終焉と新たなスタート

わずか3、4年前までは毎年のように繰り返されていた風景なのに、最後にこの風景と遭遇したのはもう一昔も前のような感じ。ランブラス通りに通じる目抜き通りにバイクや車がカタルーニャ旗やバルサ旗をたなびかして走り回る。夜中だというのにもちろんクラクションは鳴りっぱなし。歩道にいるバルセロニスタたちは、通り過ぎる車に向かってバルサの旗を振り、それにクラクションでこたえるバイクや車。試合が終了して1時間もすればランブラス通りはバルセロニスタの集会場となる。優勝するたびに繰り返されてきたこの風景、それはほぼ毎年見られる風景だったのに・・・。

ユーロバスケバルサの優勝はドデカイ喜びをバルセロニスタにプレゼントしてくれた。この初の決勝戦勝利でこれまでの呪われた歴史に終止符を打ったユーロバスケバルサ。そしてバスケチームと同じようにここ何年かの悪しき状況にサヨナラを告げなければならないのがフットボールチーム。そう、実はバルサというクラブにはフットボールチームもあるんだ。

6月22日、カンプノウではセルタ相手のリーグ最終戦がおこなわれる。この日はバルサというフットボールクラブにとって歴史に残るであろう最悪のシーズンが終了することを意味すると同時に、新たなバルサがスタートを切ることを意味する。この日、今シーズン四人目の会長がカンプノウ会長席に座り、多くのソシオから拍手をもって迎えられることになるだろう。そしてその新会長の誕生は、ここ10年のバルサが引きずってきた悪しき傾向、それはヌニェス派とクライフ派とのケツの穴の小さい対決が終わりを見る日としなければならない。

新会長の誕生はバルサに変化をもたらすものと期待しよう。決してすべてのソシオ、あるいはすべてのバルセロニスタに受け入れられる変化は不可能かも知れない。だがそれでもバルサは変わらなければならない。良い意味でも悪い意味でも変わらなければならない。ひょっとしたら、ラドミール・アンティックの最後の試合となるかも知れない。ひょっとしたら、何人かのオランダ人選手にとってもバルサユニを着込んでの最後の試合となるかも知れない。そして、ひょっとしたら、本当にひょっとしたら、この試合がバルサユニに広告が付いていない最後の試合となるかも知れない。

10万ソシオが己のチームにそれぞれ10万個のアイデアを持ち、何百万何千万バルセロニスタもそれぞれの理想を抱いて“オラがチーム”を夢見る。そしてそのアイデアや希望の根源にあるもの、そしてもちろん多くのバルセロニスタがチームに望むもの、それはスペクタクルなフットボールであり、勝利するバルサだ。だがクライフバルサの完成が3年かかったように、来シーズンから生まれ変わらなければならないバルサにすべてを望むことは不可能だ。ただ一つだけ、どうしても存在しなければならないもの、それは明日への希望を見させてくれることというきざっぽいこと。

現在のバルサの崩壊を見るとき、それはガスパーが会長となってからのものとして理解すると明らかな誤りがある。崩壊の兆候は、すでにクライフのバルサ監督最終段階の時点から始まっていたとする方が自然だろう。クライフの“思い上がり”から来ると言われてもしょうがない多くの誤り、それは独断的な選手放出や選手獲得作戦などによって象徴されるだろう。そしてその後のバルサの崩壊を決定づけたのがヌニェス政権による非常識な形でのクライフへの突然の解雇処置だった。今のバルサの崩壊はすべてここからスタートしている。いわゆるクライフ派、ヌニェス派との醜くもケツの穴の小さい陰湿きわまりない戦いが展開されていく。そして同時にバルセロニズムの分解が始まることになる。それはヌニェス派ムンド・デポルティーボとクライフ派エスポーツのくだらない自己主張でさらに傷を深くしていく。

第一次バンガール政権から始まったオランダ人選手ひとまとめバルサ入団。それ自体は問題なかった。問題はクラックとはお世辞にも呼べない選手たちが何人もバンガールの手によって加入してきたことだ。そしてさらなる問題は彼の存在自体がクライフ派とヌニェス派の戦いの火に油を注いだことだろう。彼が監督として在籍中、クライフが育てた多くの選手が追い出されることになる。それは第二次バンガール政権を持って完了される。だがもちろんその間のセラ・フェレールやレシャックなどが崩壊の罪から自由になるわけもない。彼らもまた多くのミスを繰り返し、崩壊への速度を速める財政的問題まで出現させることになった。

今回の会長選挙の唯一明るい材料は、これまでバルセロニズムを真っ二つに割っていたヌニェス派・クライフ派の登場がないことだ。ここまで来るのにバルサとバルセロニスタは6年も7年もかかった。もうそろそろいい時期だろう。バルサというクラブが、クライフのものでも、そしてヌニェスのものでもなく、彼らのすべてを越えたところで存在しなければならない。それがバサットを中心として、多くの会長候補が目指す精神でありモットーとなっている。

クルービーにゴールが決まらないように、会長にも決してゴールは決められない。スペクタクルなフットボールを展開するのも試合に勝利するのも現場の人間の仕事だ。それでもクラブの存在基盤となる運営をつかさどる会長が“いい会長”に越したことはない。“普通の会長”ならともかく“悪い会長”となったらそれこそガスパー時代の二の舞だ。だから少しでも“いい会長”を、そしてそこから新たな変化が訪れるかも知れない。とにかく変化のための最初の一歩、それが新会長誕生だ。
2003/05/12)


バモス、バルサ!

ユーロバスケバルサがヨーロッパチャンピオンを目指して戦う今日の決勝戦。ワクワクしながらバスケの試合を待つ今日1日は、セビージャ戦なんてあってないものとなってしまった感じ。セビージャ戦が21時試合開始、ファイナルフォー決勝戦が20時30分、フットボールソシオにしてもバルサシンパにしても、とにかくすべてのバルセロニスタにとって今日のセビージャ戦のことなんか吹っ飛んでしまった。

今シーズン初めてといってワクワクする瞬間を迎えているバルセロニスタ。それもドデカイ希望を胸に抱く素晴らしくワクワクする瞬間。ユーベ戦の前だけは別として、今シーズン一度も楽しいことがなかった人たちが今日の勝利を夢見てワクワクしている。念願のバスケヨーロッパ制覇、それが今日やっと実現するかも知れない。そう、バルサとして今シーズンやっとビッグタイトル獲得が可能となるかも知れない今日の夜。

バモス、バルサ!
楽しい夜をバルセロニスタに!
バモス、ユーロバスケバルサ!
ランブラスをバルセロニスタで埋め尽くそう!
バモス、バモス、バルサ!
2003/05/11)


バルサに望むもの

デ・ボエルがバルサに来たときの事情を覚えている人はもう少ないかも知れない。双子のロナルドと共にバルサ行きを志願し、それを認めないクラブを裁判にまで持ち込んだ彼ら。裁判沙汰になっている最中は練習への参加も拒否するという思い切った行動にもでた。子供の時からアヤックスのカンテラとして育ち、20年近くも在籍したクラブを法廷を通して訴え、そして練習拒否という反逆行為にでたデ・ボエル兄弟。

そのデ・ボエルがユベントス戦が終了した日の試合後記者会見で次のように言っていた。
「我々は来シーズンのためにもUEFA圏内に入るために残りの試合を一生懸命戦わなければならないし、そして今シーズンの選手たちも来シーズンはタイトルを獲得するために全員クラブに残るべきだ。」

そしてそれから1週間たった先日、同じ人が練習後の記者会見で次のように語っている。
「会長選挙までは待てないから可能な限りのオファーを検討しようと思う。今シーズン終了をもって契約が切れるわけだから自分は自由の身だしね。現在の心境を素直に語るならば、来シーズンはバルサにいるよりも他のクラブにいる可能性のほうが高いだろう。マドリの可能性?それは非常に少ないと思う。もう自分のカラーはブラウグラーナだから。」
このバカバカしい発言はいまさら驚くほどのことでもない。

個人的に、デ・ボエルの心がブラウグラーナだなんてことは想像したこともないし、事実それはないだろうと思う。彼の心はアヤックス、というのが自然というものだ。そしてそんなことを誰も責めるわけがない。アムステルダムで育ち、子供の頃からの憧れだったアヤックスのカンテラ選手となり、そして夢にまで見た一部チームでの活躍を果たしたアヤックスというチーム。カタラン人がどう思おうと、アヤックスが彼のカラーだ。

スペインフットボール界は選手受け入れ国であり、決して輸出国ではない。クーマンがラファエルについて語るとき、いつかは外国のビッグチームにでていくだろうとほのめかす。そう、アヤックスは歴史的にカンテラ輸出クラブ。そして彼らは一丁前の選手として認められると外国のクラブに出稼ぎにへとでることになる。それまで受け取っていた年俸の何倍ものユーロを求めて、いや、ユーロだけが目当てではないかも知れない。名声とタイトルというプロ選手にとってはかけがいのない報償も期待して外国へとでていく。

その外国の街は彼らにとって当然ながら、彼とは国籍の違う外国人が住む街。出稼ぎ者のモットー、それは土地にとけ込むこと。これは中国人を除いて間違いのない鉄則だ。だから土地の人に受けいられるように“美味しい”ことを言うのはカメレオン的ではあるが責められない。だからデ・ボエルの“心はブラウグラーナ”発言も納得できる。それはかわいいウソだ。

例えば、我らがプジョーマンが何かの間違いでミランに行きたいからといって、それを認めないバルサを法廷に訴えるということを想像できる人はいないだろう。あるいは、クラブの判断を不服として練習に参加しないプジョーマンを想像できる人もいないだろう。肌にバルサエンブレムが染みついているだけではなく、血管の中に流れている血の色はブラウグラーナ、それがプジョーマン。そして彼はマシアで育ったカンテラ選手。カタラン人だろうが日本人だろうがマシアで育てばカンテラとなるのがカンテラだ。

プジョーマンは少々特別な選手。それでもバルサ魂を本当に持っている選手はもちろんカンテラ出身選手だ。外国からやって来た選手に、あるいは国内の他の地域から来た選手に“心にバルエンブレム”を、それを望んじゃあいけない。すべての選手がニースケンスやクーマン、あるいはストイチコフ、サリーナス、バケーロ、チキ、そしてガッツじゃあないのだ。彼らに望むもの、それはキッチリと年俸分の仕事をしてくれること、他の普通の選手との“違い”を試合で見せてくれること、それだけでじゅうぶん。そして今シーズン、というかここ何年、その違いを見せてくれる選手がいないのがバルサ。

バルサ魂を持ったカンテラ中心の選手だけでは“オラが村のチーム”とはなり得ても、厳しいリーグ戦やヨーロッパの戦いを勝ち抜いていけないことはクライフの終焉時期が証明してくれた。カンプノウに集まるバルセロニスタに熱い魂を感じさせてくれるカンテラ選手と、違いを見せてくれる他の選手との融合。それはクルービーであろうがサビオラであろうがリケルメであろうが、あるいは新しく入ってくる見知らぬ選手でもかまわない。彼らに期待するもの、それは“心にエンブレム”じゃあなく、“違い”を見せてくれることだ。

フットボールバルサよ、昨日のユーロバスケバルサを見習おう。大事な試合でキッチリと“違い”を見せたボディロガとフツカ、そしてバルサ魂を見せたカンテラ出身のナバーロ、マドリゲーニョのナッチョとマドリレーニョのデ・ラ・フエンテはチームがより効率的に機能するような仕事をしたユーロバスケバルサ。今シーズンのバルサにバルサを感じさせてくれるもの、それはバスケチームだ。
2003/05/10)


ファイナルフォー

カタルーニャカップ準決勝の相手テラッサは二部Aに所属するチーム。いつも忘れた頃にやって来るこのカタルーニャカップだけれど、テラッサにとっては実に迷惑な試合だっただろう。彼らの最大目標は二部Aカテゴリーを死守すること、そして残りの試合が少なくなってきている今日の段階で彼らは非常にヤバイ位置につけている。バルサに勝とうが負けようが、そりゃあ勝つに越したことはないけれど、そんなことは二の次の問題だ。週末のリーグ戦の方が何倍も重要だ。だから昨日のバルサ戦に用意したスタメンは普段は控えとなっている選手たちのオンパレードだった。そしてバルサの方といえば普段のスタメン選手と控え選手をミックスしたもの。そして見事に負けやがった、もちろんバルサが。

でも、フットボールの話しはどうでもいい。もうとっくにシーズンは終わっている。そして今日はクラブにとって、そしてバルセロニスタにとって、もっと、もっと、もっと大事な試合がある。なぜなら、いよいよファイナルフォーがおこなわれる待ちに待った日だから。モンジュイクの丘にあるパラウ・サン・ジョルディで戦われるファイナルフォー。

パラウ・サン・ジョルディはバルセロナオリンピックに備えて建てられた室内競技施設で、日本人建築家の磯崎新の設計によるもの。今では、数多いバルセロナの観光名物の一つの建物にもなっている。想像がつく限りのスポーツに対応できるように設計されており、あらゆるスポーツ競技場に突然のごとく化けてしまう。人工雪をまき散らしてスキー場にしたり、氷を張ってアイススケート場にしたり、砂を敷いてビーチフットボールをおこなったり、巨大なプールを作りやはり巨大な扇風機を並べてサーフィン場にしたり、ついでに今年の夏におこなわれる世界水泳大会の会場になっちゃたりする。

15500人収容するこの会場でのバルサファンへの割り当てチケット枚数は7850枚。ほぼ収容可能人員の半分と言っていい。この枚数のうち三分の二はバルサバスケソシオ用に用意され、彼らも抽選で念願のチケットをゲットすることになる。そして残りの三分の一を一般ファン用に売り出したのが先週の水曜日。電話での申し込みとなったけれど、いつものことながらこういう電話はつながらない。何回かけてもお話中。で、そのうち電話がつながる頃には「売り切れです}ということになる。翌日、チケット取り扱い責任者がいろいろと言い訳をするのもいつものことだけれど、今回のチケット需要枚数は10万枚ということだった。つまりカンプノウにバスケットコートを作ってやれば、みんな入れたんだ。

バルサの相手はモスクワのCSKAというチーム。う〜む、何やらフットボールの世界でも対戦したことがあるんではないかい?それはともかく、このファイナルフォーに至るまでのユーロリーグ20試合のうち17試合に勝利してきている。バルサが16勝4敗だからたった1勝多いだけなのに、やたらと強そうだ。フットボールの試合であれば相手が何という名前のチームであろうと、どんな統計数字があらわれようと、いつもバルサ有利と思いこむことが自然となるバルセロニスタ。でも個人的にはバスケに関してはどうもダメだ。特にこのファイナルフォーに関してはどうも我がチームに自信が持てない。それは、やはり優勝した経験がないからだな。

バルサはこのファイナルフォーシステムができてから、それへの出場回数が最も多いヨーロッパのクラブ。今回の出場で8回目を記録する。でもこれまで優勝したことがない。一度もない。たった一度もない。準決勝で敗退したのが3回、決勝戦で敗れたのが4回。だが、八度目の正直とよく言うじゃないか、今回はだいじょうぶかも知れない。だいじょ〜ぶかな〜、だいじょうぶ、かなっ?
2003/05/09)


今シーズン三人目の会長誕生

ガスパーが会長を辞任したという事実は、ガスパー理事会の崩壊ということではなく単にガスパー個人がクラブを去ったことを意味していた。だからクラブ理事会の中にいたエンリック・レイナが会長の座を引き継いだことは“臨時”会長を意味していない。レイナがソシオの選挙で選ばれた会長ではないとは言え、彼もまた会長でいようとすればガスパーがかつて持っていた任期が満了するまで会長でいられたわけだ。そう、少なくてもクラブ規約ではそうなっている。でも、それは“エチケット違反”でもある。クラブ会長はやはりソシオの選挙で選ばれた人でなくちゃあいけない。

そしてもう一人、選挙で選ばれたわけではない会長が誕生した。今シーズン三人目の会長だ。だが彼の場合は立派に“臨時”が付く。なぜなら選挙で選ばれたガスパー理事会メンバーが全員解散した今、空白になったクラブ運営を“臨時”に遂行していく“臨時”理事会の“臨時”会長だからだ。ジョアン・トライテル、典型的なカタラン名ジョアンにスペインにはないトライテルという苗字を持つ人が三代目会長を就任した。多分、ヨーロッパの北の方から来た移民家族から生まれてきた人だろう、と、勝手な推測。

大学で数学の教授をしていたという、この77歳になるトライテルさんは見るからにインテリタイプだ。一昨日の臨時会長就任の挨拶でテレビ画面を通して初めて見た人だけれど、インテリという以上になかなか魅力的な紳士というイメージ。アレマニーもそうだけれど、こういう人に限って会長というクラブ最高権力の座を望まないのはなぜなのだろう。そう、彼もまた“臨時”と名が付く会長でありながら、それでも1日でも早く新会長にこの座を譲りたいと語る。6月15日におこなわれる選挙によって新会長が誕生するまで、彼は人生そのものといってよい愛するクラブのために、しかたなく”臨時”会長を務めることになる。

その彼が会長として、“臨時”が付こうが付くまいが一人の会長として、そして同時に一人のバルセロニスタとして、すべてのソシオやバルセロニスタに訴えている。
「我々バルセロニスタは試合ごとの勝敗にこだわらず、すべてを越えたところでクラブのために団結しなければならない。そしてクラブへの批判は常に創造的なものでなければならない。今のような状況であればこそ、このような困難な状況であればこそ、我々バルセロニスタの更なる団結が必要ではないのか。」

無い物ねだりしてもしょうがない。あるものから選ばなければならないのが選挙。そうは言うものの、選ぶ際のネックに欠ける選挙であることは間違いない。例えば前回のそれは“ヌニェス政権の延長線上”としてのガスパーか、あるいはクライフ寄りとはいえ“新たな風”を意味したバサットか、そういうはっきりとした特徴があった。でも今回の選挙にはそういうものがまったくない。“新たな風”だけがとめどもなく吹き荒れ、どの“新たな風”を選ぶか、しかもどの風も同じようなことを言っているこれまでの風景を見るところ、すべて同じ“新たな風”として感じられてしまう。

いずれにしてもあと何日かすれば、会長(仮)立候補者が勢揃いするだろう。そして1600前後の“推薦ソシオの署名”を集めることができれば初めて正式な立候補者となる。10人弱の(仮)立候補者が一つの会長の座を狙って出馬しそうだ。この中でソシオの署名が集まって正式な候補となる人が三分の二ぐらい、そして選挙戦の最中にくっつき合う候補者たちが現れ6月15日の選挙の日には二人、あるいは多くて四人程度の候補者が会長の座を争うことになるんだろう。
2003/05/08)


予想を覆すもの

今回の選挙と前回のそれとの決定的な違い、それはクライフもヌニェスも選挙に間接的にも直接的にも大きな影響を与えていないということだろう。早い時期からクライフはノータッチ宣言をしているし、ヌニェスはつい最近に長い沈黙を破ったものの、選挙に関しては一言も触れていない。そして会長候補者たちも、彼らがどちらの一味に近いかは別として、選挙戦をクライフ・ヌニェスからの影響から離れた立場で戦おうとしている。クライフが何かにつけて褒め称えるチキ・ベルギンスタインが今のところどこの陣営にも入っていないことがそれを如実に示している。選挙戦が煮つまって来た段階で彼がどこの陣営に入るか、それは非常に興味深いことだ。

かつてフロレンティーノが、会長選挙に勝利することを可能にした最も大きな要素となった“ペセテロ土産”と同じ効果を生み出すもの、それは今回の選挙では“クーマン土産”だろう。クライフを味方にすることでもヌニェスを味方にすることでもなく、あくまでもクーマンを味方にすることに成功する人物が大幅のボーナス投票を得ることになる。

面白いことに、これまであげてきた会長候補の誰一人としてアンティック続投を支持していない。レイナ元会長はまったくもってやっかいな置きみやげを次期会長さんにプレゼントしてくれたものだ。そしてさらに面白いことに、彼らのほとんどがクーマンを監督に推していることだ。だが、そのクーマンが来シーズン来る可能性は非常に低い。可能性が低いだけに彼を落とすことができた会長候補は断然ポイントを稼ぐことになる。そしてそれを本気でやうとしているのがバサットとロビーラだ。でもクーマンが簡単に落ちるとは考えられない。あきらめの早いロビーラはすでにグース・ヒディングに照準を合わせているという。

ミンゲージャはチブを、マジョーはバン・ニーステルロイを、ロビーラはシェブチェンコを、それぞれ「獲得するぞい!」と雄叫びをあげている。だがその可能性が高かろうが低かろうが、それはもちろん低いのだけれど、それらの雄叫びはそれほどインパクトがない。インパクトもないし、現実性もそれほどない。一昨日のソシオ代表委員会でクラブの財政状況が明らかになったいま、さらに現実性は弱まったんじゃないだろうか。

クーマン獲得以外に存在する一つのインパクト、それはアレマニー。彼はクラブ関係者はもとより多くのソシオからも評判の高い人物だ。それはバルサにしては珍しくもまともな人物だからだろう。しかも彼はこれまでのバルサの最大クレジット会社として関係を持ってきた“ラ・カイシャ”という銀行のお偉いさんでもある。そして彼の評価をさらに高める可能性があるもの、それが今週末におこなわれるファイナルフォーだ。もしこのファイナルフォーにバルサバスケが優勝するようなことがあれば、バスケ部門の会長を長いこと務めてきた彼の評価はさらに数倍跳ね上がることになる。

バサット圧倒的有利のこの選挙に波乱があるとすれば、それはアレマニーが独自候補として会長選に参加した場合のみだと思う。チキは間違いなくアレマニーにつく。チキがつけばクーマンが来る可能性も大きくなる、とは言えないものの可能性がほんのチョットでてくる。それは来シーズンからかも知れないし、アヤックスとの契約が切れる再来年からとなるかも知れない。もしそういうことをクーマンがほのめかしたら、それだけでアレマニー・チキ・クーマントリオの勝利となると思う。でも現実的にはアレマニーが会長選挙に独自候補として加わる可能性はほとんどないんじゃないだろうか。

新聞の一面広告やテレビスポットを使っての会長候補者による選挙戦はもう始まっている。バサットとロビーラは選挙用ウエッブページをすでに作成した。
バサット http://www.Lluisbassat.info/cat/index.asp
ロビーラ http://www.martinezrovira.com/
2003/05/07)


ロビーラとマジョー

昨日のソシオ代表委員会で明らかになったこと、それは4月30日までの今シーズンの赤字が3600万ユーロであり、これまでの負債を合計すると9800万ユーロ、そして6月30日の〆の時期には最終的に今シーズンの赤字は5500万ユーロとなるだろうこと。もしレイナ理事会がシーズン終了まで続けていたら赤字はゼロとなっていただろうという仮定の話もおまけとして付いている。しかしいずれにしても数字がデカすぎてよくわからない。これが36万円だったり55万円だとしたら、おう、それは大変な赤字ではないか、そう実感できるんだけれど。

今日の朝に緊急理事会が招集されレイナ理事会は解散、そしていよいよ選挙戦へと近づくことになる。

マルティネス・ロビーラ、今回予想される会長立候補者の中ではジャウラドと同じように前回のガスパー政権の時に理事会内に入っていた人物の一人。彼は1978年の選挙の時にヌニェスに対抗して出馬した候補者陣営内に入り、そして1989年におこなわれた選挙でもやはりヌニェス対抗陣営内に入って選挙戦を戦っている。前回の選挙では“フォルサ・ブラウグラーナ”という組織を結成してバサット陣営に参加、そしてこれまで参加したすべての選挙に敗れるという素晴らしい記録を更新した。だがバサットが選挙に敗北したあとは勝利者となったガスパーの誘いで理事会内に侵入。1年後には「ガスパー政権に納得できない」として辞任している。したがって今回の会長選挙で彼は初めて独自候補者として会長の座を狙うことになる。

ソシオに知られているかと言えば、まったく知られていない。だがそれでも今のところバサットを追いかける第一候補と予想されるのは財界人の中に根強く影響力をもっているからだ。大企業、大銀行、ユーロがゴロゴロしていそうなところに顔がきくロビーラ。とりあえずクラブ財政を立て直すためのクレジットを可能にしてくれる気配がするのだろう。だが、メディアが騒ぐものの、肝心のソシオには知られていない弱点は致命的でさえある。そして個人的にはこの人物だけは会長にしたくないと思える野郎だ。ハンドボールチームがEHFカップに優勝したとき、この野郎は選手控え室まで入っていってまるですでに会長になった様な雰囲気で選手たちを祝福していた。まだただのソシオの一人に過ぎないというのに・・・。こういうクセの悪い人物はガスパーよりたち悪い。

53歳になるジョルディ・マジョーも、やはりカタルーニャの大実業家の一人。会長候補に噂される人々の中では、なぜか、これまで最もメディアに現れてくる人だ。テレビやラジオのインタビュー番組といわず、とにかくお声がかかるところにはまめに参加してきている。しかも会長候補として、立候補する意志を最初に宣言した人でもある。財界人には知られている人だろうが、彼もまたバルセロニスタにはこれまで無名の人物。ピカッと光る個性も感じられないし、どんな人だかもわからない。

すでに二つのことを宣言しているマジョー。一つは、独自候補を貫き選挙中に他陣営の傘下には絶対入らないということ。つまり最後まで一人で戦うという決意宣言だ。そしてスポーツ・ディレクターに元テニス選手のセルジ・ブルゲラを決めていること。かつてロラーン・ガロスで世界チャンピオンになったカタラン人テニス選手のブルゲラだ。なぜ、ブルゲラ、う〜ん、なぜ、なぜ?

ロビーラとマジョー、この二人に共通していることは財界人の中でかなり顔が知られて人物だということだろう。クラブ再建、それも経済的な意味での再建に役立ちそうな雰囲気を漂わす二人の候補。二人ともバサットには大きく引き離されている感じだけれど、今後の“おまけ”次第では少しは接近するかも知れない。

“おまけ”は補強選手だけを意味しない。現実問題としてもっとも重要な“おまけ”は他の部分にある。それはクライフ、ヌニェス、チキ、アレマニー、そしてクーマンだ。彼らがどう動き、どう具体的に意思表示するか、それによって会長選挙はチョコッと左右されることになる。
2003/05/06)


UEFAカップ優勝!

と言ってもバルサハンドボールの話し。やはりこの優勝に触れておかなければチキートHPじゃない。会長選挙の話はおあずけだい。

ヨーロッパハンドボール世界で、フットボールのUEFAカップに相当するのがEHFカップと呼ばれるもの。そしてバルサハンドボールに唯一欠けていたタイトルがこれだった。でもそれは一昨日をもって過去のこととなる。2002−03シーズンのEHFカップ優勝トロフィーが、ついにバルサ博物館に収められることになったのだから。

バルサハンドボールセクションの戦歴は間違いなくヨーロッパ一番と言っていい。それは同時に世界一の戦歴を残してきていることを意味する。特に1995−96シーズンから1999−00シーズンまでの5年連続ヨーロッパチャンピオンの記録はまず破られないだろう。さらに凄いところは、この5年連続ヨーロッパチャンピオンになる前の2年間も連続してレコパ(カップウイナーズカップ)優勝チームになっていることだ。つまり7年間連続してヨーロッパのタイトルを獲得している。そして、そして、さらに凄いところは、5年連続ヨーロッパチャンピオンになった各年のシーズンに国内リーグも5年連続優勝していることだ。

いわゆる“ドリームチーム”の時代と言っていい。この“ドリームチーム”もクライフのそれと同じようにいつか崩壊していくわけだけれど、その仕方が微妙に違う。クライフバルサはアテネでの決勝戦で決定的な崩壊を見たが、リベラのそれは6年連続チャンピオンをかけた決勝戦に敗れたあともどうにかこうにかヨーロッパの超エリートチームとして踏ん張ったことだ。

今のハンドボールチームは“ドリームチーム”時代のそれに比べるとやはりイマイチのチーム。それでも“崩壊”以降もヨーロッパの決勝戦に参加することを毎年可能にしているし、リーグ戦でも常に優勝を争っている。それは天才バレーロ・リベラがいまだに監督を続けていることと、バケーロの存在と同じと言ってよい“偉大なカピタン”であるエンリック・マシップが36歳となりながらもいまだに頑張っていることと無関係じゃあないと思う。そして何よりも完全な“崩壊”を防いだのは、リベラ監督の選手補強作戦がうまくいっていることだな。

クライフ、ロブソン、バンガール、セラ・フェレール、レシャック、彼らはリベラと同じ会長のもとで監督をしていたというのが象徴的。もし彼らがリベラと同じように正しい選手補強作戦を展開していれば、ガスパーは素晴らしい会長としてクラブ史に名前を残すことも可能だったかもしれない。だが彼はそういう監督を選ぶアイデアも才能もない会長だった。だからクラブ史には他の意味で名を残すことしかできない。史上最悪の会長としてだ。これからのバルサの将来を背負って行くであろうサビオラやリケルメはレシャックやバンガールが望んだ選手ではなく、バルセロニスタのプレッシャーの前に折れたガスパーが周囲の反対を押し切って形で獲得した選手だったというのも皮肉なもんだ。

“偉大なカピタン”マシップの存在も非常に大きい。現在のバルサにまだバケーロが残っているようなもんだ。“偉大なカピタン”はグランドをはみ出すぐらいのスペースにわたって戦いのエネルギーを周りの選手に浸透させていく。バケーロとマシップはまさにそのパワーを持った“偉大なカピタン”だ。

さて、今日はレイナ理事会が解散する日。レイナは今日をもって過去の人となるが、短い会長就任の間にガスパーには不可能だった二つのタイトルを獲得することができた。バスケ国王杯優勝、そしてハンドボールのEHFカップ優勝。なかなか、うん、なかなかやるじゃん。
2003/05/05)


マリア・ミンゲージャ

ミンゲージャは“FIFAエージェント”としてこれまでチキートの色々なコーナーに出てきている。多分、バルセロニスタの間では今回の予想候補者の中では最も有名人だ。それは良い意味でも悪い意味でも、違う言い方をすれば悪い意味でもひたすら悪い意味でも、最も名が知られている人物だろう。元FIFAエージェントだけに胡散臭い感じが無茶苦茶プンプンただよう人物だけれど、市場に出まわっているフットボール選手に関してはもとより、フットボールそのものを誰よりも知っている人だ。だが、間違っても会長に選ばれることはないと言い切ってしまおう。

彼は前回の選挙にも出馬を臭わしていたことがある。もっとも、そんな彼の言葉は誰も信じなかった。ミンゲージャといえば、それはもうFIFAエージェントの代表みたいな感じのイメージしかない。多くの選手を抱え、メディアを操作してありとあらゆる情報を垂れ流し、そしてアッチャコッチャへとお抱え選手を移動させ、その移動の際のコミッションで生活を営む。表のコミッション、裏のコミッション、なんでもありだ。

FIFAエージェントを扱ったテレビ番組が何年か前にあり、彼もまた当然ながら紹介されていた。彼がどんなところに住んでいるのか、どうでもいいことだけれどそのことに触れられていた。カンプノウから北に行ったところに昔ながらの高級住宅街があり、彼はその地域の一角に住んでいる。彼の住んでいる屋敷には3m程度の高さの石造りの壁が道路に沿って走り回り、その中への視界を遮っている。したがってどのような屋敷なのかはわからない。しかも彼は彼の“お抱え選手”をいっさい自宅には招待したことがないと言う。その理由は語られなかったけれど、彼にとっては“お客さん”となる億という年俸をとっている選手より、さらに凄い金を稼いでドデカイ屋敷に住んでいることを知られたくないというのがその番組での“結論”だった。まあ、これもどうでもいいか。

ミンゲージャが“元FIFAエージェント”となった今でもゼニに関する胡散臭い話題は消えることはない。最近でもジェオバンニが移籍してきた時のコミッション問題、同じようにサビオラ入団の際のコミッション問題でも彼の名前がメディアを賑わした。でも、それでも、世の中良くできてるもんで、そんなことがわかっていても彼を会長にと推すソシオがいるんだなあ。

ミンゲージャの持つアクの強さが良いという人がいる。コミッション稼ぎで億万長者となったといったって、今のところ、少なくても今のところ、警察沙汰になるような法律違反を犯したわけではないじゃないか。それは明らかな職業差別だ。しかも彼はフットボールの世界で長い経験を持つ人物であり、したがって誰よりも深い知識を持っている。ひょっとしたら、これまでの彼の経験がものをいって素晴らしい選手がバルサに入ってくるかも知れない。

彼への評価がどうであれ、ミンゲージャが会長に選ばれる可能性は限りなくゼロ。選挙日までの選挙戦を戦い続ける可能性も非常に低いと思う。選挙中にどこか居心地のよさそうな陣営を見つけて、そしてもちろん勝利する可能性が大きい陣営を見つけ、そこに入り込むというのが彼の理想的な展開だろう。
2003/05/04)


ルイス・バサット

さすがに現役は強そうだ。そう、彼は現役といってもおかしくない候補者だ。3年前にガスパー一派に敗れ去ったあと、すぐに次期会長選へ向けて動き出していた人なのだから。彼は仕事柄スペイン各地や世界各国へと旅立つことが多い。そしてその度に地元バルサファンクラブを周り彼らに名前を売り、同時にメディアに取り上げられることによってソシオにもその名をさらに深いものにさせていった。さすがは広告屋の親分だ。

しかも彼は前回の選挙を正しく総括している。それは選挙戦でのクライフ色が強すぎたことへの反省から来ている。今回の選挙に出馬するであろうロビーラやラポルタを傘下におさめて戦ったガスパーとの選挙戦。ロビーラは強烈な反ヌニェス派だし、ラポルタはそれに輪をかけた反ヌニェス派でありクライフ陣営に深く食い込む人物。彼らが独自候補となろうとなるまいと、今回は彼らの協力を最初から拒否している。

と言って、ヌニェス派に近づいたわけではない。彼の今回のモットーは“ヌニェス派とクライフ派を越えたところのバルセロニズムの結集”というものだ。う〜ん、聞こえは非常に良い。聞こえは良いが、いってみれば美味しいところだけいただきましょうという感じがしないでもない。

これまでの彼の発言を聞いているとスポーツ・ディレクターだけはすでに決定している。それは、かつてバルサ・エスパニョール・サラゴサの選手であり、現在はカタルーニャ代表監督を年に1回だけ務め、普段はTV3の解説者として活躍しているピッチ・アロンソ。その彼をスポーツ・ディレクターにするというのが彼のアイデアだ。これまで緻密な接触を図ってきたチキ・ベルギンスタインじゃあないところがこれまたミソ。彼はクライフ派に近すぎるのだ。だがそうははっきりと言いきらないバサット。そこに彼の彼らしさがある。

実に人当たりの良さそうな人で、人の話を聞く術にたけてそうな人という印象。できるだけ波風立たないように物事を丸くおさめていこうというタイプに属する人という印象。バルサそのものが興味対象であり、マドリに何が起きようが無視することが可能というタイプ。中央メディアにマドリについて聞かれ、フィーゴのプレーを褒め称え、ロナルドのゴラッソを素晴らしいと語り、ジダーンのテクニックに驚愕すると、まん丸い顔をさらに丸くして語る。そんな彼にバルサカラーへのセンチメンタリズムを疑う人々がいても不思議ではない。つまりガスパーの持っていたバルサカラーへの愛情が彼には欠けていると疑う人々がでてきても不思議ではない。そう、完璧な人間が存在しないように完璧な会長候補も存在しない。

ユニに広告をつけることを決して拒否することはないと語る。それは、クラブの抱えている財政的問題次第だと言う。ミニエスタディを売り払うことを決して考えないわけではないと語る。それも、クラブが抱える財政的問題次第だと言う。そして、カンプノウ閉鎖問題を一般法廷に持ち込んだのは誤りだと語る。なぜなら、フットボール連盟との不仲を生むようなことはバルサにとってそんだからと言う。

すべてのバルセロニスタを満足させるような会長候補者はいない。だが、好き嫌いに関わらず、22年間副会長を務めたガスパーが前回の選挙で勝利することが可能となったように、やはり現役の強みは圧倒的だ。余程のことが起きない限り、バサットが会長になる確率はとてつもなくドデカイ。
2003/05/03)


会長候補者たち

まだチョイと気が早いけれど、会長候補として立候補しそうな人は7,8人いそうだ。本命は間違いなくバサット。会長選キニエラをやるとすれば彼に賭けても配当はゼロ、掛け金が戻ってくればいいほうだ。へたすりゃ手数料で掛け金を割るかも知れない。彼以外に出馬しそうな人々、ロビーラ、マジョー、ミンゲージャ、メディーナ、ジャウラド、そしてラポルタ、こんな感じか。これらの人にさらに1人か2人、今のところ予想されていない人が加わるのだろう。

ケツからいくとして、まずラポルタはクライフに最も近い人物。個人的な友人でもありクライフの弁護士(彼の本職)を務めたりすることがある。ヌニェス政権の頃、“エレファント・ブラウ(青い象)”という反ヌニェス派を結成し、ヌニェスが最後に会長選挙に出馬した1990年代の終わりの時には、選挙が終了してからわずかな日にちしかたっていないにも関わらず“不信任動議”をしたことで“不遜な輩”として知られている。ちなみに前回の選挙では敗北したバサット側に付いているが今回は独自に出馬しそう。もちろん出馬したとしても会長には選ばれない。余程のことがない限り。

メディーナという人はこれまでバルセロニスタには全然知られていない人物。38歳で弁護士という彼は、これまで何回かテレビで見てきた限り真面目そうで地道な“市民運動”タイプ。事実、財界人や経済界の後ろ盾をいっさい持たず、彼を支持する若いソシオのジミーな運動だけが頼りとなる。もちろん会長には選ばれるわけがない。選挙運動中にどこかの他陣営に加わる可能性が大きいと思う。

ジャウラドは選挙出馬が趣味みたいな人だ。趣味だから勝たなくてもいい。最近では前回の選挙でも出馬し選挙中にガスパーにくっつきうまいこと理事会入りを果たした。今回も出馬するとすれば同じような展開を狙うのだろう。

会長選挙運動には当然ながら資金が必要となる。街中の格好の場所に選挙事務所を借りなければいけないし、運動員として動きまわるアルバイト兄ちゃん姉ちゃんが必要だ。ポスターやチラシを作ったり、催し物を開いて名前を売らなければならない。その費用がこれまでの選挙戦を見てみる限り、5千万円ぐらいというところか。そして会長に選出された際には、さらにドデカイ額の資金が必要となる。

バルサやマドリ、ビルバオ以外の“スポーツ株式会社”クラブは、最大株主の個人所有クラブとなるから赤字になってもそれは所有者の問題となる。だがソシオによる投票で選ばれる会長たちはクラブの持ち主ではなく、単なるソシオ代表としてクラブ運営を任されているだけの存在。したがって彼らのポケットマネーで選手を獲得したり、個人財産を使ってクラブ名義で何かの投資をすることはあり得ない。だが、それでも毎年シーズンが始まる前に組まれるクラブ年間予算に関しては責任を持つ立場となる。赤字経営となった場合、会長とか理事会委員は何らかの責任をとらないといけない。

その責任を保証する見せ金というのか保証金というのか、とにかく会長となる人にはそれが必要となる。バルサの場合、その額2500万ユーロ前後と言われている。この資金がないと会長に選ばれたとしても会長にはなれない。これが、実はワタクシが今回は会長選挙に出馬しなかった理由というのは、ここだけの話し。
2003/05/02)


投票する人

今回おこなわれるであろう会長選挙での投票権を持っているソシオの人数はまだ発表されていない。前回の選挙では9万1584人のソシオが“18歳以上であり1年以上のソシオ歴”を持っている人たちだったけれど、わずか3年前のことだから大した数字の変化はないだろう。そう、18歳以上で1年以上のソシオ歴があれば選挙権を持つ。

これも前回の選挙の時の資料だけれど、9万1584人の投票権所有者のうちバルセロナ市内に住む人の数はそれはもう圧倒的だ。その数ナント8万6720人だという。単純に計算してソシオの95%がバルセロナに住んでいることになる。

1500近くのファンクラブが世界中に散らばっているというバルサだけれど、ソシオはさすがに世界中には散らばっていない。ソシオになることの最大にして最高の魅力は、カンプノウでチケットゲットの心配をせずにいつでも自由に試合を見る権利を持つということだろうから、やはりソシオになる人は場所的制限がつくことになる。そういう限定があるとすると、やはりカンプノウがあるバルセロナに住んでいる人が圧倒的に多くなるということなのだろう。

今回もそうだと思うけれど、バルサはこれまで“郵送による投票”を認めていない。市内に住んでいる人でもたまたま出張だったり、あるいは旅行にでていると投票できないことになる。バルセロナ以外に住んでいる5000人ぐらいのソシオの人にしてみれば、投票するためにわざわざバルセロナにまで行くなんて、そりゃあ面倒くさいし大変だ。

ガスパーが勝利をおさめた前回の会長選挙総投票数は4万強だったように思う。ガスパーが2万チョイでバサットが2万弱程度ではなかったか。投票率が5割弱というのは多いのか少ないのかよくわからいけれど、いずれにしてもすべての人々が投票に行くわけでもない。投票という行為+何か、それがないとわざわざ投票には行かない。その何かが面白い試合であるのが一番だけれど、試合がないときはフィエスタをやったりする。移動遊園地じゃないけれど、遊園地によくある単純な乗り物をカンプノウの敷地に持ってきたり、カタルーニャダンス(サルダーナ)をやったり、普段は入れない部分のカンプノウ施設を解放したり、とにかく「いらっしゃい!いらっしゃい!」しないとソシオはなかなか投票にこない。

会長選挙はメディアが派手に騒ぐ格好の材料となるけれど、投票する方にしてみればなんだか力の入らない作業だ。やはりカンプノウは試合を見るところ。選挙なんかより何十倍も試合の方が楽しい。勝った試合だったらさらに楽しい。負けたら・・・、クソ、何でユーベに勝てなかったんだ、と、いまだに悔しいあの試合。だいぶ字あまり。
2003/05/01)