2003年
11月
2004年

左ラテラル

セルジが鬼監督に追い出されて以来、バルサの左ラテラルを務めてきているのはアルバイト選手だ。ココに始まりソリン、そして今シーズンはジオ。個人的にはココが一番お気に入りの選手だった。ナバーロが不運にも負傷して時々オスカー・ロペスなどが起用されながらも、それでも基本的にはこのアルバイト選手が中心になって左ラテラルに起用されてきている。

ココにしてもソリンにしても、そしてジオにしてもそのシーズン限りのレンタル契約選手。「自分はあくまでもアーセナルの選手」であり、出番が少なく控えとなっていることが多かったことにより「ユーロ2004の代表に選ばれるために」出番が多そうなバルサに来たと正直に語っている。それはそれで良しとしよう、もしチームのために役にたつ選手なら。でもはっきり言ってそれほどの選手とはとても思えない。オスカー・ロペスとの違いはどのくらいあるのか、あるいはナバーロとの違いはどのくらいのものなのか、そこら辺がわからない。

オスカー・ロペスはもともと左ラテラルの選手ではないのに、これまでそれなりにこなしてきている器用な選手だ。彼のもっとも自然なポジションはインテリオール。器用なガブリがやはりそうなように、彼もまたインテリオールの選手。だがガブリと違うところは右でも左でも大丈夫というところだ。右ラテラルだって器用にこなしてしまう。もし違いがそれほどなにのならフラン・ライカーはこの二人の若手のどちらかを起用するべきだろう。それが自然っちゅうもの。そして彼ら二人の後にはさらに大物の左ラテラル選手がバルサBにいる。

カルロス・ゴンサレス・ペーニャ、通称ペーニャと呼ばれる20歳の選手はセルヒオやルーベンなどと共にバルサBからアンダー20代表に選ばれている。左セントラルや左ラテラルが自然なポジションとなる彼はここ何年かのカンテラ育ちとしては最高のディフェンス選手と言われているそうだ。つまり左ラテラルをやっていたベルムードやナバーロ、そしてオスカー・ロペスを越える期待の新星でもある。アラブ首長国連邦でのアンダー20世界大会の楽しみは、何もセルヒオとイニエスタだけではない。この期待の新星であるペーニャがどのような活躍を見せるか、これも非常に楽しみだ。
(03/11/27)


サンタマリア、ですか

2週間前のミニエスタディ。この日はカンプノウでベティス戦があり、バルサBはその2時間前にジローナと対戦。この試合をチョイと見てからカンプノウに行くとちょうどいい感じに試合時間が設定されていたため普段より多くの年寄りが来ていた。そしてバルサBはシーズン最悪の試合をして敗戦。さらに後半の途中あたりから二人の選手に対してブーイングが飛ぶという、ミニエスタディでは珍しい光景も見られた。

その二人の選手とはサンタマリアとババンジーダ。この試合は誰と誰が悪くてどうのこうのというより、11人すべてがかみ合わないという感じの試合展開をしていたため、彼ら二人が特に悪いということでもなかった。それでも彼ら二人にブーイングが飛ぶ。それはこの試合に限らず、これまでの試合でもチットも良いところを見せなかったことによる。

バルサBでも、もちろん一部チームでも、今シーズンの計算には入っていなかった二人の選手だ。ババンジーダは昨シーズンに二部A所属のテラッサにレンタルされていたが今シーズンは計算外の選手とされバルサBに戻ってきた。彼が抱える問題、と言うよりはクラブが抱える問題、それは二部チームの選手としては年俸が高すぎるということがある。そして同じような状況と問題を抱えていたのがサンタマリア。

これまでオビエド、エルチェなどにレンタルされながらもバルサBとの契約が残っているサンタマリアはババンジーダと同じ理由で戻ってきた。今シーズン開始当初、二人ともどこかのクラブからのオファー待ちという状態でいちおうバルサBで練習再開。そして誰もが驚くことにフラン・ライカーはサンタマリアを一部チームの練習に招集する。それはビジャレアル戦にスタメン出場したのと同じぐらいの驚きだ。

ババンジーダはバルサ史上二番目の若さで一部デビューした選手であり、サンタマリアはセスクと同じようにアンダーカテゴリーで最優秀選手に選ばれたこともある。それでありながら、残念ながらあの当時と今との違いがあるかとどうかわからないぐらい、はっきりとした成長が見られない選手たちだ。そのサンタマリアをどうしてフラン・ライカーが起用するのか、“フラン・ライカーわからないシリーズ”の一つに付け足しておこう。
(03/11/25)


20万人ソシオを目指して!

ほとんどのクラブが“スポーツクラブ株式会社”となり事業に成功した大金持ちの個人的な持ち物となっている今、バルサは時代に逆らうようにいまだにソシオ制度を貫いている。ソシオ制度によって維持されているクラブ機構の中で最も象徴的なこと、それは彼ら一人一人がクラブ所有者であり、彼らを代表してクラブ運営する会長を選ぶ権利を持っていることだろう。さらにその選ばれた会長によって構成されるクラブ理事会が出すいろいろな提案に対して、ソシオの代表によって構成されるソシオ審議会のメンバーが賛成か反対かの決定権を持つことだ。

ラポルタもサンドロ・ルセーも無給で働いている。それはもちろんあのガスパーにしたって同じことであり、ヌニェスに至っては22年間にわたって無給でクラブのために働いていた。もちろん、それぞれ上流階級の家庭で育った人々だったり、一代で財をなした成り上がり者だったりするわけで、みんな金持ちであることは間違いない。それでも多くの金持ちはさらに財産を増やそうとするだろうに、彼らは自分がおこなっている事業を人に任せたりしてなにゆえ無給でクラブのために働くのか。バルサ理事会のメンバーとなることで毎日のようにメディアに取り上げられることにより“名声”が高まり、その人がやっている個人的な事業にもいい影響を与えるということをのぞけば、やはり“クラブへの愛情”という、なんだか俗っぽくも照れくさい言葉が一番当てはまる表現となるんだろう。

そして今、ラポルタチームはソシオ数の倍増計画を発表。現在のソシオ数はだいたい10万人だから20万人を目指すということだ。ソシオになると言っても年間指定席を手に入れられる人は1%もいないことになるけれど、それでも“愛するクラブの一員”としての称号が与えられる。

単純計算して、もしソシオ数が20万人になれば2千万ユーロの収益となるわけで、そうすると今の選手マーケットを考えるとまあまあの選手を2、3人買うことができ、30万人になって3千万ユーロとなれば正真正銘のクラックが一人いただける。どこのスポンサーとも関係なくソシオ収入だけでクラック一丁いただきというのは、ユニフォーム販売作戦とかユニを汚すスポンサー探しなんかより楽しい話だ。ちなみに、この呼びかけに対し、初日の昨日一日で300人以上のソシオ申し込みがあったそうだ。
(03/11/21)


再びレオ・メッシー

このコーナーで去年の10月22日にレオ・メッシーに関して書いたことを思い出します。

『1987年6月24日生まれというから15歳。アルゼンチンはロサリオでとれている。バルサ“カデッテA”カテゴリーに所属する彼の名前はレオ・メッシー。お父さんの名はホルヘ、お母さんはセリア、もちろん一家丸ごとバルセロナに引っ越してきている。

これまで何回か触れてきたレオ・メッシーはマラドーナ二世と呼ばれる少年。そう、アルゼンチンの優秀な若手選手にはもれなく贈られる称号「マラドーナ二世」を彼も持っている。1993年から地元のクラブでプレーし、2000年の9月にバルサに買われた。メッシー13歳の時だ。目をつけたのはバルサ百年史にもでてくるホセ・マリア・ミンゲージャというFIFA代理人。マラドーナをバルサに連れてきた代理人だ。彼のテストに立ち会ったのはレシャック、ミゲーリ、キケ・コスタ、アセンシ、リフェというそうそうたる面々。そしてメッシーは彼らに太鼓判を押されてバルサにめでたく入団。ところがついてなかった彼はいきなり負傷してしまう。それもデビュー戦で負傷。だから去年の半分以上は試合にでていない。

そのメッシー少年が今シーズンは快調に飛ばしている。すでに“ドリームチーム”と呼ばれているカデッテAのバルサチーム。これまで6試合戦って全勝、得点35、失点わずか1、その失点もペナルティーによるものだという。先週末おこなわれたサン・ガブリエルとの試合では0−8で勝利し、メッシーは初のハットトリックを決めている。このゴールを含めてシーズントータル8ゴール、メディアプンタのポジションながらチームの得点王だ。』

あれから13か月、今シーズンはフベニールAカテゴリーでプレーし、11試合消化したところで15ゴールを決めている。すでにクラブ史上最年少としてプロ選手契約も結んでいるそのメッシーが、親善試合とはいえわずか16歳で一部チームデビューを飾った昨日の試合。来シーズンはミニエスタディで毎試合見られそうだ。
(03/11/17)


忘れられた存在、アンドレ・イニエスタ

アラブ首長国連邦で11月27日から12月19日までおこなわれるアンダー20世界大会にイニエスタが招集されている。これは別に新しいニュースでも何でもなく、ずいぶんと前から決まっていたことだ。そして同じようにかなり前から決まっていたのがアントニオ・レージェスとフェルナンド・トーレスの招集。でもこの二人はスペインフットボール協会によって出場を“免除”された。それぞれのクラブチームにとって大事な選手という理由と、ユーロ2004の代表にも選ばれているという理由からだ。

フラン・ライカーはこれまで何回となく、イニエスタのポジションはロナルディーニョと被ってしまうからなかなか出場チャンスが与えられないと言ってきた。イニエスタの成長を長い間見守ってきたバルセロニスタにとって、彼らの多くは今年こそはイニエスタが爆発するシーズンとなるのでは、そう思っていたはずだ。だからアメリカ遠征やイングランドツアーでの彼の活躍は“ふ〜む、予想通りじゃわい”、そういう感じだった、少なくても個人的には。

だがシーズンがオープンしてみると、なぜかフラン・ライカーは彼を蚊帳の外に追いやってしまう。たまたま出場チャンスがやって来て、例えばメキシコ遠征での親善試合や国王杯のグラマネでの試合での活躍がありながら、それらの試合が終われば何事もなかったのごとく再び忘れられた存在となってきている。最近ではベンチに入ることさえ許されず、観客席での観戦選手の一人だ。

そして今、ロナルディーニョはいない。イニエスタの出場チャンスの少なさをフラン・ライカーが本心からロナルディーニョの“せい”と考えているのなら、今こそイニエスタにとってチャンスだ。今のところ、少なくても22日におこなわれるビジャレアル戦への出場は可能な状態となっている。アンダー20代表の招集は翌日の日曜日となっているからだ。

もしフラン・ライカーが正直な人であるならば、つまりこれまで語ってきたことが本当のことであれば、そう、レージェスとかトーレスのように招集を逃れるための要請だってできるはずだ。それをするかどうか、それによってアンタを信じるかどうか、決めることにしよう。
(03/11/14)


あり得ない交代劇

カンプノウから戻ってきて気分が良かったので普段なら見ないであろうメレンゲの試合をテレビ観戦。メレンゲ族にとってはとてつもなく悲惨な試合であり、バルセロニスタにはヨダレが垂れそうになる美味しい試合だったけれど、やはりメレンゲの試合を90分は見ることができず前半だけでサヨウナラ。

それにしても、どうしてあの状況でカンテラから抜擢したルーベンをベンチに下げたのか。そりゃないよ交代劇、間違ってもあり得ない交代劇とはまさにあれを言う。あれでは「悪いのはお前だ」という宣告ではないか。そんなことを将来のチームを支えていくカンテラ選手にしては絶対にいけない。

ああいう試合展開がクライフ監督時代にも何回もあった。今でいう“ドリームチーム”は、負けるときには時として悲惨とも言える負け方をしている。そのような試合であって、もしカンテラ選手が抜擢されている試合であったら、例えばグアルディオーラだとかチャッピーだとかセラーデスだとかイバンだとかセルジだとか、とにかく普段は試合に出るチャンスがない若者が偶然その試合に出ていたとすれば、クライフはその選手がどんなに期待に応えない活躍をしていたとしても交代はさせなかった。活を入れるために交代させられる選手は決まってベテラン選手だ。それもチームにとって影響力の強い重要な選手をベンチに引っ込めた。なぜなら、すべての責任をとるのは年俸が多い選手順と決まっていたからだ。クーマン、ストイチコフ、ラウドゥルップ、あるいはバケーロがベンチに下げられる。

試合は二つのチームが勝ちを争うものだから、楽に勝つ場合もあればやっとのことで勝つ場合もあり、そして惜しい敗北もあればどうしようもない敗北もある。したがって負けるのはそれはそれで仕方ない。だが責任の行方をカンテラ選手に押しつけるような選手交代は醜い。決してやってはいけないことをやってしまったメレンゲ監督とその犠牲者となったルーベン。監督なんぞはどうでもいいとして、ルーベン君、こんなクラブとっとと辞めちゃいなさい。
(03/11/12)


バルサB、ルイス・ガルシア

第一次バンガール政権の2年目だったか3年目だったか、バルサBは二部Aカテゴリーにいて多くの人に記憶に残る、シーズンを通しての”11人のスタメン選手”を起用していた。それは資料を見なくても今でも頭の中に残っている11人だ。

4−3−3システムというのを起用していたバルサB、ポルテロはアルナウ、右ラテラルはプジョーかオクノボ、セントラルにはオスカー・アルバレスとクアドラード、左ラテラルはフェロン、中盤はチャビを中心として右にガブリ、左にマリオ、右エストレーモにババンジーダ、左エストレーモにジョフレ、そしてトップがゴールの入らないルイス・ガルシアだった。

もし当時にチキートHPがあり“カンテラ明日のキラキラ星”というコーナーがあったらたぶん次のような評価をしていただろうと思う。
「プジョーはまったく将来性のない選手。ファイトだけが売り物で足は遅いしボールテクニックもお粗末。簡単に後ろを抜かれてしまうボケラテラルだからどこかからオファーが来たら売るベシ。将来性のある選手という感じがするのはクアドラード、チャビ、ガブリ、マリオ、ババンジーダ、そしてジョフレ。間違っても一部の選手にはなれないのがルイス・ガルシア。この選手はチョンボが多すぎる。」

そもそも彼はバルサBにいたときは右足利きではなかったかいな、という記憶もあるけれど、それはどうでもいいとして、まさかサイドの選手となってバルサに戻ってくるとはねえ、確かにAt.マドリでも左サイド選手としてやっていたのを見ているから初めての風景ではないにしても、あのゴールを決められなかった9番の選手がねえ、という思いと共に、ミニエスタディでプレーしている選手の将来はシロウトにはわからんもんだ、とつくづく思う。マリオ、ジョフレ、彼らはいったいどこで何をしているの?

レンタルされているダビ・サンチェスやトルトレーロ、バルサBのセルヒオ・ガルシアやロス、オラゲール、ペーニャ、アルフィ、ベルドゥ、エスポシット、クリスティアン、それよりもっと小さいレオ・メッシー、ビクトル・バスケス、ホアンホ、ソンゴーJr、リエラ、ジョルディ・ゴメス、メンディ、そしてヤゴやボージャンなど今から期待される選手は多くいるけれど、果たして彼らの将来はアモールになるのかジョフレになっちゃうのか。個人的にはすべて一部に上がってきて欲しいけれど、まあ、そんなことはないだろうな。
(03/11/09)


カンプノウは閉鎖されない

フットボール・スタディアムでおこった事件に関して、その筋は“軽い不祥事”“重大な不祥事”“非常に重大な不祥事”という3つのカテゴリーにわけて制裁を決めている。バルサ・マドリ戦での事件はこのカテゴリーの中の“重大な不祥事”として認定され、2試合のスタディアム閉鎖処置が中央機関から言いわたされていた(詳しくは2002年12月19日付けチキートコーナー“我らが敏腕弁護士、コローナス”参照)。それが言いわたされたのは2002年12月10日。そして今日は2003年11月7日。だが、まだカンプノウは閉鎖されていない。

カタルーニャのペリーメースン敏腕弁護士ジョセップ・マリア・コローナスはもうバルサにはいない。ラポルタ新政権の“変革”の犠牲者の一人となり、今シーズンからクラブを去っている。だが彼の残した遺産は大きい。何十ページにも及ぶ何冊もの“意見陳述書”を制作し、いかにこの閉鎖措置が違法であり間違っているものであるかということを論理的に解明し、一般法廷に持ち込んだのが彼だった。そしていまだに法廷での最終判決はでていないものの、多くの関係者はバルサ側の勝利と見ている。試合当日、カンプノウ警備にあたったカタルーニャ州警察もクラブ側に落ち度はなかったことをすでに法廷に陳述している。

結論。最終判決はフットボール協会が下した閉鎖処置を無効にする可能性が非常に大きい。

今年の7月、その筋によるスタディアム閉鎖規約が変更された。“重大な不祥事”であっても再発でなければスタディアム閉鎖処置はとらないということになった。そして、カンプノウ事件は再発ではなく“初犯”となる。新しい規約から見てもカンプノウを閉鎖する理由はなくなってしまった。そして巷でうわさされる一つの可能性。もし裁判でフットボール協会が敗北するようなことがあるとすると、それはその筋にとってヒジョーに悪い前例となることは自明の理だ。だから裁判の判決が下りる前にどうにかしてしまえ、そういうことだが、では、いったいどうするのか。

偶然というか何というか、12月はスペイン憲法制定25周年行事がおこなわれることになっている。そして、この手の記念日には中央政府から多くの恩赦が発表されるのが普通だ。バンバン監督時代の“国王杯不参加事件”にも与えられた例の恩赦だ。
「えーい、憎きバルサをまた恩赦にしてしまえ!あいつらが悪いことをしたのは当然だが、権力者の前にひざまずく一般庶民に恩赦というアメを与えて我々の心の広さを見せつけてやろうじゃないか!」
(03/11/07)


PSGにいた二人

ロナルディーニョのPSG時代の活躍というかプレーぶりを見たことのない自分にとって、今の彼のバルサでの活躍ぶりは予想を遙かに超えている。しかも、この世界でメシを喰っているジャーナリストの人々も同じような印象を受けているらしい。先日、ラジオ番組でフランスリーグにも詳しいミンゲージャがそのことについて触れていた。

「PSGのゲームはすべて見ているが、ロナルディーニョは今のようにボールや相手選手をどこまでも追っかけるようなプレーをする選手じゃなかった。しかもチームのリーダー的存在と言われながら実際はそうでもなかった。バルサにきてゴールを決めているが、まあ、これは一時的な現象だろうが、それでも素晴らしいパスの精度は落ちるどころかさらに磨きがかかってきている。この変化はフランスフットボールとスペインフットボールの違いと言うよりは、やはりフットボールを取り巻く環境の違いから来ているのではないか。PSG時代には毎日何十キロも離れた練習場に通わなくてはならなかったし、ブラジル人が最も嫌う雨の多い気候の中での練習。言語的にもスペインに来てからなんの問題もなく家族に囲まれて幸せそうに暮らしている。しかもフランスでは週末にしかフットボールに関して語られないが、ここでは毎日24時間フットボールについて語られている。こういう環境の違いというのは大きいだろう。」
フム、フム、そういうものかいな。

そしてそのPSG元監督のルイス・フェルナンデスがエスパニョールにやって来る。何でもロナルディーニョとはえらい仲が悪いと言われているルイス・フェルナンデス。彼で思い出すのは1994−95シーズンのコパ・デ・ヨーロッパ。準決勝だったか準々決勝だったか忘れたけれど、とにかくルイス・フェルナンデスが指揮するPSGと対戦してバルサが負けた。その時のPSGにはラマとかウエアーだとかジノラとかライなんかがいて非常に良いチームだったけれど、もっと気に入ったのはこの監督だった。

「私はヨハン・クライフのファンであり同時にバルサのファンでもある。今こういう素晴らしいチームと対戦できることになってとても嬉しい。ここは一発ハデな試合をしようと思う。」
この試合前の言葉もなかなか心をくすぐる気持ちよいものだったけれど、試合展開を見たらクソダヌキだということがわかった。大型バスを何台も自陣ゴール前に並べてのガチガチ作戦。バルサはこれに見事にはまって地元では1−1の引き分けとなり、アウエーでは2−1で負けて落選。言っていることとやることがまったく違うルイス・フェルナンデスだったが、何だかわからない突拍子もなさが何ともユニークだった。さて、この仲の悪いと言われている二人、またバルセロナで一緒になっちゃいました。
(03/11/05)


12月6日土曜日バルサ対マドリ

観客席がすべて椅子席となり収容可能人数が10万人を切り、そして外国の人々にも注目を浴びるようになったここ数年、このクラシコの試合でのチケットは一般販売されないようになり、チケット窓口は閉ざされたままだった。したがって数少ないチケットの行方(スポンサー関係者やクラブ職員などに渡される特別チケットは別として)は、抽選で手に入れることが可能となるバルサファンクラブの幸運な人々にだけとなり、彼らだけが年間指定席を持っているソシオと共に“合法的”に観戦できる試合となっていた。それが今回のクラシコは年間指定席を持っていないソシオに対してのみとなるけれど窓口が開くことになる。

クラシコは12月6日土曜日。まだ1か月あるというのに今日11月3日月曜日に5千枚のチケットが売りに出される。年間指定席を持っていないソシオの数は想定1万人弱、その彼らに対して売りに出されるわけだけれども、販売システムがなかなか厳しい。まず一人一枚であること、当然ながらソシオカードを持参しなければいけないこと、そして身分証明書も持参しなければいけない。さらにチケットが渡されるのは試合当日近くなってからであり、試合当日もソシオカードと身分証明書が必要となる。チケットにはソシオ番号も印刷される。要するにソシオダフ屋に変身させないための手段だ。

ラポルタとボイショス・ノイスの抗争により、最近はソシオカードだけではなく身分証明書持参も要求する北ゴール裏入り口も誕生している。これまで北ゴール裏を埋め尽くしていたボイショス・ノイスの連中は、ラポルタとの抗争が生じてから自らボイコットしたりして試合ごとに少なくなってきていたけれど、先日のムルシア戦では20人チョイという希にみる少なさだった。あの日、クラブは彼らに対してソシオカードの提示を要求したという。そうしたら何十人も入り口に並んだボイショス・ノイス・メンバーの中でソシオカードを持っていたのはわずか20人だったというジョークにもならない事実が判明。

ちょっと待て、それじゃあ、これまでヤツらはどうやって入っていたんだ?しかも今回売りに出されている5千枚のチケットは去年までどこへと消えていたのか?と不思議がる多くの人がいると思いますが、これがカンプノウであり、ベルナベウであり、マンサナーレスであり、モンジュイクであり、要するにラテン系国家スペインの良いところでもあり、悪いところでもあり、いい加減なところでもあり、メチャクチャなところでもあり、スペイン人が言うところの“スペインのスケールの大きい”ところでもあります。
(03/11/03)


アニモ!マドリ!

今年の6月にマドリッドを本拠地とするエコノミーウエッブページ“エウロ・エコノミー(www.euroeconomia.com/)”がレアル・マドリの経済問題を取り上げ特集を組んだ。5週間にわたってマドリの経済状態を分析し、クラブの赤字は5億4480万ユーロにものぼるだろうと推定しているのをこのコーナーで紹介した。そしてまたまたマドリッドの“カピタル”というエコノミー月刊誌がマドリの経済問題を取り上げて特集を組んでいる。題して“フロレンティーノのごまかし”。

キオスコで見つけたこの雑誌を買いパラパラと読んでいたのだけれど、どうもこの手の雑誌を読むと頭が痛くなるし眠くなってくる。メレンゲをからかうのはとてつもなく面白いこととはいえ、そのために頭を痛めてはそれこそアホらしいのでゴシック文字で書かれている結論的な部分だけを読んで書き出すことにしよう。

フロレンティーノ会長が何をごまかしているかというと、500人のソシオ代表を集めておこなわれた先日のソシオ審議会で「クラブの借金はすべて完済され、黒字経営に向かって大躍進中だ。昨年度の黒字は620万ユーロという数字になった。そしてその黒字は年々増えていくことになるだろう。」というアドバルーン発言に関してだ。だがこの雑誌の経済専門家が、公開されているクラブ資料や非公開資料などを時間をかけて綿密に検討したところ、フロレンティーノが語っていることにはドデカイ嘘があるという結論をだしている。

昨シーズンの収入1億9200万ユーロ・支出2億9000万ユーロ、したがって1億ユーロ近い赤字が本当のところであり、“エウロ・エコノミー”が語るように5億近くの累積赤字が存在するだろうとのこと、その大きな原因として選手の人件費がここ2年間で8000万ユーロから1億4000万ユーロへとほぼ倍近く跳ね上がってしまったことや、宇宙人選手を集めたもののそれにかかった費用を取り戻すマーケティングが思うようにいっていないこと、そしてさらにアジアでのユニ販売が大失敗に終わったこと(マドリとの試合で多くの中国人が着ていたメレンゲユニの90%がバッタ商品でオフィシャル商品は1割しか売れなかったこと)などとしている。

まあよそのクラブのことだからどうでもいいっちゃあいいんだけれど、毎年黒字ワッハッハッハのガスパー大嘘つき政権を経験している一人としては決して人ごとではなく、どうにか頑張ってクラブ経営を立て直し、経済的問題で二部に落ちるんではなく、芝生の上で二部に落ちて欲しいとひたすらひたすら願うのでありました。そしてついでに言うなら、その日までは決してセグンダ・マドリというような品もセンスも、そして尊敬の念もない呼び方をするのはやめておこう。
(03/11/01)