4月18日

月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日 土曜日 日曜日


21年前クラシコの再現を!

クライフがバルサの選手として加入してきた最初の年、つまり1974年におこなわれたクラシコで、バルサは0−5という驚異的な結果で勝利を飾った。だがそれ以来、ベルナベウでの試合では7年間続けて1ポイントも獲得することができず毎年シーズンを終了することになる。そして1982年11月27日、今シーズンと同じように首位を走るレアル・マドリに対し、やはり今シーズンと同じようにクラブ危機を抱えていたバルサによるクラシコが戦われた。もちろん試合前に多くの人が予想したものは、それはマドリの圧勝だった。

スペイン国営放送であるTVEは当時としては異例の2200万ペセタをこの試合の放映権料として支払っている。それは例年通り注目されるクラシコの戦いである上、バルサには一人のスーパースターが加入していたからだ。アルゼンチンのボカというクラブからやって来たスーパースター、その名はディエゴ・アルマンド・マラドーナ。彼にとって初めてのクラシコとなる試合であり、マドリディスタにとっても初めて自らのスタディアムで見る選手だ。

だがバルサにとっては決して良い状況を抱えてのクラシコとはならなかった。チーム成績の悪さもさることながら、クラブ上層部内の対立、監督と選手の対立がメディアを騒がせていた時期でもある。そして当時の会長であるホセ・ルイス・ヌニェスは、スペインフットボール連盟といくつかの問題でもめている時期でもあった。多くのバルセロニスタがこの試合を前にして恐怖に近いものを抱いていたとしても不思議ではない。それまでの試合では多くの不可解な審判の判定に抗議をしてきたバルセロニスタ。しかも審判協会の会長は自他共に認めるマドリディスタのプラッサが務めている時期でもあった。この試合でもマドリ有利の笛が吹かれるのではないか、その恐怖に震えるバルセロニスタ。

クラシコ初体験となるマラドーナは一人楽観的な発言をしていた。
「俺はもちろんスペインクラシコは初めてだけれど、こういう雰囲気での試合はすでにじゅうぶん経験してきている。ボカとリーベルの試合がそれさ。果たしてあの雰囲気を越えるクラシコとなるかどうか、ひとつお手並み拝見ってところだな。」

このクラシコの笛を吹いた審判はガリシア地方出身のラウル・ガルシア・デ・ロサだった。彼はこの試合を振り返って現役引退後に次のように語っている。
「試合開始早々、バルサペナルティーエリア内でファールがあったとしてマドリの選手や観客席が騒然となった。私はファールではないと思ったから当然ながら笛は吹かなかった。だが試合の翌日、TVEのオフィスでそのシーンのビデオを見る機会を得た。そう、ビデオを見る限り確かにペナルティーだった。私はTVEのアナウンサーにペナルティーの可能性もあると語ったんだ。そしてそれから何日かして審判協会会長から一枚の手紙を私は受け取った。それには私に対して1か月の制裁、そして少なくても5年間は大事な試合での審判は務めさせない、そういう内容だった。事実、それから私は5年間以上ベルナベウでの試合に笛は吹くことがなかった。」

ボカからやって来た新人選手が大活躍をする試合となった。彼から送られたラストパスをエステバンが決めバルサ先制。試合終了間際にもこのアルゼンチン選手のアシストでキニーがゴールを決め、0−2というスコアーで誰もが想像しなかった勝利をバルサがおさめることになる。しかも、このスタディアムでは実に7年ぶりの勝利だった。

試合が終了に近づくにつれて、ベルナベウの観客席を埋めている多くのマドリディスタからバルサ選手や審判に向かって物が投げられる騒々しい試合となる。スタディアムには警察官が出動し、観客席で暴れ回る人々を規制にかかり始める。だがあらゆる物がグランドに投げられることまでは止めることができない。ガラス瓶をはじめ、ペットボトル、傘、コイン、ありとあらゆる物がグランドに投げられる。試合終了の笛が吹かれバルサの選手たちは一人一人警察官に守られながら選手控え室へと消えていく。もちろん審判のデ・ロサも何人もの警察官に守れながら控え室に下がっていった。そして彼は試合終了後3時間、スタディアムをあとにすることを許されなかった。スタディアムの外では依然としてマドリディスタが騒いでいたからだ。

ベルナベウは閉鎖されることなく、何の処罰対象ともならなかった。処罰の対象となったのは審判のデ・ロサ一人となった試合だった。


クラシコまであと24時間

いよいよ明日と迫ったクラシコ。お互いのプライドをかけたこの試合を前にしてアンティックはどのように戦いの準備をしているのだろうか。コルーニャ戦での試合内容でバルサ監督就任以来初めてといっていい批判を浴びたアンティック。だが1週間の“反省期間”を経て彼が得た結論は二つある。一つは“ボールコントロールの主導権をとる”ことであり、もう一つは“自陣ゴール近くでのファールを防ぐ”ことだ。

クラシコを前にしての練習はやはり普段の雰囲気とは違う。コルーニャ戦での敗北に対する苛立ちも加わっていたのかも知れない。ルイス・エンリケとオーベルマルスがあわや殴り合いというところまでいったかと思うと、昨日はクルイベルとモッタが、そしてロッケンバックとモッタがそれぞれ激しい口論をする練習風景となった。もちろん練習を指揮しているアンティックはそれらの目撃者となっている。多くのメディアがこれらの“衝突事件”をスキャンダルに取り上げる中、彼一人このような緊張ある練習風景に満足しているようだ。
「ルイス・エンリケは我々のカピタンだ。今週の練習が激しいものになったのは、彼の闘志やエネルギーが周りの選手に浸透している証拠だと思っている。その意味で個人的には非常に満足だ。今週の練習で私がしなければならなかったこと、それはコルーニャ戦での敗北により精神的にまいっている選手たちを元気づけること。彼らの頭の中の“チップ”を、すべてをクラシコへ向けていくこと。その目的はじゅうぶん達せられたと思っている。」

精神的な部分での問題はともかく、戦術的にはどのような姿勢でクラシコを戦っていくのか。それは決してコルーニャ戦での敗北原因と無関係ではないようだ。
「コルーニャ戦では相手に試合の主導権を奪われすぎたことを反省している。あのような内容でマドリと戦ったらそれこそ自殺行為というものだろう。したがって我々が目指すもの、それは可能な限りのボールコントロールをすることにより、試合の主導権を奪うこと。それは選手たちもじゅうぶん自覚していることだ。そして自陣ゴールポスト付近でのファールをできる限り防ぐこと。マドリはなんだかんだ言ってもセットプレーでのゴールが多いチームだということを忘れてはいけない。だがもう一つ忘れてはいけないことがある。それはいくら我々がボールを支配しようと、あるいは試合そのものを支配しようと、最も重要なことはフィニッシュを決めることだ。ゴールチャンスを何回も無駄にしないこと。ゴールの効率性がこの手の試合に勝利するためにはもっとも重要な要素となるということだ。」

バルサにとってそのゴールを約束してくれる数少ない選手の一人であるサビオラが出場できない。
「サビオラは何回も繰り返してファールをする選手ではない。ファールを繰り返す多くの選手が何の制裁も加えられず、わずか2回のファールをしただけで、あれがファールと仮定しての話だが、次の試合に出場できないということは納得できないことだ。私は何回もビデオを見たが、最初のはペナルティーとなってもおかしくないプレー。ディフェンスの選手の手が彼を押しているのがはっきりと見て取れる。そして2回目のイエローカードにしても納得できない。過去の多くの例ではあのハンドに対してはカードはでないことがほとんどだ。だが、グダグダ言ってもしょうがない。我々は出場可能となっている選手でじゅうぶんやっていけるチームだ。」

アンティックにとってバルサの監督としては初のクラシコだが、クラシコそのものは初めての経験ではない。過去にマドリの監督としてバルサと対戦しているからだ。だがそれにしても、これほどポイントが離れている状況でのクラシコはもちろん初めてのことだ。
「そう、確かに我々は彼らに24ポイントも有利さを持たれてしまっている。だがこれまでの歴史が示すように、クラシコにリーグでの順位など関係ないことも確かなことだ。スペインを代表する、いや、ヨーロッパを代表する二つのビッグクラブが伝統と誇りをかけて戦う90分間の“独立”した戦い。それがクラシコだとするならば、この試合もまた歴史に残るものとしなければならないし、我々の勝利によって歴史の1ページに残るようにしたいと思う。」