3月20日


GALATASARAY - FC.BARCELONA

0 - 1


    

バルサ↑、ローマ↓

レシャックは決勝リーグへ、そしてカペーロは・・・。地獄のガラタサライで勝利したバルサは、単に決勝リーグに進めただけではなく、グループの首位として進出。悲観主義が蔓延していたバルセロニスタに大きな喜びが贈られた。

■ガスパーの長い1日
地獄のグランドでバルサの選手が練習を始めた頃、バルセロナに残っていたガスパーはクバーラが入院している病院を訪ねている。クバーラ、そう、今では神話となっている元バルサの選手。ガスパーはこの大事な試合を前にしてクバーラとの面会を済まし、夜は一人自分のオフィスに閉じこもった。そこにはテレビもないしラジオもない。彼はアウエーの試合では、いっさいの実況中継から遠ざかったところに姿を隠す。緊張感に耐えられないのだ。だから上の空ながらホテル業の実務に費やす1日となる。だがこの日、ガスパーは余りにも神経質になりすぎて、その仕事さえ手に付かなかった。だから、彼にはよくあることだが、ドライブに出かけてしまう。
試合終了後、ガスパーの携帯電話に連絡が入った。
「我々が勝ちました」
もう夜中だ。だがガスパーは選手たちの到着を待って、夕食をとった。選手たちが到着するのは朝の5時。彼はその時間、選手を一人一人迎えるために、バルセロナのプラット空港にいた。

■レシャックのアイデア
レシャックのアイデアは明らかだった。多くのバルセロニスタがレシャックに疑問を持つように、彼もまたトリデンテそのものの有効性に疑問を持っていた。リバルドが負傷で不在のこの試合、彼はサビオラをベンチに下げオーベルマルスを起用する。バルセロニスタが好むと好まざるとにかかわらず、彼のアイデアとしてはトリデンテは必要なかった。少なくてもこの試合には。

オーベルマルスがレシャックの期待通りの活躍をしたのと同じように、その期待に応えたのがアベラルドだ。彼が出した結論は完璧だった。新しいシーズンの開始直後には、いつも新加入選手の影響でベンチスタートと噂されてきたアベラルド。だが毎年のようにその噂を吹き飛ばし常にスタメン出場を勝ち取ってきた。そして昨日のプレーで証明したもの、それは彼はいまだに最高のディフェンダーということだ。約1年ぶりの90分にわたっての試合。だが疲れを見せるどころか、常にリーダーシップをとってディフェンス陣を励ましていた。

この日の試合はレシャックにとっても多くのバルサの選手にとっても、チャンピオンズでは最後の試合となるかも知れないものだった。レシャックは自分のアイデアを貫き通してこの重要な一戦を戦おうとしていた。あまり受けの良くない、特にバルセロニスタには受けの良くない戦法、だが勝利することを唯一の目的として、彼は自分のアイデアと共に死のうとしていた。そのアイデアは「相手に攻撃させる」というものだった。

■そして、結果が出た
地獄と呼ばれたグランドから選手たちは生きながら帰って来た。それもグループ1位という大きな土産を抱えて帰ってきた。レシャックも当然ながら生きていた。
だが結果的にはバルサというビッグクラブが、しなければならないことをしたに過ぎない。そして明らかなことは、まだバルサは何も勝ち取っていないということだ。昨日の試合に勝利したことにより、決勝リーグに進んだということに過ぎない。それも必要以上の苦しみをバルセロニスタに与えながらの勝利であった。

我々はもう3月の中旬を迎えている。リーグ戦は残り8試合というところまで進んでいる。だが我々はこの段階に来てまでも、バルサがどのようなチームなのか理解できないでいる。ある日はエストレーモを使い、ある日は4番をベンチに置くバルサ。ある日曜日は4番なしにトリデンテが出場し、昨日の試合では4番+1人のウイング、そしてトリデンテはいない。これの意味するところは、レシャックはいまだに「理想的な11人」のイメージを作り上げていないということだろう。この状態で一つの試合に勝利することができても、タイトルを獲ることはできないと断言できる。
昨日の勝利は重要なものだった。とてつもなく重要なものだった。だがそれは「生き残った」という意味での重要さでしかない。昨日の勝利によって、今後の試合内容に希望がわいてきたかと聞かれれば、残念ながらノーと答えるしかない。これまで何回、一つの勝利によって「さあ、これからだ!」というはかない希望を持ってきたことか。だが1週間後、あるいは2週間後に、我々は現実に引き戻されてきた。

それにも関わらず、我々は「今度こそは」という希望を抱くだろう。だがその希望が現実となるためには神の助けが必要だ。ガスパーやレシャック、そしてすべてのバルサの選手が神に祈らなければならない。クバーラの回復に神の手助けが必要なように、今のバルサにも神の強力な手助けが必要だ。


試合のキーポイント

1.アベラルドの復帰
誰がこの試合でのアベラルドの復帰を予想しただろうか。誰がこの重要な局面を迎えているバルサのスタメンに、アベラルドという長期離脱していた選手が活躍することを予想できただろうか。だがアベラルドはプレッシャーなど問題にもせず、90分にわたって疲れも知らず、しかもキャプテンマークを腕につけチームのリーダーとして活躍した。これをプロフェッショナールの鏡と言わずして何と言う。

2.ロッケンバックの復帰
闘争心の固まりと化したロッケンバック。疲れを知らず上に下に走りまくり、相手のボールを奪ってはロングシュートを放っていたロッケンバック。昨日のロッケンバックは間違いなく、バルサに来てから最高の仕事を果たした。このロッケンバックが本当の彼であるならば、カンプノウでの成功は間違いない。

3.3人のセントラール
アベラルドの起用と共に注目を浴びたのが3人のセントラール。実質的にには左右のサイドバック選手を含めて5人ディフェンスというバルサにしては珍しい陣形での戦い。右にクリスタンバール、真ん中にアベラルド、そして左にプジョーがそれぞれプレーした。

4.惨めなガラタサライ
この試合の勝利は、もちろんバルサ側の優位性の勝利と言えるだろうが、それにしてもガラタサライはお粗末なチームだった。地元での、それも地獄と呼ばれる雰囲気の中での試合で、組織的なプレーはもちろん個人的な優れたプレーも見られなかったガラタサライ。

5.集中力の勝利
先制点を獲得したバルサにいままでよく見られた集中力の欠如。だがこの試合は90分にわたってそれが途切れることなく試合を終了できた。特にルイス・エンリケの得点以降、バルサは決して後ろに下がることなく、集中力を研ぎすましたブロックとしてのプレーを展開できた。


おとぼけルイス・エンリケ

リバプール戦の再来のように、自分から交代を申し込んだルイス・エンリケ。試合終了まであとわずかという時だった。痛みに耐えられない感じでグランドに倒れ込み、手を振って交代を要求したルイス・エンリケ。誰しもが最悪の状態を想像した。だが試合後、ルイス・エンリケはこともなげに語っている。
「ああ、あれね、大したことじゃないんだ。ちょっとした筋肉痛さ。次の試合には問題なく出られると思うよ。もう痛みは消えた。」
ベテラン選手ここにあり。あれは時間稼ぎの一つにちかかったようだ。無理すれば続けられた状態ではあったものの、倒れて交代を要求し時間を稼いだルイス・エンリケ。だが次のチャンピオンズは負傷とは何の関係もなく出場できなくなってしまった。カードがたまってしまったのだ。