3月31日



FC.BARCELONA - LAS PALMAS

1 - 1


     

痛々しい週末

セマーナ・サンタの真っ最中にも関わらず、5万人のバルセロニスタがカンプノウに詰めかけた。だが90分後に彼らが感じたものは、痛々しい土曜日となったことだ。マドリ、バレンシア、セルタが勝利し、リーグ優勝争いからバルサは離脱した。残るはチャンピオンズだけとなったバルサ。アテネでもう一つのファイナルが待っている。

■すべてが裏目に
バルサにとって「熱い週末」が期待できる土曜日のはずだった。バルサは地元カンプノウで、そしてマドリ、コルーニャ、バレンシアはアウエーでの試合だったのだから当然だろう。首位に近づく絶好のチャンスだった昨日。レシャックの計算の中には、少なくてもいくつかの上位とのポイント差が縮められるはずであったに違いない。だがすべては裏目にでてしまった。レシャックをはじめ、多くのバルセロニスタが期待したライバルチームのつまずきは、捕らぬ狸の皮算用に終わってしまった。マドリが、バレンシアが、そしてセルタが勝利しデポルティーボが引き分けに終わった。そして最悪なことに、肝心のバルサがラス・パルマスに勝利することなく、引き分けに終わる。完璧にすべてが裏目にでた土曜日となった。

■すべてが失敗
プロの選手の集中力を疑うことは愚かなことかも知れない。だが昨日のバルサの選手の頭の中に、他のクラブの結果がちらつかなかったかといえば嘘になるだろう。それが集中力の欠如となったかどうかも確かではない。試合開始早々、ラス・パルマスの選手はそれぞれが適所に配置することによりバルサのディフェンスから出るボールを奪いに行く。だが4番チャビの指揮のもと、ボールコントロールをどうにか支配したバルサはサビオラ、クライハート、ルイス・エンリケのスペクタクルなコンビネーションにより先制点をあげることに成功する。だが問題はいつものごとくそれ以降だった。ラス・パルマスを完全に沈めるチャンスを何回も作りながら、それを逃してしまうバルサ。まるで1点の有利で仕事の90%は終了したかのようなバルサの姿がカンプノウにあった。

■すべてをチャンピオンズに
だがそのつけがバルサに高く襲いかかる。ディフェンス陣の集中力の欠如により、思わぬラス・パルマスの得点を許してしまう。神経質な空気がグランドと観客席を一瞬のうちに取り巻いく。余裕のない急いだ攻撃、神経質になった選手たち、そして必要以上に走りまくり最適なポジショニングを失う選手たち。そしてもちろんチャンスは数多く生まれた。だがそれはゴールチャンスとしてであり、ゴールにつながるものとはならない。先制点をあげてからの余裕の攻撃のすべてのつけが回ってきた。おまけにオーベルマルスが筋肉痛を訴え、クライハートは2枚目のイエローカードで退場となった。この時点でカンプノウに集まった人々は、甘い「計算」を諦めなければならなかった。マドリが勝利し、バレンシアが勝利し、そしてセルタも勝利していた。つまりバルサはすべての試合に敗れたのだ。そしてそのバルサに残っている唯一のもの、それは水曜日におこなわれるチャンピオンズの試合だけとなった。


試合のキーポイント

1.オルランド・キンタナの活躍
ラス・パルマスは昨日、正キーパーはおろか控えのキーパーも不在のままバルセロナに到着している。したがってラス・パルマスのゴールを守ったのは、これまで経験がゼロに近いオルランド・キンタナ。果たしてこの若きキーパーがカンプノウでのプレッシャーに勝てるかどうかというのが試合前の予想だった。だが意に反し、彼はほとんどのシュートをセーブした。より正確に言うならば、正面に来たすべてのボールを体に当ててゴールを防いだ。

2.サイドバックの選手たち
これまで多くの試合で右からプジョー、左からココによるサイド攻撃がなされてきた。サイドバックの選手がウイングとなっての典型的な攻めのスタイルをとってきたバルサだ。だが昨日の試合ではプジョー、ココともそのサイドからの上がりがまるで見られないものとなっていた。別にラス・パルマスの攻撃陣が彼らを抑えたわけではない。むしろ普段の試合より彼らには攻撃に参加する余裕があった試合だった。特にプジョーには肉体的疲労が多く見られる試合となった。

3.チャビの交代
左ウイングにオーベルマルス、右ウイングに比較的行動自由なサビオラを配置し、バルサ本来の4番を中盤に置いてのスタイルでスタートしたバルサ。オーベルマルスが支配した左ウイングはともかく、右のサビオラは本来のウイングではない。それにも関わらず、4番チャビのボールの分配が左、右へとおこなわれる。そして右ウイングとしての専門家であるジェオバンニが投入された。だが不可解なことにこの段階で4番もベンチに下がることになる。この結果、ボールがそれまでのように右に左に流れなくなったバルサだった。

4.クライハートの不調の日
クライハートは決して「ゴールの嗅覚」を備えた選手だはない。それでもバルサの得点王として、数多くのゴールチャンスの中から得点を稼いできた選手だ。昨日もその多くのゴールチャンスが彼の足下に訪れる。普通の試合より圧倒的に多いゴールチャンスが。だが昨日はパトリックの「日」ではなかった。すべてのゴールチャンスをミスするパトリック。彼が放ったシュートは運が悪ければ観客席に、運が良ければキーパーの正面に飛んでいく。そして2枚のイエローカードを得ることによって、パトリックの辛い1日は終わりを迎えた。


レシャックのコメント

「お〜い、チャーリー、これで優勝は不可能になったかな?多分これが私に対する最初の質問だろう。そうだろう?」
試合後の記者会見場に現れたレシャックの最初の言葉だ。だがカンプノウ記者会見場に集まったジャーナリストたちは、普段のように彼の言葉についてこない。

ジャーナリストを職業としている人々でも、毎日のようにカンプノウに足を運び取材しているうちに自然とバルセロニスタのようになってくるのはしょうがないことだ。多くのクラブ関係者と知り合い、中には選手と個人的に友好関係さえ生まれてくる人もいる。したがって記者会見場に集まった多くのジャーナリストが、いかにレシャックががっかりし、選手たちが悔しさいっぱいで自宅に引き上げていくかを知っている。だから昨日はレシャックの冗談にもあまりのっていかない。したがってレシャックは一人でしゃべり続けなければならなかった。
「何もかも期待通りにいかなかった。我々の引き分けという結果もそうだし、上位チームのアウエーでの勝利に関してもだ。状況は非常に難しくなってきていることは認めなければならない。もちろんだからといって、我々がタイトル獲得を諦めたということにはならない。私はこう見えても結構しつっこい方なんだ。誰しも夢を見るのはタダだし、その自由もある。」

試合終了と共に一部の観客席からわき起こった「白ハンカチ」現象について聞かれたレシャック。
「私はすぐに控え室に下がったのでそれは知らなかった。もしそれが事実だとしても、自由な表現をすることはソシオの基本的権利だから気にしない。だがこの試合で明らかなことは、我々が得たゴールチャンスの三分の一でも決めていれば、7点ぐらいの差で勝利していた試合だということだ。うん、だがそれも今となってはしょうがないこと。早急にすべての選手の頭の中のチップを入れ替えなければならない。水曜日にはチャンピオンズの試合が待っているんだからね。」