2006年
2007年
3月

ペーニャ数1828
(07/03/31)

昨年の10月におこなわれたクラブ理事会終了後、理事会員の1人であるジョアン・ボッシュが次のように語っている。
「ソシオの数も増えているが、ペーニャ(ファンクラブ)の数も予想を上回るスピードで伸びている。1500というペーニャ数を超えるのは時間の問題だろう。」
だが、その予想を遙かに上回ってペーニャ数は伸びている。先週おこなわれた理事会で28の新たなペーニャが認定され、これで世界各国に散らばるペーニャは総計1828となっている。

最も新しいペーニャの中で、その存在が燦々と輝く一つのファンクラブがある。その名を“ペーニャ・デ・ブラウグラーナ・ゲイズ・レスビアンズ”とするペーニャだ。その名のごとく、ゲイとレスビアンの人々によって構成される画期的なペーニャ。世界各国に数多くあるフットボールクラブ・ペーニャなれど、こういうのはドイツのどこかのクラブにあっただけで、もちろんスペインでは初の誕生。バルサは何と言っても“クラブ以上の存在”なのであった。

とは言うものの、スペインの社会情勢を考慮に入れれば、それほどぶっ飛んだ話という感じはしない。スペインは同性同士の結婚が合法的に認められている数少ない国の一つであり、2005年の7月からその新法がスタートしている。今年の1月現在の資料を基にすれば、男性同士で914、女性同士で355、合計1269の同性夫婦が誕生している。そして一番の数を誇るのはカタルーニャ州で、これまで277組の夫夫、あるいは婦婦が誕生している。

今から二昔前ぐらいの時代、カタルーニャにおけるゲイのメッカは、何と言っても地中海沿岸にあるシッチェスという、バルセロナから南に車で30分程下ったところの観光の町だった。だが、21世紀の今日、バルセロナもシッチェスに負けないほど頑張っている。ヨーロッパ・ゲイ組織の集まりがよくおこなわれる街と成長しているし、何と言ってもゲイやレスビアンの人々の数も他のヨーロッパ諸国に比べて多いようだ。その証拠に、我が家の近くには4つ星ゲイ・レスビアン専門ホテルがあるし、その方々専用のディスコも数多くある。ちょいと家を出れば、仲良く手をつないだ入れ墨お兄ちゃんたちが微笑ましくも闊歩している姿が見かけられる。そういう街だからこそ、彼らが作り出すペーニャが誕生してもおかしくはない。

ちなみに、そのシッチェスというところは多くのバルサ関係者が住んでいたことでも有名だった。今も住んでいるかどうかまでは知らないので、一応過去形にしておこう。特にクライフ時代の選手、例えばバケーロだとかクーマンだとか、多くの選手がここに居をかまえていた。クライフがクビになりロブソン、バンガールと監督がバトンタッチされていくが、彼らもまたこの地に住んでいる。そしてロブソンとモウリーニョが隣同士に住んでおり、仕事時間以外でもよく一緒にいることが多かったことをもって、彼らを“マリコン(おかま)の臭いがする”として陰口を叩いた狼藉者がいた。ヌニェスのすることなすことすべて“はんた〜い!”と口だすことに楽しみを見つけていた、ヌニェス政権野党エレファン・ブルーの連中だ。権力を握った今では何知らぬ顔をしているラポルタが、仲良しメディアを引き入れて陰口大王となっていた時代でもある。

そんなことはともかく、この画期的なペーニャは5月17日に正式に旗揚げすることが決定されている。なぜ5月17日なのか、それは“同性愛差別に反対する日”として世界的な記念日となっているからだ。そしてコルーニャ戦がおこなわれる土曜日、試合前には約1000を数えるペーニャの団体がカンプノウにやって来るらしい。

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パンフレット紙
(07/03/30)

独自の調査をもとに興味深い記事を提供してくれた本格的ジャーナリストが姿を消し、ここ2、3年はクラブ理事会から流れてくる何らかの意図を持ったコネ記事や、売らんかな根性による根拠の薄い噂記事が紙面を埋めているスポーツ紙。エル・ムンド・デポルティーボ紙、エスポーツ紙の低迷は、そのまま売れ行き部数の下降線現象が示している。その内容のなさを皮肉って、パンフレット紙と呼ばれ始めたのは昨日や今日のことではない。

もっとも、パンフレット紙にもそれなりの楽しみ方があるというものだ。例えば、代表戦がメインとなったこの2週間、スペイン代表記事などが一面を飾っても、ただでさえ売れない新聞がさらに売れなくなるから、いつものように噂・うわさ・ウワサ補強選手の紹介が主役となる。そういう話題が好きな暇な人にはパンフレット代1ユーロは安いかも知れない。ここでは無料でその話題を提供しよう。ここ2、3週間で両パンフレット紙に登場してきた“噂のあの人”をポジション別に列記してみよう。さて、来シーズンからバルサのユニを着るかも知れない“噂のあの人”、あなたのお好み選手は?


サビオラ、そしてバルサ
(07/03/28)

クラブとの契約期間が満期となる今シーズン終了時まで、この6年間にわたってサビオラのとってきた行動、記者会見などでの発言から練習態度まで含めたすべて意味での行動、それは誰しもが否定できないほどの模範的なものだったと思う。彼にとっては不服とも思えるようなどんな待遇を受けようとも、決して事を荒立てる発言を聞いたことはないし、少々の負傷を負っていても練習に遅れてきたり、ジム隠れしたということも聞いたことがない。あらゆる意味においてプロ精神に富んだ選手であったことは誰も否定できない。

もっとも、これまで見てきたバルサの選手の中で、プロ精神にあふれた選手はもちろんサビオラが初めてではない。アモールやチャッピー、セラーデス、バケーロ、セルジ、ガッツ、コクー、いやいや、具体的に名をあげるまでもなく、ほんのわずかな選手をのぞいて、ほとんどがプロ精神に徹した選手だった。そのほとんどの選手がクラブを愛し(ていたのだろう)、そして同時にファンに親しまれた選手でもあった。だが、バルサにとって相応しい選手かどうか、それを決めることで高い年俸をもらっているスタッフテクニコもまた、これらの選手と同じようにプロ精神に富んだ人たち、と信じよう。彼らがこの選手は今のチームに必要なしとしたら、その選手のバルサ生命はそれまでなのだ。そしてまたそれを受け止めるのも、プロ選手としての宿命だ。これまでのライカーフットボールを見る限り、さらにサビオラの起用方法を見る限り、彼らにとって重要な選手ではないことは明らかとなる。

サビオラが置かれてきた立場の複雑さというか、スッキリしないところ、それはチーム内での彼の存在そのものに、常に政治的な臭いがまつわりついていたことだろう。ガスパー時代に超目玉選手として入団してきたこと、クラブ史上最も高額な移籍料を支払って獲得された選手であること、ガスパー政権時における常識外とも言える無謀な年俸契約を獲得した選手であること、そして新政権になってからの新たな契約見直し政策に応じなかったこと。これらのことがサビオラの立場を複雑にしてしまった。だが、それでも、ライカーバルサにとって彼が必要な選手かどうか、それを決定するのは、純粋にフットボール的な観点からと思いたい。そして彼らは、繰り返すことになるが、重要な選手としてはとらえていない。

1年目のライカー監督の首切りを救ってくれる活躍をした選手の1人でありながら、その後スタッフテクニコはサビオラを必要なし選手とした。それはを決めるのは、彼らの権利であり仕事であるから良しとしよう。そして、理想的には他のクラブへの完全移籍という方法で彼をクラブから去らせることだっただろう。だが、彼の高額な年俸がネックとなったのは誰もが知っていることであるが、そこらへんの障害物をどうにかするのがスポーツ・ディレクターだ。だが、その人物はチキ・ベギリスタインだったから、多くのことは望めなかった。ズルズルと3年たち、彼の契約が切れる年が来た。クラブ内やチーム内にいっさいの問題をおこさないプロ精神にあふれたサビオラは、同時に6年前に結んだ高額年俸の契約を全うすることに成功した。これも、当然ながら彼の権利として認めなければならない。

だが、認められないもの、例えば、オリンピックに参加したことで、練習日に遅れてきたことをもってサビオラを「プロ精神に欠けている」としたチキの発言。例えば、モナコにレンタルしたシーズン、翌年はバルサに戻すと個人的に約束したというラポルタの無責任さ。例えば、サビオラがハットトリックを決めた国王杯のアラベス戦後に、果たして契約更改時にも本当のプロ精神を見せてくれるか、と彼をおちょくったチキ。例えば、昨日、まだクラブからは何のオファーも来ていないことを持って不服気味に語ったサビオラ。そして例えば、それに応えるかのように、近いうちに彼にはオファーが出されるとしたチキ。ファン受けを狙うクラブ関係者、バルサからオファーが来ると来ないでは、移籍先での年俸に関わってくるサビオラ。こういう茶番劇は、サビオラにとっても、そして何よりもバルサというクラブにとっても値しない。

もうこういうゴタゴタした問題を忘れ、暗黒のガスパー時代、唯一の明るさを提供してくれたサビオラという選手の印象をそのまま残したい。獲得の噂がされているパラシオを押しのけてアルゼンチン代表試合スタメンに選ばれている彼は、彼を必要とするクラブで、彼の活躍に大いなる期待を寄せるチームで、そして年俸がどうであれ、プロ選手としての気持ちを満足させてくれるそのような環境のもとでプレーすべきだ。バルセロニスタにとっては、クラブ在籍中に活躍を見せてくれた大いなる感謝に値する選手として、そして、もし国王杯に優勝することにでもなれば、その第一の貢献者として讃えられる選手として、クラブ史の一ページに残る選手となれば良い。

スエルテ!サビオラ!

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5000万ユーロ
(07/03/27)

バルサ金庫番フェラン・ソリアーノのラジオインタビュー番組を拝聴。いくつか興味深いことを言っていたが、その中でも「フム、フム、なるほど〜」と思わせる一つのアイデア。
「レアル・マドリと我々の選手補強作戦のキャラクターの違いを説明してみよう。彼らはオーエンという選手を1千万ユーロ程度で買い取り、翌シーズンにはその倍近くの値段で売り払っている。これをもってオーエンの獲得は成功として彼らは評価している。確かに単純なビジネス的観点から見ればそう言えるかも知れない。だが、我々のアイデアは少々異なる。もし1千万ユーロで獲得した選手がいるとすれば、その値段に見合った活躍をして初めて獲得成功と考えている。つまり他のクラブから選手を買い取ると言うことは、我がチームで活躍してもらうためであって、ビジネス的に儲けるためではない。したがって、もしオーエンのような例が我がクラブに発生していれば、それは獲得失敗を意味する。なぜなら活躍することなしにクラブを離れていったわけだから。」

このアイデアを元にしてみると当然ながらバルサにも何人かの獲得失敗例が見られる。スーペル・マリオ、アルベルティーニ、マクシ・ロペス、バン・ボメル、エスケロ、そしてまだ結論はだせないものの、失敗例となる可能性もあるグジョンセンとトゥラン。マンチェスターUが1200万ユーロでグジョンセンを買い取ってくれようが、バルサにとっては獲得成功例とはならない。だが、それでも、期待通りの活躍を見せてくれた選手の多さが、この失敗例を目立たなくしている。ラポルタ政権が誕生してから4シーズン目に入り、これまで総額1億5000万ユーロという資金をもって、23人もの新しい顔がバルサのユニフォームに袖を通している。

この4年間の選手補強資金は1億5000万ユーロ。それでは来シーズンの支払い可能資金はいくらになるのか。
「我々は5000万ユーロを準備している。これはあくまでも基本的な資金額であり、もし放出選手から得られる移籍料が、例えば2500万ユーロだとしたら、それを足した7500万ユーロが選手獲得準備資金となり得る。」

5000万ユーロというのはなかなかの資金だ。これまでの最高額となったシーズンが2004−05。その時にはエトー、デコ、エドゥミルソン、ジュリー、ベレッティ、シルビーニョ、そしてマクシ・ロペスを獲得して7000万ユーロ使っている。そして、その翌年、つまり2005−06シーズンが一番経済的な補強となっている。エスケロ、バン・ボメル、この2人はゼロユーロだった。果たしてソリアーノの理論を持ってすると、タダで来た選手の評価はどうなるのだろうか。

さて、チキ・ベギリスタインは来シーズンの加入選手は4人程度としている。そして彼が言うように、バルサBから2人ほど上がってくる可能性があるとすると、それは同時に、6人ほど今の選手がいなくなることを意味する。高く売れる選手(ロナルディーニョ、エトー、デコ、メッシー)の放出などあり得ないと、キッパリとおっしゃっているのを信じるとして、サンブロッタをのぞいた4人のラテラル選手、つまりオラゲール、ベレッティ、ジオ、シルビーニョのうち少なくても1人、あるいは2人がクラブを離れることになるだろうし、2人の守備的ピボッテ、つまりモッタ、エドゥミルソンのどちらかもいなくなるだろう。サビオラとエスケロはすでにいないのと同じ扱いを受けている。

1人来て1人去り、2人来て2人去る、どんなにファンに親しまれた選手でも、いつかはクラブを去らなければならないのがこの世界の宿命。そしてソリアーノ理論とは別に、クラブを離れる選手には、新たに来てくれる選手を獲得するための経済的援助をしてもらうのが最高の別れ方だ。つまりいくらかの移籍料をクラブ金庫に納めてくれることが理想的。してみると、3年間にわたってついにサビオラを売ることができなかったチキの責任は大きい。そう、とてつもなく大きい。そして、シーズン終了後におこなわれる計算外選手放出作戦で、果たしてチキはどのくらいのビジネスができるか、期待しないで観察してみよう。

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ヘスス・オルモ
(07/03/25)

チキ・ベギリスタインが先日の長時間インタビューの中で、来シーズンからバルサAチームに上がってくる可能性があるだろう2人のカンテラ選手の名をあげている。
「ジョバニは間違いないところだろうが、オルモの昇進も非常に可能性が高い。」
バリエンテ、ボージャン、クロッサスの3人は“ペップ方式”、つまりグアルディオーラがクライフチームにしっかりと定着するまでとったスタイルとなるらしい。練習はAチームで、試合出場は基本的にBチームでおこない、必要に応じてAチームの試合に招集されることを言う。

ヘスス・オルモ、1985年1月24日バルセロナ生まれの22歳。決して派手な選手ではない。ラ・マシアから奇跡的現象のように最近誕生してきているメッシーやジョバニ、そしてボージャンのような、キラキラと光り輝く存在ではない。エレガンスさを感じさせるバリエンテとも異なり、どちらかというと泥臭いイメージのする選手。だが、試合中にはかなりの存在感を感じさせる選手でもある。ここぞというシーンでは容赦ない当たりを見せてくれる選手であり、いつも負傷を恐れない激しいプレーをしている。

1995年、10歳の時にラ・マシアにやって来た選手だから、バルサ在籍はもう12年間となるベテラン選手だ。各カテゴリーを一歩ずつ、確実に上がってきた選手であるから、突風のようにステップアップしていったジェラール・ピケやメッシーなどと、フベニル時代には一緒にプレーしている。その後、1人はドーバー海峡を渡り、もう1人はミニエスタディの隣のでかいスタディアムでプレーするようになった。その姿を見ながら、それでも確実にカテゴリを上げてきたヘスス・オルモ。その彼にとって一生忘れない試合となったのが昨シーズンのビルバオ戦だ。2006年5月20日、リーグ最終戦となったあのビルバオ戦。

このシーズン、彼はバルサBで12試合しか出場していない。セントラルのポジションには、ロドリとバリエンテが常に優先されて起用されていた。詰まるところ、彼にはあまり出番のないシーズンと言えた。そして、すでにリーグ優勝が決定していた最終戦に、フラン・ライカー監督はバルサB選手の招集を試みる。セントラルにはバリエンテを呼ぶつもりだった。だが、キケ・コスタス監督のたっての頼みで、バリエンテの変わりにオルモが招集されることになる。大事な試合を抱えているバルサBには、どうしてもバリエンテが必要とキケ・コスタス監督は考えていたからだ。たぶん、ライカーは12試合しか出場していないオルモのことは、ほとんど知らなかっただろう。だが、このビルバオ戦での思わぬ活躍をきっかけとして、オルモの名前がライカーの脳裏に焼き付いたのは間違いない。

今シーズンの折り返し地点を過ぎたあたりから、オルモはバルサBチーム絶対の左ラテラル選手として起用されている。それまではバリエンテとコンビを組んでの右セントラルというポジションで起用されることがほとんどであり、必要に応じて右ラテラルとしてもプレーしてきていた。思い返せば、バルサCではセントロカンピスタ、それもほとんど4番のピボッテというポジションが定例であった彼だ。非常に器用な選手だと言える。だが、それでも、なにゆえ左ラテラル選手として起用されるようになったのか、その疑問をキケ・コスタス監督が解いてくれる。
「チーム事情によることろが一番の理由だが、上からの要請でもあるんだ。右ラテラルやセントラルとしては、すでに彼のプレースタイルはわかっているが、果たして左に起用した場合どうなるのか、それをライカースタッフが知りたがっていた。」

来シーズンからライカーバルサの一員になる可能性(そう、今のところ、あくまでも可能性にしか過ぎない)があることを知らされたオルモは、次のように語っている。
「もしそれが実現すればこれほど嬉しいことはない。そしてそのことを誰よりも喜んでくれるのは母親だと思う。10歳の時から何年間も自宅からラ・マシアまで、地下鉄に乗って一緒に来てくれた母親が一番喜んでくれるだろうと思う。」
スエルテ、オルモ!


来シーズンに向けて!
(07/03/24)

前日まで練習に参加してきていたサビオラやグディもついに代表組に合同し、23日金曜日の練習は数少ない選手のみでおこなわれている。今週末は練習がお休みとなっていることもあり、この休み前の最後の練習にはチキ・ベギリスタインも珍しく参加し、厳しい表情で練習風景を見つめていた。そして、この日の練習風景では来シーズンからの新たなライカー構想と思われる、いくつかの変化が見られた。

「今シーズンが終わってから、来シーズンからの身の振り方を考えようと思う。」
そう語るジョルケラは、来シーズンはいないであろうエスケロのユニフォームを着こんで参加。そのエスケロは是が非でもバルサに残りたいため、ひっそりとオラゲール変身している。

「たった1回のミスで批判されるようなポルテロというポジションはもうやめだ!」
として、なぜだかトゥランと名を変えてデランテロ選手を目指すというバルデス。だが、普通のユニフォームがまったく似合わないのが、暗い将来を暗示しているようだ。

そして1人もいなくなってしまったポルテロの位置には、今のポジションでは放出という可能性もあるジュリーとベレッティが立候補。いちおう、ジュリーの方がスタメン候補ポルテロとなりそうだが、そうなると世界一チビポルテロが誕生することになる。

バルサの将来はスペクタクルだ。


リバプール、チェルシー
(07/03/23)

エドゥアルド・マシア、彼はリバプールのチキ・ベギリスタイン、つまりスポーツ・ディレクターという職に就いているスペイン人だ。ベニテスがバレンシアで監督をしていた時代から常に一緒の人物であり、ベニテスに少し遅れてリバプール入りしている。つまりベニテス監督の考えていることは、手に取るようにわかるディレクターであり、そして同時に、世界各国に散らばる優秀な若手選手にも大いなる知識を持っている人物でもある。なぜなら、彼はスカウト部門のボスも兼ねているからだ。

「私の下に15人のスカウト専門職の人々が各国で働いている。具体的に言えば、スペインとイタリアにそれぞれ2人ずつ、フランスやドイツ、ポルトガル、ポーランドなど各国に1人ずつスカウトを常時置いている。そして彼ら一人一人が独自の助手を抱えているが、その数を足すと総計70人以上が私の下で働いてくれていることになる。」
言い方を変えれば、イングランド内には1人もスカウトがいないことになる。それはエドゥアルドの方針であり、もちろんベニテスの方針でもある。彼らが探す若手選手はすべて外国でプレーしている選手なのだ。

「各国のすべての優秀な若者を把握しているとは言わないが、それに近い資料を持っているということができると思う。例えば、今持っているこのノートパソコンの中には1万人前後の若手選手の情報が入力されている。もちろんバルサカンテラ選手に関する情報は、他のどのクラブよりも多量に持っていると思う。週明けにはそれぞれのカテゴリーでの試合をチェックしたスカウトから情報が送られてくるし、バルサAチームの情報や、カンテラの動きなどの情報が毎日送られてきている。」
そう語るエドゥアルドはクラブ練習場内にあるオフィスに朝の9時きっかりにやってきて、早くても19時まではオフィスを離れることはないと言う。そして週に2回、あるいは3回はドーバー海峡を渡ることになると言う。彼に送られてきた情報の中で、ゴシック文字で書かれている、これはという選手を直接見るために旅に出る。ほとんどが、17歳から19歳までの選手が中心となると言う。デポルからひきぬいたアルベロア(メッシーをマークした選手)や、マラガのフベニル選手フランシスなどはこうしてリバプール入団となっている。
「ボージャンの獲得は狙っていない。なぜなら私のノートパソコンの中に入っている情報によれば、彼は絶対バルサを離れることはないだろうということだ。それはそれで素晴らしいことだと思う。」

ボージャンの獲得を無駄な行動に移したのはチェルシーだ。今シーズンのはじめにボージャン親に接触している。だが帰ってきた答えはつれないものだった。
「うちの息子はバルサから動かない。」
このボージャン獲得失敗が動機となったのではないだろうが、9月になるとチェルシーのスペイン担当スカウトが変わっている。新たに任命されたのはスペイン人のフアン・クルス・ソル。チェルシーのスポーツ・ディレクターであるフラン・アルネセン(ちなみに、このアルネセンの娘とテンカテの娘はバルセロナで一緒に住んでいる)と、かつて一緒にバレンシアでプレーしていた仲間であったことが彼の就任に役だったのかも知れない。

「プレミアでのセスクの活躍以来、イングランドの多くのクラブがスペインのカンテラ組織に注目している。特にバルサ、エスパニョール、セビージャというクラブの情報を、スペイン人のスカウトを雇って集めている傾向にあるようだ。そのような傾向が私のチェルシー入団のきっかけとなったのかも知れない。」
彼の行動範囲はスペイン全国となるが、その中でもバルセロナが中心となる。すでにエスパニョールのカンテラ組織に在籍していたセルヒオ・テヘラ獲得は前回のこのコーナーで触れているが、現在彼が注目しているのはバルサのカデッテAカテゴリーだと言う。
「このチームには素晴らしい選手がいるんだ。デランテロのガイ・アシュリン、セントロカンピスタのティアゴ・アルカンタラやデニス・クロール、そしてデフェンサのカルロス・テロン。みんな16歳以下だから、両親が引っ越しを決意するだけでクラブを変えられる年齢の選手だ。」

プロ選手としての将来を夢見る多くの少年フットボーラーとその両親たち。彼らにその道を開かせる可能性を秘めた美味しいオファーが来たとしたら、両手を広げてそれを受け入れたとしても何の不思議もない。したがって、10代の半ばからすでに多くのオファーがありながらもそれを拒否し、バルサでの成功のみを願ってクラブに残ったメッシーやボージャンという少年たちは希少価値的な存在と言えるかも知れない。

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セスク現象
(07/03/22)

「彼の前にも素材的には同じような選手がいたし、今のカンテラチームにも彼のような選手はいる。そして将来にも間違いなく出てくるだろう。バルサのインフェリオールカテゴリーというのはそういうところだ。つまりセントロカンピスタに限っていえば、才能ある選手の宝庫と言っても良い。」
アーセナルのスペイン国内スカウト責任者フランシス・カジガオがこう語る。かつてバルサカンテラ選手としてプレーしていたセスク・ファブレガスに目をつけ、そして最近ではフラン・メリダに注目し、決して“紳士的”な方法ではなかったとはいえ、2人ともアーセナルに入団させることに成功した人物だ。

「素材があることが基本となるのはもちろんだが、イングランドのフットボールにとけ込むためのプレースタイルを獲得することが、次の大事なステップの一つとなる。よりシンプルなボールタッチ、ゴール前へのプレー参加、そして直線的なパス、この3つがアーセナルに入団してから要求され、そして執拗に教えられてきたことだ。守備的なピボッテというよりは、創造性豊かでゴールの起点となるピボッテ、それがセスクに望まれたことで、そして彼はそれをじゅうぶんにマスターすることができた。守備的なピボッテとしてのビエイラとは違うスタイルの選手を探していたベンゲルの要望に、しっかりとマッチした選手となった。」
こう説明するフランシスのピボッテスタイルは、かつてのクライフ監督スタート時代のバルサの発想とダブることになる。クライフは創造的なプレースタイルを持った4番の選手を戦いの発想の一つとして、まずミージャを、そして次にアモールをカンテラ組織からあげて起用している。

100試合以上の出場数を誇る選手に成長したセスクはいまだに退場という経験はない。だが、それでもスペインに比べハードなプレーが多いプレミアで“おとなしい選手”として堪え忍んでいるわけでもない。アストンビラの超ベテランにして気性の激しいテディー・シェリンガムにパンチを食らわせたり、ブラックバーンの監督に詰め寄ってもめ事を起こしたり、そしてチェルシーのランパーと取っ組み合いしたり、なかなかの強烈なキャラクターを持った選手だ。
「それがイングランドスタイルというものなんだ。ファンの人々はそういうキャラクターを持った選手を誇りに思っている。ここでは少々のファールは許されるし、強烈なタックルに耐えられる選手でないといけない。セスクはそういう部門でも成功している選手と言える。そして彼のアーセナルにおける活躍以来、スペインの若手でもプレミアでじゅうぶん活躍できるのではないか、そういう思いが各クラブの首脳陣間で誕生してきたんだ。」
そう語るのはエスパニョールのカンテラ組織に在籍していたセルヒオ・テヘラ選手の代理人であり、彼をチェルシーに入団させることに成功した人物の一人でもあるドミンゴ・フェルナンデス。そう、スペインのカンテラ選手獲得を狙っているのはアーセナルだけではない。

セスクが初めてプレミアリーグでプレーしたスペイン人選手ではない。だが、彼の活躍が確実にイングランド各クラブ首脳陣の目を開かせることになった。
「セスクがこの国でプレーする以前は、スペイン人選手に対しての評価はそれほど高いものではなかった。素材とか素質とかがないという意味ではなく、果たしてこのプレミアでのプレースタイルにマッチすることができるかどうか、その答えがわからなかったからだ。だが、彼のように素晴らしいテクニックだけではなく、強烈なキャラクターを持っている選手がいるということが認識されてから、だいぶ評価が変わってきた。19歳という若さで、必要とあれば負傷を恐れることなくボール争いする根性を持っていることもわかった。もちろんイングランドのプレースタイルも昔のようにロングボールだけではなくなってきていることも、セスクの成功した一つの要因であるし、クラブ首脳陣が彼のような若手に興味を持ち始めた原因でもあるだろう。」
そう語るアーセナルのフランシスは、二部チームでプレーするフラン・メリダに大いなる期待を抱いている。

「フランは左利きのセスクと言える。同じように強烈なキャラクターを持ち、テクニック的にも似かよっているし、創造的なピボッテとしてもじゅうぶん活躍できる素材を持っている。そして、セスクより優れているところは、強烈なシュート力だろう。ロングシュートの才能でいえば、セスクを大きく超えている。」
セスクは同じポジションでプレーするビエイラとかエドゥという選手の負傷が元で、一部チームに登場するチャンスを得、それを確実に生かして成功した選手だ。だが、フランにはその“幸運’はまだやって来ていない。

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スポーツ株式会社
(07/03/21)

フットボールの世界にはとんでもないクラブが存在する。
・2003−04 1億3200万ユーロ
・2004−05 2億1100万ユーロ
・2005−06 1億1900万ユーロ
これだけの半端じゃない大赤字を毎シーズンだしながらも、それでも経営を維持していくことができるチェルシーというクラブがある。わずか3年間で4億6100万ユーロの赤字経営を作りだしながらも、億万長者アブラモビッチが舵を取るチェルシー。この数字を見ると、我らがガスパー会長が3年間で作り上げた赤字など可愛いものに思えてくる。このアブラモビッチ・チェルシーは超特別な例と言って良いが、それでもイングランドには大金持ちの個人、あるいは企業を含めて7つの外国資本が介入してきてクラブを買い取っている。多少の赤字などクソ食らえというファイトあふれるモチベーションで、伝統豊かなビッグクラブを経営している。

マンチェスターU、チェルシー、リバプール、アーセナルというプレミアリーグをリードする4つのクラブのうち、いまだにイングランド資本によって経営されているクラブはアーセナルだけだ。マンチェスターU、リバプールはアメリカ資本によって買収されているし、御存知チェルシーはロシア石油資本が買い上げている。そしてアーセナルにしても、外国資本の手に落ちるのは時間の問題だとも言われている。地中海のあちら側カルッチオのクラブをみても、ユベントス、ミラン、インテルは、個人・企業を問わず想像を絶する大金持ちによって運営されている。

スペインのクラブも他の国のクラブと同じように、個人・企業を問わず、それなりの金持ちによって所有されている。ソシオ制度ではなく、いわゆる“スポーツ株式会社”システムがスペインで誕生したのは、記憶に間違いがなければ1990年代に入ってからだ。クラブ経営が順調に進められていないクラブを対象として誕生したこのシステムは、毎年赤字をだして二進も三進もいかないクラブを、“スポーツ株式会社”とすることで救済するのが目的だと思える。実際のところは、詳細を調べたこともないのでよく知らない。だが、いずれにしてもほとんどのクラブがこのシステムを採用することになり、いまだにソシオ制度を残しているのは、バルサ、レアル・マドリ、ビルバオ、そしてオサスナの4つのクラブだけとなっている。

そして、15万人の“社長”、つまり15万人のソシオによって経営されているクラブであるバルサは、こういうとんでもない資本力を持つクラブと戦っていかなければならない。もちろんレアル・マドリとて例外とはならない。そのレアル・マドリがソシオ制度を廃止し、“スポーツ株式会社”と変貌するのでは、という噂は、もう何年も前からメディアの片隅に登場してきている。フロレンティーノ元会長の“史上空前の政治コネ作戦”で得た、練習場売却資金もすでに底をついただけではなく、多くの借財を再び抱えるようになってしまった、とするマドリメディアも登場している。テレビ放映権収入、ユニ広告収入というものには限度があるから、クラブが生き延びる道は“スポーツ株式会社”しかない可能性もあるようだ。

話をバルサに戻そう。

資本力においては、とうてい外国の“スポーツ株式会社”と対等に勝負できないソシオ制度のクラブが生き延びる道は、新たなマーケティング戦略の開拓と、自ら選手を育てていく健康なカンテラ政策となる。したがって、バルサがアジア方面でのマーケティングの開拓推進をめざし、バルサマークを販売するために11時間飛行巡業に精を出さなければならないのは仕方のないことかも知れない。何と言っても親善試合一試合で300万ユーロ前後も寄付してくれる組織があるのだ。そしてカンテラ組織の充実化。バルデス、プジョー、イニエスタ、チャビ、メッシー、これらの選手を外部から買い取ることになったら、いったいいくらの資金が必要となるのか、それは想像もつかないユーロ額となる。ロナルディーニョ、デコ、エトーというような素晴らしい選手がバルサに来てくれたことを感謝すると同時に、チャンピオンズの決勝戦に出場した半分の選手が自らのカンテラ組織から誕生してきた若者であることは、バルセロニスタにとって大いなる誇りとなる。

だがカンテラ組織の充実化は、ソシオ制度のクラブだけの課題ではない。モンチ・スポーツ・ディレクター(「こちらカピタン」07/01/19記事参照)が活躍するセビージャや、ここ最近のビジャレアルなどにしても、多くのエネルギーをこの観点に注いでいる。そしてそれに目をつけ始めたイングランドのクラブ。次回は、いくつかのイングランドクラブが狙うスペインカンテラ選手獲得作戦について。

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復活するか、しないか?
(07/03/19)

「残り少なくなったリーガの戦いの中でも、レクレ戦は重要な試合となるだろう。4か月もアウエーでの試合に勝利していないこともあるし、そろそろこの悪い流れを止めなければならない。個人的にも調子は上がり気味だし、どうしても勝利したい試合だ。だが、この重要な試合を迎えるにあたって、クラブを包む雰囲気が良いかと聞かれれば、ノーと答えるしかない。残念なことだが、それが現実だ。例えば、個人的な問題、あるいは私生活の問題、そういう問題が必要以上に外部で語られているのは残念なことだ。選手間における問題や、フットボールを離れた私的な世界のことなどが、面白おかしくメディアを騒がしているというのは、選手にとってもクラブにとっても、決して良いことじゃない。今あるすべての問題は、シーズンが終了するまでおあずけとしなければならないと思う。クラブは個人の問題などを超えたところに存在するんだ。決してその逆ではないことを、すべての選手たちが認識すべきだと思う。」
レクレ戦前日、メディアを前にしてデコがこのように語っている。

フアンホ・カスティージョ、ラポルタ政権誕生と共に“選手相談役”として多くの選手に親しまれてきたこの人が、突然のように解雇されたのは先週のことだ。サンドロ・ルセーが個人的に連れてきた人物であり、特にブラジル系選手たちにとっては、仕事仲間というよりは、親友関係と言っていい人だったという。その彼が突然解雇されてしまった。今のところクラブからの正式発表はなされていない。だが、理由がどうであれ、ロナルディーニョとデコにとってはショックな事件だったようだ。“今シーズン終了後の何人かのブラジル選手の放出”クラブ方針として、カスティージョの解雇を深読みするメディアも登場したし、エトーの個人的な相談役であるエチェベリア(ラポルタの親戚)の仕業だとするメディアもあった。それに加えて、マルケスやデコ、そしてロナルディーニョなどの私生活問題もいろいろと話題にされた週でもあった。デコはそれらのことを言っている。

それでも、難しい状況で迎えた大事な試合を無事に勝利することができた。だが、クラブが抱える問題は後を絶たない。ロナルディーニョのコパ・アメリカ出場が表面化してしまったことだ。

今年の6月25日から7月15日まで、ベネスエラで開催されるコパ・アメリカの大会。マルケスやメッシーも招集されることになるだろうから、もしバルサが国王杯の決勝戦(6月23日)に進んだとしても彼らは出場できない。ひょっとしたら、リーグ最終戦も出場できないかも知れない。だが、それはいい、問題は来シーズンのことだ。7月23日から29日まで、スコットランドでプレステージスタートはすでに公表されている。4週間の夏休みが保証されている選手たちだから、マルケス、メッシー、ロナルディーニョの3人は当然ながら、このスコットランドプレステージには間に合わない。だが、少なくてもロナルディーニョは、8月の最初におこなわれるであろうアジアツアーに参加してくることを強制されるだろう。北京、東京、香港でおこなわれる親善試合には、もちろんロナルディーニョの出場が契約書内に義務づけられているからだ。そして予想どおりそうなるとすると、来シーズンのロナルディーニョに大きな期待はかけられない。今シーズンと同じようなロナルディーニョとなる可能性は非常に大だ。

ムンディアル終了したあと、頭の中を空っぽにする間もほとんどなく、バルサのプレステージに合流してきた。そしてプレステージでは練習する間もなく、いきなりの親善試合の連続出場。彼は少なくとも45分間プレーすることを、契約で義務づけれれていた唯一の選手だ。そしてシーズンが始まってからの彼のことは誰もが知っている。シーズンごとにクラック度が下降気味であることは誰も否定できない。

一つの提案。ロナルディーニョには早めの夏休みをあげてしまおう。コパ・アメリカ合宿まで頭の中を空っぽにしてもらい、来シーズンに備えてもらうため、明日から夏休みをあげてしまおう。エトー、メッシーが戻ってきた今、残りのリーグの試合は彼がいなくても問題ない。そして、この提案が不可能だというなら、アジア金儲けツアーに参加した後、1か月以上の夏休みをあげてしまおう。戻ってくるのは10月ぐらいでいい。その変わり“月曜ジム男”の看板を下ろしてもらい、毎日の練習に無理矢理参加させてしまおう。

放出目玉候補選手とするよりは、彼の復活を試みることの方がよろしい。ロナルディーニョ復活に向けた何らかの対策を練らないといけない。
「クラブは個人の問題などを超えたところに存在する。」
デコの語るところは100%正しいとして、それでも、一人一人の選手の問題解決なしに、クラブはうまく機能していかないことも確かだろう。リーグ優勝を飾り、“エトー問題”をどうにかしたあと、次はロナルディーニョ問題をどうにか解決せねば。


真夜中のパーティー
(07/03/17)

2002年1月23日チキート“今日の一面”より抜粋

夕方に放たれたマドリッドメディアからの爆弾情報。それはマドリッド州テレビ局・テレマドリが伝えた「バルサ選手試合前夜のパーティー」というスキャンダラスなニュース爆弾だった。

21時から始まったテレマドリのスポーツニュース。
「ラージョ戦前日の土曜日深夜、バルサの選手5人でホテルの一部屋をキープし、女性同伴で深夜のパーティーを開いていた。その5人のうち、2人がオランダ人選手、3人がスペイン人選手であることがわかっている。翌日の試合にも出場したオランダの選手は、この部屋の使用料80万ペセタを彼のクレジットカードで支払いしたことも確認されている」
このニュースはその後、カタルーニャの地方局であるTV3でも、全国放送のTV1でも流され始めた。だがいずれの局も具体的な証拠となるものはいっさい提示することなく、今のところ噂の段階をでるものではない。例えばEFE通信なども、ニュース源はテレマドリとしてこのニュースを伝えている。

だが噂の段階をでないとしても、爆弾ニュースであることには変わりはない。昨日の深夜のラジオ・スポーツ番組では各局揃って「特別番組」を組んでいたし、バルサ首脳陣も深夜の「臨時会合」をバルサオフィスで開いていた。その会合が終わったのは深夜の12時30分だが、解散後は誰もコメントを残さないで帰宅していった。

翌日のラージョ戦を控え、バルサの選手が宿泊していたホテルでおこなわれたというこのパーティー。だが選手に同行していたクラブ副会長のアンヘル・フェルナンデスは次のように語っている。
「そんなバカな。パーティーが開かれたという8階のフロアーは、私たちクラブ首脳陣が宿泊していた階ではないか。そんな深夜のパーティーが開かれていたら私たちにはすぐわかるはずだ。」

いずれにしてもバルサ首脳陣としては、このニュースに関しての事実経過を追求することになる。もしこのニュースが真実であれば、その選手たちに対し何らかの処分を決める事になるだろうし、真実でないのならばテレマドリに対する告訴も考えられる。

5人の選手たちは“身に覚えのないことであり名誉棄損”としてすぐに裁判沙汰としていた。そしてそれから5年たち、一審(被告有罪、控訴)、二審(被告有罪、控訴)を経て、最終審での判決がつい先日言い渡された。
「テレマドリは各選手1人1人に対し10万ユーロの謝罪金を支払うべし!」
つまりスケベ男たちと言いがかりをつけられたクルービー、コクー、ジェラール、ガブリ、そしてダニの5人はそれぞれ10万ユーロ(彼らは当時、裁判勝利で手に入る謝罪金は施設に寄付すると語っていたから、たぶんそうなるのだろう)と、名誉挽回を勝ち取ったことになる。この手のスキャンダルは“発覚“したときには新聞の一面を飾るくせに、ことの終わりを見るときには三行記事となるのは、この事件にしても同じだった。そう言えば、去年の末にフランスのル・モンド紙がすっぱ抜いたバルサ、マドリ、バレンシア、ベティスのドーピング疑惑や、そのスキャンダルニュースに“裁判沙汰にしてやる!”と怒り狂っていた4つのクラブの対応はどうなったのだろう?

さて、エトー爆弾が炸裂してから1週間毎日練習に出てきて多くの人々を驚かせたロナルディーニョだが、今では普通の彼に戻っているようだ。例えば、アンフィールドでのリバプール戦がおこなわれた翌日の7日はジム、8日は突然負傷のため自宅休養、クラシコの前日となった9日の非公開合同練習にはどうやら顔をだしたようだが、試合翌日の11日はジム、12日は全員休養日(プジョー、バルデスのみ自主練習)、13日はジム、14日もジム、そして15日木曜日になってようやく合同練習に参加。だから、だいじょうぶ、ロナルディーニョはどんなに金を積まれてもミランには行かない。

マルケス、モッタ、オラゲール、エスケーロがバルセロナ居残り組となったウエルバ戦。0−2くらいでいかがなものか。

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ポルティージョ
(07/03/16)

今シーズンからナスティックでプレーしているポルティージョという選手がいる。今から6、7年前ぐらいだったか、マドリインフェリオールカテゴリーで活躍している彼の噂は、バルセロナにまで伝わってきていた。現在のボージャンに多くの期待を抱くバルセロニスタのように、たぶんマドリディスタも彼に多くの期待を抱いていただろう。ポルティージョの凄さは、そのゴール数を見てみると納得できるというものだ。

1982年3月30日生まれのポルティージョは11歳の時、つまり1993年にマドリカンテラ組織に入団している。彼の存在を知ったのはすでにマドリBでプレーしている時期だったが、何でもカンテラチームで約800ゴールを決めている選手ということだった。
「うらやましいのう!」
我らがバルサカンテラからは決して誕生してこなかった期待のデランテロが、再びマドリカンテラから登場してこようとしていた。

確かチャンピオンズのオポルト戦だったと思うが、彼がマドリAチームにデビューした試合で、30mぐらいのゴラッソを決めたのをテレビで見た覚えがある。素晴らしい選手、そういう記憶がある。だが、残念ながら時期が悪かった。モリエンテス、ラウルというデランテロがすでにおり、しかもロナルドがインテルからやって来てしまう。おまけにフロレンティーノ会長によって、“ギャラクシー作戦’が展開されていたレアル・マドリだ。カンテラ出身の彼に多くのチャンスは与えられないまま、気がついてみればいつの間にかレアル・マドリから姿を消していた。フィオレンティーナ、ブルッハスというクラブに年ごとにレンタルされた彼は、今シーズンのプレステージの段階では、レアル・マドリに戻ってきていた。だが、名将カペロ監督の“計算外選手”という方針により、一部に上がってきたナスティックに完全移籍というスタイルで売られている。

その彼がレアル・マドリ戦には出場できない。レンタルというスタイルの移籍ではなく、完全に“売られた”状態の完全移籍というスタイルであるにもかかわらず、レアル・マドリ戦には出場できない。それが、マドリとナスティックの間で交わされた契約だからだ。

他のクラブにレンタルされた選手から、多くの“打撃”をマドリが喰らったのは記憶に新しい。例えば、サムエル・エトー。マジョルカと半分ずつの権利を分け合っていた彼から、ベルナベウでの試合で決定的なゴールを決められたのはそれほど昔の話でもない。例えば、ペドロ・ムニティス。サンタンデールへとレンタルされていた彼から、試合を決めるゴールを入れられたのもそれほど昔のことでもない。そして、例えば、フェルナンド・モリエンテス。これはドデカイ打撃だった。モナコにレンタルされていた彼のゴールで、チャンピオンズの戦いからはじき飛ばされたのはまるで昨日のことのようだ。

今シーズンから、天下のレアル・マドリはキッパリとした方針をとっている。オサスナにレンタルしたソルダード、セルタにレンタルした赤紙男パブロ・ガルシア、サラゴサにレンタルしたボクサー、カルロス・ディオゴ、サンタンデールにレンタルしたハビエル・バルボアなどの貸し出し中選手のレアル・マドリ戦出場を禁止している。だが、100%の禁止ではない。もし出場したいのなら20万ユーロを支払うことが条件となっている。もちろん、どのクラブもこんな大金を支払えるわけがない。したがってレンタル中の選手はレアル・マドリ戦にはほぼ出場できない仕組みとなっている。

20世紀の最優秀クラブとしては情けない話であり、プライドもフェアープレー精神も見られない風景だが、まあ、ここまでは許すとしよう。所詮、落ち目のクラブなのだし、レンタル選手の半分ぐらいの年俸はいまだにレアル・マドリが支払っている可能性もあるだろうから、レンタル選手にかんしては大目に見てあげよう。だが、明らかにおかしいのは、完全移籍して去っていった選手にまで、同じような項目を入れて契約書にサインさせていることだ。At.マドリに移籍していったカンテラ育ちのフラードは地元カルデロンではマドリデルビーに出場することができても、ベルナベウでは出場できない契約となっている。そしてポルティージョ、彼の場合は地元、アウエーにかかわらずレアル・マドリ戦には100%出場できない。彼の場合は20万ユーロを支払っても出場できない。

こんなことって許されます?


ライカー・インタビュー
(07/03/14)

今週は多くのメディアが、フラン・ライカー監督へのインタビューを試みている。その中でカタルーニャ州の地方紙“アブイ”がおこなったインタビューが一番興味を引く内容だった。長文となるが、できる限り全容を翻訳してみた。
http://www.avui.cat/avui/diari/07/mar/12/349507.htm

結果的にメッシーがバルサを救ったと言って良いのか?

引き分けという結果は我々が望んだものではないとはいえ、状況を考えれば、つまり10人対11人の戦いとなってしまったことを考えれば、負けないということは重要なことだったと言える。メッシーのゴールは試合を救っただけではなく、メンタル面でも我々を救ってくれたと言える。いずれにしても最後まであきらめなかったすべての選手を褒めてあげたいと思う。

両チームとも組織的にまとまっていないどころか、無秩序と言って良いほど戦術そのものがお粗末だった、それが今回のクラシコから得た印象ですが・・・。ライカーバルサは魅力的な戦いを展開することで知られていましたが、同時に攻守にわたってしっかりとバランスがとれていることが、成功の一因となっていたと思います。それが3−4−3というシステムになって、バランスを失ったような印象を受けましたが?

今シーズンの我々の最大の問題はエトーとメッシーという、前線で基本になる選手を欠いて長い間戦ってこなければならなかったことにある。4−3−3というシステムで、最も基本となる相手デフェンサにかけるプレッシャーを抜きにして、我々は長いシーズンを戦うことをを義務づけられてしまった。その結果、昨シーズンよりもスムーズにボールが走らないばかりか、選手たちの動きそのものも独創的なものではなく俗っぽいものというか、つまり相手選手に簡単に見破られてしまうような風景が何回も見られるようになる。試合展開は相手チームが望むように、リズム的に遅いものとなり、我々にしても相手スペースをうまく見つけられないという状況が続くことになる。しかも、昨シーズン以上にこのシステム対策を研究しているクラブは増えているのは間違いない。そこで、ハンディー戦となっていた国王杯のサラゴサとの戦いで3−4−3という、このチームにとっては新しい戦術を試してみた。システムの変化は戦術の変化という以上に、新しいものに挑戦することで、再び選手たちにエネルギーが戻ってくるのではという期待もあった。

でも、もうすでにエトーもメッシーも100%の状態でないとはいえ戻ってきている。ということは、4−3−3システムに戻るということか?

そう、彼らのフィジカル面の問題が解決してくれば、我々はこれまでどおりのシステムに戻るつもりだ。我々の原点とも言って良い、相手デフェンサに絶え間ないプレッシャーをかけ、常に相手陣内での戦いに挑む、そういうフットボールに戻るだろう。我々のデランテロたちが彼らの仕事をすれば、そのエネルギーはセントロカンピスタに影響を与え、そしてデフェンサにパワーを与える。我々のようなスタイルのチームの基本となるのは、デランテロたちがフィジカル的にもメンタル的にも常に強靱であることだ。

残り12試合となりましたが、その間に昨シーズンのような魅力的なバルサに戻れると思いますか?

そうしたいと思っているし、それは可能なことだとも信じている。だがそのためには、グランドの中にいるすべての選手の高いモチベーションとフィジカル面の強さが必要とされるのは当然のことだ。今の我々に欠けているのはチーム総体として相手にプレッシャーをかけること、そして相手陣内でボール支配をすること。この二つが我々の武器であるのだから、それを取り戻すことが必要だ。

バルサは現在リーグの首位にたっていますが、そのわりにはアウエーでの試合に勝利していない。もうかれこれ3か月はアウエーでの勝利がない。エトーとメッシーの復帰がそのアウエーでの試合の勝利にカギとなると思っているか?

基本的にはそうだと思っているが、それだからと言って彼らにプレッシャーをかけようとは思わない。長期の負傷から戻ってきた選手たちだけに時間が必要だ。

エトー、メッシーの復帰がカギを握っていると言いますが、今シーズンは彼ら以外にも、負傷さえしていないものの不調な選手が何人かいると思いますが?

選手として、成功をおさめる前と後では、モチベーションの違いがでてくるのはしかたがない。なぜなら彼らもまた人間だから、色々なタイトルを獲得したり個人的な賞を獲得したりすると、必ずとは言わないまでも、うまくいかない時期がやって来ることがある。それを回避するために、チームが一つとなって毎日の練習に汗を流さなければならないが、プレステージの段階から理想的とは言えない状況でスタートしてしまった。そして、シーズンが進んでいくに従い、チーム内に“妥協”のような精神状態が生まれてくる。例えば、先制点を獲得してから、さらに次のゴールを狙いにいかなければならないにもかかわらず、こんなもんで良いだろう、そんな気持ちを持ってしまう。もちろんこれは誤りであることは誰もがわかっていること。だが、4年も一緒にプレーして成功をおさめているチームには、こういうオートマチックな雰囲気が生まれてしまうのはよくあることなんだ。フィジカル面とメンタル面の調整というのは非常に難しい作業だ。

エトーのロナルディーニョ批判、グジョンセンのチーム批判、エドゥミルソンの仲間批判、そして今またモッタ問題。昨シーズンに比べて選手間に多くの問題があるように見えるが?

繰り返すことになるが、4年間も一緒にやって来ればこういう問題は避けられないことだと思っている。成功をおさめた後には、何らかの代償が訪れるのはどの世界でも同じこと。例えば3年前だったら22人の選手が一つとなって、お互いを助けようとする風景が見られたのに、今シーズンは“すべて”とは言えないところも確かにある。だが、それは自然なことだ。多くの批判や問題がありながらも、選手間のまとまりは満足できるものと理解している。

と言うことは、こういう問題が生じることは予想していたということか?

予想していたというと嘘になる。それでもこういう問題が起きる可能性はあるだろうとは思っていた。それは自分の選手としての長い経験や監督としての経験からみて、どこのクラブでも存在してきたことだからだ。しかも、バルサというクラブは特殊なクラブであり、外部からのプレッシャーは想像以上のものがある。そういう意味では、選手たちはしっかりとプレッシャーに耐えて頑張っていると褒めてあげたいくらいだ。4年間でこれくらいしか問題がないというのは素晴らしいことだとさえ思っている。

それでも来シーズンのバルサには、エトーとロナルディーニョのどちらかがいなくなると疑っているファンが多くいるようだが?

個人的な予想としては、2人ともバルサでプレーしていくと思っている。もちろん監督としては何の問題もない。

いずれにしても、今シーズンはチームをまとめるのに監督として苦労しているように外部からは見えるが?

そんなことはない。バルサの選手がすべて“親友”となる必要はないし、それは不可能なことでもある。これまでの自分の経験でもそんなチームは見たことがないし、キャラクターの強い22人前後の選手によって一つのチームは構成されているのだから、選手間に何らかの意見の不一致や問題が生じても不思議なことではないだろう。むしろ非常に自然なことだと言っていいと思う。だが、もちろんチーム内に打撃を与えるような問題が生じたときには、それなりの対応策を練らなければいけないのも当然のことだ。そして幸運にも、我々の選手たちは彼らのなかで問題を解決していく健康的な発想がある。

あなたとチキの間で、来シーズンからの構想に関してすでに検討しているのか?

チキとは2日に1回は話し合っている。それは現在のチームが抱えている問題に関してであったり、来シーズン以降のプランについてとか、検討することは山のようにある。

外部から見た限り、このチームは下降線をたどっているようにうつるが、多くのことを変えていかなければならないと思っているか?

シーズンごとに変化は常に必要なものだ。半分以上の選手を変えてみたり、監督を変えてみたり、あるいは必要な部分だけの補強で済ませる場合もある。私とチキが話している内容は、最後のケースだ。なぜならチームのベースとなる部分はまったく問題ないと思っているし、変えていかなければならないのは、それほど多くの部門ではないと判断している。

その部分的な変化は、今シーズンの獲得タイトルと関係あるのか?

我々はそのタイトルを狙っているシーズンの最中であることを忘れないで欲しい。この輝かしいチームを構成してくれたすべての選手に対して、我々首脳陣は彼ら一人一人に尊敬の念を持って対応したいと思っている。シーズン終了後におこなわれるであろう“若干の変化”はその時になればわかるだろう。

アンリだとか、あるいはクリスティアン・ロナルドとかのクラック選手の獲得が必要だと思うか?

クラシコでのメッシーを見たと思うが、我々には彼以外にもロナルディーニョやデコ、エトー、そしてイニエスタという選手がいる。獲得するかどうかもわからない将来のクラック選手に触れるのは馬鹿げたことだ。

モッタはどうなるのだろうか。戻ってきたら彼一人隔離された練習となるのか?

もちろんグループに入っての練習となる。もうじき戻ってくるだろう。多くの大企業で働くエリート社員と同じように、スポーツエリート選手にしても、いつも良い時期ばかりを過ごせるわけではない。“現場”からしばらく離れて頭の中を空っぽにすることは、失われたエネルギーを取り戻すためにも良いことだと思っている。モッタは才能ある選手だし、個人的には非常に気に入っている。だが、長い人生の中で思ったようにことが運ばないことは良くあることだ。別に彼が初めてのケースでもないし、この4年間という期間にも他の選手にあったことでもある。バルサというプレッシャーの多くかかるクラブでプレーすることは、外部の人間には理解できないほど難しいことだ。多くの才能ある選手が集まって一つのチームを構成する。すべての選手の望みを叶えるわけには当然ながらいかない。そういうことを理解して上で、スッキリとした精神状態で戻ってきて欲しいと思う。


モッタ、頭のリハビリ中
(07/03/13)

モッタの将来はドス黒い闇の中に包まれている。もちろんフットボール選手としての将来ではなく、バルサの選手としての将来だ。ここ2シーズンほど、クラブ方針としては彼をビジネス商品(つまり放出)候補にあげてきていた。クラブ方針、それはチキ・ベギリスタインの方針と言い換えてもいいかも知れない。だが、それをストップさせてきたのはライカー監督、その人だった。

これまで大事な試合ともなると、必ずスタメン選手として起用してきたライカーが、突然としてモッタを試合出場させなくなっただけではなく、試合そのものに招集さえしなくなったのは、カンプノウでのリバプール戦後だ。ビルバオ戦、サラゴサ戦、セビージャ戦、そしてリバプール戦、バルサにとって大事であったこの4試合にモッタは招集されていない。フィジカル的に問題があたたわけではなく、純粋に戦術的問題だと説明するライカー監督。それまで監督からの厚い信頼を得てると信じ込んでいたモッタ、その弱い精神構造にガタガタと揺れを生じさせてしまった。

水曜日の深夜、つまりリバプール戦翌日の深夜、バルセロナのとある有名なディスコでロナルディーニョとデコとモッタの3人が、“ブラジル人フィエスタ’を楽しんでいたと伝えるマドリメディア。そんな噂話はどうでも良いとして、それでもこの3人のフィエスタ好きは、バルセロナの人々の間では知られたこととなっている。それほど広い街ではないから多くの夜遊び好きの人々が目撃者となっていても不思議なことではない。だが幸運なことに、この街ではパパラッチという“職業’が成立しないことからもわかるように、他人の私生活に介入するのを良しとしない。だから何かの事件がらみとならない限り、夜遊びはスキャンダルな話題とはならない。もちろん、それでも、人々が彼らの“フィエスタ好き”を知っていることには変わりがない。

木曜日の練習にモッタは無断欠席。理由はわからないものの、精神的に落ち込んでいたことはじゅうぶん推測できる。何と言っても精神的にグラグラと揺れることを特技とするモッタだ。クラシコの試合にも招集されないのではないか、そういう暗い思いが彼を沈めていたのかも知れない。練習が終了してから1時間後に彼からクラブに連絡が入り、家庭の事情で、という説明を受けたと公式発表がなされているが、公式と名の付くものほど信用できないものはないから、本当のところはどうなのかわからない。

翌日金曜日、この日にもモッタの姿は見られない。クラシコ前日ということもあり、記者会見場に登場したフラン・ライカー監督。
「モッタは負傷中でも病気でもないが、どうやら精神的に参っているようだ。普通の会社勤めの人でも仕事のことで落ち込んでしまうことがあるように、エリートフットボール界に生きる選手でも精神的にうまくいかない時期がある。彼には1週間ほどリフレッシュ期間をあげた。頭の中をスッキリするために、少し日常生活を変えるのも大切なことだろう。人間的にも選手としても個人的には非常に気に入っている選手だし、元気な姿で戻ってきて欲しいと思う。」

モッタはバルサ選手として6シーズン目を迎える。そして、シーズンごとに彼に対する期待が大きくなってきているのは、彼の背中につけられた数字が表している。31番という背番号でスタートした彼は、その後28番、23番、14番、そして現在は3番に定着している。だが、長期負傷があったとはいえ、期待通りの活躍を見せているとは言えない。それでもライカーは彼を信頼し続けた。大事な試合になるとモッタの姿がグランドに登場してきていたのがその証拠だ。スペインスーペルコパ、ヨーロッパスーペルコパ、チェルシー戦、ブレーメン戦、そしてリバプール戦。だが、ビルバオ戦からクラシコに至る5試合まで、彼の名は招集メンバー表から消えてしまった。

モッタにとって難しい季節がやってきている。フィジカル的に優れ、ブラジル人としてのテクニックも備え、シュート力も魅力的なものを持っている選手。だが、バルサで活躍する選手というよりは、最近ではフィエスタ好きな選手として知られてしまっているのはヤバイことだ。彼を支援する人々もいるだろうが、放出すべきだと思っている人々も数多くいる。残留の可能性40%、移籍の可能性60%、どちらに転ぼうが不思議な選手ではなくなってしまった。

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新たなシーズンの開始
(07/03/12)

3月10日、この日におこなわれたクラシコの戦いを何の問題もなく勝利し、この試合をスタートとしてバルサの独自のシーズンが始まる・・・はずだった。リーグ優勝と国王杯優勝のドブレッテを目指し、クラブの歴史に残るであろう輝かしいシーズンとするために。だが、約束された勝利はやって来ず、かろうじて引き分けという結果で新たなシーズン(リーグ戦残り12試合と国王杯3試合)を迎えることになる。ところが、首位を走っていたセビージャが敗戦したことにより、バルサには思いがけないプレゼントは転がり込んで来た。新たなシーズンを首位でスタートしなさい、そういうプレゼント。

4−3−3、4−4−2、3−4−3、そして5−2−3、今シーズンこれまでライカーバルサが起用してきたシステムを数字で表すとこうなる。どれが優れていてどれが悪いかというものでもないし、それぞれ長所短所があるのは当然のこと。そして、採用されたシステムが生きるかどうか、それはひとえに選手のプレー次第となる。サラゴサ戦を契機として起用されだした3−4−3システムが現在のバルサの選手のキャラクターに合っているかどうか、それは大いに疑問があるところだ。

カンプノウで20回前後クラシコを観戦しているが、ひょっとしたらこれまで対戦した最悪のレアル・マドリかも知れない。それは試合前から予想されていたことだから、ライカー監督が3−4−3システムを起用したのは普通なら正しい判断となる。なぜなら、どうしてもゴールが必要な緊急時をのぞいて、実力差があるチーム相手にのみ起用できるシステムだからだ。だが、もちろんそのシステムが機能すれば、という条件付きとなるのは当然のこと。そしてライカーバルサにおいて、少なくとも今のところ、このシステムは機能していない。それはこれまでの試合で証明されてきているし、クラシコでも再び証明された。もし、これまでどおり普通に戦っていたのなら、つまり、昨シーズンほどは機能していないとはいえ、4−3−3というシステムで戦っていれば、バルサは間違いなく勝利していたと思う。したがって、この引き分けという思わぬ結果を招いた責任はライカー監督となる。夜中の1時近くにルンルン気分で家路につけなかった原因を作り出したのも彼となる。寝付きを悪くしてくれたのも彼のせいとなる。風邪を引いて調子が悪いのも彼のせいだ。何もかもライカーが悪い。だが、もしタイトルを一つでもとったら許してあげよう。

さて、バルサの100年以上のクラブ歴史において、リーグ優勝を達成したのはこれまで18回。そして2度のチャンピオンズ制覇と24回の国王杯優勝。つまりリーグ優勝は4年に1回(25%)、チャンピオンズは25年に1回(4%)、そして国王杯制覇は約4年に1回(23%)という統計になっている。そして3シーズン以上連続リーグ優勝するという偉業を遂げたのは、その長いクラブ史においてもクライフ時代に1回あるだけであり、もし国王杯を勝ち取り25回目の優勝クラブとなれば、今まで同回数で並んでいたビルバオを抜いて単独1位となる。つまりドブレッテという目的を達成すれば、とてつもなく素晴らしいシーズンをおくったことを意味する。

昨シーズンのような好調さは見られないとはいえ、リーグ戦12試合を残して首位、国王杯準決勝進出という状況のバルサ、それでも、このチームには一つのサイクルの終焉が来たと言うのだろうか?

クライフは3週間ほど前のラ・バンガルディア紙のコラムで一つのサイクルの終焉を臭わせている。もっとも、そのコラムを発表してから1週間後には“こんなことを言われた選手たちは発奮しなければならない”と、よくわからないことを書いている。バルサがだらしないシーズンをおくったとしたら“私が言ったようにサイクルが終わりを見ている’ということになるし、結果的に素晴らしいシーズンとなれば“私が忠告したからだ”となる、いつものパターンで、どちらに転ぼうが彼は正しかったことになる。だから、彼の語ることは聞き流すのが一番だ。

サイクルは終わっていない。もちろん、サイクルは終わっていない。例年どおり、何人かの選手が放出され同じぐらいの選手がやって来ることになるだろうが、サイクルそのものは終わっていない。そしてこの試合を境として1人の選手の光り輝くサイクルがスタートした。レオ・メッシー、カデッテAデビュー、フベニルBデビュー、フベニルAデビュー、そしてバルサBデビューをこの目で見てきたメッシーのロマリオ以来のクラシコハットトリックを見れたことが個人的には唯一の明るい材料となった試合だった。


5−0
(07/03/10)

どちらも100%の状態で迎える伝統のクラシコ、とはお世辞にも言えない。24時間の差こそあれ、お互いにチャンピオンズの大会から追い出されただけではなく、ここに来て、もう3月だというのに、システムさえ変えて戦ってきている両チーム。バルサが3−4−3という選手配置をすれば、レアル・マドリは3人ピボッテというか7人デフェンサというか、いずれにしてもイメージチェンジして、それぞれチャンピオンズの最終戦を戦った。お互いにチームがうまく機能していない証拠であることは間違いない。そんな状況で迎えるクラシコ。だが、そんなこととは関係なく、見るものにとってパッションの塊と化す試合となる。この試合だけを見に来るためにソシオ・アボノとなっている人もいるぐらいだ。

そう、雰囲気はどちらのチームも良くない。チャンピオンズでの早すぎる敗退のあとの試合だから、しかたがないと言えばしかたがない。水曜日の試合後、メレンゲグッティはスタメン出場できなかったことに不満を感じているとし、マドリは前半の30分を捨てたようなものだと語っている。ミヤトビッチにしても、試合が終了し、選手たちがユニフォーム交換をしている瞬間にインタビューを受けながら、嘆かわしい試合結果だったと苦虫を噛みつぶしたような表情で語り、選手や監督を含めて多くのことを変えていかなければならないと告白している。そして、それを受けてカペロは、ミスしたのはロベルト・カルロスであり、彼が辞める理由は何もないと試合後の記者会見で語っている。その翌日、ロベルト・カルロスは今シーズン終了後マドリを離れると発表。

バルサにも雰囲気の良くないことは多く見つかる。試合翌日の練習はいつものように欠席し、ジムでのトレーニング(クラブ発表)をおこなったロナルディーニョ。だがその翌日、バルサメディコは突然のようにロナルディーニョの負傷を発表している。マルケスは家庭の事情とやらで練習には参加してきていないし、モッタにしては練習に来なかっただけではなく、一時的に連絡もとれない“逃亡状態”扱いまでされてしまった。クラブに何の連絡せずの練習欠席、モッタのバルサでの将来は誰よりも真っ暗闇となった。今シーズン限りでバルサを出て行くことになるであろうモッタに関しては来週あたりに触れてみよう(ちなみに、試合前日の金曜日の練習にはロナルディーニョ、マルケスが元気に参加してきている。そしてモッタに関しては1週間の“健康な精神回復期間”を与えている。)。

「クラシコはポイント差に関係なく、勝つ必要性のあるチームが有利な戦い。」
クラシコに関するカルラス・レシャックの定義。リーグ優勝が不可能な状態なら、歴史的ライバルチームに勝利することで、一時的ではあれファンに喜びを与える。80年代のバルサがそうであり、90年代のマドリもそうだった。だが、今回のカンプノウクラシコは、必要性という点に関してはそれほど違いはない。どちらも勝利が必要な状況だ。したがって、地元カンプノウで戦うバルサが、そして実力的に大きな差をつけているバルサが超有利な試合となる。

敗北するであろうレアル・マドリはシーズン終了を待たず“変革”を要求されることになる。辞任しないカペロはクラブから強制的に更迭され、マドリB監督のミッチェルが就任することになりそうだ。そして“モンスターハウス”と化したマドリのロッカールームは、来シーズンに向けての大粛正が開始される。勝利するであろうバルサにしてもスケールの違いさえあれ、来シーズンに向けてのプランニングが早急になされる。シーズンが終われば今のところ休戦状態となっている“エトー問題”にも決着をつけなければならない。

だが、クラシコ後の両クラブの大きな相違、それはバルサがリーグ優勝、国王杯優勝をかけての戦いを続けることであり、メレンゲは気分的にどうしようもなく長い残りのシーズンを、ため息をつきながら続けなければならないことだ。心優しいバルサよ、瀕死状態にあるマドリにとどめを刺し楽にしてあげよう。お互いに記念となるこの試合は4−0でも6−0でもなく、ピッタシ5−0がよろしい。


正しい人々
(07/03/09)

多くのメレンゲ族にドデカイ衝撃を与えることになった突然の監督辞任発表。今から約2年半前、わずか3か月間だけのレアル・マドリ監督となってしまったアントニオ・カマッチョが、突然のように監督辞任を申し出ている。そして、それ以来、すべてのメディアを避け沈黙を守ってきた彼が、つい最近その堅い口を開いている。

「チーム事情を考慮すれば、どうしても午前と午後の練習が必要なチームだと我々コーチングスタッフは判断していた。フィジカル的にもチームとしての連係プレーなどもひどい状態だったから、それは当然のことだと思われた。だが、午後の練習は不可能だという。何人かの選手もクラブ関係者も午後の練習は不可能だという。フロレンティーノ会長に直接あってその理由を問いただしたところ、多くの選手が他の事柄にスケジュールが組まれているからだという。それは何か、CM撮影だとか、スポンサー関係のイベントだとか、まあ、その手のことだ。」
フロレンティーノがおこなった“ギャラクシー作戦”は、多くの優秀なクラック選手を集めることに成功したが、計算外だったことは優秀な選手を抱えながらも優秀なチームは作り上げられなかったことだ。

そしてカマッチョは続ける。
「私が監督に就任した時点では、たぶんこれまでのフットボール界の歴史において、数多くのクラック選手を同時に一つのチームに抱えることに成功した唯一のクラブと言えた。だが、彼らと一緒に仕事をして気がついたことは、4人も5人もバロン・デ・オロを獲得した選手が、同じチームでプレーすることは非常に難しいということだ。それは色々な意味で難しいこととなる。世界最優秀選手というレッテルを貼られた彼らのプライドが高くなってしまっているのは当然ながら、そういうエゴの塊となっているような選手たちを一つのチームとしてまとめていくのは、とてつもなく難しいことだ。そして、さらに言うならば、すでにメンタル的に満腹状態となってしまっていることも否定できないことだった。彼らがバロン・デ・オロを獲得したのは、バルサでの活躍が原因であったり、ユベントスやインテルでの評価によってのものであり、レアル・マドリでの活躍が理由となった選手は一人もいない。聞こえは悪いかも知れないが、引退までの花道として、この世界最優秀クラブに加入してきたようなものだ。そういう選手に高いモチベーションを要求すること自体不可能なことだ。」

全部を紹介すると長文になるので、一つの興味深い事柄をもって最後にしよう。カマッチョは“無念なり!”と、起きえなかった一つの現象を嘆いている。
「監督として残念だったのは、このような否定的な状況を誰よりも認識していたチーム内の選手から、一つも批判というか、反省の発言が聞かれなかったことだ。つまり、チームが一つにまとまっていないにもかかわらず、カピタンをはじめチームを構成する選手たちから一切の動きがなかったことだ。」

リバプール戦に勝利しながらも目的を達成できなかったバルサ御一行は、試合翌日の午後にバルセロナに戻り、空港から直接カンプノウに向かいクラシコに向けての練習をおこなっている。そして試合後の恒例記者会見をテレビで見ていたら、グジョンセンが珍しくも姿をあらわしていた。久しぶりに聞く彼のカステジャーノはほぼ完璧と言って良いほど素晴らしい。
「我々にはいくつかの重要で大事なことが欠けていると思う。チームを一つにまとめるために必要な各選手の犠牲的精神、そしてプロ選手として当然の100%の練習態度。残念ながら、我々のチームには少なくてもこの二つのことが欠けている。」
グジョンセンにしては珍しいチーム批判と言える。デコと並び、チーム内では一目置かれている彼の発言には重みがある。そして滅茶苦茶エトーの八つ当たり批判とは違い、彼ならではの建設的な批判だ。

「これまで自分が構成員の一人となったチームとしては、現在のバルサは最優秀な選手たちを集めた、最も素晴らしいチームだと思っている。昨シーズンまで自分が在籍していたチェルシーでさえ、現在のバルサの内容には勝てないとも思う。だが、それは一人一人が100%の力をだして初めて立証されることだ。他のチームの選手と同じように走りまくり、汗を流し、個人プレーだけではなく、チームを構成する一員としてのプレーをおこなえば、バルサに勝てるチームは存在しないだろう。だが、残念なことに、その大事なことが我々には欠けてしまっている。」

さらに続ける格好いいグジョンセン。
「一人一人がグランドを離れてからも、我々選手すべてが親しい友人同士となる必要はないと思っている。肝心なのは常にグランド内でまとまることだ。それは毎日の練習をおこなうグランド内であり、そしてもちろん試合をおこなうグランド内のこと。少なくてもその場においては仲間意識をじゅうぶんに持つ必要があると信じている。」

カマッチョが監督に就任した当時のレアル・マドリと現在のバルサを比較するのは不自然なことだろう。だが、シーズンはじめに6つのタイトル獲得を宣言した我らが会長をはじめ、何人かの選手たちにモチベーションの不足や慢心があったとしても不思議ではない。ライカーバルサの初心に戻ること、そのために必要であるならば、発生してしまったウミを取り除くことも必要だ。チームのベースとなる選手(バルデス、プジョー、イニエスタ、チャビ、メッシー、エトー)に加え、回復可能な選手たち(ロナルディーニョ、デコ)が加われば、サイクルはまだまだ終わりを見ない。そのサイクルを継続させる物証となるタイトル獲得に向けて、バルサはとりあえず今度の土曜日にレアル・マドリをケチョンケチョンにたたきつぶす。


バモス、バルサ!
(03/07/08)

例え、世界に散らばる恵まれない子供たちを救うというユニセフ軍とはいえ、決して例外の対象とはならなかった。コパ・デ・エウロッパという名称からチャンピオンズリーグという名に変更されてから、まだ一度足りとして2年連続ヨーロッパチャンピオンに輝いたクラブは存在しない。ここ17年間、ヨーロッパのどこの強豪クラブでも連続優勝という偉業は不可能となっているし、決勝戦に進むことすら容易なことではないようだ。1996−97シーズン、今から10年前に前年度優勝チームのユベントスが決勝戦に進出することに成功しているが、それでもチャンピオンとなることはできなかった。例えば、ここ10年間の歴史を見てみると次のようになっている。

1997−98 ボルシア・ドルトムンド(1/4敗退)
1998−99 レアル・マドリ(1/4敗退)
1999−00 マンチェスター・ユナイテッド(1/4敗退)
2000−01 レアル・マドリ(1/2敗退)
2001−02 バイエルン(1/4敗退)
2002−03 レアル・マドリ(1/2敗退)
2003−04 ACミラン(1/4敗退)
2004−05 オポルト(1/8敗退)
2005−06 リバプール(1/8敗退)
2006−07 バルサ(1/8敗退)

だが、それでも、このようなクールな統計が、チャンピオンズでの早すぎる敗退でのメラメラとした怒りを消し去ってくれるわけでもない。プレミアリーグで20ポイント近くも首位に離されているクラブに、自らの度重なるミスで自滅していったのはとてつもなく悔しい。チームのメインとなる何人かの選手の“調整不足”が原因の一つとなり、本来持っているチームの実力を出し切れずに終わってしまったことも悔しい。攻撃だ、攻撃だと、試合前に大風呂敷を広げながら、ちっとも攻撃的でなく終わってしまったことも悔しい。
「チームが必要とする時に100%の自分が登場する。」
などと大口を叩いた最高額年俸取得者が、ついに最後までどこにも登場してこなかったのが残念であり、奇妙なことに、冬休み明けに大遅刻してきた3人組が揃って不調なのが象徴的ではある。

さて、今日から新たなバルサの挑戦が始まる。長いあいだファンをやっていこうと思うなら、気分の早期転換術を身につけなければならない。今日からリーグ優勝、国王杯優勝をかけての楽しくもワクワクする新たな挑戦が開始される。そして同時に、来シーズンに向けた新たなプランニングのスタートともしなければならない。一つ一つの試合が、すべての選手にとってテストとなるような雰囲気でプレーすることを要求されるだろう。試合に招集されたりされなかったしている選手を含め、招集されてもベンチ住まいだったり、あるいは試合に出場しても期待通りの活躍を見せない選手には厳しい将来が待っている。もちろん“調整不足”のクラック選手にもバルサでの将来は約束されていない。

前にも触れたように、今週末にクラシコがあることは幸運の女神様のプレゼントだ。悔しい思いを持続したままでの八つ当たりクラシコ、バルサの選手たちも名誉挽回とばかりに必死になって戦うだろう。かつてのチャンピオンたちが、その傷ついた誇りを癒すために、そして明日に向かって立ち上がるために、これほど素晴らしいチャンスはあり得ない。彼らのサイクルがまだ終わっていないことを証明するためにも、クラシコの戦いほど適切なものはない。ライカーバルサの新たな展開がスタートし、カペロマドリの終焉となる今週土曜日。さぁ、明日に向かって、バモス、バルサ!


アンフィールドへの道(3)
(07/03/06)

ライカー監督、セビージャ戦の敗北に何を学ぶか?
「3人セントラルシステム自体はうまく機能していると思う。先制点を入れ、すぐに相手が10人となりPKまで得た。この瞬間からリラックス状態になってしまったようだ。一度とぎれた集中力を再び取り戻すのは並大抵のことではない。試合は90分間続くということを学び、それを教訓としてリバプール戦にのぞみたいと思う。」
負け試合のあとにいつも同じようなことを聞くが、このセビージャ戦後のライカーコメントも例外ではなかった。先制ゴールを決め、試合の主導権を握りながらも時間の経過と共に相手チームの攻めに圧倒されてしまう。先制点までのスピリッツを先制ゴールと共に失ってしまうのはいつものこと。もし、この不可思議な現象がなければ、今シーズンのバルサは2位チームにもう10ポイント以上の差をつけて楽々首位にいるチームだ。

本当に、も、も、もったいない試合だった。2位のチームを撃沈しリーグ優勝の可能性をさらに大きくするという意味以上に、次の試合、つまりリバプール戦を良い気分で迎えるために必要な勝利だったから。

だが、物事は考えようだ。カンプノウでのビルバオ戦から始まった“アンフィールドへの道”に続く過程で、1つの敗戦ぐらいはじゅうぶん予想できたことだろう。ビルバオ、サラゴサ、セビージャ、リバプール、そしてデザートとしてレアル・マドリ戦、この5連戦において1つぐらいの負けはしかたがない。気分を良くするためにどうしても勝利が必要だったビルバオ戦に、もし負けてなんぞいれば、それこそサラゴサ相手の試合での勝利はなかったかも知れない。国王杯の次のステップに進めるかどうか大事な試合となったサラゴサ戦に、もし敗れるようなことがあったとしたら、もうメンタル的にも雰囲気的にもリバプール戦は絶望の感だった。もしこの5つの“重要な試合”で唯一敗北が許されるとしたら、それはセビージャ戦だったかも知れない。と、超論理的にこの敗戦を受け止めてしまおう。

これまでのアンフィールドへの道の総括をしよう。
●ビルバオ戦
カンプノウでは弱い相手には負けない。その弱い相手をつぶしたあとには決まって“ロナルディーニョ復活!”のスローガンが登場。ビルバオと大して変わらないレアル・マドリに対する勝利を99%の可能性で予想させてくれる。ついでに再び“ロナルディーニョ復活!”となるかも知れない。この試合の勝利でアンフィールドに向けての気分は良くなってきた。

●サラゴサ戦
保守的とも言って良いライカーが初めておこなった“驚いたか!作戦”が成功。選手交代の遅さにもわかるように、我らが監督は頭脳が命じることを体が示すのに少々時間がかかる。その彼の特徴が試合をややっこしくさせ、この試合でも見ているものをハラハラさせてくれた。だが、アッと驚く3−4−3システムの採用や大事な試合での思わぬ勝利ということもあり、アンフィールドに向けて気分は最高潮。

●セビージャ戦
ライカーが3人セントラルで戦ったと言っているように、実際には5人デフェンサであり、数字で示せば5−2−3システム。いずれにしても、強いチームを相手とする大事な試合には勝てないというのがこれまでのバルサの特徴。スーペル・コパ・デ・エウロッパ、ムンディアリート、チェルシー戦、バレンシア戦、マドリ戦、これらの地元を離れての重要な試合にはすべて敗戦している。したがってサラゴサ戦での勝利がこの特徴を変えてくれるかも知れないという期待が生まれたものの、残念ながらそうはならず。この敗戦でアンフィールドへの道の気分は最高潮から高潮へと下がった。

そして、いよいよリバプール戦。この試合にいたるまでの道がどうであれ、アンフィールドでの試合は超難しいことぐらい誰にも理解できる。それでも90分間の試合中に何が起きるか、それは誰にも予想できない。カンプノウでのリバプール戦でも、我らがバルサ選手の惨めなミスがなければ結果は違うものとなっていた。アンフィールドでリバプールの選手たちがいくつかのミスをしないと誰が保証できるか。エトーの大復活デーとなることを誰が否定できようか。ロナルディーニョの復活が再び訪れることを誰が否定できようか。メッシーがマラドーナ・ジュニアと変身するかも知れないことを誰が否定できようか。そして、そしてレイナがオウンゴールを決める可能性を誰が否定できようか。

3−4−3であれ、4−3−3であれ、あるいは5−2−3システムであれ、いずれにしても幸運の女神様の登場が必要だ。アンフィールドでバルサが勝利するのに奇跡はいらない。ただ、幸運の女神様のお力を少しだけお借りすれば済むことだ。その幸運を呼ぶために、バルサは昨シーズンの第二ユニとしたピスタッチョ色を着こんで戦う。そして、さらに幸運を呼ぶためにライカー監督は3−4−3システムを採用すると予想。サラゴサ戦終了後には決して予想できなかったこのシステムを再び採用しそうな予感。バァァァァァァモス、バルサ!


アンフィールドへの道(2)
(07/03/04)

「素晴らしいアイデアだ。」
試合開始1時間前にスタッフテクニコから3−4−3システムで戦うことを告げられたチャビはそう思ったという。3−4−3システムは彼にとって決して見知らぬシステムではない。
「カンプノウで見る試合はいつもそのスタイルだったし、カンテラ時代には自分もそのシステムで何十試合、いや何百試合とプレーしてきている。だから、個人的には何の問題もないし、どちらかといえば自分のプレースタイルの原点だと思っている。」

それはイニエスタにしても同じだ。
「ラウドゥルップが自分のアイドルだったし、エウセビオやアモールが自分と同じポジションで活躍しているのをこの目で見ている。ペップは自分にとって神様だから別格として、彼の4番のポジションでもインテリオールのポジションでもカンテラ時代に経験している。もちろん3−4−3というシステムでね。だから戦術の変化に関しては何の問題もなかった。」
そしてこのシステムでもっとの重要な役割を演じ、そして同時に難しい役割となるのがチャビとイニエスタが演じたインテリオールというポジションだということをジョルケラは知っている。
「自分もこのシステムで育ったカンテラ選手。だから経験上、彼らの仕事が一番難しいということを知っているのさ。」

「多くのことが同時に要求されるポジション。相手選手の動き、自陣の選手の動き、それらを一瞬のうちに把握し、空いてるスペースに気を使わなければならない。普通の試合より11.5倍から2倍の運動量が要求されるし、集中力を保つことが90分間必要となる。」
イニエスタとチャビの言葉を合わせるとこうなる。

「3−4−3システムで戦ったサラゴサ戦後に、メディアが“ドリームチームが戻ってきた!”と騒いでいたが、それは誤りだと思う。なぜならドリームチームはバルサから去ってなんかいないからさ。ドリームチームの持つ精神、つまり攻撃的なフットボールというフィロソフィーは、常に受け継がれてきているんだ。数字で示すシステムが何であれ、攻撃の精神というものはクラブから消えたことはない。」
イニエスタにとっての神様、ペップがこう語り、そして続ける。
「バルサは明日負けるかも知れない。明日負けなければ明後日負けるかも知れない。勝負の世界のことだから、負けることはしかたがない。だが、それでも、もうかなり前からバルサというチームのフィロソフィーは世界中に浸透してきていると思う。攻撃の精神、これをはっきりとチームカラーとして掲げているクラブはこの世界で唯一と言っていい。つまり、バルサだけなんだ。」

アウエー3連戦シリーズ、第一戦のサラゴサには幸運にも勝利することができた。それもアッと驚く戦い方で勝利することができた。セビージャ戦やリバプール戦でこの“驚いたか!作戦”は当然ながら“驚き度”を失うことになる。それでもまったくあり得ないものでもないようだ。
「もしかしたらこのシステムをリバプール戦で採用するかも知れない。」
と、サラゴサ戦後にエウセビオが語っているように、リバプール戦で再びこの戦い方が再現するかも知れない。だが、どのようなシステムであろうと、バルサのフィロソフィーには変わりがない、攻撃、攻撃、ひたすら攻撃、それしかない。そして、アウエー第二戦セビージャとの戦い。アンフィールドに乗り込む前の最後のテストであり、その意味において重要な試合だ。

リバプール対マンチェスター戦。地元アンフィールドにバルサのような強敵を迎えての試合で0−1で敗北。バルサはマンチェスターよりもうチョット強いから0−2というのもじゅうぶん可能と見た。


アンフィールドへの道(1)
(07/03/03)

まるで15年前のビデオを見るように、国王杯サラゴサ戦での戦い方を満喫した多くのバルセロニスタ。そう、あの“戦い方”はビデオライブラリーの中でしか存在しないはずのものだった。したがって、すでに国王杯の戦いは一段落したところであり、リーグ戦やチャンピオンズの試合が目前に迫っているにもかかわらず、いまだに“あの戦い方”が話題になっている。

3−4−3システム、フラン・ライカーがバルサの監督に就任してきてから1回、あるいは2回ぐらい採用したことがあるシステム。だが、試合開始からいきなりというのは初めてのことであり、多くのバルセロニスタだけではなく、サラゴサ監督のビクトル・フェルナンデスやメディアでさえ驚くことになる。試合開始5分前にサラゴサのコーチが、ラジオのインタビューで次のように語っていたのがその証拠だ。
「このスタメン選手を見た限り、トゥランが右ラテラルでオラゲールが左ラテラル、そしてプジョーとマルケスがセントラルとなるのだろう。」
それはないだろうと思ったのは、このラジオを聞いていた自分だけではなく、多くの人々もそう思っただろう。ベンチにはサンブロッタやジオがいるのだ。こんなヘンテコな左右ラテラル起用はあり得ない。もう、これは3人デフェンサシステムしかあり得ない。だが今時、そんなことをするチームなど考えられないから、サラゴサコーチの頭もひっくり返ってしまったのだろう。

60年代の後半にアムステルダムを中心に登場し、80年代の後半に再びヨハン・クライフ監督によって復活したこの3−4−3システム。ヨーロッパ中がこのシステムの復活に驚いたのは、当時を生きていたバルセロニスタには昨日のことのように思い出される。だが、そのクライフにしても今では次のように語っている。
「現在のフットボール傾向にあってこのシステムは有効性を持たないだろう。攻撃的なフィロソフィーを持続するとするなら、4−3−3システムのみが生き残れるものだと思う。」
このシステムを採用したクライフにしても、そして当時を楽しんだ多くのバルセロニスタにとっても、すでに墓場に埋められてしまったシステムだった。

テン・カテがチャンピオンズ決勝戦でイニエスタではなくバン・ボメルのスタメン出場を強く主張し、それをライカー監督が受け入れることになったのはすでに有名な話だ。イニエスタスタメンを主張したのは誰だったか、それは今回の3−4−3システムの採用をライカーに提案したエウセビオだった。左右インテリオール選手としてクライフバルサ時代に活躍したエウセビオは、このシステムの中で水を得た魚のように活躍した選手でもある。

サラゴサ相手の試合は水曜日。実はその前日の火曜日の非公開練習でこのシステムをもってミニゲームをおこなっている。この危険なシステムに未経験な選手にとって、特にデフェンサに入る選手にとって、たった1回のテストで役割を理解するのは難しいことぐらい誰にも納得できる。右サイドに入ったオラゲール、左サイドに入ったプジョー、そして1人セントラルとなったトゥラン。35歳の彼にとってこれまでの長いプロ経験の中で初めて経験するシステムだ。ベンゲル監督のもと6年間プレーしたモナコでもなかったことであり、まして5年間プレーしたパルマやリッピー監督のもとでプレーしたユベントスでもあり得ないことだった。

エウセビオがマンツーマンでトゥランにくっつき、1人セントラルの役目や要領について説明したという。もちろん多くの質問がトゥランからエスセビオに飛ぶ。

かつてのアレサンコのように、あるいはナダールのように、そして伝説のクーマンのように、見事に大役を果たしたトゥラン。試合後、テレビのインタビューに応えて笑顔で次のように語って走り去っていったのが印象的だった。
「フットボールがこんなに楽しいもんだとはね・・・ハッハッハ。」

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4−4−2との戦い
(07/03/02)

4−4−2システムとの戦いが続いている。2月18日バレンシア戦からスタートし、3月6日リバプール戦に終わる16日間6試合のハードスケジュール期間。奇妙なことに、バレンシア、リバプール、ビルバオ、サラゴサ、そしてセビージャ、この16日間に対戦するチームはすべて4−4−2システムを基本的な戦術としている。

バルサにとって最も大事な試合となるのは、いわずもがなアンフィールドのリバプール戦だ。サラゴサ戦、セビージャ戦、リバプール戦、この中から一つだけ勝利の願いをかなえてあげましょう、と神様に言われたら、迷うことなくリバプール戦での勝利を選ぶだろう。そして、リバプール戦が最も大事な試合だとすると、このスケジュールは考えようによってはバルサにとって理想的なものかも知れない。バレンシアに学び、ビルバオに学び、サラゴサに学び、最後にセビージャに学ぶ。そして、いざ、本番に突入。さらに、ここまでの結果がどうであれ、それが狂喜乱舞するものであれ地獄転落するものであれ、最後に締めくくられる週末の試合はカンプノウクラシコだ。狂喜乱舞している状態でこの試合を迎えればフィエスタは更なるフィエスタを呼ぶことになるし、地獄に堕ちている状態だったら、この世にはい上がってくる保証ともなる試合。なぜなら今のマドリに負けるわきゃあないからだ。

3−4−3というのはクライフ時代8年間見てきたシステムながら、ライカーバルサがやるとなると違和感がある。あのシステムがほぼ完璧に近くなるのに3年間が必要だったクライフバルサだ。したがって試合開始前に3人デフェンサというのを知ったとき、これは自殺行為に近い戦術に思えた。唯一の利点、あるいは唯一の目的、それは相手を驚かすことのみに思えた。そして“驚いたか!作戦”は結果的に見事に成功する。

3−4−3システムにおいてデフェンサ的に最も重要なことは、核となる選手がポジショニングに優れた才能を持っていること。スピードはいらない。ただ、ポジショニングの優秀さと高い集中力が必要となる。トゥランは見事にその仕事を果たしている。トゥラン合格!

相手ラテラルの攻撃参加を防ぐのはエストレーモの仕事。決してインテリオール選手の仕事ではない。ジュリーはその意味でじゅうぶん目的を達成している。メッシーはフィジカル的にジュリーほどの仕事はできなかったが、その分イニエスタが補助役として機能していた。この試合、最大の功労者をあげるとすれば、左ラテラル、左インテリオール、右ラテラル、右インテリオール、90分間で多くのポジションをこなした上にゴールまで決めたイニエスタとなる。ジュリー、メッシー、チャビ、イニエスタ合格!

ほとんど機能しなかった選手が3人いる。ロナルディーニョ、デコ、そしてマルケス。“見せかけ9番”の役目をいただいたロナルディーニョは、ロマリオ以下のプレッシャーのかけ方であり、そもそも90%前後のボールを失っているし、ファールを誘うのに忙しく“ピスシーナ”の王様を演じていた。メディアプンタと言っていいデコの位置での仕事は、攻撃ラインと守備ラインを一つにすること、ワンタッチでボールを処理しリズムを早くすること。だが、ボールが来たら“カーニョ”と“ソンブレロ”することを生き甲斐としている彼には向いていない。そしてこのシステムでピボッテとなる選手に要求されるのはメンタル面でのスピード。ボールが来る前にどこにボールをだすか判断していなけれなならないにもかかわらず、マルケスの場合は、ボールを持ってから少なくても2秒は時間が必要となる。したがって、ロナルディーニョ、デコ、マルケスは不合格!

いずれにしてもこの3−4−3システムというのは現在のフットボール界にあってユートピア的なもの。“驚いたか!作戦”として相手を動揺させるために採用するか、あるいは後半20分を過ぎたあたりから特攻隊精神で採用するしかない。もちろんアンフィールドで試合開始から試されることはないだろが、それでもいざという時のために、アンフィールド用の練習にはなった。そしてこんな時代に、こんな戦い方を見せてくれたライカースタッフに感謝しよう。


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