5月16日



     

バンガール、陸路でバルセロナへ

アムステルダムからバルセロナへ。飛行機を利用すればわずか1時間強でつける距離であるにもかかわらず、バンガールは自分の車で今バルセロナに向かっている。実に1569kmに及ぶドライブだ。

エル・プラット・バルセロナ空港にはバンガールは到着しない。なぜなら彼は車でやって来るからだ。延々1500キロ以上の距離を車を利用してバルセロナ入りするバンガール。空港での無用な騒ぎを避けようとするかのように今日の午後バルセロナに戻ってくるバンガールは、明日の監督就任記者会見をスタートとして第二次バンガール政権を誕生させる。

今のところバンガールとガスパーの会合は、今日はおこなわれないとされている。明日の12時に監督就任記者会見が予定されているが、その2、3時間前に彼らは会合をもち、来シーズンに関する最初の打ち合わせに入る予定となっている。バンガールからは放出選手と獲得希望選手の具体的名前がガスパーに告げられるだろう。そしてクラブ側からもいくつかの事柄がバンガールに提示される。現在バルサに在籍している選手の契約期限、ヨーロッパ各クラブにおける選手市場の状況、イタリアに飛んでいるパレーラのミランとの交渉状態、そしてもちろんクラブの財政状況。これらの資料をもとに月曜日から本格的なニューバルサの再建にかかることになる。


クライハート「オレは残る」

バンガールが来シーズンの監督に就任するという噂が流れ始めると同時に、バルサ放出リストの中にクライハートの名前が出現した。このニュースは、当然のことながら、クライハートにとって無関心ではいられない。昨日彼は自分のウエッブページを利用して、現状をすなおに分析している。

「バルサ首脳陣はすでにバンガールが来シーズンの監督に就任することを公表している。この事実は、自分にとっては二つの意味で重要なことでもある。一つは、彼の復帰が将来のバルサにとって非常に明るい材料となること。なぜならバンガールは経験豊かな素晴らしい監督だからだ。そしてもう一つは否定的なこと、それは彼の監督就任によって個人的には理解できない状況が生まれつつあることだ。」

「クラブ責任者やバンガール当人が何も言ってきてはいないものの、多くのメディアが放出選手リストに自分の名前が入っていることを指摘している。ニュースの信憑性はともかく、こういう状況が決して愉快なものではないことは明らかだ。来シーズンにはカンプノウでプレーできるのかどうか、つまりバルサに残れるのかどうかがはっきりしていない不安な状況となってしまっている。それでもただ一つだけ確かなことがある。それは自分の了解なくしてクラブは移籍問題を決定することはできないことだ。なぜなら自分の意志ははっきりしている。それはバルサに残ること。バルセロナの街に残ること。」

「バンガールが自分を売りたいと思っているとしても、それは不思議なことではないことはわかっている。彼はチーム作りにおいて、必要な選手を獲得するための資金づくりに、何人かの選手を売らなければと考えているのだろう。だが自分はフットボールの選手であり、商売用の商品ではない。つまり自分の希望しないところでフットボール選手を続けようとは思わない。いずれにしても彼がバルセロナに来た後に個人的に話しをつけようと思う。」

クライハートはオランダ代表の親善試合に参加するために合宿に入っていたが、練習中に負傷したため昨日バルセロナに戻ってきている。彼とバンガールの関係は、第一次バンガール政権の頃を考えればそれほど悪いものでもない。だが今回のワールドカップ予選でのクライハートとバンガールの関係は決して良いものとはなっていなかった。依然として代表チームに集まる選手を、まるでユースの選手のように扱うバンガールに対し、多くの選手が批判をおこなったが彼もその一人であった。いずれにしてもクライハートの方針は明らかだ。バルサに残ること。バンガールがいかに望もうと移籍にはノーと言うこと。少なくても契約期限が残っている限りバルセロナの街で生活すること。彼の決意は固い。


アベラルド「はっきりせい!ガスパー」

非常に中途半端な状況を迎えているアベラルド。今シーズン限りで契約期限も終わるというのに、いまだに将来のことがはっきりしていない。バンガールの監督就任が決まったため、より厳しい状況を迎えることになっているのは確かだ。

アベラルドはひたすらガスパーからの連絡を待っている。それがかつてガスパーが約束した延長契約の話しなら最高。だが、もし延長契約する気がないのであっても早急に連絡してこいと要求している。
「ガスパー会長がオレの延長契約を約束した言葉を信じているから安心はしている。公共の場での発言だったし、その後にも副会長の一人が直接オレにそれを保証すると言ってきたしね。でもいずれにしても、もし延長契約が長年バルサで頑張ってきたからというご褒美みたいなもんだったら、そんな気を使うことはないと言ってやるさ。オレはプロなんだから、もしプレーする可能性もないのに残るようなことはしたくない。監督がオレを必要としているということを根拠に残れというのだったら喜んで残る。」

だがいずれにしても、早急に将来のことを決めたいと願うアベラルドだ。そう、もうシーズンは終わり5月の中旬を過ぎようとしているのに将来が決まっていないというのはおかしいとさえ思う。
「もちろんガスパーの言葉は信用している。そりゃそうだろう、会長という要職についているような人がわずか2週間ぐらい前にコメントしたことを『あれは間違いでした』なんて言うわけないだろうからね。そうじゃなければ我々選手は誰を信じて良いのかわからなくなってしまう。そう、オレは会長の言葉を信用しているけれど、ナンでまだ正式に言ってこないのか、それがよくわかんないんだ。もうシーズン終わっちゃったんだよー。」

いつまで待っても会長からの連絡がないのであれば、こちらから向かおうと言うアベラルド。すでに彼の代理人と連絡をとりガスパーとの会合を持とうとしている。
「オレはこんな中途半端な状況におかれるほど悪いことはしていないと思っているんだ。少なくともオレはバルサのために一生懸命やってきた自負がある。だからさ、ガスパーは早くオレに言うべきなんだ。本当に延長契約する気があるのか、あるいはないのかってね。オレはもし放出されたとしても怒らないって。それはプロ選手の運命なんだ。いつかは出ていかなければならない運命にあることぐらい知っている。どんなにクラブを愛していようがね。だからさ、契約の切れる6月31日24時までオレを待たせんなっての。オレはさ、これまで8年間のバルサの選手として問題を起こしてきたことは1回もない選手なんだよ。負傷中にクラブ内の誰かがオレの再起不可能説を出したときだって、怒りはしたけれど大きな問題にはしなかった。そんなオレにこんな仕打ちはないと思うんだけれどねー。」


ロナルド

「昨日の朝8時45分、セレソン選手を乗せたバスがカンプノウの脇にある駐車場に到着した。バスを降りて選手控え室に向かう選手の中に、カンプノウをよく知る一人の選手がいた。そう、ロナルドだ。ブラジル代表の練習が終了し、彼はもちろん記者会見場に呼ばれた。

12時、ミニエスタディの記者会見場。すでにジャーナリストやカメラマンで記者会見場は満員となっている。約束の時間通りに現れたロナルドは席に座るなり、まず第一声。
「この記者会見ではセレソンの関することか、ワールドカップに関することしか質問を受け付けません」

だがジャーナリストはそんなロナルドの要請を無視して、まるで何も聞こえなかったかのように、インテルの会長との関係、バルサに関して、ガスパーに関して、あるいは元会長のヌニェスに関する質問が飛ぶ。

「バルサではたった1年間だけだったけれど、自分としてはこれまでの最高の選手生活を送ったと思っている。だから、セレソンの選手としてではあるけれど、再びカンプノウに戻って来れたことが本当に嬉しい。」

インテルだとかバルサに関する質問をそらしてワールドカップの話しに持っていこうとするロナルドだが、記者会見場に集まったジャーナリストたちは少なくてもこの日は興味がないようだ。したがって、質問はいつの間にかインテルやバルサ関係のことに戻る。
「ミランでの生活に満足しているかって? ウン、今言えることは今日ここにいられて幸せということさ。バルサを出ていかなければならなかったとき、あれほど辛い思いしたことはそれまでなかったと言っていいぐらいの経験だった。本当さ。人々はいまだにあの事態を理解していないだろうけれど、そして公にされていないことがいっぱいあるけれど、もう過去のことだからね。もう、忘れなくては。」

彼がバルサを後にした時の会長はヌニェス、そしてその当時の副会長はガスパーだった。そのガスパーとの関係を聞かれるロナルド。
「ガスパーとは当時もそうだったけれど、今でも非常にうまくいっている人物。僕が出ていかなければならなかったのは、クラブ理事会のせいではなくヌニェス会長一人の責任だったから他の人物は関係ないんだ。特にガスパーは僕がバルサに残れるように最後まで頑張ってくれた人物だし。」


●リケルメ、引退も覚悟
4月2日に弟のクリスティアンが誘拐され無事解放されたものの、その後も何回かの脅かし電話などを受けているというリケルメ。いまだに平和な生活とはほど遠い現実を抱えている。そしてもしこの状況が変わらないのであれば、また外国で働くチャンスも見つからないのであれば、現役を引退することも辞さないと語る。
「毎日のように、兄弟や両親、親戚の人々が無事でいるかどうか心配しながらの生活にはもう疲れてしまった。自分自身だって誘拐される可能性もじゅうぶんあるしね。もし自分の家族に何かが起きたら、それはフットボール選手リケルメのせいだと思うんだ。もし自分がフットボール選手じゃなければこんなことは起きなかったはずだ。もちろん自分の好きなことをして生きていきたい。それはフットボールをすること。でももうこの国では不可能な気がする。もし外国で、どこかのクラブで働けることになればそれに越したことはない。家族も安全なところに移動できることになるからね。でももしそれが不可能だったら、フットボール選手を続けていくことも不可能だと思う。」

●バルサ、リバルドにドクター許可をださず
リバルドはセレソンの合宿に入っているものの、バルサドクターのプルーナとセレソンドクターのルンコと二人の指示の下にリハビリに励んでいる。二人のドクターの意見によれば彼はまだ完全な状態にはなっておらず、さらなるリハビリが必要ということだ。したがって明後日おこなわれるカタルーニャ代表との親善試合には参加しないことが決まった。だがワールドカップが始まる頃にはほぼ完全な状態になるだろいうという見通しだ。

●オーベルマルス、手術へ
個人的に信頼するオランダ人ドクターとの話し合いを終えてバルセロナに戻ってきたオーベルマルス。昨日バルサのドクタープルーナとの話し合いで最終的に手術をおこなうことに決定した。右足のヒザの問題をシーズン中を通して抱えていたオーベルマルスにとって、来シーズンは開始早々から100%の状態で出発したい。そのためにはオフシーズンを利用して手術が一番確かな方法だという結論に達したようだ。

●幸運の女神は白がお好き
1回きりの決勝戦では何がおきても不思議ではないと言う。だがそれにしても信じられないマドリの勝利だった。幸運の女神は3人のクラックを擁するマドリの肩に触れる。ジダーン、ラウール、そしてカシージャス。一生に一度あるかないかのようなゴールを決めたジダーンは最優秀選手に選ばれた。