1月21日 水曜日

■1チャンネル(1.5MB)
相手をブッタ押し、そして相手にブッタ押され、転んでは立ち上がり転ばせては知らんぷり。そう言えばロッケンバックはどうしているだろうか?

■2チャンネル(1.1MB)
もう10年もバルサでプレーしている感じを受けるこの選手。

■3チャンネル(1.0MB)
何年もバルサでプレーしている彼だが遅刻癖は抜けない困った子ちゃん。

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“I'm here for bisiness”

試合前日の練習は常に報道陣をシャットアウトしてのものとなる。ビルバオ戦を翌日に控えてのバルサの練習もいつも通りカンプノウを“閉鎖”してのものとなっていた。そして練習はもう1時間半前に終了し、ほとんどの選手は帰宅している。が、一人だけまだジムで汗を流している選手がいた。普段だったらプジョーだったりイニエスタだったりする“残業”選手だが、彼らは負傷中でジムには来ていない。それはダビッツだった。彼はこの日だけ特別の居残りではなく、バルサに来て以来習慣となっている練習後のジム通いだ。

その彼を待ち受けていた一人のジャーナリストが質問の声を投げかける。
「バルセロナの街の印象は?」
どこの国でもそうだが、外国人がやって来たときに何気なく投げかける質問の典型的なものの一つだ。そしてグランド以外の場所では例の眼鏡は付けないダビッツが驚いた表情で答える。
「バルセロナの街?俺はバルサにプレーしに来ただけだ。それだけのことだ。街は関係ない。」
そう、彼はガウディーの建物を見に来たわけではなく、地中海の眺めを楽しみに来たわけでもなく、グエル公園での冬でも楽しめる日光浴をしに来たわけでもなく、ましてコルテ・イングレスのデパートに買い物に来たわけでもない。彼はフットボールをしにバルサというクラブに半年間だけ入団したのだ。

フットボール、フットボール、フットボール、彼にとってはそれだけの意味しか持たないバルサ入団。だからその肝心なフットボールを100%の体調でプレーできるために、規定の練習が終わればジムに通って体調を整えようとしているに過ぎない。今シーズンはユベントスでほとんど試合出場機会がなかったし、何週間も練習をしていない彼にとって誰よりも練習時間が多くなるのは当然のことだ。そして彼にとってプロ選手としての“しなければならないこと”が終了すればタクシーをひろってホテルに戻り休養する、それが彼の1日であり翌日にも同じことが繰り返されることになる。プロのフットボール選手としてグランドで毎試合プレーできることが最も幸せなことであり、それだからこそそれが可能となるバルサに来た。もちろん半年後に待っているユーロ2004の大会にオランダ代表選手として招集される可能性はこれでグンと高くなる。そしてその後のことは・・・神のみぞ知ることだ。神ではないインテルやローマのクラブ首脳陣はすでに知っている可能性はあるかも知れないが。

アヤックスにいたときも、そしてミランやユベントスに在籍していたときも彼は決してジャーナリストの“友達”ではない存在だった。バルサにまだ1週間しかいないとは言え、ここでも同じことはすでに証明されている。半年間のレンタルがラポルタとの間で決まったときに作られた契約書には触れられていないものの、だが言葉としてクラブ会長に依頼していることがある。それは記者会見への出席はできる限り少なくしてくれということだ。同じオランダ人のフラン・ライカーがほぼ毎日のように記者団の前でしゃべっているのとは正反対のダビッツ。ラポルタが真面目な顔をして、それでも聞いている方にとってはまるでブラックジョークのように聞こえる“第二のメディア的クラック”であるダビッツだが、その肝心のメディアとは接触を避けたがっている彼である。

それでも彼はこの1週間で2回も記者会見に出席するハメになってしまった。最初は入団の際に、2回目は最初の試合となったビルバオ戦の試合後だ。どちらの記者会見にも多くのオランダジャーナリストやイタリアメディアが参加している。それぞれオランダ語やイタリア語で彼に質問するジャーナリストたち。だがダビッツがダビッツらしい風景となるのは、カステジャーノをまだしゃべることができない彼は英語でしか答えないところだ。ダンテの言葉よりシェークスピアの言葉を選ぶダビッツ。ここはピカソやミロの言葉を使わなければならない国でありながら、まだそれを器用ににこなすには時間が必要であり、それが可能となるまではシェークスピアの言葉を優先しようとするダビッツ。しかもピレネーを越えたところでなにゆえダンテの言葉を使用しなければならないのか。そのことを記者会見が開かれる前にすでにジャーナリストに伝えてあるにも関わらず、一人のオランダジャーナリストがダビッツにオランダ語で質問をした。ビルバオ戦の後におこなわれた記者会見だった。ダビッツがしたこと、それは質問に答えることではなく、通訳に「次の質問」を要求するように命じたことだった。

すべての選手にクラブに対する“献身と忠誠”を要求するジョアン・ラポルタ会長。だがバルセロニスタがダビッツに望むものはそんなことではない。これまでのチームに欠けていた闘争心と勝利にかけるひたむきな姿勢、それを一人のプロ選手として示してくれればいい、そういうことだ。半年間のバルサの選手として、すべての試合にすべてをかけてプレーしてくれればいい、そういうことだ。“I'm here for bisiness”そう語る彼の最初の試合となったビルバオ戦、とりあえず合格マークが付いた。