12月23日



バルサ、いったい何をしたいのだ?

強烈なシベリア寒波もダービー戦を凍らせることはできなかった。それぞれ違う意味で「明日のための勝利」を義務づけられた2つのチームによる戦いは、審判の開始の笛と共にいきなり熱いものとなった。チャビの不在によりコクーとクリスタンバールによる2人ピボッテ、その後ろにはガブリ、プジョー、デブー、ココの4人のディフェンスが控えている形でスタート。ピボッテの前には左右にジェオバンニとオーベルが広がっているバルサであった。前半はビジャレアル戦に比べれば、圧倒的に中盤での強さを見せたバルサであるが、左右のウイングが機能していないのも確かであった。ジェオバンニとクライハートが決定的なゴールチャンスを見事に二人とも外す。

後半に入り、前半のバルサは姿を消しパコ・フローレスの戦う精神に導かれた11人のペリーコたちがグランド狭しと走り回る。ボールを奪う執念、そしてタムードのゴールへの執拗な執念がエスパニョールの勝利を誘う。システムがどうのこうの言う以前の問題として、バルサの選手の不甲斐なさが全面に出てくる後半。ゴールのチャンスではない場面で相手にゴールチャンスをプレゼントしたデブーとボナノ。すっかり姿を消したオーベルとクライハート。レシャックの「発明」に勝ったフローレスの戦う精神。しなければいけないことを理解していた11人のエスパニョール選手に比べ、何をしようとしているのかが伝わってこない11人のバルサ選手。あらゆる観点から見ても、このまま続けるわけにはいかないだろう。何か変化が必要だ。

冷静さを装うレシャックだが、もちろん敗北によるショックは隠せない。エスパニョール相手に負けるという重大な意味を理解している、数少ないカンテラ出身の監督である。バルセロニスタが気分の重いクリスマスを送らなければならなくなったことをじゅうぶんに承知している。
「バルセロニスタが残念に思っているのは良くわかっている。だが我々は来年に関しては希望を持っている。負傷者もそろそろ戻ってくるし、ほんのチョットの幸運が我々に訪れてくれば2、3試合の結果で首位戦線にくい込むことができるだろう。今日の我々の敗北は自分たちでゴールを入れてしまったんだからどうしようもない。本当に間抜けなプレーだった。もし80分にわたって試合を支配したとしても、10分の相手の攻撃で負けることもある。だが今日の試合は今までのダービー戦でもっとも簡単に勝てる試合だったと今でも思っている。特に前半に関していえば楽な試合展開だった。でも相手ゴールの得点を決めるのではなくて、自陣にゴールを決めるようなことをしてしまっては勝てるわけがない」

デブー「こんな結果になって非常に落胆している。この試合は重要な試合だったし、我々は勝てると思っていた。運がなかったのかな」

ボナノ「こういう形でのゴールを決められたのは生まれて初めてのこと。本当に説明のしようがないプレーだ。運がなかったと言ってしまえばそれまでだけど、タムードの働きを認めなくてはならないだろうね。デブーとどっちに責任が多いかって?そんなことはどうでもいい。」

コクー「我々は優れた選手がたくさんいるんだから、シーズン後半に期待してもらいたい。リアクションする時間は有り余るほどあるんだ。」



タムードの1人舞台

ユニフォームをはぎ取りながら走り続けるタムード。バルサ戦で初のゴールを決めたあと、彼は満身エネルギーの固まりとなりながらエスパニョール応援団が陣取る観客席に向かって走っていく。ゴールを決める執念が生んだ貴重な1点だ。ペリーコにとって、タムードがアイドルとして存在するのはこの執念があるからだ。サンタ・コローマで少年時代を過ごしたタムードをエスパニョールが目をつけ獲得した時、その「移籍料」はたった6個のボールだった。そう、たった6個のボールと交換で来た選手。エスパニョールがバルサ相手に、初めてのモンジュイクでの勝利をあげる立て役者となったのは、そのタムードだった。そして彼自身も初めてバルサ戦でのゴールを獲得する。それはペリーコに捧げる豪華なプレゼントだった。

試合後のフローレスはさぞや有頂天になっているかと思われたが、そうではなかった。彼にとってこの1勝は、何回か訪れたマッチボールを再び防いだことに過ぎなかった。バルサに対し完璧にうち負かしたと思うかという質問に対し、それほど大げさなことではないというフローレス。
「完璧に勝ったなんて思ってはいない。バルサにも彼らなりのチャンスがあり、彼らはそれを決められず我々はそれをものにしたということに過ぎない。唯一言えるであろうことは、我々は体力的に彼らに優っていたという事実だろう。その他の部分、例えばテクニックだとか、守備力、攻撃力というものはもちろん彼らの方が上だ。だが時間の経過と共に、我々が得意とする武器、例えば強いプレッシャーなどで、彼らを追いつめていくことができた。タムードはもちろん、すべての選手に10点をあげたい」

タムードは間違いなく、彼1人でエスパニョールの半分ぐらいは背負っている選手だ。昨日の2ゴールにより今シーズンすでに8ゴールを決め、自己最高の11ゴールに早くも迫っている。試合後、いつものようにすべてのエネルギーを使い果たし疲労困憊となったタムードが試合を振り返る。
「デランテーロとしてはあたりまえのことをしただけ。常にボールを追いかける、そうすれば何が起こるかわからないのがフットボールだからね。幸運は探さないとやって来ないさ。あのゴールも2点目のゴールも、すべてわれわれのを応援してくれているファンに捧げたい。これで彼らにとって、そしてもちろん我々にとっても楽しいクリスマスとなった。」