4月16

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一発かましてみよう明々後日!

バルサ・マドリ戦、あるいはマドリ・バルサ戦、いわゆるクラシコと呼ばれる戦いに、リーグ戦での順位は関係ない。それは何と24ポイントという、気の遠くなるようなポイント差があろうとも関係ないことのようだ。この試合に対する注目度の高さは、すでにベルナベウでの入場チケットが完売となっていることを見てもよく理解できる。マドリディスタにとってバルサは常にバルサであり、マドリの上を行っていようが下にいようが常に叩かねばならない存在だ。そして、それはバルセロニスタにとってもまったく同じ。リーグ戦での悔しさをすべてマドリ粉砕にかけて、こういう試合でこそ一発かましてみようじゃないか。キャラクターに欠ける選手が多い現在のバルサの中にあって、少なくてもこの試合に燃える一人の男がいる。それは、もちろん我らがカピタン、ルイス・エンリケだ。

昨日の練習で危うく病院送りとなるところだったルイス・エンリケ。オーベルマルスの強烈なタックルが彼の右足を襲ったからだ。倒れたままの彼に走り寄るドクターたち。だが幸いにも10分程度の治療で練習に復帰することができた。そしてそれからわずかな時間が経過したあと、ボールを持ちドリブルする彼のところに再びオーベルマルスが走り込んできた。今度は肘を使ってボールを奪いに来た。ルイス・エンリケも負けてはいない。強烈なエルボーをオーベルマルスにかます。にらみ合う二人の選手。その瞬間、練習はストップしてしまう。なぜならルイス・エンリケがオーベルマルスに近寄り彼の顔に向けてパンチしようとしたからだ。驚いてプジョーとチャビ、ソリンが走り寄ってきてルイス・エンリケを止めにかかる。オーベルマルスは顔を真っ赤にして怒りを表情に表している。止めに入ってきた選手たちのおけげでパンチは空を切った。

我らがカピタンはイライラしている。オーベルマルスの不可解なタックルも気にくわなければ、先日のコルーニャ戦でのバルサらしくない戦い方も気にくわない。
「俺たちの唯一の武器はボールを支配しての試合展開であるはずだ。だがコルーニャ戦では相手にペースを奪われての試合展開となった。少なくてもカンプノウでああいう戦いをしてはいけないはずだ。それはバルサであることを拒否することになる。」
その思いをアンティックに直に告げているカピタン。バルサが決しておこなってはならないこと、それは相手に攻めさしてカウンターアタックを狙いに行くという戦いだ。アウエーの試合ならともかく地元でおこなってはいけないと思うルイス・エンリケ。そう、俺たちはインテルでもなければユベントスでもミランでもない。

クラシコの戦いとなると常に比較される二人の選手。レアル・マドリのフィーゴとバルサのルイス・エンリケ。今回のクラシコにはさらにロナルドという元バルサ選手も加わっている。だが我らがカピタンは決して公に口には出さないものの、フィーゴやロナルドと比較されることを嫌っていると彼の友人たちは語る。フィーゴはペセタを求めて多くのバルセロニスタを裏切って永遠のライバルチームへと移っていった。ロナルドもほぼ同じような状況だ。だが彼の場合はレアル・マドリとの契約がちょうど切れることに加えて、常にマドリディスタのブーイング対象となっていた選手だ。しかもクラブ側も彼に延長契約を申し込むことさえしなかった。そして何よりも彼はバルサカラーに染まった選手であるという自覚がある。フィーゴに、ロナルドにマドリカラーが染みついているか。それはマドリディスタでさ疑問に思うことだろう。

闘争心にあふれ、根性の固まりであり、身体の内部から爆発する強烈なエネルギーの持ち主である我らがカピタンは、これまでリーグ戦29試合を経過した段階でわずか11試合にしか出場していない。長いプロ生活の中ですでに持病と言っても良いアキレス腱の負傷が今シーズンも彼を襲ってきた。だが明々後日のクラシコにはカード制裁で出場できないサビオラに代わってスタメンでベルナベウに立つ。彼の存在の重要性はまだバルサに来てから半年もたたないソリンでさえ認めざる終えないようだ。
「彼は我々のカピタンであるという存在以上の選手だと思う。チームに、そして同僚たちにキャラクターを植えつけていくタイプの選手。一言で言えば影響力の非常に強い選手だと思う。」
コルーニャ戦には出場できなかったものの、クラシコには間違いなくスタメン出場することになるチャビもルイス・エンリケの存在の重要さを認識する一人だ。
「彼はカピタンであると同時に、我々に必要なゴールを決める選手でもある。しかもここぞというときに必ず期待に応える選手。彼の復帰は非常に明るい材料だね。」
そして彼を兄のように慕うモッタは次のように語る。
「クラシコの試合には是非とも必要なキャラクターをもった選手さ。もし両足で立てない状態だったら、俺がグランドの中に椅子を持ち込んであげてもいい。」

アストゥリア地方は炭坑関係の仕事でもっている町が多い。彼もまたそのような町で生まれ、多くの親戚は炭坑関係の仕事をしている。小さいときには炭坑の中に入り遊んだこともあるルイス・エンリケ。1日何時間も地上から何百メーターも下の真っ暗なところで働く炭坑夫たちの生活は誰よりも知っているつもりだ。彼らの厳しい労働に比べれば、明るい照明灯の元で、広々としたグランドの上で労働するフットボールプレーヤーに“苦労”などという言葉は存在しない。練習中に受けるタックルも問題とはならない。クラシコでは破壊専用鉄人マンが彼のマークにつくだろう。強烈なヒジテツや常識外のタックルも襲ってくるだろう。ベルナベウの観客席を埋め尽くすマドリディスタからの大ブーイングもいつものように襲ってくるだろう。だが彼らはそれがルイス・エンリケにとって、さらなるパワーの源となることを知らない。敵が多ければ多いほど燃える男ルイス・エンリケ。アストゥリア魂でベルナベウに、そしてレアル・マドリにドデカイ大きな穴を掘ってしまおう。それを彼らの墓場としてやるのだ。