3月24日

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LIGA 第27
3月23日 19:00
CUMP NOU 68,351人
FC BARCELONA
vs
RACING

 

6 - 1


多くの通りで、それはグランビア通りやパセオ・デ・グラシア通りやムンタネール通りやアリバウ通りだけではなく、多くの通りで“戦争反対”のデモ行進がおこなわれた先週のバルセロナ。延べ人数にして200万以上の人々が街にくり出して平和への希望の意思表示をおこなった。そして昨日、カンプノウも決してその社会現象と無関係でいられるわけがなかった。“市民感情と常に一体にならなければ”それがバルサというクラブとしての歴史的な存在基盤であるとするならば、クラブ関係者や選手も決して市民の声に無関心ではいられなかった。

“FC.BARCELONA PER LA PAU”平和を!、それは世界中の人々の願いであり、バルセロナ市民の願いでもあった。クラブ職員も含んだクラブ関係者、コーチングスタッフ、そして控え選手も含めたすべての選手たちが垂れ幕を持ってグランドに登場して来る。スペインリーグに所属するクラブとしては唯一、平和の願いを表明することになるバルサ。この日ほどバルセロニスタがバルセロニスタであることを誇りに感じたこともないであろう。スポーツが社会情勢や市民感情と決して無関係でいることを良しとしないクラブ、それがバルサであり、それだからこそ“クラブという存在を越えたクラブ”として認識されてきた。そしてそれが昨日再び示されることになった。


トッポジージョの日

トッポジージョが主役となってカンプノウにあらわれた。娘のフロッピーのアイドルであるトッポジージョ。彼女はお父さんのトッポジージョと、おじさんのトッポジージョを見ることができた。フアン・ロマン・リケルメ、なにゆえ彼がボカであれほど愛されるスター選手であったのか、それを試合ごとに示してきているバルサのクラック選手。彼の足下にボールが吸い付いていく度にカンプノウが揺れる。きっと何かが起きる、そう、その期待に見事に応えたロマン。昨日の試合では多くのことが起きた。

「もし俺にゴールへのパスを出してくれたら、俺がトッポジージョをやるからな」
それが試合前のクルイベルとリケルメとの間に交わされた約束だった。その約束は試合開始1分もたたないうちに実現することになる。このゴールがこれまで3試合続けて引き分けという結果に終わっていたバルサに活力を与えることになったのは言うまでもないだろう。スペクタクルなパスを受けてのスペクタクルなゴール。最初の、だがロマンの娘のフロッピーにとっては偽物のトッポジージョが生まれた瞬間だ。ロマンとの約束を果たしたクルイベル。だが約束したのはこれだけではなかった。ニューキャッスル戦後の記者会見でも一つの約束をしたクルイベル。それは次の試合でも必ずゴールを決めてやる、そういう約束だった。次の試合、それは昨日のラーシング戦。

ラーシングの監督はディミトリー・ピーテルマン。クラブ会長にして監督のまねごとまでやってしまうスーパーマン。そしてバルサの監督はこれまで3試合引き分けが続いたことにより“エンパテ(引き分け)マン”と陰で呼ばれていたラドミール・アンティック。ピーテルマンは驚くことに4−1−4−1という攻撃的な作戦をもってバルサと対戦する。これまでカンプノウの試合では見たことのないシステム。ワントップの下に4人のセントロカンピスタが一直線に並ぶ。そして一人のピボッテに4人のディフェンス。だがこの日のロマンには何人のディフェンスがいようと同じだった。二人のディフェンス選手の間に50センチの隙間さえあればそれでじゅうぶんだった。一瞬の閃きと瞬間の読みにより、まるで計算し尽くされたような絶妙なパスがデランテロにわたる。

だが冴えまくっていたのはロマン一人だけではない。2点を決めたクルイベル、同じく2点を決めたオーベルマルス、ペナルティーを芸術的に決めたメンディエタ、彼らのゴールを高く評価しなければならないのはもちろんだが、サビオラのプレーも高く評価しなければならない。ゴールこそ逃したものの、他の選手が決めた多くのゴールが彼のプレーから生まれている。もちろんカンプノウを埋めた7万人近いバルセロニスタにより、ゴールを決めなかったとはいえサビオラに対し熱い拍手が送られる。それは彼のプレーによって生まれたペナルティーの瞬間にサビオラコールとなってあらわれた。

90分の試合が終了してみれば6−1という大差がついた結果となった。だが得点数より3ポイント獲得したことが大きいバルサ。アンティックがバルサの監督となってこれほどまでにUEFA参加圏内に近づいたことはない。6位までわずか3ポイントと接近したバルサ。そしてさらに上を見るならば、チャンピオンズ参加圏内まで11ポイントと近づいた。順位こそ先週と同じ9位ではあるが、この勝利によって少なからず希望がでてきたバルサである。


■失業ボナノ(8)
ほとんど仕事らしい仕事はなかったボナノ。バックパスも普段より圧倒的に少なかったし、コーナーキックでゴール枠の中に倒れるチャンスもなし。

■カード収集家ガブリマン(8)
ガブリマンとカードは切っても切れない仲になってしまった。でもそれは彼に責任があるわけではない。もともと右ラテラルの選手ではないのだから120%の力を出そうとしているところからカードというプレゼントをもらうことになる。頑張れ、ガブリマン!

■仮面付きプジョーマン(10)
世界平和を訴えたバルサ選手だが、その中に一人だけ平和を脅かすような仮面を付けていたプジョーマン。普通の人間なら少しは顔を防御しようという気持ちを持ってプレーしそうなもんだが、そこはそれ、やはり彼はプジョーマンだった。

■旬・デ・ボエル(10)
負傷あがりのプジョーマンに寄り添う正義の味方。麻雀でいえばバカ上がりをしている最中のプレーヤー。

■29歳の青春真っ直中レイジゲル(10)
本当は10点満点を越えて11点を付けたい選手。うまくいくときは何をやってもうまくいく。攻撃参加までうまくいちゃう恐ろしい選手。

■スペシャリスト・メンディエタ(8)
彼のペナルティーは美しい。芸術的とも言えるペナルティーのスペシャリスト。偉大なクーマンを彷彿させる蹴り方。ところで彼の本当のポジションはどこ?

■お疲れチャビ(8)
スペイン代表の試合に招集されている唯一のバルサ選手だが、一向に冴えが見られないチャビ。彼の自然なポジションはもっと下がったところとみた。

■透明人間・オーベルマルス(8)
80分間まったく消えていた透明人間。一対一には完敗、ボールを持てば取られる、相手のボールを取りに行けばコケにされる。2ゴールはアンティックの寛大さに捧げよう。

■本・トッポ・ジージョ(10
いよいよ“クラック”と呼んでいいでしょうか。なぜか、自分のゴールより他の選手のゴールに笑顔をふりまくロマン。

■偽・トッポジージョ(10)
トッポジージョの耳は、手の指を開いて作りましょう。

■コネッホ・サビオラ(10)
これぞコネッホ。ウサギのようにグランドをチョコマカチョコマカ走り回る。もしあのゴールが決まっていれば、そう、彼はマラドーナだ。