10月24

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Champions League
10月23日 20:45
CAMP NOU 62,426人
FC BARCELONA
vs
LOKOMOTIV DE MOSCU

1 - 0


スーパープジョー+10人=バルサ

もし、このバルサがバンガールが望んでいるバルサであるならば、
もし、このシステムがバンガールが信じているものならば、
もし、試合内容に満足しているとバンガールが言うのであれば、
もしそうであるならば、もう今シーズンのバルサの成功は諦めた方がいいだろう。いかに楽観的なバルセロニスタであれ、オサスナ戦、バジャドリ戦、そして昨日のロコモティフ戦という一連の試合内容を見る限り悲観的にならざるをえない。それにしても、もしスーパープジョーが空からあらわれなかったら、地上にはさらなる白い花が咲いていたことになっただろう。

カンプノウでのオサスナ戦に続いて、再び惨めな試合を展開した昨日のロコモティフ戦。相手は何ということのないチームであるロコモティフであるというのに、勝利の3ポイントを獲得するためにはシーズンを通して必要なすべての幸運を使い切らなければならなかったバルサ。ロコモティフの二人の外国人選手、ナイジェリアのオビオラとブラジルのフリオ・セサー、彼らの信じられないシュートミスがなければバルサの勝利もあり得ない試合だった。

再び、そう再び、バンガールノートが使い尽くされた古びたものであるが故に、現実には何の役にも立たないことが証明された。このノートの中に存在する壮大なスペース、これを埋めない限りバンガールノートは実戦では機能しないことが証明されている。
左サイドの空白は誰が埋めるようにノートに書いてあるのか?
ナバーロ、コクー、あるいはリケルメ?バンガールがどう言おうと左サイドは存在していなかった。
そして、右サイドは誰が?
疲労困憊の姿で時たまあらわれるメンディエタの存在をのぞけば、右サイドも存在していない。

スペインリーグでの戦いを研究しつつあるヨーロッパのチームは、まずチャビを囲むことを学んできている。そして相手中盤選手に囲まれた彼から何回か飛び出すパスも、ライン際には誰もいないから真ん中に固まっているクルイベルとサビオラへの単純な縦パスとなる。だがスローモーションのビデオを見ているようなバルサの攻撃は、相手ディフェンスに簡単に見破られてしまう。この想像力のない単調な攻撃に相手ディフェンスが驚くことは間違ってもない。ましてロコモティフには5人の屈強なディフェンスがいるのだ。

前半のバルサは、今シーズンのバルサとしてではなく、ここ「何年」かのバルサでの最悪のものと言える。守備にも、攻撃にも、一切のアイデアが見られず、そして当然ながら想像性もスペクタクルもあるわけがない。カンプノウに存在したもの、それは観客席を埋めるバルセロニスタと選手間の白けた雰囲気のみだ。バンガールの番頭と見られるデ・ボエルを通してバンガールへのブーイングが、そしてバンガールとは何の関係も見つけられないリケルメへの拍手が続く。試合内容はもちろんお粗末なものだ。最悪なのは選手同士における理解度の不足。それがあらわれたのが前半終了間際のコクーとデ・ボエルだった。コクーのマークミスで相手デランテロがゴール前に走る。それをカバーしなければいけない最後のディフェンスとなっているデ・ボエルはそれを見つめたまま動こうともしない。幸いにもボナノと一対一になったこの勝負、ボナノとゴールポストの勝利となった。

後半10分にも同じことが起きた。デ・ボエルのスピードはゼロH。それをカバーするように飛び出してきたボナノはデランテロにかわされ、ゴールポスト前には誰もいないかと思われた。ところが突然スーパープジョーが空から舞い降りてくる。ゴールポスト5m前で、分厚い胸に焼き付いたバルサのエンブレムを相手デランテロに示すプジョー。カンテラ上がりのバルサ選手として、バルセロニスタの一人として、ここは通させないとばかり全身を膨らませるプジョー。デランテロの放ったシュートはバルサエンブレムに当たりはじかれた。カンプノウに押し寄せていた6万人バルセロニスタのスーパープジョーに対するスタンディングオベーションが贈られたのはもちろんだ。そしてこの瞬間からプジョー、リケルメコールと共に、デ・ボエル、バンガールを批判する声がカンプノウを包む。

もうデ・ボエルに対するブーイングは止まらない。良心的なバルセロニスタでさえ止めることはできない。リケルメから放たれたフリーキックを頭で合わせてゴールしようが彼へのブーイングは収まらない。ゴールを決めた直後のガッツポーズもブーイングの対象となってしまう。デ・ボエルとバルセロニスタの亀裂は大きくなるばかりだ。誰が見ても、デ・ボエルファンが見ても、彼の動きは遅いし怠惰なプレーが目立つことは明らかだ。彼に休養を、それを考えないといけないバンガール。

ブーイングと白いハンカチがささやかながらも振られるうちに終了した試合。結果を見てみれば1−0でバルサの勝利。チャンピオンズリーグ4連勝で早くもグループ首位での第二次リーグ進出を決めたバルサ。この試合の終末風景を見た人々には信じられない「結果」となった。

■バンガール
デ・ボエルのゴールが決まった瞬間、バンガールはいつものようにベンチを飛び出し勝利につながるゴールを祝福した。だがベンチの外に飛び出した彼に送られた観客席からのプレゼント、それはブーイングだった。デ・ボエルを通してのそれではなく、やっとバルセロニスタの前にあらわれた彼への直接のブーイングだった。記者会見場に厳しい表情であらわれたバンガールは語る。
「チームが一丸となって勝利を目指したこと、そしてその結果を勝ち取ったこと、この二つのことに非常に満足している。試合自体は非常に難しいものだった。彼らは10人で守りカウンターアタックを狙ってくる、フットボールとしては最も簡単な方法で戦いを挑んできた。そして我々はいつものように危険を犯しながらも攻撃に重点を置いた戦いをした。そしてその甲斐あって我々は勝利することができた。」

どのように攻撃的な戦いをしたかは彼のみ知ることだ。多くのバルセロニスタにはあくびがでるほどの退屈な試合。そのバルセロニスタに批判のコメントを送るバンガール。
「デ・ボエルへのブーイングはまったく信じられない。そういう悪状況にも関わらず90分間にわたって集中力を示した彼を誉めてあげたい。しかし、いったい何がどうしたというのだろうか。彼がゴールを決めた後でさえブーイングが止まないということはまったく理解できない。デ・ボエルはバルサの選手であり、ブーイングにより不必要なプレッシャーをかけることになることがわからないのだろうか。私バンガールにはまったく理解できない。」

■リケルメ
ルイス・エンリケの負傷とバンガールの言う「客寄せ」ということでスタメン出場を果たしたリケルメ。だが彼にもこの日のカンプノウを満員にすることはできなかった。入場人員62426人、これまでで最悪の入りだ。それでもこの日にカンプノウに集まったバルセロニスタにとって主役はあくまでもリケルメだった。彼がバルサに入団しての初めてのスタメン出場の試合。試合開始早々からボールを要求するリケルメにボールがわたるとスタンドから拍手が沸きあがる。彼から何回となくデランテロに送られたファンタスティックなパスにももちろん拍手が送られる。バルセロニスタは退屈なバルサの試合を少しでも楽しもうと、彼のスペクタクルなパスやファンタスティックなプレーに酔いたがっている。

彼にラウドゥルップやデラ・ペーニャのイメージをダブらそうとしているバルセロニスタ。だが彼の限られたポジションで決定的な仕事をするのはひじょうに難しい。それでもクルイベルやサビオラに細かいパスが送られる。そしてデ・ボエルの決めたゴールは彼から送られた正確なフリーキックからだった。

■デ・ボエル
バンガールシステムの犠牲と呼んでいいであろうデ・ボエル。常に最後のディフェンス選手となる彼には少しのミスも許されない。コクーのミスでさえデ・ボエルのせいにされてしまう。北ゴール裏をメインとして送られるブーイングに対して、正面スタンド付近から送られるかれへの拍手。バルセロニスタも真っ二つに別れてしまっている。いずれにしても彼の最近のプレーはお粗末という評価ができるだろう。だがブーイングが良いプレーにつながることはあり得ない。あり得ないことを知っていても起きる彼へのブーイング。
「ゴールを決めたとき、スタンドに向かってガッツポーズをしたのを覚えている。俺にブーイングをしているファンに対してだよ、もちろん。何で俺にブーイングが起きるのかまったくわからん。わかることはあの音で自分が神経質になるということだけだ。ゴールを決めてからも俺にブーイングだ。もう全然わからん。」

■プジョー
それは何とも印象的なシーンであった。少なくてもバルセロニスタにとっては忘れられないシーンとなるだろう。ゴールポストの前にはボナノの姿はなく、プジョー一人が腰を低くして構えている。目の前にはブラジル選手がゴールを狙ってシュートを放とうとしてる。彼もまた一人だ。一人対一人の戦い。フリオ・セサーから放たれた強烈なシュートは奇しくもプジョーの左胸に輝くバルサエスクドに当たりはじき返される。
「俺がバルサだ!ここは通さん!」
そう言っているようなスーパープジョーの姿がそこにある。カルラス・プジョー、彼はこのプレーで確実にバルサ史に残ることになるだろう。
「自分が唯一やったことは両手を後ろに持っていくことだけさ。ペナルティーなんか取られたら大変だったからね。あとはデランテロ選手がどこら辺にシュートするかを必死に考えた。子供の時にはキーパーもやっていたから少しは役だったかも知れない。いずれにしてもあんなプレーより、デ・ボエルのゴールが嬉しい。彼にはああいうゴールが必要だったからね。」

■ボナノ
ボナノにとっては久しぶりのスタメン出場だ。スタメンがどうのこうのより、試合そのものに出場することが久しぶりのこととなっている。だがこの試合彼にはあまり活躍の場面がやってこなかった。特筆すべき二つのこと、一つはロコモティフの強烈なシュートをナイスセーブしたこと、そしてもう一つは無謀な飛び出しだった。
「あまりにも久しぶりの出場だったので何か変な感じだった。ベテランとはいえ、久しぶりの仕事は胃がきりきりするもんだ。試合そのものも良くなかったし、ファンの人々のブーイングも凄かったけれど、個人的には特別な試合。うまくやれば次の試合にも使ってくれるだろうからね。ただ、ビクトルとかエンケというライバル以外にプジョーというナイスキーパーの登場が気になる。」