2006年
2007年
4月

レバンテ戦
(07/04/29)

「奴は犬のフン以下だ。」
このシンプルにしてわかりやすい表現は、一人のレバンテの選手がバルサの選手オラゲールに捧げたものだ。はたして犬のフンにはいったいどれくらいの価値があるのか、というようなマニアックな疑問は別として、いわゆる“クソにも劣る奴だ”という意味で誰もが理解できるわかりやすい表現だ。

このシンプル発言はサルバという選手の口から発せられている。サルバ・バジェスタ、サラゴサでとれた人間ながらセビージャのカンテラ育ち。セビージャBからセビージャAチームに上がり、その後サンタンデール、At.マドリ、バレンシア、マラガなどを経て、今シーズンからレバンテでプレーしている。現役軍人を父に持ち、ゴールを決めた時のパフォーマンスは決まって軍隊式敬礼となる。世界の中で最も尊敬する父親に対し、そして世界で活躍するスペイン軍隊に対し、ゴール後には彼らに敬意を示すために“敬礼”する。どこまでも親孝行息子であり、どこまでも愛国主義者であり、どこまでも超右翼であり、とてつもなくフランコ元将軍を尊敬し、そしてなぜかフットボールもやれる。
「首相であるアスナール(首相はもうサパテロだ!)がイラク行きを自分に命じたなら、今すぐにでも準備を整えるだろう。ビバ!エスパーニャ!。スペインのためになることなら何でもする。ビバ!エスパーニャ!。一人の市民でありながら軍人のように国のために命を落とすことができれば最高だ。ビバ!エスパーニャ!。独立を図ろうとするような分裂主義者がいるカタルーニャなんか大嫌いだ。ビバ!エスパーニャ!。」
ハイ、はい。

「奴は犬のフン以下だ。」
今年の2月、刑務所に服役中のETAテロリストを擁護するようなニュアンスを含めた“法は平等に”という主旨のコラムを発表したオラゲールに向かって放たれた言葉だ(ウッ、ウッ、ウ〜、ドジったか!07/02/10参照)。愛国主義者サルバにとって、カタルーニャ州をスペインから切り離し独立させようという政治的発想を持つオラゲールなどは、まさに犬のフン以下の存在となる。スペイン国旗のイラストが入ったスパイクを履きながらプレーするサルバにとって、“ビスカ!カタルーニャ!”や“ゴーラ!エウスカディ!”などというシュプレヒコールなど許せるわけがない。ひたすら“ビバ!エスパーニャ!”なのだ。

オラゲールがカタルーニャを一歩でも離れると、どこのスタディアムでも暖かいブーイングに包まれてプレーするように、サルバもまた独立色の強い地方に行くたびに強烈なブーイングを受けることになる。マラガでプレーしていた時代、パンプローナでおこなわれたオサスナ戦。観客席には“ファシスト・サルバに死を!”という垂れ幕さえ見られたことがあった。そしてその垂れ幕に向かってサルバは叫ぶ。“ビバ!エスパーニャ!イホ・デ・プータ!”。

2人とも政治的思想を背景としての“確信犯”であるが故に、各地でブーイングを受ける彼らに対して第三者が同情する質のものではない。もし彼らがそれぞれチームの“顔”となるような重要な選手であったなら、“右翼系民族主義者と左翼系民族主義者同士の血湧き肉躍る決戦”として形容されるような試合となるだろうが、幸か不幸か2人とも主役になれるような選手ではない。そもそもグランド内よりはそこを離れてから目立つことが多い選手だ。バルサ・レバンテ戦に出場するかどうかも怪しい彼らは、いずれにしても主役とはならない。この試合での主役、特に試合前の主役、それはひたすら平和な国からやって来たレオ君だ。

近くに両親がいないと泣いてしまうレオ君。バルサが負けてしまうと泣いてしまうレオ君。今シーズンはリーグ戦、チャンピオンズを見続けて少なくても10回近くはテレビの前で泣いているであろうレオ君。バルセロナにやってきてTV3の番組に出演し、笑顔でイムノを歌うレオ君。メディアをとおして招待されてはいるものの、実際のところはクラブ側の意向で実現したものだ。そのことを批判する声がないわけではない。だが、そう目くじらをたてるほどのことでもないだろう。泣くべき場所でタイミング良く泣いた彼に、偶然ながらカメラが向けられ、そしてその写真がメディアを賑わせた。泣き虫レオ君は選ばれる運命にあった少年なのだ。美談は格好のマーケティング材料なり。


ヨロヨロと復帰!
(07/04/27)

充電期間ならぬ放電期間を終えてヨロヨロと日常生活に戻って来てみれば、あらぁ〜、なんとバルサもまたヨロヨロと、相変わらず煮え切らないリーグ戦を戦っているようではないか。どんな試合だったかまったく知らないものの、ビジャレアルごときに負けるようではいけません。

普通は、お互いのチームの実力が接近していてはじめて“熾烈な首位争い”という状況が生まれるというものだ。普通はそうなる。したがって実力的にはっきりとライバルチームを上回っているバルサが、この“熾烈な首位争い”に加わり遊びほうけている状況というのは普通ではない。クラブ史上最悪のチームと言えるカペロ・マドリと、クラブ史上最高のチームと言っても良いライカー・バルサの間にわずか2ポイントの差しかないという状況はどう考えてもおかしい。どう考えてもおかしいが、ここ10日間ほど、バルサのことなど頭の片隅にもなかったから、今はただ“おかしい状況”としておき、犯人捜しは別の機会に回そう。

ボージャン、ボージャン、そしてボージャン。バルサAチーム親善試合デビュー初ゴールを決めた翌日、久しぶりに手にしたカタルーニャの新聞には“ニュー・メッシーの誕生!”などというタイトルが見られた。たかが親善試合に出場しゴールを決めただけでこの騒ぎは異常だ。よほど明るい材料がないのだろう。かつて、まだスタートラインにさえ立っていない多くの若手選手が、メディアの一方的な都合で持ち上げられ、そしてつぶれていった。マリオ、ババンジーダ、ジョフレ、ナノ、サンタマリア、トラッショーラス、エトセトラ、エトセトラ。彼らを持ち上げたければ、少なくても公式試合デビュー後にしたほうが良い。親善試合でのデビューやゴールなどは記録に残らないだけではなく、不幸にもこれだけで消えていってしまう選手にだけ意味あるもの。したがってボージャンにとっては、それほど意味のないゴールとなるだろう。

“ニュー・メッシーの誕生!”、でも、それは違う。勘違いもはなはだしい。メッシーとボージャンは似ても似つかない。もしボージャンを誰かと比較するのであれば、それはラウルを選ぶのがよろしい。ボージャンがこのまま順調に成長し一丁前の選手として認められるとき、その時こそ“ニュー・ラウル”の誕生と言える。

バルサAチーム親善試合に出場したボージャンに関して、個人的に一番嬉しく思ったことは、彼のゴールではなく、サビオラと並んだときにほぼ身長が同じだったこと。これまでバルサBの選手との比較はできたものの、Aチーム選手との比較はできなかった。この試合で彼はサビオラと同じぐらいの背丈だということを発見。そして当然ながらジュリーよりは背が高い。これはビッグニュースだ。


チキート公式発表
(07/04/19)

バルサリーグ優勝決定までの大事な試合が続く中、更なる体力アップをめざしジムにこもって調整してきます。したがって約1週間は更新不可能となります。あしからず。


メディアの影響
(07/04/18)

「いいですか、私はこれまでジャーナリストの方とはお話ししたことがありません。私にしても主人にしても、あなた方とお話しするのは好きではありません。こういうインタビューを受けることは、あなた方の作り出した世界に入ってしまうことになるし、本来なら今でもあなた方とお話ししたくありません。ただ、今回の事件は明らかに一つのリミットをこえてしまっているから、仕方なくお話しているのです。主人は携帯を切って外出しています。私でさえ連絡できない状況になっています。会社にも出勤できない状況です。いったい、今日だけで何本の脅迫電話を受けたと思いますか?数知れない脅迫電話を私は受けているのです。2人の子供たちには家をでることさえ禁じなければならない状況なんです。これが普通のことだと思いますか?すべてあなた方ジャーナリストたちが作りだした状況なんですよ!」
ラーシング・マドリ戦の審判を担当したハビエル・トゥリエンソ・アルバレス氏の奥さんであるアナベレン・アルバレスさん。

土曜日におこなわれたこの試合はニュースでしか見ていない。ただ、試合後のカペロとバロン・デ・オロ、そしてミヤトビッチに対しておこなわれたインタビューは見ている。
「私はこれまでそうであったように、審判に関しては何も触れない。したがって、この試合を担当した審判にも触れることはない。ただ、我々に不利になるような多くのミスを犯したし、それがこの試合でも敗因となったのは明らかだ。」
審判のことには触れないカペロが審判のミスに関してこう触れる。そしてまん丸い顔をしたバロン・デ・オロが現れた。
「俺はペナルティーなんか犯していないと信じている。あれはファールでもないし、ごく普通のプレーだった。このクラブに来て、今まで多くのタルヘッタをもらってきているが、ここの審判は少し異常だと思う。」
ここはカルッチオでもなければ、あなたのプレーするクラブはユベントスでもないのだ。審判を買収したことがすでに証明されている過去2年間のユベントスでは、確かにカードももらわなければファールも示されなかっただろう。

そしてその後、ミヤトビッチが登場。
「我々は怒り狂っている。この大事な試合が審判によってつぶされたのは明らかだ。これまで我々に不利になるような審判の判断は多くあったし、再び今日の試合でもあり得ない二つのペナルティーの笛を吹かれてしまった。常に我々に不利な笛を吹いてきた審判団には何か陰謀があるのではないか、はっきり言ってそう思っている。我々は本当に怒り狂っている。」
まだレアル・マドリの選手だった頃、ユベントス相手のチャンピオンズ決勝戦でオフサイドでの決勝ゴールを決めたミヤトビッチがこう語る。日曜日、マルカ紙とアス紙の一面にはそろって審判のトゥリエンソの文字が見られる。その夜の全国系のフットボール番組では、2時間にわたってトゥリエンソ審判に関する批判討論がされている。これを書いているバルセロニスタでさえ見ているのだから、多くのマドリディスタも当然ながらこの番組を見ているだろう。そして朝に読んだ新聞とこのような討論番組を見終わった結論として、審判が悪い!審判のせいだ!と、こうなる。

一昔前だったか、二昔前だったか、ムンディアルの試合でスペイン代表が審判のミスジャッジで大きなダメージを受けて敗退したことがある。どこ相手の試合だったか覚えていないが、審判はオーストリア人だったかオーストラリア人だったような記憶がある。そしてその翌日、マルカ紙の一面に審判の自宅の写真と電話番号が大きく掲載された。
“ここに抗議電話をかけよう!”
こんな見出しだったかも知れない。恐ろしきかなスペインメディア。

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不透明さを何とかせい!
(07/04/17)

絶好調とは決していえないままここまで来てしまったヨロヨロバルサだから、もう残り8試合だというのに、“クラブ史上最悪のチーム”にわずか5ポイントの差しかつけていない。だが、それでも首位は首位だ。“リーガ最強のチーム”ではなく、“他のチームより悪いところがチョットだけ少ないチーム”が今シーズンのリーグを制覇することになりそうだが、そのチームは、間違いなくバルサとなる。

だが、例え間違いなくリーグ優勝するとしても、ラポルタバルサの不透明さをどうにかして欲しい。そう、このクラブは限りなく不透明なのだ。

サラゴサ戦に敗北したライカーは、試合後二日間の完全休養日を与えている。そして練習が再開された先週の火曜日、負傷中の選手は別として、ロナルディーニョだけが合同練習に参加してきていない。クラブがウエッブページでおこなった公式発表によれば、彼はジムでトレーニングということだった。
「発熱状態が見られるのでジムでの調整」
そして翌日も同じような状況が続くことになる。
「まだ発熱状態が見られるのでジムでの調整」
熱があるというのは症状であって、病名ではない。いったい、なにゆえ発熱しているのか、そこまでは触れられていない不可思議な公式発表。

木曜日、ウエッブページには次のような公式発表がおこなわれている。
「ロナルディーニョは扁桃腺炎にかかっており、復帰まで15日間のリハビリが必要。」
当然の疑問ながら、扁桃腺炎にかかっている人がなにゆえジムで調節していたのか。本来なら自宅のベッドでハァ〜ハァ〜言いながら寝てなければいけないのではないか、それは誰しもが思うところだろう。事実、ロナルディーニョは火曜日も、そして水曜日も、ジムで一人トレーニングなぞしていないことが判明してしまう。両日ともクラブに顔をだしたものの、5分程度で再びクラブを離れていることがバレてしまった。この国にはパパラッチはいないが、選手の使う駐車場をしっかりと見張っているマニアックにしてプロ精神に富んだジャーナリストはいるのだ。

そして金曜日。雨が降る寒々しいラ・マシアにロナルディーニョが久しぶりに登場する。土曜日、この日も小雨が降る中、ロナルディーニョは再びラ・マシアに登場してきている。病人がこんな雨の中でヨロヨロと走り回っていいのだろうか・・・。

ジムで調整しているならそれも良し。病気で倒れているなら「お大事に」。疲労がたまっているなら休みをとれば良い。だが、どのような状態であれ、ファンは本当のことを知る権利がある。選手が負傷や病気状態なら、一方的な対応となるウエッブページなどではなく、クラブドクターが記者会見を開いて質疑応答できる環境で説明すれば良い。今回の“ロナルディーニョ問題”でも、バルサドクターの発言はいっさい公表されておらず、ひたすらウエッブページを通じてのクラブ発表のみだ。1週間みっちり練習していたエトーがサラゴサ戦前日になって突然のごとく負傷状態として公式発表されるように、このロナルディーニョに関する不透明さはラポルタバルサにあって特別なことでもない。

何か意図することがあって不透明にしているのか、あるいは何か隠したいことがあって不透明なのか、はたまた単に対応がお粗末なだけなのか、この不透明さの理由はまったく不透明だ。ファンをバカにするにもほどがある。

ちなみに、19日木曜日の合同練習参加を目的としたロナルディーニョ復活作戦には、マジョルカ戦のあった日曜日をのぞき毎日午前と午後の二回の練習プログラムが組まれている。だが早くもというか何というか、16日月曜日午前の練習には顔を出してきていない。

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バルサ優勝決定!
(07/04/15)

通称“ピトニソ・ピト”という名で人々に親しまれている元ジャーナリストがいる。本名はリカルド・パストール、すでに70歳をこえる年配の人だが、ラジオやテレビ番組によく出ているらしい。元ジャーナリストであり、元シナリオライターであり、元アーチストであったり、元がいっぱいある人だ。そしてフットボールに興味がある人にとっては、リーグ優勝チームを当てる“予想屋”としてその存在を知られている。

スペインの唯一のフットボール雑誌と言っていい“ドン・バロン誌”に、ピトニソがリーグ優勝チームを予想し発表している。すでに39年前から予想を発表しているというから、“予想屋’としては元ではなく超ベテランの現職だ。彼の予想はシーズン開始前とか直後ではなく、シーズン残り10試合となったところで発表されている。つまりリーグ戦28節までの各チームの調子や傾向を分析し、さらに残り10試合にどのようなカードが組まれているかを考察し、それらを踏まえて最終的に優勝チームを予想していることになる。もっとも、彼の大胆なところは優勝チームだけではなく、すべてのチームの順位と獲得ポイントまで予想してしまうところだ。

こういう人がいるというのを知ったのはもう10年ぐらい前。毎年のように彼の予想を見ているはずだが、優勝が決まってしまう頃には彼の存在も、そして予想も忘れてしまっている。だいたい最終節の10週間前に見たり聞いたりした予想など、覚えているわけもない。したがって今回は、リーグ優勝が決まった時に彼の予想が当たっていたのかどうか思い出すために、このコーナーに彼の予想をキッチリとメモしてしまおう。もっとも、その頃にはこのコーナーにそんなことをメモしたことを覚えている保証はまったくないけれど。

39年間にわたって彼がおこなってきた39回の予想で、外れたのはわずか3回だという。最初のペケが1980−81シーズン、2回目が1981−82シーズン、まだ若きバケーロとチキがデビューしたばかりのレアル・ソシエダの2年連続優勝を予想できなかったこの両シーズンと、2003−04シーズンの優勝チームとなったバレンシアを予想できなかったこと、この3回だけらしい。
「レアル・ソシエダが初めてリーグ優勝した1980−81シーズンの予想が外れたのは、バルサに思いがけない事件が起きてしまったからだ。バルサの選手だったキニーが優勝寸前の段階で誘拐され、バルサはその後ボロボロになってしまった。もしあのキニー誘拐事件がなければ、私のバルサ優勝という予想は当たっていたと信じている。」
と、なるらしい。

リーグ戦終了10試合前の予想だから、今シーズンの場合はサラゴサ・バルサ戦前に発表されている。残りの10試合、バルサは地元5試合、アウエー5試合となっている。そしてピトニソ大先生はマジョルカ、レバンテ、ベティス、ヘタフェ、エスパニョール相手の地元試合で13ポイントを稼ぐと予想。アウエーのサラゴサ、ビジャレアル、ソシエダ、At.マドリ、ナスティック戦で7ポイント獲得。これまで貯めてきた56p+13p+7p=77pとなり、そして、そして、セビージャと同ポイントながら直接対決の差でバルサの優勝と予想されておられる。いや、いや、セビージャと同ポイントでバルサの優勝ですか。でも優勝決定はいつの試合となるかは教えてくれない大先生。ひょっとしたらリーグ戦残り3試合ぐらいの時かも知れないし、ひょっとしたら最終戦かも知れない。でも、まあいい、優勝が決まったんだから贅沢なことを言ってはいけない。ちなみに、大先生の予想を見たい人はこちらを。

さて、地元5試合で13ポイント稼ぐには4勝1分けという計算になるが、とりあえずマジョルカ戦は軽く3ポイント頂くことにしよう。さらに、このチーム相手には今週の練習に皆勤となった選手を優先してスタメンとしてみよう。さらに、さらに、練習皆勤スタメン選手のキャラクターに合わせて、システムも思い切って変えてしまえ。


レジェンダス
(07/04/13)

バルサの公式ウエッブページがリニューアルされました、という新聞の記事を読んで何週間かぶりにのぞいて見る。いかにバルサと名の付くところとはいえ、“公式”というものには興味がないから普段は見に行かない。ニュースは大本営発表のものだし、他の内容と言えば、売らんかな商品がショーウインドーに並んでいるようなものだ。クラブオフィシャルウエッブページだろうと、個人・企業がやっている“公式”ショーウインドーウエッブページであろうと、この傾向にはたいして変わりがない。新聞関連のバルサブツはいっぱい持っているけれど、“公式”ユニフォームを一枚も持っておらず、そういうものを欲しいとも思わない人物には、ウエッブページのショーウインドーには興味がない。

で、新しいバルサウエッブページ。以前見たものよりショーウインドーが少なくなり、本来のフットボールクラブらしい親近感を感じる。クラブ側がファンに対して提供しなければならなかった当然の情報がいくつか見られ、内容的にもなかなかよろしい。特に、カンテラサイト的なものが誕生していて、各カテゴリー別に選手紹介されているのは画期的なことと言える。もちろんいくつかの誤りがあるのはしかたがない。ポルテロの選手がデフェンサ登録になっていたり、生年月日が間違っているのもいくつか見かけられるが、シーズンが繰り返されるごとに訂正されていくだろう。何と言っても、まだスタートしたばかりのセクションだから、伝統あるうちのラ・マシアHPに勝負を挑もうというのが間違っている。

“El Club"から"Historia"に行き、そして右上から"Leyendas"というコーナーにたどり着くと、歴史に残るかつての名選手を知ることができる。左側一番上のジョアン・ガンペルさんには残念ながらお会いしたこともないし、プレーしているのをビデオの世界でも見たことはない。一番下のカルラス・レシャックさんにはお会いしたことはあるものの、実際にプレーしているのを見たことはない。というわけで、左側の歴史的な選手は誰一人として見たことがない。そして右側に目を移すと、ようやくこの目で見たことのある選手たちが出てくる。

クライフの下にいるミゲリから始まり、ニースケンスを飛ばした以下の人々はすべて見たことがある選手だ。シュステル、マラドーナ、スビサレッタと続くが、ゲリー・リネッカーの名がないのが寂しい。と言っても、バルサでは特にクライフが来てからはまったく活躍の場を与えられなかった選手だからしかたがないと言えばしかたがない。今で言えばダビッツみたいなエネルギーとファイトの塊みたいだったビクトル・ムニョスの名がないのも寂しい。

そして、アモール、チキとレジェンダは続く。アモール?チキ?アモールとチキ?意外とも言える2人の選手の登場。確かにアモールがデビューしてきた時はとてつもなく新鮮であったし、試合出場数などを見ると歴史的に残る選手ではあるものの、レジェンダという雰囲気ではない。クライフの一番のお気に入り選手だったチキも非常に良い選手だったとはいえ、大試合には超ダメ選手と変貌してしまう癖があった。もちろん2人とも良い選手、だが、それだったら、エウセビオやゴイコやナダルやチャッピーやセルジだって選ばれても不思議ではない。しかも、選ばれるべき肝心の2人の選手が抜けてしまっている。アレサンコとバケーロ、彼らこそアモールやチキをこえたところで選出されなければならない選手ではなかっただろうか。ここらへんがよくわからない。

そしてクーマン、ペップ、ストイチコフ、ロマリオ、ロナルド、ガッツ、リバルドと続くが、ここの時代でも何人かの重要な選手が抜けている。ラウドゥルップ、フィーゴ、コクーの3人、この方々を抜かすのはいかがなものか。

クライフバルサにあって最高のテクニックとスペクタクルを提供してくれたのがラウドゥルップ。大試合に消えてしまうところやゴール数が少ないという弱点はあったものの、テクニックに関してはストイチコフやクーマンでも勝てない選手だった。そしてペセテロと名を変える前のルイス・フィーゴ。20年近く見てきたバルサの中にあって、そしてスペインリーグの中にあって、最も優秀なエストレーモ選手。だが、それとは別に、苦しい試合展開となった中で、唯一と言っていいほどチームを引っ張り、決して逃げ隠れしない貴重な選手だった。その精神は彼が一緒にプレーしていたペップやリバルドのそれとは比較できないものだ。彼らがレジェンダとして選ばれなかった理由がマドリ移籍というものであるならば、それはクラブ史をごまかす行為と言える。歴史を曲げてはいけない。

そしてフィリップ・コクー。暗い時代にあって、例外なく常にユニフォームに汗を染みこませた選手。そして何よりも、自分が見てきた外国人選手の中で、最もチームカラーを感じさせてくれた選手だった。


何を考える、ライカー
(07/04/12)

フラン・ライカー監督が今シーズンをもって辞任するのではないか、という噂はもうすでに何か月も前からある。数週間前の記者会見で「来シーズンも続投したい」という彼の発言があっても、噂そのものは消えることはなかった。この大事な時期に、続投肯定はあっても否定などあり得ないだろう、という発想は的を得ている。チーム成績が二進も三進もいかない状況ならともかく、何らかのタイトル獲得が可能となっているこの時期に辞任を臭わすような発言などあり得ない。したがってライカーが何を言おうが、今シーズン限りでの辞任という噂は消えることない。

辞任噂の根拠となっている要素は各種豊富にあるようだが、精神的な疲労がその最大の理由ではないかと言われている。これまでビッグクラブでの監督経験がなく、いきなりバルサにやってきて早4年。カタルーニャ平和軍バルサの指揮官には、メディアを中心として毎日のように大きなプレッシャーが襲いかかる。古巣ミランからやって来る美味しいオファーに酔いしれてしまったわけではなく、すべてのプレッシャーから解放され、将来に向けた充電期間としても、ひたすら休息を望んでいるのではないか、という推論はけっこう納得できるものだ。そして彼の精神的な疲労が、これまでどうにか保ってきた選手たちに対する統率力を弱めてしまったのかも知れない。

20人以上のチーム登録選手の中に、お山の大将選手が何人もいる複雑なベンチ事情。その何人かのお山の大将共は揃って独立した行動をとっているし、クラブ関係者やスタッフテクニコもそれを許している。例えば、ファンの前に顔を出さない2人の選手。エトーは1月15日の記者会見を最後にしてファンの前に登場していない。ロナルディーニョは1月26日に登場して以来、姿を消している。こんなことは今まで許されなかったことだ。だが、選手間に波風立たなくすることでチームが一致団結すること、それが成功の秘訣だと考えるライカーだから、どんなことがあっても選手批判をしたことがない。しかも、ゴールが枠内に入り、試合に勝利し続け、期待どうりの結果が出続けている限り、ベンチ内の問題はどうにか処理できるものだ。少しぐらい練習に顔を出す回数が少ない選手がいたとしても、プライベートな問題を抱えている選手がいても、結果がでている限り問題とならない。だが、その結果がでないとなると今まで問題とならなかったことが重要な問題となってくる。

2年連続リーグ優勝を果たしただけでではなく、クラブ史上2回目のチャンピオンズを制した選手たちに、色々な意味での変化が起きたとしても不思議なことではない。モチベーションの変化、勝利に対する意欲の変化、結束したグループを維持しようとする意識の変化、練習に対する意欲の変化、そして、選手だけではなく彼らを指揮する監督にも何らかの変化があったとしても、これもまた不思議なことではない。異例の長期クリスマス休暇を選手にプレゼントしたり、週一の試合スケジュールとなり、今こそ練習に励むというチャンスを得たのに、週二日の完全休養日を与えるというのはこれまでのライカーバルサでは考えられないことだ。このことでもライカーの疲労が感じられるといっても、大げさな発想とはならないだろう。

休み明けの火曜日。二日間発熱、二日間ジム掃除、試合前の一日あるいは二日間練習参加というスケジュールを守っているロナルディーニョは、練習にはでてきていない。いつものごとく家庭内の重要な問題を抱え続けているデコは“クラブの許可”とやらをもらってバルセロナにさえいない。いったいどこがどう負傷しているのかもはっきりしないエトーは、カンプノウで5分間ほど走り込み、その夜はテレビ番組にゲスト出演し再び言いたい放題だ。ここ最近3か月、エトー、ロナルディーニョ、デコという3人のクラック選手が3日間以上一緒に練習したことは一度もない状況から考えると、それほど不思議な風景でもないところが恐ろしい。そして、この恐ろしげな風景を作り出した“犯人”たちを、ひたすら選手たちとするメディアには個人的にはまったく納得いかない。それを“許可”してしまっているスタッフテクニコやスポーツ・ディレクター、そしてクラブ首脳陣たちこそが、責任をとらなければならない問題だと思う。

水曜日に見たライカーのインタビュー。いつもどおり冷静で何事もなかったかのように淡々と語るフラン・ライカー。すでに辞任を決意しているのかも知れないし、あるいはその逆かも知れない。すでに来シーズンの構想を練っているのかも知れないし、1年間の長期バケーションのことを考えているのかも知れない。彼だけではなく、ロナルディーニョにしてもデコにしてもジュリーにしてもマルケスにしてもエドゥミルソンにしてもモッタにしてもジオにしてもシルビーニョにしてもベレッティにしてもグディにしてもエスケロにしても、そしてサビオラにしても、すでに来シーズン以降の身の振り方を考えているかも知れない。だが、まだシーズンは終わっていない。不思議なことにリーグ優勝も決まっていない。とりあえず、残り9試合のリーグ戦を真剣に取り組む姿勢があることを見せるべしなり!

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セマーナ・サンタ
(07/04/10)

スペインでのセマーナ・サンタ(聖週間)は全国的にはフエベス・サント(聖木曜日)から始まり日曜日をもって終了する。だが、カタルーニャではビエルネス・サント(聖金曜日)からスタートし、ルーネス・サント(聖月曜日)で終わる。したがって今週の月曜日は祭日となっている。

ルーネス・サントにおこなわれる習慣的な行事は、モナと呼ばれるケーキ(最近ではほとんどがチョコレート)をプレゼントすること。元々は、名付け親だとか、結婚式での付添人たちが、その子供たちにプレゼントすることになっているようだが、そんなこととは関係なく、一般的に大人が子供たちにプレゼントする傾向が強いようだ。そしてこの地域ではやはり子供たちに与えるバルサの影響力が圧倒的に強く、最近ではモナもバルサ関係のものが増えてきている。例えば、バルサエスクードを形をしたチョコレートであったり、バルサの監督や選手のそれであったりする。もちろん今年のルーネス・サントでも多くのバルサ系モナが子供たちの手に渡されている。そして、今年のモナプレゼントでは、次のような風景が見られたのであった。

ロナルディーニョの姿をしたモナをもらった子供
「ママ、見て、このチョコレートも本物と同じように全然動かないよ!」

デコの姿をしたモナをもらった子供
「ママ、見て、この人はよく女性週刊誌に出てくる人だよね。」

エトーの姿をしたモナをもらった子供
「ママ、見て、このチョコレートは口がパクパクよく動くよ。」

バルデスの姿をしたモナをもらった子供
「ママ、見て、これって立ったままの直立不動チョコレートだね。」

プジョーの姿をしたモナをもらった子供
「ママ、見て、このチョコレートから凄いエネルギーみたいなものが伝わってくると思わない?」

トゥランの姿をしたモナをもらった子供
「ママ、見て、このチョコレートは期限切れみたいだよ。」

メッシーの姿をしたモナをもらった子供
「ママ、見て、右足がなくて左足だけのチョコレートで、しかもクルクル回るよ。」

マルケスの姿をしたモナをもらった子供
「ママ、見て、この人もいつも女性週刊誌に出てくる人だよね。」

オラゲールの姿をしたモナをもらった子供
「ママ、見て、僕はバルサの選手のチョコレートが欲しかったんだ。この人は政治家でしょう?」

チャビの姿をしたモナをもらった子供
「ママ、見て、このチョコレートは透明だよ。」

ジュリーの姿をしたモナをもらった子供
「ママ、見て、こんな小さいチョコレートじゃなくて、もっと大きいのが欲しかったのに。」

イニエスタの姿をしたモナをもらった子供
「ママ、見て、僕が欲しかったのは普通の黒いチョコレートで、ホワイトチョコじゃなかったんだ。」

ライカーの姿をしたモナをもらった子供
「ママ、見て、この人、長椅子で隣の人に寄りかかって寝ているよ。」


金返せ!
(07/04/09)

12ユーロもPPVにつぎ込んで、こういうシーズン最悪の試合を見せられたファンは、試合後に何をほざいても許される。監督に対してであろうが選手に対してであろうが、何をどのように批判しようが、それはすべて許される。

試合開始1時間前にスタメン11人のバルサ選手の名前が発表。何とも嫌な予感。こりゃあ、また懲りずに3−4−3ではないか。国王杯サラゴサ戦で30分程度だけ“ビックリ効果”のみを持って機能したこのシステム。その後のリバプール戦、マドリ戦を思い出すまでもなく、このスタイルは現在のバルサの選手には似合わないということははっきりしている。超攻撃的というニュアンスとはまったく別の超守備的、超アンバランスなものであり、しかも相手にボールを渡しては何の意味もないシステムだ。そしてスタメンにオラゲールが選ばれてサンブロッタがベンチというのはフットボールに対する冒涜でもある。

3−4−3などというシステムをこの試合で起用しようと主張したのが誰か、ということには興味ない。もしテン・カテがいればという、答えの出ようがないことを議論しても意味がない。誰がコーチであろうと、最終的な結論をだすのは監督であり、結果がでなかった際の責任はすべて監督にある。したがって、試合後にこの敗戦の罪は誰にあるかと聞かれて
「この試合に出場した10人以上の選手の責任にするよりは、自分1人としたほうが簡単。」
と皮肉っぽく語ったライカーだが、聞いている方にとっては皮肉でも何でもなく、まさにその通りという印象。だが、それでも、彼1人が悪いというわけでもない。

いつものように練習に2回しか参加してこなかった1週間。練習にでなくてもジョレッダマルという町でおこなわれた自らのウエッブページ宣伝には元気に馳せ参じたロナルディーニョ。
「敗戦は悔しいが、来週からみんなでもっと練習してやり直しだ。」
ファンをバカにしてはいけない。12ユーロ返せ! 第二カピタンがこうなら第三カピタンも次のように語る。
「闘争心ややる気がなかったという批判は受け付けられない。みんな一生懸命やったと思う。」
ファンをバカにしてはいけない。12ユーロ返せ! いったいチャビはどこで何をしていたのか。イニエスタは、マルケスは、デコは、メッシーは、ジュリーは、いったいみんなどこで何をしていたのか。

レアル・ソシエダ監督時代かレアル・マドリ監督時代かは忘れたが、かつてベンジャミン・トシャックが、敗戦した後の監督の気持ちとはこういうものだと語っていたのを思い出す。
「月曜日、火曜日には前回の試合で出場した選手をすべてベンチに下げてやろうと思いながら練習を指揮する。だが、水曜日、木曜日あたりになると、全部を代えたら大変だから、だらしないプレーした誰々と誰々だけをベンチに下げてやろうと思いながら練習を見ている。そして金曜日、試合前日の土曜日となると、やはり前回の試合で出場した選手たちがベストメンバーに思えてきて、試合当日には前回とまた同じメンバーを選ぶことになる。負けたあとの監督なんてこんなもんだ。」
だが、月曜日、火曜日のファンの思いはベンジャミン・トシャックが語るものよりさらに広がる。
「ひょっとしたら、監督も代えた方がいいんではないかい?」

太っ腹ライカーはこのだらしない選手たちに二日間の休みを提供している。つまり日曜日、月曜日は練習なしというスケジュールを組んでいる。ロナルディーニョとデコだけはサラゴサ戦後、みんなが乗って帰るバルサバスに乗らずに、友人たちと一緒の車でそれぞれどこかへと消えている。そろそろカピタン・プジョーの怒りが爆発しそうな予感。そして木曜、金曜あたりになると、サラゴサ戦のことはスッキリと忘れて、日曜日のマジョルカ戦大勝利を期待している自分も予感。


アニモ!マルケス!
(07/04/07)

マルケスの笑顔が何とも気に入っている。笑顔に負けず劣らずあの優しい目も良い。だが、最近、テレビカメラに映る彼の顔から笑顔があまり見られない。

クラシコの戦い以来、マルケスの姿がグランドから消えてしまった。3月10日のマドリ戦以来、彼は試合に出場していない。少なくともここ2シーズン、ライカーバルサを構成するためにはなくてはならない選手の1人だった彼が、今シーズンはイマイチのまま今日まで来てしまっている。その彼が、マドリ戦の次のウエルバ戦に招集されず、そしてデポル戦でも観客席からの応援組の1人となった。

「フィジカル的には何の問題もないと思っている。だが、今シーズンの自分のプレー内容はいつになくイレギュラーだということも事実だろう。いくつかの致命的なミスを犯してきたことも認めなければならないし、自分に対する批判があることも知っている。そう、確かに最高のシーズンをおくっているとはいえない。だが同時に、自分にとって最悪のシーズンとも言えないと思う。今回、メキシコ代表の戦いに参加するために短い時間ながらバルセロナを離れ、気分的には非常にリフレッシュして戻ってきた感じだ。」
サラゴサ戦を前にしてそう語るマルケス。彼の表情にはほんの少しながら笑顔が戻ってきている感じがする。

「我々選手たちは決して機械ではない。これまで常識をこえた数の試合を消化してきたことに加え、ムンディアルが開催された年でもある。しかも、何人かの選手や監督自体も認めているように、プレステージは決して理想的なものとは言えなかった。誰に責任があるのかなんていうことには興味はないが、一つの事実として、プレステージの段階から、まずいスタートを切ってしまったのは間違いのないことだろう。」
今シーズンが始まる前にはムンディアルがあった。そして今シーズンが終わったあと、メキシコ人である彼にはコパ・アメリカが待っている。ロナルディーニョ、エドゥミルソン、メッシーにしても同じだ。そしてマルケスにはコパ・アメリカの前にコパ・オロ(何じゃこれ?)というのが待っている。

メキシコ代表が参戦するわけのわからないコパ・オロは、6月6日から24日まで開催される。そしてそのわけのわからないコパが終了してから2日後の26日からコパ・アメリカが開催される。バルサの最終戦は6月17日のナスティック戦。そして国王杯に最後まで残ることになると、その決勝戦がおこなわれるのは6月23日。もうマルケスの持つスケジュール手帳はゴチャゴチャになっている。
「それでも、バルサの試合を最優先したい。」
優等生の多いバルサ選手の中にあって、思ったことをサラリと言ってのけるマルケス。したがって、彼の言葉には真実味が感じられる。

昨シーズンまでは考えられなかったことだが、今シーズンの彼はこれまで試合招集メンバーに入らなかったことが5回もある。28試合消化した段階でスタメン出場したのが19試合。これも例年に比べれば少ない。
「立ち止まることが許されない環境にあるなら、それを受け止めるしかない。今年の夏も長くて2週間、短ければ1週間程度の休みしか取れない可能性がある。でも、誰に文句を言ってもはじまらない。今シーズンよりも自分らしいプレーができるように、来シーズンは頑張りたいと思う。」
ベテラン選手ながらまだ28歳の誕生日を迎えたばかりだ。プライベートな問題をスッキリとさせ、そして満足ゆくプレステージさえおこなえれば、かつてのマルケスが戻ってくるかも知れない。

もし勝利することができれば、リーガ制覇に向けて大前進となるサラゴサ戦。この大事な試合に久しぶりにマルケスが招集された。再びあの笑顔が見られるように、スエルテ!マルケス!


欺されちゃあいけない
(07/04/05)

エトー、メッシー不在中、バルサをどうにかこうにか救ってきた選手たち、それはビクトル・バルデスであり、カルラス・プジョーであり、70%ロナルディーニョであり、そしてアンドレス・イニエスタだ。特にイニエスタの大活躍は誰もが認めるところだろう。一時的にライカーを狂わせた3−4−3システムにおいて、時には左右ラテラルの位置までスペース埋めに走り続けた彼のプレーは印象的でさえあった。あのキャシャに見える体からは想像できないほどのエネルギーを持つアンドレス・イニエスタ。

「みんな欺されるんだ、あの白い肌とキャシャに見える体つきに。だが、彼と対戦したことがある選手や、特に我々みたいに一緒に練習をしている者には、すでにわかっていることさ。欺されちゃあいけない。ヤツはとてつもなく強靱なフィジカルを持った選手だ。あたりに対する強さは並じゃない。」
ポジション的には同じセントロカンピスタ、そしてラ・マシア練習場での仲間、デコがそう語る。

フィジカルトレーナーとして、スペイン内だけではなく、ヨーロッパ各国でも名声を誇るバルサ・フィジカルトレーナーであるパコ・セイルーロ。その彼がここ何年かのイニエスタ専用フィジカルメニューを作ってきた人物だ。
「欺されちゃあいけない。あたりに対する強さだけではなく、タフさ加減も相当なものだ。一試合で彼の走る距離はデコ、あるいはチャビと同じかそれ以上の長さとなっているのがその証拠だ。陸上競技でいえば、長距離走者としてもじゅうぶんエリートコースを歩いていける選手だろう。しかも彼が単なる長距離走者と異なるところは、瞬間スピードを短距離走者並みに備えていることだろう。つまり、持久力はもちろん瞬発力にも素晴らしいものを持っているということだ。」

デポル戦。イニエスタは前半の最初に、カッデビラにスパイクで足を踏まれている。負傷を招くほどの痛々しいファール。それでも後半途中まで痛みを我慢してプレーし続けている。だが、もう自分で限界と感じた74分、ライカーに交代の要請をした。足を踏まれてから約1時間、表向きには誰も彼が負傷していることなど気がつかないほど“普通”にプレーしたイニエスタ、彼はそういう選手だ。ヤツは人を欺すのが得意なのだ。だが、負傷自体はごまかせない。デポル戦後初の練習日となった火曜日の合同練習に参加してきていない。ロナルディーニョにジムの鍵を借りて、1人ジムでの調整をしている。

「テクニック的に優れたセントロカンピスタによくあるラストパス専門の選手と思っちゃあ欺されていることになる。確かにゴレアドールではない、が、ゴールに対する嗅覚も捨てたもんじゃない。そして、例えゴールとならなくとも、必ずゴールを狙える必要な位置にいる生まれついてのセンスを持っている。早いところ契約の見直しが実現すると良いと思っている。」
そう語るライカー監督は、1年前のラポルタの約束を忘れていない数少ない人物だ。

2004年、イニエスタはバルサとの契約期間を2010年まで延長する新たな契約を結んだ。契約期間は延びたが年俸はお粗末なものだ。なぜなら、チキ・ベギリスタインが語る3ランク(クラック、良い選手、普通の選手)の一番下のランク付けとなっているからだ。そして2006年、サンドニでのチャンピオンズ優勝後、ラポルタ会長はイニエスタへの契約見直しをメディアに発表している。だが、どうしたことか、その発表から約1年たった4月現在、契約見直しの交渉さえ1回もされず、闇の中に消えたアイデアとなっている。そのことをライカーは言っている。

これまで見てきたカンテラ選手の中で、年俸交渉で揉めたのはグアルディオラとプジョーの2人ぐらいなものだろうか。もちろんメディアをとおして揉めているという事がわかった選手ということだけで、内部的に揉めた選手は彼ら以外にもいるかも知れない。だが、伝統的にクラブ首脳陣にとって彼らは“クラブの選手”という認識があるし、ファンにもそういう傾向がある。

例えそういう傾向があろうとも、活躍度に見合った年俸を受け取るべきだろう。ジオやシルビーニョ、ベレッティ、そして今またロナルディーニョ、みんなが“幸せな気分”を勝ち取ったというのに、最下位ランクにいるイニエスタがそのままで良いわけがない。人を欺すのが得意なイニエスタだが、欺されちゃあいけない。


メッシー、ロマリオ
(07/04/04)

レアル・マドリ戦の前日に記者会見場に登場したレオ・メッシー。通常であれば彼をマークするであろうロベルト・カルロスが、負傷のため出場できないことに関して聞かれている。
「彼が出場してこない?それは知らなかった。でも、彼の代わりに誰かでてくるのだろう。」
そりゃあ、誰か出てくるに決まっている。だが、誰が彼をマークしようがそんなことには興味がないメッシー。

ロベルト・カルロスが負傷したのはクラシコ戦のずいぶん前のことだ。メッシーは文字を眺めるのが好きではないから、本はもちろん新聞にもあまり目を通さない。他の選手や普通のファンの人々がメディアをとおして知っていることでも、メッシーは知らなかったりすることがある。しかも、誰が彼をマークしようがそんなことにはまったく興味ないようだ。それは、現在注目されている選手や、かつて素晴らしい成績を残して、フットボール史に名を残している人物に関しても同じだ。
「アビダル入団の噂?う〜ん、その選手知らない。」
「アリゴ・サッキ?その人は何かのタイトルを獲得したのかな?」
彼は文字やビデオからではなく、自分が直接に経験してきたことが知識の基本となっている。したがって、対戦したことのない選手に関してはほとんど知らない。サッキ・ミラン時代にはまだ赤ん坊の彼であり、サッキがAt.マドリの監督をしていた時代にはラ・マシアにいたので彼を知っている。したがってメッシーにとってサッキという監督はダメ監督として認識されているようだ。

マークする選手が誰であろうとそんなことは関係ない。そのことでかつてバルサに在籍していたロマリオを思い出す。バルサカピタンであったスビサレッタの回想録を読んだ時にも同じようなことが書かれていた。
「ロマリオのデビュー戦となったソシエダとの試合前に、彼は相手選手に関して何も知らないだろうから、色々と相手選手の特徴を説明してあげた。カピタンとして当然の仕事だからね。彼をマークするデフェンサ選手、そして特にポルテロのアルベルトの特徴をこまかく説明してやったんだ。一対一の勝負に強いポルテロであり、その際にはデランテロが来るのを待つと言うよりは逆に突っ込んでくるポルテロ、エトセトラ、エトセトラ。一応の説明が終わった時に彼は俺にこう言うんだ。
『何かい、カピタン、俺にゴールを決めるテクニックを教えようとしているのかい?俺は相手選手のことなんかには興味がないんだが・・・。』
そして、試合を重ねるごとに彼の言葉が見栄を張ったものではなく、本当に相手選手なんかどうでもいいと思っていることが自分にもわかった。」
かっこいいぞ、ロマリオ。

これまで、マラドーナ、アーチバル、シュステル、ウリスト、ラウドゥルップ、クーマン、ロナルド、フィーゴ、リバルド、エトセトラ、エトセトラと、見ている者にとってはワクワクさせてくれる選手を何人も見てきたが、そして不思議なことにすべて外国人選手だが、その中でもロマリオとメッシーは特別な存在という気がする。デビュー戦、あるいは初ゴールの強烈な印象を残してくれた選手たち。例えば、ロマリオのデビュー戦、ハットトリックとなったソシエダ戦でのペップからのパスを受けてのバセリーナ・ゴール。そしてメッシーの初ゴールとなったバセリーナ・ゴール。これらのゴールはいまだに目に焼き付いている。おっと、ロナルディーニョのカンプノウデビュー戦ゴールも忘れられない。

メッシーがスタートーしたばかりの選手だとすれば、ロナルディーニョは旬の選手、そしてロマリオは長い道のりを経てやっと最終地点であるゴールラインに入ろうとしている選手。4月4日水曜日、念願の1000ゴールの偉業を達成するチャンス、それも再びマラカナを舞台としてのチャンスが訪れた。

偉業を達成したあとのロマリオは、とりあえずインタビュアーとなる。すでにブラジルのテレビ会社との契約も済ませており、ヨーロッパで活躍するブラジル選手相手のインタビューが彼のデビュー番組となる。ロマリオ・ロナルディーニョ対談は6月のバルセロナでおこなわれるようだ。

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美しい兄弟愛
(07/04/02)

「バルセロナの街にもクラブにも非常に満足しているからバルサに残りたい、と我々にはいつも言っている。だから彼が他のクラブに行くことはないだろうと思う。幸せは金では買えないからね。」
ロナルディーニョの移籍噂に関して聞かれたイニエスタはこう答える。
幸せは金では買えない、そう、それはよく聞くセリフ。だがそれは、金に困っている人たちが見栄を張って言うセリフであると同時に、金をじゅうぶん持っている人々の余裕のセリフでもある。そして収入が増えれば、幸せになるかどうかは別として、幸せな気分になることは間違いない。

例えば、年収800万円のサラリーマンが年収1200万円に跳ね上がれば、とてつもなく幸せな気分になる、というのは理解できる話。そして、年収800万ユーロ(約12億円)を稼いで経済的には余裕の人生を歩んでいる人でも、年収1200万ユーロ(約18億円)となれば、やはりそれなりに幸せな気分となるのだろう。こういう数字となると、たいして金を持っていない人間には計り知れない世界となるが、それでも想像することはできる。そして今、その幸せな気分になりたい、なりたい、なりたいと思っているのがロナルディーニョ兄弟だ。

ロナルディーニョ兄弟会社の企画する“なりたい、なりたい“作戦は、実に巧妙に進められている。バルサに対するプレッシャー対策として選ばれた素材はミラン、それはかなり前から決まっている。インテルに主役の座を奪われ、ミラニスタを喜ばせる明るい材料が必要なベルルスコーニ・ミラン。誰々の選手も30何歳の誕生日を迎えました!という寂しい話題ばかりではミラニスタも黙っていないし、新聞も売れない。それはバルサに主役の座を明け渡してしまった“カカ欲しい”マドリ作戦と同じだ。カカ、C.ロナルドの話題がでるたびにマドリディスタは大喜びし、そしてマルカ、アスの売れ行きが伸びる。ロナルディーニョ移籍話題満載の先週のカルッチオメディアの売れ行きは、普段の倍になったという。兄営業マン、クラブ、メディア、みんな満足。

いかにミラン選手リベイラの代理人とはいえ、それほど用もないのに兄営業マンはマメにミラン訪問をしている。そしてそのたびにイタリアメディアに流れる弟移籍噂話。
「ミランは高額な移籍料を支払う用意があるようだ。」
「2週間もすれば、ロナルディーニョはミランの選手になるだろう。」
この兄営業マン発言の見出しで、暗いミラニスタの顔が明るくなり、そしてグイ〜ンとイタリアの新聞が売れる。営業活動を終えたその翌日、ラ・マシアでの練習に顔を出す兄。
「弟はバルサもこの街も気に入っている。」
イタリアでバルサにプレッシャーをかけたあとは、すぐにバルセロナにやって来るシナリオはいつものことだ。
「さあ、それではクラブ側はどう対応してきますか?」
とはもちろん言わない兄に代わって、練習後に弟がコメントする。
「自分はバルサに満足しているし、早く問題を解決して欲しい。」
問題?問題?いったい問題とはナニ?

ロナルディーニョとバルサが結んでいる契約は年俸800万ユーロで期間は2010年まで。記憶に間違いがなければ、今年はまだ2007年であり、契約が切れるまで3年もある。唯一考えられる“問題”は、かつてラポルタが年俸1200万ユーロ、2014年までという新オファーをだそうとしたことだろう。それはあまりにもソシオに受けの良くないオファー内容だったため、いつのまにか影をひそめてしまった。

ロナルディーニョの広告収入はバルサの年俸の倍。赤ちゃんから老人まで、幅広く受けの良いあの明るい笑顔に代表されるイメージが彼の武器だ。したがって、かつてのペセテロのように、ダークなイメージでクラブを去ることはできない。そしてライカーバルサのサイクルが終わるであろう2年後まで、まだじゅうぶんにバルサで通用する選手。クラブがすることは、2014年まで契約期間を延ばすことではなく、残りの2年間だけでも愛する兄弟を少しだけ“幸せな気分”にさせてあげることだ。いくらぐらいの金額が懐に入れば“幸せな気分”になるのか、そこら辺をよく話し合うのがよろしい。


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