4月4日


     

リケルメ家を襲った災難

ロマン・リケルメはこれまでの人生の中での最悪の時間を過ごしている。彼の愛する弟、16才のクリスタンが火曜日の夜に誘拐されてしまったのだ。誘拐犯はロマンの携帯に電話をしてきた。
「30万ドルを用意しろ」

16才のクリスタン、友達にはチャンチと親しく呼ばれるこの若者は、火曜日の夜に友達の家を出たところで何ものかによって誘拐されてしまった。アルゼンチンの政治状況が混乱し、多くの人々が空腹を訴えている状況で何が起こっても不思議ではない。この犯罪が政治組織によるものなのか、あるいは単なる金目当ての誘拐犯によるものなのかはいまだに確認されていない。だがロマンのところにはすでに身代金要求の連絡が入っていることは正式発表されている。その額30万ドルと言われている。

クリスタンの友人の家はブエノスアイレスから北に25km離れたドン・トルクアトという街にあった。彼は11日火曜日の夜にその友人の家をでている。ヘネラル・パスと呼ばれる通りから自宅に向かおうとしている彼に3人の若者が近づいてきた。そして突然ピストルを出した彼らの裏には車が待ったいた。クリスタンは一瞬のうちに誘拐されてしまう。

この誘拐のニュースは昨日の午前中にボカの会長であるマウリシオ・マクリによって確認された。
「我々はできる限り、この事件を秘密裏に解決していきたい。ロマンの弟の命がかかっている問題だし、何よりも微妙な事件だからだ。我々は慎重の上にも慎重をきして今ことにあたっている」
マクリはロマンが在籍するクラブの会長としてのみ、この事件を心配しているわけではない。彼にとってはまさに人ごとではないのだ。なぜなら彼自身すでに何年か前に誘拐されているのだ。それも2週間にわたって。

ロマンはこの知らせを聞いてすぐにボカの合宿先を離れ自宅に向かっている。それは誰にも気づかれないような裏口からの脱出であった。この時点ではまだメディアでは誰もこのニュースを知らされていない。だがそのメディアが知るところとなるのも時間の問題だった。現在、アルゼンチン警察は全力をあげて捜索を開始している。だが多くの専門家が予想するところによれば、非常に時間のかかる難しいケースとなる可能性が強い。かつてアルゼンチン代表の監督であり、現在アルゼンチン統一党の党首であるビラルドが何年か前に予言したことが現実かしつつある。
「私は近い将来、アルゼンチンがコロンビアみたいな社会状況になることを恐れているんだ」


PANATHINAIKOS-FC.BARCELONA

1 - 0


悪夢のような試合

審判のミスを、とてつもなく大きなミスを、それでも言い訳にしてはならない昨日のバルサ。レシャックの用意したバルサは誰もが理解に苦しむものだ。パナシナイコスに負けたのでもなければ、審判の誤審によって敗北しのではない。バルサはバルサに敗北したのだ。

レシャックは試合前日に我々に約束した。「攻撃的な試合をする」と。だがアテネの地獄に姿を表したバルサは、いかにも引き分け狙いのバルサだった。そしてそのような戦いをしようとしたときに決まってでる結論。つまり敗北。確かに不公平な失点ではある。アベラルドは完璧にボールをクリアーしていたのだから。誰の目から見てもペナルティーではないプレーを審判だけがそう判断した運の悪さもあるだろう。だが昨日の試合に関しては、審判のミスもたいしたことではないように感じられる。なぜならバルサは自分自身に負けた試合だからだ。

バルサは攻撃用に作られたチームである。それはクラブの抱える選手たちを見れば明らかだ。しかも相手はチャンピオンズのこの段階に来て残っているのが不思議に思えるほどの内容のないチームだ。一昨日のデポール対マンチェスターの試合や、バイエルン対マドリの試合を見る限り、昨日の試合はまるでUEFA戦かあるいはプレシーズンの調整試合みたいなカードではなかったか。

レシャックが用意した昨日の超保守的なスタメンと戦法はどこから来ているのだろうか。それは多分、イスタンブールでの勝利から来ていると想像するしかない。同じように「地獄」と呼ばれたスタディアムでのあの戦い方をコピーしての戦法。そしてカンプノウでの勝利を計算して、引き分けでも良いという彼独特の計算思考。だが昨日のパナシナイコスを見る限り、我々はじゅうぶん昨日の試合だけでセミファイナル進出の結果が出せただろう。バルサがバルサらしい戦いをしていれば。

司令塔にチャビではなく、体力的にも守備的にも優れているコクーを配置した。コクーは体調が万全ではないにも関わらずだ。そしてモッタとロッケンバックという体力的に新鮮な二人の若者を中盤での戦士として起用。前にはオーベルマルスとクライハートが孤立しながら奮闘する。残りはすべて守備要員だ。ココ、ガブリ、プジョー、アベラルドはそれぞれマンツーマンディフェンスとして相手選手の影となっている。バジャドリ戦でトテを個人マークしたように、ココはリベロポウロスと一体化する。だが問題は、バルサ側がボールを持ったとき、ココは何をしていいかわからない。他のマンツーマンをしている選手もほぼ同じようなものだ。「創造的なバルサ」から「破壊するバルサ」への変貌。これがレシャック監督の望んだことなのだろう。


試合のキーポイント

1.ディフェンス的には何の問題もない試合
パナシナイコスにとっては勝つことが唯一の目的であり、熱狂的なファンが詰めかける地元でのみ勝つことが可能なとされたこの試合。だが彼らの限界は明らかだった。守備的にも攻撃的にも、つまりチーム総体をとってみてもチャンピオンズの準々決勝に出場してくるクラブではない。バルサの守備陣は「地獄」と呼ばれるスタディアムにおいてもほとんど問題がなかった。唯一、審判の発明による不公平なペナルティーによる得点を許すことになる。

2.チャビの登場で試合らしくなったバルサ
驚くことに試合開始2時間前にはほぼ試合出場不可能と見られていたコクーが登場。しかも出場間違いなしと思われていたチャビに代わっての出場だった。ボール支配よりも相手のボールを奪う作戦でのこの起用は、当然ながら中盤からの統率された攻撃態勢は生まれない。ガブリ、ロッケンバック、モッタと体力勝負の若者を中盤に配置することにより、中盤でのぶつかり合いの試合展開。それがチャビの登場により、ボールを左右に分配してのバルサらしい試合に変貌を遂げる。

3.孤島にたたずむクライハート
左の孤島にはオーベルマルス、真ん中の孤島にはクライハート。下がり気味に位置している中盤からひたすら孤立してしまったデランテーロ。これでどうやってゴールチャンスを作り出そうというのだろうか。もちろん現実に起こったことは、孤立したオーベルマルスからのセンターリングは孤立したクライハートのところには届かない。

4.リバルドの温存とココの不慣れ仕事
レシャックが何とコメントしようと、彼のアイデアは相手の戦いぶりに合わせて自分のチームをプランニングすること。それはもう誰も否定できない事実だ。そしてさらに醜いことに、彼の最近の趣味はココをマンツーマン選手として起用すること。ところで、スタメンが期待されたリバルドの温存はいったい何を意味するのか。多分レシャックにしか理解できないことだろう。


そして選手たちは・・・

■クライハート「俺が監督だったら、違う戦い方をしていた」
前の方には俺しかいなくて孤立状態。試合中に、本当に俺は今バルサでプレーしているのかどうか疑いたくなった。監督を批判するわけではないけれど、俺なら違う戦い方をしていたね。ボールの前にもっと選手を配置する戦い方をしなければいけなかったと思う。まあ過ぎ去ったことは忘れて良い方向にものを考えなければ。カンプノウでは違う試合展開になることは間違いないし、相手も相手だからセミファイナルには必ず進めるだろう。

■ボナノ「アベラルドはボールに触っていた」
はっきり言って良い試合ではなかったけれど、我々にも勝つチャンスはあった試合だと思うよ。確かにゴールチャンスは少なかったけれど、それでも地元で戦っているパナシナイコスよりは多かっただろう。アベラルドがきれいにボールをカットしていた。だが残念なことに審判は違うプレーを見ていたようだ。いずれにしてもカンプノウでは問題ないだろう。今度は我々が自分たちのファンの前で試合をするわけだし、圧倒的な違いで勝てると思う。

■ココ「あの審判は信じられないね」
ここでの引き分けという結果は重要なことだったと思う。だが審判のせいでその結果をバルセロナに持ち帰れないということは残念なことだ。ひどいミスだと思うよ。自分のポジションについてはあまりしゃべりたくない。それは監督が決めることだし、自分の好き嫌いとは関係ないことだから。

■チャビ「残念な結果になったけれど、カンプノウでは大丈夫」
試合後の選手控え室の雰囲気はどうだかって?良いわけないでしょう、負けちゃったんだから。みんな残念がっているよ。今日の試合で決めてしまいたかったからね。でも大丈夫、我々はカンプノウでは間違いなく大差で勝てると思う。地獄と呼ばれるスタディアムでさ、この程度の結果だったんだから。カンプノウでは違うバルサが見れるよ。

■デブー「後半はよかったのに」
前半はともかく後半は良い試合をしたと思う。我々には3度の決定的なゴールチャンスがあった。この試合は絶対負けないと思ったね。彼らがゴールを決めるような素晴らしい攻撃というのはまったく見られなかったから。しかしそれにしてもあれをペナルティーにとるなんて信じられないよ。