2月16日

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LIGA 第22
2月15日 20:00
MONTJUIC
ESPANYOL
vs
FC BARCELONA

 

0 - 2


バルサに退院許可がおりました

傷つき病に倒れたフットボールチームを救うもの、それは勝利の3ポイントのみだ。最高の治療薬にして同時に唯一の治療薬、それが試合での勝利。ここ1か月にわたって悪いチーム状態だけではなく、クラブそのものが揺れに揺れていたバルサを救うのは、やはり勝利の3ポイント以外になかった。そしてその治療薬をついにつかんだバルサ、しかもモンジュイクでのダービー戦で勝利の3ポイントを獲得し新たな出発を目指す。新たな出発、それは明後日のインテル戦に勝利しチャンピオンズの戦いを有利に展開すること、そして土曜日のベティス戦に勝利しリーグ戦でもまだ死んでいないことを示すことだ。

決して“普通”のダービー戦ではなかった。エスパニョールにとってはともかく、バルサにとっては“異常”なダービー戦と言っていいだろう。もしモンジュイクの丘で敗戦ということになれば、それは二部降格ラインへの仲間入りが可能となってしまう“異常”な戦い。だが同時に勝利することがあれば、それはこれまでの落ち込み状態から脱出することも意味する戦いでもあった。90分の戦いを終えたバルサ、彼らを待っていたものは、そう、明日から新たな出発を期待させる勝利の味を噛みしめることだった。

アンティック、クレメンテ、それぞれの監督による“戦術的”な試合展開で始まったダービー戦。“ボールはいらない作戦”を試みるエスパニョールに対し、“それならボールを頂戴作戦”とばかりに攻撃を試みるすバルサという風景で前半の45分が展開されていく。

クレメンテはモラーレスとタムードという二人の核になる選手をベンチに置いてスタート。一方アンティックはビルバオ戦に出場した“彼の11人”をそのまま起用。先制点のチャンスはバルサに何回か訪れる。この日もまた観客席へ、空高くへと、いずれにしてもゴール枠以外のところとお友達となっているクルイベルのシュートは外れまくりのオンパレードだ。ゴールチャンスは訪れるものの、ゴールととはならないバルサ。だがボールを所持することを拒否したエスパニョールには当然ながらそのゴールチャンスも訪れない。

奇妙なことにバルサの攻撃態勢が一息つき、試合のバランスが平衡状態をむかえた時間にバルサのゴールが訪れることになる。それもわずか2分の間に勝負を決める決定的な2つのゴールがバルサに訪れる。チャビからのフリーキックをゴール前でフリー状態になったコクーが頭で合わせて先制点、そして2分後、今度はカウンターアタックでサビオラからのパスがゴール前に飛び込むチャビにつながり2点目。ビルバオ戦と同じように前半45分で2点を決め後半に入るバルサだ。

2点のハンディー戦となったエスパニョールは当然ながら“ボールを頂戴作戦”へと変更せざる終えなくなる。前半はベンチで待機していたタムードが登場。チームのカピタンであるタムードの出場はチームそのものに翼を与えただけではなく、モンジュイクに集まってきているペリーコの連中にも大いなる期待を抱かせる。後半開始15分ですでに前半につかんだゴールチャンス以上のものをつかむエスパニョール。アンティックの反応は早かった。左サイドからの攻撃を抑えるために、メンディエタに代えてモッタを出場させる。

時間の経過と共にエスパニョールの攻撃力に衰えが見えたのは致し方ないだろう。多くのゴールチャンスをつかみながらそれをものにできなかったデランテロ。アンティックバルサは前半のエスパニョールのように“ボールはいらない作戦”を試み、守備の固さを持って逃げ切ろうとする。普段のバルサであるならば、決してとってはいけない作戦。だが負けが続いているバルサの選手にとって勝利に対する絶対的な精神は存在しない。同点あるい逆転されることへの恐怖が頭から離れない11人のバルサ選手。彼らの精神構造を変えることができる唯一の秘薬、それはこの試合に勝利し再び自信を取り戻すことしかなかった。そして試合開始から90分後、バルサは目的の秘薬を懐にすることができた。勝利の3ポイント。限りなく貴重な勝利だった。

■初勝利アンティック
ロペス・ニエットが試合終了の笛を吹いた瞬間、アンティックはホッとため息をつきすべての選手一人一人に対し祝福の握手をする。彼にとってバルサの監督に就任して最初の勝利、しかも貴重な勝利を得た瞬間でもあった。
「90分の戦いを終えての最高のニュース、それは我々が勝利の3ポイントを獲得しということだ。今の我々にとってこれに優るニュースはないだろう。」

この勝利を境に楽観的な将来を夢見るアンティック。それはバルセロニスタにおくるメッセージでもある。決して悲観的にではなく楽観的に将来を見ようと言うアンティックにとってこの勝利はとてつもなく貴重なものだった。だがとりあえず、これからの反撃に向けてのスタートを切っただけの勝利であることも認識している。
「この勝利をきっかけとして連勝していくことがこれからの目的となる。まず火曜日のインテル戦、そして土曜日のベティス戦に勝利することが大事。今日の勝利が選手にとって精神的な妙薬となってくれることを期待したい。」

■それにしてもクルービー
もしクルイベルが正真正銘の“9番”の選手であったのなら、コクーのヘディングによる先制点の前にすでに少なくても2点は獲得することができていただろう。だがそこはクルイベルだ。そう簡単には問屋はおろさない。チームの得点王でありながら、そこはそれクルイベルだ。彼はそんじょそこらにいる並みの“9番”ではない。チームのために、ひたすらチームのために動きまわるクルイベルにとって、この日はゴールの日ではなかった。あくまでも控えめなクルイベル、次のインテル戦では一つ違いを見せてみますか。

■カピタン・コクー、ガッツ・チャビ
中盤を制するものが試合を制する、これがアンティックの発想だとすればこの試合ではコクーが中盤でボールを奪い、それをチャビが有効に活用する、そういう中盤スタイルだった。コクーはその与えられた仕事をほぼ完璧にこなし、しかも賞品としてゴールまで奪ってしまった。前半に肩が外れドクター・プルーナから交代の要請をだされながらもそれを無視してプレーし続けたチャビ。もちろん肩と“入れた”ものの鋭い痛みは試合終了まで続くことになる。だが同じように前半に軽い負傷をしてハーフタイムで交代を申し入れたオーベルマルスと違い、彼はあくなきプロ精神を発揮した、ついでにゴールまで獲得するというプレミア付きの90分だった。

■カピタン・ガッツ・エンリケ現象
試合に勝利するも敗北するもグランドを走り回る11人の選手次第、それは当然のことだ。だがバルサのカピタンにして“魂”そのものであるルイス・エンリケのチームへの加入という現象が、決して勝利と無関係ではないと言っても大げさではないだろう。試合に出場できる状態ではない彼が前日からのホテル合宿に召集され、この試合でもベンチにこそ入らなかったもののその隣にあるスペースに陣取って試合を観戦していた。その彼の存在が周りの選手に与える影響は計り知れないものがある。だがその影響は、やはりベンチでの存在よりはグランドの中でのそれが大きいことも確かだ。彼の復帰はあと2週間待たなければならない。