1月28

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アディオス、バンガール!

いつもながらのガスパー風“会議の進め方”でおこなわれた2時間にわたる理事会メンバーによる話し合い、それはバンガールを「友好的な話し合いのもとで契約解除する」というガスパー風“退職の薦め”という結論をもって終了した。つまりこの会議が終了した段階では、バンガールの片足はすでにクラブからはみ出てはいるものの、残りの片足は依然としてベンチの中にあるということだ。何をやってもスッキリとことが運ばないガスパーを筆頭とするバルサ理事会。昨日の会議も例外とはならなかった。

バンガールの契約解除の最大のネックとなっているのは、彼を解雇する際に支払わなければならない“契約解除金”の額だ。8か月前にバンガールとバルサが交わした“契約書”を、この段階にきてもう一度細かく検討しなければならなくなっている。つまりバンガール側が理解しているバルサとの契約期間は3年間にわたるというものだが、クラブ側が理解している契約期間は2年+1年のオプション付きというもの。年俸200万ユーロといわれるバンガールの年俸だが、もし彼の言うように3年契約であれば総額600万ユーロ、もしクラブ側が理解しているようなものであれば2年分の400万ユーロが“契約解除金”となる。両者間で200万ユーロの差が生じているのだ。

これまで何回も語られてきているように、バンガールは契約解除となった場合1ユーロも値下げには応じない覚悟だ。それだけではなく“契約解除金”の問題が解決されない限り、バルサ現監督という肩書きを捨てる気もない。まさしく歴史は繰り返している。そう、あのヨハン・クライフが解任になったときと同じ状況が生まれてきている。シーズン終了まであと2試合というところで突然の解任となったクライフは、今のバンガールと同じように“契約解除金”の問題でヌニェス理事会と対立し、最終的には何年間にもわたる裁判沙汰となった。

■予想された失敗
バンガールの2回目のバルサでの冒険、それは誰の目から見ても危険な行為であったと言える。5月にはすでに予告された彼のバルサへの復帰、それは多くのソシオ、シンパ、そしてバルセロニスタの反感をかうことが予想されたことだった。しかもガスパー会長による個人的な賭けでもあった。クラブ理事会の総意によって生まれたアイデアでは決してなかったことも、バンガールにとって非常に危険な賭けとなったことは間違いない。彼を支える唯一の人物、それはガスパーしか存在しなかったからだ。

2002年5月1日、ガスパーと彼の信頼する4人の副会長たち、つまりジョアン・カステーレス、フランセスク・クロッサ、アンヘル・フェルナンデス、ガブリエル・マスフロールが集まり次のシーズンの監督候補の選択会議がおこなわれている。シーズン最終戦となったサラゴサ戦で引き分けという結果を得たバルサは、翌シーズンでのチャンピオンズの参加権を獲得。そしてその夜バルセロナのアレーナホテルで会議がおこなわれる。

ガスパーがまず会議を開くにあたって次のように語り始める。
来シーズンの監督候補をそれぞれあげて欲しい。一人一人が意見を出し合って話し合っていこう。」
ジョアン・カステーレスが最初に口を開く。
「個人的にはロナルド・クーマンが一番適任人物だと思う。バルセロニズムのシンボルであり、アヤックスでの監督としても非常によくやっている。しかも将来性にあふれた監督だと思う。」
続いてフランセスク・クロッサ。
「現在の我々が抱えている選手の傾向を考えると、カルロス・ビアンチが最適の人物だろう。ボカで多くのタイトルを勝ち取った監督であり、人間的にも非常に大きな人物だ。」
そしてガブリエル・マスフロール。
「私はフランク・ライカーがいいと思う。彼のフットボールスタイルはバルセロニスタが好む趣向にあっている。しかも彼はヨハンと親交が厚い人物。我々がヨハンと再び親交を暖めることを可能にしてくれるかも知れない。」
そして最後にアンヘル・フェルナンデスが口を開こうとした瞬間、それまで聞き役にまわっていたガスパーが突然語り始める。それも非常にショッキングな内容で。
「実はもうすでにバンガールには監督就任の話をしてあるんだ。」

この4人の副会長はクロッサを除いてすべてすでに辞職している。この中で一番最初に辞職を申し出たアンヘル・フェルナンデス、彼はこの会議に関して次のように語っている。
「まるで子供たちが集まっての“会議ごっこ”だった。来シーズンからの監督候補を検討するとして要請された会議で、始まる前にはすでに会長自らバンガールと交渉し結論まで出していた。もう、話にもならない。ヌニェス時代もそうだったが、ガスパーが会長になっても“会長独断政権”ということ自体は変化しなかったということだ。」

そして5月13日、ガスパーは半分は真実、残りの半分は嘘という内容の記者会見を開いた。
「私ガスパーはすべての副会長たちと会談を持ち、その結果バンガールの監督就任を決めることにした。それぞれ個人的に微妙な違いが存在するのも事実だが、基本的にすべての副会長たちがこのアイデアを支持している。」

■賛否両論、レシャック監督就任
多くのカタルーニャ紙が次期監督候補の名前をあげている。レシャック擁護派として知られるムンド・デポルティーボ紙は当然ながらレシャックの監督再就任のキャンペーンを張り、反レシャック派としてのエスポーツ紙はレシャック監督就任の際の“危険度”をうたう記事となるのはしょうがない。

例えばムンド・デポルティーボ紙はレシャック監督就任の可能性に関して次のように社説として載せている。
“現在のバルサが抱えている問題の解決策として、カルラス・レシャックの監督就任というのが最も論理的で自然なことであろう。それにはいくつかの理由があげられる。彼は最もバルサを知る人物であること。スペインリーグやチャンピオンズに関しても深い知識を持っていること。そして、これこそ大事なことであるが、彼の監督時代に獲得した選手が何人もバルサメンバーとして残っていること。したがって現在バルサが抱えている選手に関しても多くの知識を持っていることになる。彼の最も信頼していたリバルドが不在という悪状況の中でチャンピオンズ準決勝進出、リーグ4位を果たした功績は大きく評価されなければならない。だが、多くのバルセロニスタの支持を得るかどうかは別問題となることは致しかたないだろう。”

一方のエスポーツ紙もレシャック監督就任の可能性が非常に高いとしながらも、彼に対する評価はムンドとはまったく違うトーンとなっている。それは例えば「あげくの果てにレシャック!」と題した次のような記事から読み取ることが出きる。
“再びレシャックがバルサの主役となろうとしている。昨シーズン、バルサで失敗したレシャックが再び監督として戻ってくる可能性が高くなっているのだ。チャンピオンズで準決勝に進出したことと、最終戦でギリギリ4位に入ったことでどうにかこうにか悪いシーズンに終止符を打ったあのレシャック。ジェオバンニ、ロッケンバック、クリスタンバールという選手に大枚をはたいてでも獲得することを要求したあのレシャック。しかも監督を辞任した今、彼の新たなポストであるテクニック・ディレクターとして目立った働きはいっさい見せていないレシャックではないか。彼の監督復帰という事態が現実となったりしたら、それこそ非論理的な判断と言うほかないだろう。”