファールはできる限り防ぐこと。 どんな素晴らしい試合をしたあとでも、試合後にフラン・ライカーが個人的に選手の名を上げて褒め称えることはほとんどないと言っていい。なぜなら一人の選手がそれなりの活躍ができた裏には他の選手の協力があってこそだと信じているからであり、素晴らしい試合ができた理由はチームワークのたまものだと疑わないフラン・ライカーだからだ。だが、このクラシコの試合後には珍しく二人の選手、そう、プジョーとオラゲールの活躍を褒め称えている。なぜならロナルドを消し去ることに成功した主役たちであり、90分間でわずか1回だけのファールしか犯さなかった二人だからだ。さらに言えばロナルドだけではなく、レアル・マドリの選手の枠内のシュート数がゼロという結果に終わらせたことも注目されることだろう。 ロベルト・カルロスとカシージャスのお見合い現象をついてエトーが素早くゴールを決めた瞬間、今度はエウセビオがデコに指令を出している。彼はフラン・ライカーにとって試合分析をするさいに最も重要なスタッフの一人である。もちろんエウセビオの指示はフラン・ライカーの願いと同じものであることは間違いない。 リズムの変化、スピードの変化、それらはデランテロたちの相手ディフェンスに対する大いなるプレッシャーと共鳴してレアル・マドリに大きなダメージを与えることになる。やっとバルサからのボールを奪ったもののスペースが見つからないままディフェンスに戻されるボール。それをこれでもか、これでもかと追いかけるラルソン、エトー、ロナルディーニョ、そして現場監督デコやチャビ。酸欠状態だったマドリ選手にさらなる強度の酸欠状態が襲いかかる。そしてその状況がバルサ2点目を生み出すことになった。酸欠状態のレアル・マドリの選手には決してついて行けないスピードでのボール処理がバルサ2点目を可能とする。ワンタッチ、あるいはツータッチによるボール回し、チャビ、ロナルディーニョ、デコ、そして最後にジオがゴールを割る。 フラン・ライカーがベンチにどかっと腰を下ろすことができたのは、バルサ3点目のきっかけとなるペナルティーの笛が吹かれてからだ。目的達成、彼の頭の中にこの文字が浮かぶ。試合に勝利できることの喜びはもちろん大きい、だがそれ以上に会心の試合内容に心の底から満足しているフラン・ライカー。この日はひたすらクラシコの勝利に酔いしれよう、そして明日には次の試合に備えて、もう彼の机の上には再び次戦相手の情報が満載されているビジャセカのCDが置かれているだろう。
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