5月14日



    

再びバンガール政権

巷で囁かれていたウワサ、それが昨日から現実となった。記者会見を召集したバルサ会長ガスパーは、2002−2003シーズンの監督としてバンガールを正式に発表した。

多くのジャーナリストとカメラマンで埋め尽くされている記者会見場。約束の時間に5分ほど遅れて、ガスパーはレシャックを伴って登場。約30分間にわたってバンガール監督就任となる経緯を説明する。その後わずかな時間ながらレシャックもバンガールの監督就任の重要性を強調し、残りの30分近くを記者たちの質問に答える形となった。ガスパーがバンガールの可能性を発案し、レシャックがそれをグッドアイデアとして保証することによって誕生することになったというバンガールの監督就任。彼の持つプロ精神、仕事に対する集中力、そして何よりも彼の実績と経験が今回の監督就任を可能にしたという。

わずか2年前、カンプノウの裏口からバルセロナ空港に向かいオランダに帰ったバンガールが再びバルサに戻ってくる。クラブ首脳陣内、バルセロニスタ、ソシオ、プレス、多くのセクションで分裂現象が見られるバンガールのバルサ復帰問題。だがそれらの状況を認識しながらも彼の復帰を決めたのはなんだったのか。ガスパー、レシャック共に共通していること、それはバンガールは過去の過ちを繰り返すことはないだろうという確信からだと言う。

いすれにしてもガスパーは、会長選挙に勝利して以来もっとも不人気な決断を下したことになる。これまで多くの監督候補の名前がメディアをにぎわしてきたものの、彼にとって唯一の「候補者」はバンガールのみだったと言い切るガスパー会長。そして会長のアイデアを保証するレシャック。彼らの「確信」がいかに強いものであろうと、危険な賭けであることには変わりがない。これまでウワサであったものが現実となった今、多くのバルセロニスタの分裂状況はさらに激しいものとなるだろう。

7月1日からレシャック前監督を引き継いでバルサの新監督となるバンガールの第一コーチは元アヤックスに所属していたCo Adriaanse となる可能性が強い。今週の木曜日にバルセロナ空港に到着するバンガールは翌日の金曜日12時に記者会見を召集する。

■ガスパー
「もしレシャックが望むなら彼が監督として来シーズンもベンチに座る可能性はあった。これまで何回か彼と将来のバルサについて語り合い、クラブにとって一番良い方法を探し続けてきた。そこで私がバンガールの監督の可能性を彼に提案したんだ。レシャックの答えは肯定的なものだった。そこで私はバンガールと連絡をとり、我々の希望を伝えた。彼は何日間か考える余裕をくれと言い、我々は彼の回答を待った。そして彼から戻ってきた回答は喜んで監督を引き受けるというものだった。」

「多くの人々がこの決断に疑問を抱いていることは知っている。だがこの決断の責任は私がいっさい引き受けるつもりである。彼の監督としての才能を疑うものはいないだろう。アヤックスでもバルサでも実績を残してきた人物だ。だが彼の持つ一種独特なキャラクターや、何気ないしぐさが彼のマイナス面となって批判を浴びてきた。しかし今回はそういうことは起こらないだろうと期待している。彼とはその面での話し合いを持ってきたし、彼もそれなりの努力をしようとしている。インテリジェンスのある彼のことだから、過去の過ちは繰り返さないだろう。」

「バルサのソシオは10万人いる。これほどのソシオ数を誇るクラブは世界に例を見ない。そして、もちろん私を含めて、誰であろうが10万ソシオの代表として語ることはできない。この10万ソシオはバルサに対する愛情ということに関しては共通して持っていることだろうが、それでも一人一人のアイデアは当然のことながら異なっている。そして多くのソシオがバンガールに好意を持っていないことも知っている。だが監督は人気取りのために高給をとる仕事をするわけではない。バルサというクラブに良かれとして結果を出すために働きに来るのだ。彼にもう一度チャンスをあげて欲しい。責任はすべて私がとる。」

■レシャック
「私の最初のアイデアは、もし何らかのタイトルをとったらこの1年で監督を辞めること。目的が達成されれば自分としてはそれで満足だからね。そして何にもタイトルがとれなかったら来シーズンも監督を務める覚悟だった。なぜなら目的は達成されていないし、契約がのこっているからね。だが状況を良く分析してみれば、新しい監督が来ることがバルサにとって良い方向に行くかも知れないという結論に達したんだ。だから今年限りで辞める決心をした。今でもバルサにとって一番良い監督は自分だと思っている。そして二番目がバンガールだ。彼はすでにバルサの監督としての経験を持っているし、しかも今いる選手のこともよく知っている。ガスパーのこの決断は決して間違いではないだろうと思うよ。」

「彼とは一緒に仕事をしたし、個人的には何にも問題はない。日本に行くことになったのは別に彼のせいではないんだ。あの時期は実際の話、スタッフが多すぎたこともあり自分の居場所がなくなったので日本への冒険を試みただけ。バンガール個人との問題ではない。そして今回の監督就任もバンガールが来ること自体には問題ないだろう。これから予想される大きな問題、それは彼をどのようにソシオが受け入れるかということだ。バルサが難しいクラブだということは、もう世界中のフットボールファンが知っていること。例えばもし試合に勝つとしよう。すると勝ち方が悪いという批判がメディアを通しておこなわれる。そしてもし負けでもしたら、それこそメチャクチャに言われることになる。もしバンガールが前回と違うバンガールとなってやって来たとしよう。すると変わり方が良くないと批判され、もし変わってなかったら、それこそメチャクチャだ。そう、これがバルサなんだ。」

「自ら選んだ辞任か、あるいはクビになっての辞任か、それは好きなように理解してもらえばいい。ただ私としては傷ついての辞任ではないし、誰かに恨みを持っての辞任でもないし、後悔しての辞任でもない。一つだけ確かなことを言っておこう。バルサはこれまで多くの監督が辞任をしてきた歴史を持つけれども、その中でもほんの一握りの監督だけがその後のバルサに関して望んだこと、それは翌シーズンのバルサの成功だ。わかる言っていること? 私は来シーズンの成功を望んでいる数少ない、これから辞任していく監督の一人なんだ。」


バンガールの新たなアイデア

■チームに関して
1.若手を起用
選手たちの若返りをガスパーに要求するバンガール。これからの放出選手や加入選手でその実体が明らかになってくるだろうが、彼が考えている基本的なものは若い才能ある意欲に燃えた選手を起用すること。かつてのアヤックスがそうであったように、成功することに、勝利することに飢えている若い選手を中心に起用していこうとしている。

2.二人の本物クラックの獲得
将来性ある若者の選手の起用と共に、国際的にすでに認められている最低二人の選手を獲得しニューバルサへの構築を目指す。だがバンガールが望むものは想像を絶する高額な移籍料を払ってのものではなく、チームカラーを愛する本物の選手の獲得を狙う。

3.両ウイングの復活
バンガールはカンプノウの観客が何を望んでいるかを知っている。バルセロニスタにはスペクタクルを与えておけばいい。そう、攻撃的なバルサの復活を試みるバンガール。今のところ右ウイング不足と、ゴール前で「ゴールの嗅覚」を持った選手の不足を解決しなければならない。

■個人的問題に関して
1.土地に同化
バルセロニスタとの接触と、カタルーニャという土地への具体的な接触が不足していたことを認めるバンガール。バルセロニスタの心をつかむことも必要だということを認識した彼は、前回の3年間のバルセロナ生活とは少し違ったものになるだろう。

2.イメージチェンジ
これまでバルセロニスタが彼に抱えていたイメージを一掃させるには、最初が肝心。木曜日にバルセロナ空港に到着することになるバンガールは、バルセロナの地を踏んだ瞬間に新たなイメージとしてのバンガールとならなければならない。

3.プレスとの関係
試合前、試合後の記者会見で常に記者連中と対立してきたバンガール。だがその関係も修繕しなくてはいけない。その基本的なコンセプトとなるのは「お互いの仕事に対する尊重」でなければならない。我々ジャーナリストも彼の監督としての仕事を尊重しよう。だが彼も我々ジャーナリストの仕事を尊重しなければならない。

■そしてガスパーに要請したこと
上の「個人的な問題」はすべてガスパーが彼に要請したことである。そしてバンガールがガスパーに要請したこと。それはクライフと連絡をとってくれというものだった。そしてクライフに要請して欲しいこと。それは少なくとも最初の何か月かはニューバルサに関して口を挟まないこと。クライフの発言の影響の大きさを考えてのことだ。そして冷静な状況のもとでチーム作りをしていくための条件であるとも考えている。もう一つ要請したこと。それはもしグアルディオーラが現役生活を離れるのであれば、どのような役職であろうとかまわないから彼を獲得して欲しいこと。彼の存在がバンガールと、選手と、そしてバルセロニスタとの間の橋渡し的な存在となると考えてのものだ。


●ニューバルサの胎動は7月15日
8月中旬にはチャンピオンズの予備選を戦わなければならないバルサ。バンガールの最終的なOKが必要なものの、真夏のさなかの7月15日から練習を開始する予定でいる。もちろんこの日にはワールドカップ代表選手は参加しない。彼らが合流してくるのはそれから1週間後となる。15日に集合し、翌日には昨シーズンと同じようにスイスが合宿場所に選ばれている。親善試合を何試合かした後、7月の下旬にバルセロナに戻ってくることになるだろう。

●プジョー、契約の見直し交渉
2004年までの契約が残っているプジョーだが、スペイン以外のクラブから多くのオファーが来ている。彼の代理人であるラモンはこれまで何回かクラブ首脳陣と契約の見直し交渉を続けてきている。だが最終的な合意には至っていない。もちろんプジョーの意思はバルサに残ることではあるとしながらも、すでにスペイン代表選手となっている彼の契約をそれなりに見直さなければならないと強調する。

●ロナルド
「バルセロナに戻って来れて幸せ」
これが昨日セレソン代表としてバルセロナに到着したロナルドの第一声。ブラジル代表は今週いっぱいカンプノウで練習し、その後アジアに向かって旅たつことになっている。今週末におこなわれるカタルーニャ代表との試合を控えているロナルドにとって、カンプノウで試合をするのはバルサを離れてからこれで二度目となる。最初はバルサ百周年記念試合となったバルサ対ブラジル代表だった。

●グアルディオーラ、今週中にクラブを決定
カルッチオかプレミアが、それが決定するのは今週中だと語るペップの代理人オロビッチ。それは多分木曜日か金曜日に発表されるだろうと言う。ペップのところに来ているオファーはカルッチオやプレミアの中でも優勝を争えるクラブ。ローマ移籍のウワサに関してはオファーはあるものの最終的なサインまではいっていないとも言う。