2月24日

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“ドリームチーム”の誕生

2年半にわたるガスパー政権の中で唯一の“肯定的”な遺産、それは偉大なるバスケットチームを作り上げてきたことだ。いまだ過渡期にあるチームとはいえ、昨日の国王杯の決勝戦では今シーズンのバルサに初のタイトルをもたらすことができた。バルサバスケ“ドリームチーム”の完成に向けての偉大な一歩としての最初のタイトル獲得。サルバドール・アレマニーはすでにクラブ副会長の座は放棄しているが、バスケ部門会長の座は守り続けている。彼のアイデアのもとに、今シーズンはユーゴスラビア代表監督をしていたペシックをバルサの監督に招へいし、同じくユーゴスラビア人選手でありヨーロッパ最優秀選手に選ばれたボディロガを加入させた。カンテラ育ちのガソールはもういないものの、同じくカンテラとして育ってきたナバーロが成長を見せている今シーズンのバルサだ。

偉大なプロジェクトのもとに作り上げられているバルサバスケットチーム。バレンシア会場で4日間という短い期間でおこなわれた国王杯争奪戦。4日間連続の試合という厳しい条件はどこのクラブでも同じとはいえ、決勝の相手であるタウは1日休みという、3日間連続の試合スケジュールとなったバルサよりは少しは有利な条件。このタウは昨シーズンの国王杯優勝チームでありその決勝戦ではバルサを敗ってチャンピオンになっている。したがってバルサにとっては“復讐戦”の意味も込めた大事な試合となった。

2時間にわたるスペクタクル。9000人が詰めかけたバレンシア会場には準決勝でタウに敗れた地元クラブファンもいれば、もちろんバルサやタウファンが大勢詰めかけている。試合は典型的な決勝戦の展開となる。均衡を破るのは決まってクラック選手。バルサにはボディロガ、フツカ、ジェシケビシウス、ドゥエーニャス、ナバーロというスター選手軍団で構成されている。両チーム同点のまま延長戦に入り試合を決めたのはやはりヨーロッパ最優秀選手に選ばれたボディロガだった。

バスケ部門会長のアレマニーは語る。
「これが我々にとって今シーズン最初のタイトルとなったが、決してこれが最後のものでないことを期待している。特にヨーロッパチャンピオンのタイトルを獲得することが今シーズン最大の目的。我々はすでに第二次リーグに参加する権利を得たが、5月にバルセロナのサン・ジョルディでおこなわれるファイナル・フォーに参加して是非ともタイトルを勝ち取りたいと思っている。」
そしてバルサ臨時会長と務めるエンリック・レイナももちろん決勝会場に来ていた。臨時とはいえ会長に就任してからわずか2週間あまりでガスパーが2年半かけても可能とならなかったタイトルを獲得した幸運な会長だ。
「人生とは不思議なものだ。会長になることなんぞ考えたこともなかった私が会長となり、そしてそれ以来バルサのすべてのプロ部門が負けたことがないんだから。だが私はこのタイトルをこれまで苦労してきたガスパーに捧げたいと思う。彼の苦労が勝ち取ったタイトルとして彼に個人的にささげようと思うんだ。」


とめどもなく暗い夜は終わった

バンガールからアンティックへ、この変化の内容は統計的な数値において、あらゆる意味で肯定的に示されている。確かにまだバルサという車は“発信”はしていない。アンティックの手によりエンジンがかけられただけに過ぎない。だがそれでもいままで停車中だった車が発進の模様を示していることも間違いない。これまでひたすら暗かった夜から明るい朝へと時間は移行していく。

ラドミール・アンティックの監督就任という事実が、すべての意味で肯定的な状態を招いていることを誰一人として疑うものはいない。バンガールの多くの“発明”から、バルサが抱える現在の選手の特徴を自然に生かした“ごく普通”への変化。各選手の持ち味を最大限に利用していこうというアンティックの自然で論理的な発想がバルサの反撃を可能としている。まだわずか公式戦4試合を消化しだだけのアンティックバルサと、30試合以上を戦ってきたバンガールバルサを比較するのはあくまでも“象徴的”なものでしかない。だがそれでもいろいろと数字は示してくれる。

リーグ戦では6勝という数値よりも多い8敗という結果を残してクラブをあとにしたバンガール。彼からアンティックへとバトンタッチの中間の役目を果たしたデ・ラ・クルスは残念ながらAt.マドリ戦を勝利することができなかった。そしてバトンはアンティックへとわたる。親善試合となったカディス戦の勝利は別として、リーグ戦では2勝1分け、そしてチャンピオンズではインテルに勝利している。リーグ戦で23ポイント・15位という位置につけていたバルサは昨日を迎えた段階で30ポイント・8位に位置する。ビルバオ、エスパニョール、インテル、ベティス戦4試合を経過したところでアンティックバルサが許した失点はわずか2点、そして獲得ゴール数は11点となっている。バンガールバルサの1試合平均失点数が1.13だったのに比べ、アンティックバルサは0.5。また1試合平均獲得ゴール数が1.7だったのに比べ、いまでは2.75という数値を残している。

だがこれらの数値では表されない現象もある。これまでゴールポストに当たって外れてしまっていたボールが、アンティックバルサになってからゴール枠内に入ってしまう現象。多くのゴールチャンスを作りながらもゴールに結びつくことが少なかったデランテロが急に効率良くゴールを決めるようになったこと。これまで相手ゴールが簡単に入るような場面が、今度はゴールポストに当たったりして入らなくなっている現象。これらの“運”を数値で説明することは不可能だ。

グランド内で見られる現象で数値では表されないもの、それはディフェンスの固さだろう。奇妙にもバンガールが去ってからかつてのように完璧な仕事をこなすようになったデ・ボエル。ボールに触るたびにブーイングを呼んでいたかつてのデ・ボエルはもう存在しない。そしてレイジゲルにしても同じことが言えるだろう。ここ何試合か続けて出場するチャンスが与えられ彼にも自信が戻ってきた感じだ。右にレイジンゲル、左に鉄壁の守備を誇るソリン、そして真ん中にはプジョーとデ・ボエルの固いセントラルを形成する二人が活躍する。

■オーベルはオーベル、そして彼のみオーベルを知る
オーベルマルスがインテル戦に出場しないことはすでにはっきりしている。まだ疑問とされているのは日曜日のオサスナ戦に出場できるかどうかということだ。ベティス戦の前半に左足負傷を訴え交代を要求していたオーベルマルスだが、今日おこなわれる精密検査で具体的な負傷具合が明らかになる。アンティックバルサにおいて重要なキーポイントの選手となっているオーベルマルスだが、彼がいつ試合に復帰するかは彼の意思次第とも語るドクター・プルーナ。いずれにしてもインテル戦には出場できないことは決まっているが、彼の穴を埋めるのはメンディエタとなりそうだ。
「またケガしちゃったあ。身体は丈夫なのになあ。」

■少しずつ、少しずつ、カピタン・エンリケ
長い負傷から戻ってきた我らがカピタン、ルイス・エンリケ。これまで試合途中から出場するチャンスに恵まれ徐々にリズムを取り戻そうと懸命のグランド内でのリハビリが続く。彼の完全復帰もそうだが、バルサの復調に関しても大げさに騒ぐのではなく、徐々に徐々に、一試合一試合ずつ、着実におこなっていかなけらばならないとメッセージを送る。
「思っていた以上に体調がいい。もっともインテル戦で3−0のスコアーで出場したときなんか、俺の65歳になる親父がでてもバルサの勝利は固かっただろうと思うけれど。いずれにしても個人的には非常に満足している。チームの状態がいいことが何よりも嬉しいよね。でも俺たちはまだ何にも勝ち取ったわけではないことも確かなことさ。UEFAラインやチャンピオンズラインに入ったわけじゃないし、依然として先は長い。大騒ぎする喜びは危険なもの。冷静に一試合一試合勝利を目指していかなくては。」