3月18日



地獄へようこそ!

ルイス・フィーゴが白いユニフォームを身につけてカンプノウに来たときの、そう、あの10万観衆による壮絶なブーイングが明日のバルサの選手全員に浴びせかけられるだろう。アリ・サミ・イエンに集まる2万2千5百人の愛国者たちによる絶叫が、90分間にわたってバルサに襲いかかる。まるで「地獄にようこそ」と言ってるかのように。

イスタンブールにあるガラタサライのスタディアム、アリ・サミ・イエンは、バルサがこれまで経験してきたトルコの他のスタディアム、ベシクタスやフェネルバッチェとは比較にならない。そこはビジターにとってまささに「地獄」と呼ぶに相応しいスタディアムだからだ。1999年10月20日、チェルシーが0−5でガラタサライを破ってから、実に20試合も続けてヨーロッパ戦負け知らずを記録している。このうち14試合に勝利、その中にはミラン(2−0)やマドリ相手(3−2)の試合も含まれている。

このアリ・サミ・イエンには通常2時間前から人々が集まってくる。試合2時間前だ。そして彼らの歌「イインボン・ガラタサライ・ガラタサライ・カンペオン」が歌い続けられる。このチャンピオン・ガラタサライという歌が延々と試合終了まで歌い続けられるのだ。そして試合開始ともなれば、相手選手に対する侮辱的なヤジとブーイングが、特に相手選手がボールを支配している瞬間に投げかけられる。彼らはまさに「12番」目の選手として試合参加している。

元サラゴサの選手であり、現在ガラタサライのキーパーを務めるモンドラゴンが語る。
「もしカンプノウがここみたいな応援を毎試合受けていたら、間違いなくバルサは世紀を通してチャンピオンになっているだろう。だが勘違いしてもらっては困る。ここでは死人は出ないし、これまで問題が起きてスタディアムが閉鎖された歴史はない。単純にパッション・トゥルカなんだ。自分のクラブと国を応援するパッションの一つの表現に過ぎない」


地獄粉砕作戦

チャンピオンズリーグのすべてをかけて、そしてガスパー政権の元でのニューバルサの2年目のプロジェクトをかけて戦われる明日のガラタサライ戦。コクーがカード制裁、リバルドが負傷という事態を抱えて、バルサは再び新たなプランニングを要求されている。

1.集中力をもっての試合開始
レシャックが考えている基本的なスタイルは、試合開始からの集中力と闘争心にあふれた戦いだ。理想的には前半の30分までに先制点をあげることができれば、バルサペースの試合展開が期待できるとしている。去年の9月18日におこなわれた、やはりトルコのチームであるフェネルバッチェとの戦いと同じようにことが運べばしめたものだ。あの試合では24分にクライハートが26分にアンデルソンが得点をあげ、後半に入りサビオラのだめ押し得点で0−3というスコアーで勝利している。あの試合も偶然のことながらリバルドが欠場していた。明らかにガラタサライはフェネルバッチェより強敵とはいえ、所詮トルコのチームだ。

2.相手選手を肉体的にも精神的にも疲労させる
前半30分前の得点という理想的な展開になれば、次の目的はバルサ選手のエネルギー配分を適度におこなっていくことになる。それはこれまで短い期間の中でいくつかの重要な試合を消化してきたことによる体力問題をバルサの選手が抱えているからだ。確かにベティス戦やマドリ戦では後半に入り調子を上向けてきたバルサだが、それでも体力的な問題はかなり重要な要素となる。その問題を解決する唯一の方法はボールを支配すること。このことにより相手選手の疲労を誘うことにもなる。得点後のボール支配がどのくらいのパーセンテージでおこなわれるか、それが一つのキーポイントとなる。

3.精神的に負けない戦いを
レシャックはアリ・サミ・イエンの地獄のような雰囲気をそれほど恐れていない。バルサの選手たちはそれぞれ経験豊かな選手。彼らは国際試合でもクラブの試合でも何回かの恐ろしい雰囲気の中での試合を経験してきている。レシャックが心配する一つのこと、それはこれまでも何回にもわたって見られてきた、最後の最後のシーンでのゴールを決められない決定力の不足だ。チャンスをものにできないことによる得点不足、それがこのところバルサに見られる特徴となってしまっている。


●オーベルの復讐
オーベルにとって明日の試合には二つの明るい希望がある。一つはリバルドの負傷により、スタメン出場が予想されていること。そしてもう一つはガラタサライへの借りを返せるチャンスがやって来るということだ。
アーセナルの選手としての最後の試合となった2000年5月17日のUEFAカップの決勝戦。相手はガラタサライだった。アンフィールドのホームでの試合は彼としては珍しくもゴールを決めたにも関わらず、ガラタサライの地元で敗れ優勝を逃している。
「もう僕はバルサの選手だから関係ないけれど、アーセナルの友人たちのためにもこの試合は勝ちたい。あの日はアーセナルの選手として最悪の日となった。自分の最後の試合であり、しかも決勝戦だったからね。あの時のことは決して忘れない。」
クラシコにはほんの少しのプレータイムしかなかったオーベルだが、あの日のプレーで少し自信を取り戻したようだ。
「調子はこれまでになくいい感じ。プレーする意欲は誰にも負けない。しかもこの試合は今シーズン最も重要な試合でもあると思う。あのスタディアムの雰囲気を言い訳にはできないだろう。何と言ってもバルサの選手は修羅場を通ってきた選手が多いんだから」

●チャビの復活
約1か月近くにわたっての理由不明のベンチ生活を送ったチャビ。そのチャビがマドリ戦で本来の「4番」として戻ってきた。彼の復帰はチーム内に秩序をもたらしたと言っても良いだろう。
「もし自分の2点でマドリに勝利していたとしたら、それはスゲーことだ。そんなことは子供の時でさえ想像したこともない世界の話し。あのフリーキックは間接フリーキックだって?ああ、それは試合後にアベラルドが教えてくれた。それまで全然気がつかなかった。もし入っていたら、ということを考えるとゾッとするね。」
明日のガラタサライ戦でスタメン出場ができるかどうか、それは彼にもわからないことだ。
「スタメン11人を決めるのは監督の仕事。自分としては常にスタメンで出場する用意はできているつもりだ。我々はガラタサライ戦に勝てる内容を持っているチーム。誰が出ようが同じだと思う。もちろん個人的にはスタメンで出てプレーしたい。」

●アントン・パレイラ「我々はまだ何も失っていない」
スポーツ・ディレクターのパレーラがマドリ戦を引き分けという残念な結果で終わったものの、バルサにはまだタイトル獲得の可能性が残されているとメッセージを送る。
「クラシコに引き分けたのは確かに残念。だが冷静に考えてみれば、バレンシアの敗北により我々は6ポイントという差ながらも首位に1ポイント近づくという状況になっている。そしてさらに分析すれば、我々の下にいたチームが勝利したことにより、わずかなポイント差なががら上位に上がられてしまった。つまりこの状態は最終戦まで続くものだと思う。今のような団子状態で首位を争うクラブが4つとか5つと団子のなってタイトル争いをすることになるのだろう。そして我々もその中の一つのクラブだと信じる」
また明日に控えた重要な試合であるガラタサライ戦についても楽観的に考えるパレイラ。
「我々はここ何試合か幸運に恵まれていない。負け犬的な発想で言っているのではなく、事実として我々にはほんのチョットした運に欠けていたと思う。我々は勇気ある戦いをイスタンブールでおこない、ほんのチョットの幸運を味方にして、グラスゴウでの決勝戦までの5戦を戦わなければならない」