恐怖の一夜 in カンプノウ

多くのバルセロニスタにとって、カンプノウでの試合が“スペクタクルの観戦”ではなくなってからすでにかなりの時間が経過している。“勝たなければならない試合”、あるいは“土壇場の試合”、つまり試合に負ければ果てしなくどん底に落ちてしまうという苦しいものばかりとなっているカンプノウでの試合観戦。そして今日の試合はまさにそういう典型的な試合の一つだ。ひたすら恐怖のみが存在する試合。勝利することによりようやく今シーズンのスタートを切ることになるこのバレンシア戦に、もし敗北するようなことがあれば再び“セビージャ戦のスキャンダル”がカンプノウを包むことになる。ガスパーは会長席で、バルセロニスタは観客席やテレビの前で、そしてバンガールはベンチの中で、それぞれの思いと共に恐怖に震える一夜がやって来る。

勝利、勝利、そして勝利。それがバルサに残された唯一の生き残りの道だ。それ以外の結果はすべて“失敗”を意味する。すでにどんな小さい過ちも許されない状況に置かれているバルサにとって、勝利し続けること以外の道は残されていない。今日カンプノウに迎えるチームは昨シーズンの優勝チームであるバレンシア。そしてこの試合のあと、バルサはアウエーでの厳しい二試合が続くことになる。ビーゴに行ってのセルタ戦、そしてマドリッドに行ってのAt.マドリ戦。これまで２連勝するのがやっとのバルサにとって、厳しい、ととつもなく厳しいスケジュールが待っている。

「このような試合はチームにとって非常に大事なものと言えるが、私バンガールやクラブ首脳陣にとっては一つの試合に過ぎない。監督やクラブはすべての“結果”を越えたところに存在している。」
昨日の記者会見でそう語るバンガール。だが現実問題はそう単純でも簡単なものではない。ガスパー政権を崩壊させようと企んでいる多くの“野党”や、バンガール更迭を要求している多くのバルセロニスタが存在していることを忘れてはいけない。すでに余裕のある試合など一試合もあり得ないバルサにとって、カンプノウでのすべての試合が“バルサ現体制”に対する厳しいテストとなっている。もちろん今日のバレンシア戦がそのテストの最大のものの一つであることは誰しもが否定できない。「スペインリーグ最高レベルのディフェンス陣を誇るバレンシア」と相手チームを分析するバンガール。勝利のみが要求されるバルサはいかにそのディフェンス網を破壊していくことになるのだろうか。

一人一人の監督がそれぞれの“ノート”を持つように、この大事な試合を前にしてクライフとバンガールを比較してみるのも興味あることかも知れない。“決戦”を前にしてクライフは常に語っていた。
「大事な試合には若手選手を起用するよりは、チームを引っ張っていくような経験を積んだ選手を起用すべきだ」
それは同時に最も年俸の高い選手を起用していくということも意味していた。スター選手と呼ばれる彼らこそが大事な試合で活躍しなければならない、そう考えていたクライフ。だがバンガールはクライフとは違う“ノート”を持っている。彼のアイデアは、やはり大事なマラガ戦で見られたようにカンテラを重要視してのメンバー構成だ。彼らこそがこの大事な試合を救う選手とならなければならない、それがバンガールのアイデア。

多くの関係者が見る限り、サビオラとリケルメは再びベンチに座っていることになりそうだ。かつてのレバクーゼン戦がそうであったように、そして先日のマラガ戦もそうであったように、前半は体力消耗戦を挑もうというバンガール。そして後半に入り勝機をつかんだところで得点能力の高い選手を出し勝負にでようということだろう。したがってレバクーゼンやマラガの試合がそうであったように、バルサのチャンスは後半４５分のみの試合展開になることが予想される。試合は９０分間あるというのに、今日のバレンシア戦もバルサには４５分のチャンスしかない。

ムンド・デポルティーボ紙が予想するスターティングメンバーの中で注目されることはロッケンバックがチャビの代わりにピボッテの位置に入り、同時にアイマールのマンマークに当たるとすることだ。そしてガブリとデ・ボエルがセントラルとしてカリューを徹底的にマークすることになる。左右ラテラル、あるいは左右カリレロとしてプジョーとコクーが入り、左インテリオールにモッタ、右にはチャビが入りことを予想している。またエスポーツ紙は少し違った予想をしている。ピボッテは普段と同じようにチャビが務め、右インテリオールにメンディエタへの復帰を予想している。

＜スタメン予想図＞

●エスポーツ紙●	●ムンド・デポルティボ紙●
●チキート●