5月21日



    

バルサの将来

バンガールとクラブディレクターのファルゲールは今日からニューバルサの建設に向けて動き出す。そして今回の特徴は、ファルゲールがニューバルサの建設に関して大きな比重をもった人物として登場してきていることだ。昨シーズンはスポーツディレクターのパレイラが中心となって補強選手の獲得に走ってきたが、今回はファルゲールとバンガール、そしてガスパー三者のみで新体制への建設が進められる。

■クラブのアイデア
来シーズンに向けてのクラブ首脳陣のアイデアは、まずクラブの経済的観点からの制約をもって生まれてきている。それは選手たちに支払われる年俸を3600万ユーロ(約42億円)以内に収めるというもの。このアイデアはクラブディレクターのファルゲールが発案し、ガスパーの了承の元に決定されたものだ。これに見られるように、バルサは補強選手を獲得する際に必要な「移籍料」の問題より、各選手に支払われる「年俸」の制限をまず第一に考えているようだ。だが決して補強選手の数もここ2年間にみられたような大人数のものとはならないのも確かなこと。ガスパーが昨日語っているように2、3人の補強選手の獲得で終わる可能性が大きい。

そして今回の最大の問題は「放出選手」の検討だろう。もしこの年俸制限を実現させるとすれば、現在のバルサ選手の中で最高の年俸をとっているリバルドやクライハートなどの放出が非常に大きなキーポイントとなる。だがヨーロッパ各クラブの財政状況を考えるならば、彼らに支払っている年俸を簡単に出せるクラブはほとんどないと言っていいだろう。実際、彼らに具体的なオファーを出してきているクラブもないし、彼らもバルサを出る意思はないと表明している。したがって今回のバルサの問題は「補強選手」の問題よりも「放出選手」に関する問題が非常に大きくなっている。そしてこの放出選手の問題が解決しない限り、獲得選手の具体化も実現されない。

■バンガールのアイデア
もちろんバンガールは、そのクラブの方針のもとにバルサの将来を決めていかなければならない。5年前にバルサに監督就任したときとは大幅にクラブ事情が変わっていることを理解しないといけないだろう。だが幸運にも現在のバルサの選手を見てみれば、多くの第一次バンガール政権時の選手も残っているし、彼好みのカンテラ選手の活躍も期待できる状況だ。

バンガールは昨日カタルーニャのテレビ局の番組に出演していた。彼はこの場でいくつかのニューバルサのあるべき姿を語っている。
「これからバルサの主要メンバーとして残っていく選手、それはどこまでもチームカラーを愛し、そのチームカラーを守るためには地獄まで行く用意のある選手。例えば、現在のバルサが抱えている選手で言うならば、プジョーとかルイス・エンリケのような選手だ。これから来る選手も彼らのようなハートを持った選手となるだろう。」

「我々はどんなことをしても来シーズンにタイトルをとらなければならない。3年間にわたって一つもタイトルを獲得していないということは、バルサのようなクラブにとって許されないことであると共に、ファンにとっても許されないことだろう。そのタイトルをとるためには、すべてのバルセロニスタの団結が必要なのは言うまでもないことだ。」

そしてクバーラの葬儀に参加したときのことを語るバンガール。彼は誰よりも多くの時間をさいてこの葬儀に参加していた人物の一人でもある。彼は何と4時間もクバーラの最後のお別れに同席していた数少ない人物の一人だ。
「何時間いたかは覚えてないが、このような多くのファンに囲まれての葬儀というのは経験したことがなかった。驚いたのはクバーラを知る年輩の人だけではなく、若者も多く参加していたことだ。このことが私を非常に驚かせると共に、これまでない感激を味わった。そしてその瞬間、私はそのようなバルサに戻って来れたことを非常に誇りに感じだ。」

どのようなシステムで戦っていくかはこれから決めることだというバンガール。だが基本的なプランはすでにできていると言う。基本的な二つのシステム、それは4−2−3−1システムと、3−2−3−2システムだという。そして選手の配置に関して一つだけ明らかにしたこと、それはサビオラは今シーズンのように「9番」選手としてではなく、あくまでのその下に位置するメディオプンタとして起用したいということだった。そしてリバルドに関しては、もし彼がバルサに残った場合は以前と同じように左ウイングが彼のポジションとなるだろうと語っている。

■4−2−3−1システム

4−2−3−1システム、つまりバレンシアやデポールがおこなっているシステムであり、スペインリーグでもっとも流行っているものだと言って良い。だがバンガールシステムで基本的に違いがあるとすれば、それはボール支配率の高さを要求することだろう。どのようなシステムを彼が採用するにしろ、このボール支配のコンセプトは変わらない。

■3−2−3−2システム

3−2−3−2システム、基本的にカンプノウでの試合、あるいは相手チームが明らかに劣るという場合に使用されるであろうシステム。バンガールにとって有利なことに、現在のバルサの選手は多くのポジションをこなせる選手が数多くいるということだ。例えばプジョー(サイドバック、セントラール)、ルイス・エンリケ(中盤、ウイング)、ジェラール(ピボッテ、メディアプンタ)、モッタ(中盤、サイドバック)、コクー(キーパー以外)というように、彼らの活躍がバルサ躍進の重要なキーポイントとなるとバンガールは考えている。


狙われるプジョー

ヨーロッパの二つのビッグクラブがプジョーの獲得を狙っている。今シーズン、バルサの中で誰よりも活躍した選手にオファーがくること自体驚くことではないだろう。だがオファー問題はいいとして、それを受けるバルサ側に大きな問題がある。なぜなら、プジョーの年俸は今のところ誰よりも低いといわれているのだ。

4月に24才になったばかりのプジョーは、約1年前に契約更新をおこなっている。その契約によれば2004年6月31日までの契約期間であり、移籍料は40億ペセタ(約25億円)となっている。だが問題は彼に支払われている年俸は、多くのスタメン選手の誰よりも低いことにある。1年前に契約の見直しをしたばかりではあるけれど、それでも彼の年俸は誰よりも低いのだ。もしクラブがその選手を正当に評価をしないということであれば、それは彼を必要としていないということを意味するのがこの世界。自他共に認めるバルセロニスタではあるプジョーだが、彼もそういう疑問を抱いたとしても不思議な話ではない。だが彼は決して自分から年俸の見直しを言いだす選手でないこともまた確かなことだ。

ラモン・ソストラス、プジョーのマネージャーは語る。
「これまで長いバルサ選手としての経験をつんでいるプジョーだが、今まで1回たりとも年俸のことでクラブに話し合いを申し込んだことがない。去年の契約見直しももともとはクラブが提案してきたものをプジョーが受けた形となっている。だがもうそろそろ彼のことを正当に評価してもいい時期ではないだろうか。イギリスとイタリアから大きなオファーが来ていることは事実だ。それも彼に示す年俸額は、バルサでのそれの何倍もの金額となっている。もしクラブが動き出さないでこの状況を放置したままにしるなら、プジョーの将来がバルサではないということもじゅうぶんあり得る話しだ。彼は誰もが疑わないバルセロニスタであるけれど、同時にプロ選手でもあるということを忘れて欲しくない。プロ選手が正当に評価してくれるところに移籍しても、何の不思議もないだろう。それはプジョーという選手にしてもそうだと思う。」

プジョーの問題は、少なくともフィーゴだとかラウドゥルップの移籍問題とは異なる。彼はカンテラ育ちであり、根っからのバルセロニスタであると同時に、金では動かない選手の一人として認識されているからだ。だがそれでもプロ選手プジョーにとって、クラブの低い評価は当然なんらかの形でモチベーションに関係してくることもあり得るだろう。だがそれらのこととは別に、将来のバルサカラーを受け継いでいく貴重な選手の他クラブへの放出はソシオが許さないだろう。クラブは早急に動かなければならない。