9月12

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国王杯 1/32
9月11日 19:30
LA MAGDALENA
NOVELDA
vs
FC BARCELONA

3 - 2


許せない敗北

歴史は繰り返された。昨シーズンに続きバルサは国王杯初戦で二部Bのクラブに沈められた。だがこの敗北による痛手の後遺症は、昨年のそれより遙かに大きいだろう。なぜなら今シーズンのバルサはバンガールの”フィロソフィー”を唯一の武器として戦っていこうとしているのだから。彼の”フィロソフィー”、それはクラック選手を排除し、彼のノートブックによって作成されるチームブロックの構築。だから余計この敗北は大きな傷を残すことになる。二部Bのノベルダ相手に2点しか入らず3点もゴールを許す”チームブロック”の惨めな敗北は、国王杯に早くも敗退という事実以上の重みを持って我々を襲ってくる。多くのバルセロニスタは自らに答えのない疑問を投げかけていることだろう。
「なぜバルサは、二度も同じつまずきをするのか?」
「なぜバンガールは昨年のレシャック以上に選手のモチベーションを高めることができなかったのか?」
「なぜバンガールは、エンケを獲得したのか?」
「なぜバンガールは、デ・ボエルという昨日の試合ではシロウトにも劣るプレーをする選手の延長契約を望んだのか?」
「なぜ彼のシステムにリケルメが入り込めないと言うのか?」
バンガールは変わったと言われ続けてきた。その証拠に昨日の惨めな敗戦にも関わらず、試合後には選手たちを許そうとしている。だがバンガールは気がつくべきだ。この敗戦をバルセロニスタは許してはいないし、これからの長いシーズンに臨むにあたっての理想的な道ではないとも思っていることを。

それは今となっては象徴的な風景であったと言える。試合前、バルサベンチにはレシャックとバンガールが身体をくっつけるように座り親密に会話を続けていた風景。
「バンガール、気をつけろよ。昨シーズンの俺の二の舞になるんじゃない」
レシャックはこうバンガールに言っていたのかも知れない。だが100分後にはそれが現実となる。信じられないことだが昨シーズンと同じことが起きたのだ。国王杯初戦での敗北、しかも相手はバルサBと同じグループに属し最下位に位置しているノベルダだった。二部Bリーグが始まって2試合を消化したところで、獲得したゴール数わずか1点、入れられた得点7のノベルダに敗北。

■バンガールの責任
バンガールが試合前に「敗北の可能性」を認めて多くの言い訳をしようとしたとき、やれ相手のグランドでの一発勝負だの、グランドが小さいだの、芝の状態が最悪だの等、等、その中にはレイジンゲルやデ・ボエル、エンケのミスの可能性までは言及していなかった。マドリガルという無名の選手がハットトリックを決めてバルサを沈める可能性にも触れてはいない。その「可能性」に触れていなかったのは良しとしよう。だがバンガールがいかに選手を許そうと、バルセロニスタはバンガールの責任を追及するだろう。90分の試合を通じて試合の流れを読むことのできなかった監督の責任は大きい。

彼は試合前には「可能な限りのスタメン選手を起用して戦う」と公言しながらなぜ4人の通常スタメン選手しか登場させなかったのか。デ・ボエル、ナバーロ、チャビ、そして病気あがりのモッタ、この4人だ。ダニにいたっては、敗北が濃厚となっている状況でもベンチに座らせていた。残りわずかな時間となり1点差で負けているという状況で、バンガールはジェオバンニをメディアプンタに下げ、ジェラールをプンタとして起用した。なぜダニの登場がなかったのか。そしてこのような状況でも使う気がないのならなぜこの試合に召集したのか。

彼が選んだシステムはこれまでのものとは明らかに違っているものだった。これまでの3−4−2−1システムではなく、2−4−3−1,あるいは2ー7−1と呼んでもいいかも知れない。レイジンゲルとデ・ボエル二人をディフェンスとし、見せかけのラテラールだったロッケンバックとナバーロは中盤に上がりチャビとジェラールと一つのラインを形成する。そして新発明は3人のメディアプンタとして右にガブリ、真ん中にリケルメ、そして左にモッタを配置。プンタにはジェオバンニが収まる。

■選手の責任
プンタとして起用されたジェオバンニが大活躍したとは言えないものの、前半の7分に得点を決めた功績は評価しなければならない。だがその後の80分近く、彼の姿は消えてしまったことも確かだ。2回のオフサイドにより無効とされた得点を彼が決めたとは言え、それ以外の活躍は見せていない。攻撃的な布陣とはいえ、決定的なゴールチャンスをつかめないバルサ。だが試合のペースはほとんどバルサのものだった。試合をコントロールし、ボールを回しながらも危険を犯そうとはせずボール支配をおこなう前半のバルサ。

だが後半に入って状況は一変する。フリーキックのチャンスをつかんだノベルダがゴール前に飛び込むマドリガルにセンターリング。彼をマークしていたレイジンゲルをゴール前直前で抜き去りゴールを決める。そして6分後、今度はデ・ボエルの決定的なミスによりマドリガルに再びゴールを許し逆転に追い込まれるバルサだ。ペナルティーを得て同点としたバルサだが、今度はデ・ボエルとエンケのミスにより再び逆転。

バンガールが起用した二人のディフェンス作戦。もちろん彼らにそれなりの「内容」があったからこそ、そのシステムに彼ら、つまりデ・ボエルとレイジンゲルを起用したのだろう。絶え間ない集中力と一対一での勝負強さが彼らにあると思ったからこその起用に違いない。だが現実に起こったことはそれと正反対のことだった。レイジンゲルは無名の”9番”マドリガルに100回負け、そしてデ・ボエルはその他のゴールの最高責任者だった。彼が、その理由は納得できるとしても、試合後にエンケ一人に失敗のミスをなすりつけるのは醜いと言うしかない。

キーパーコーチのホックも、そしてバンガールもその存在さえ知らなかったエンケ。彼を獲得したのはそんな彼らなのだ。プレステージでの練習試合ですでに明らかになっていたように、彼はバルサが必要とするキーパーではない。エンケはバルサというビッグクラブでプレーするようなキーパーではないのだ。ノベルダの2点目といい特に3点目のゴール、デ・ボエルの指摘を待つまでもなく明らかにエンケがどうにかしなければならないゴールだった。

 


それほど悲惨なことでもない

多くのタイトルを獲得してきたバンガールにとって、昨日の二部Bのチームとの敗戦はそれほど「悲惨」でも「惨劇」なことでもないようだ。歴史的に見ても同じようなことがあったし、これからもあり続けることの一つに過ぎない。そう考えるバンガール。

ノベルダ戦後の記者会見にあらわれるのにずいぶんと時間がかかったバンガール。たぶん黙祷でもしていたのだろう。そしてやっと記者会見場にあらわれた彼は、このような敗北、つまり明らかにカテゴリーが下のチームとの試合での敗北の際によく使われる典型的な発言に終始している。運がなかったこと、選手はそれなりに頑張ったこと、いくつかのミスによって思わぬ敗北をしたこと、等、等・・・。
「バルサにとって今シーズン期待されているタイトルの可能性を早くも一つ失ったことは非常に残念だ。だがこの敗北によるショックを次の試合に残すようなことは避けなければならない。」

相手がいかにカテゴリーの低いチームであって、国王杯の一回戦で敗退したといっても、決して悲惨な結果でもないし、惨劇でもないと言い張る我らがバンガールだ。
「こういうことは説明がつかないが、フットボールの世界ではよく起きることだ。いや、フットボールの試合というよりまるでテニスの試合のようだったと言える。いずれにしてもノベルダの選手の闘争心が我々の選手のそれより優っていたということができる。彼らが獲得した幸運は、彼らが探し求めたから見つけることができたのだろう。」

具体的な検討に入るバンガールにとって、グランドの小ささや芝の荒れ具合も検討の対象となる。
「前半に続き後半に入っても我々は試合をコントロールしていた。だがグランドが小さいことや芝が荒れていることが非常に我々に悪い効果を与えたことも事実だ。しかも我々はいくつかあったチャンスをミスし、3回のディフェンスミスによって3点を入れられてしまった不運がある。だが我々は可能な限り全力を出しきって戦った。勝利するためにできる限りのことをしたと思っている。だが残念ながら目的は達成できなかった。それだけのことだ。」

バンガールに意地の悪い質問が飛ぶ。この試合の前にビジャレアルの監督ビクトルは国王杯の試合に負けたことにより更迭となっている。そしてバンガールにもその可能性はあるかという質問だった。
「俺がクビになる?そんな質問には答えられん!」

■デ・ボエル、選手としての最悪見本
試合後のインタビューに答えたデ・ボエルは、何でも起き得るフットボールの世界でも珍しい発言をしている。それも悪質な見本とも言うべき発言だ。彼はチームメイトのエンケとレイジンゲルのプレーに、敗戦の罪をなすりつけているのだ。
「最初のゴールはレイジンゲルがあまりよくなかったことが原因だと思う。しかももっと悪かったのはキーパーのエンケだ。彼は飛び出してあのゴールを防ぐべきだった。2点目のゴール、あれは相手の選手がうまいこと自分を抜いていってゴールを決めたと思っている。そして3点目、あれは明らかにエンケのミスだった。あれはとらなくてはいけないゴールだった。」
この試合にカピタンマークをつけたデ・ボエル。彼は試合前日にカテゴリー下のチームとの試合はモチベーションを高めるのに非常に難しいとまで語っていた。彼自信のお粗末なプレーを反省せず、チームメイトを批判するカピタンはかつてのバルサには一人として存在していない。