マルケス  MARQUEZ

ラファエル・マルケス、メキシコのサモーラというところで1979年2月13日に生まれている。したがってバルサとの契約を結んだ今年の夏には24歳となっている。親しい同僚たちからはラファと呼ばれるこのメキシコ人選手は、フランスのモナコから500万ユーロの違約金、4年契約でバルサにやってきた。

すでにメキシコ代表カピタンとして活躍する彼を、中南米メディアは“ここ10年におけるメキシコ最優秀選手”として高く評価している。24歳にしてすでにフットボール選手として最高峰にたどり着いてしまったかのような評価を受けるマルケスだが、彼にしてみれば目標はもっと高いところにある。メキシコ代表史上最高の選手として評価されなければ、そう思う彼にとって“人気”“実力”共にまだまだ勝てない歴史的な選手がいる。元レアル・マドリにいたウゴ・サンチェスだ。

1983年、つまり彼が14歳になったときに人生の転機が突然訪れてくる。サモーラの街の少年チームでフットボールをしていた彼に、グアダラハラのプロチームのスカウトが訪ねてきたのだ。マルケス家にとっては重要な問題ではあった。フットボール界への道は開けるかも知れないが、まだ14歳の息子を大都会に、しかも一人で送らなければならない。だがマルケスの意志は固かった。スカウトが訪ねてきて3日もしないうちにサモーラを出発している。もちろん目指すはグアダラハラのプロチームだ。

3年間にわたってフットボール・バッセ(少年部)で修行を積んでいたマルケス少年はすでに17歳となっている。この年、彼にとっては一生忘れられない日がやってくる。1996年10月19日、夢にまで見た一部チームでのデビューだ。この1996−97シーズン、彼はデビューを飾って以来、ほぼ毎試合スタメン選手として出場し、一部チームの重要な選手の一人となっていた。そしてこのシーズン中に、何と18歳という若さでメキシコ代表選手として招集されるおまけまでついている。

ヨーロッパのクラブで彼の存在にいち早く目をつけたのはフランスのモナコだった。1999年、パラグアイでおこなわれていたコパ・アメリカの大会に出場していた彼に注目したモナコのスカウトは、多くの情報を収集してモナコの首脳陣に報告を送っている。すべて肯定的な情報のみであった。モナコ首脳陣に躊躇はなかった。将来の選手としてではなく即戦力としていける、スカウト陣の読みに誤りがなかったことは最初のシーズンで早くも証明されることになる。33試合に出場し3ゴールを決め、そしてモナコはリーグ優勝を果たした。

彼がモナコの選手としてデビューし活躍した翌シーズン、バルサをはじめ多くのビッグクラブが彼に注目をし始める。レアル・マドリ、ユベントス、マンチェスターなどがスカウトを送って情報収集に走る。だがマルケスにとって不幸なことはヒザの思わぬ負傷が待っていたことだ。手術まで必要とされた大怪我だ。何か月ものリハビリが続くラファエル・マルケス。バルサは彼の隣でプレーする、マルケスよりは少々色黒の選手の方を獲得することになる。フィリップ・クリスタンバール、だが彼は皮肉にもマルケスがバルサに入団にしてくる年にバルサを去ることになる。

負傷から立ち直りグランドに戻ってきたマルケスは、デビューしたシーズンよりもさらに成長しているかのようだ。ユベントスやマドリのスカウト陣だけではなく、ローマやインテルまでのスカウト陣が彼に目をつける。だがどのクラブがオファーをだしてもマルケスにモナコを離れる意志はないかのようだった。同僚たちと、クラブ首脳陣と、そしてなによりもファンとうまくいっている一番いい時期だった。そのいい時期が崩れてくるのが昨シーズンの後半からだ。

モナコのクラブ運営に危機が訪れているのが表面化してきた。多くの赤字を記録し、クラブ崩壊の危機とまでいわれた。また、同時にチーム成績がパッとしないことも加えて、ファンと選手との関係がしっくりしなくなってきた。地元の試合でありながら多くの選手にブーイングが送られることもおこっていた。もうモナコでの生活はマルケスがデビューした頃とは違ってきていた。何かがかみ合わなくなってきている。そしてある日、これまで考えもしなかったこと、つまりまだ見知らぬ世界へいっての冒険をする必要性を感じたというラファエル・マルケス。イングランドのニューキャッスルやポルトガルのベンフィカからのオファーが来ている。だが彼にとって冒険旅行の最高の場所となるのはスペインだ。メキシコ代表史上最高の選手が活躍したスペインリーグ、そのスペインリーグをステージとして活躍しなければ。だがその選手と同じクラブでは意味がない。

バルサにとってクラブ創立初のメキシコ選手の誕生だ。24歳とはいえ、すでにフランスリーグで4年間も経験を積んできているマルケス。彼はバルサという世界中が注目するクラブで、ウゴ・サンチェスを越えていこうとしている。