明日に向かって撃て
(2001/2
/20)

「リーグはまだ終わっていない」と全ての選手が言う。2月17日カンプノウでのコルーニャ戦に敗れ、首位マドリに11ポイント、2位コルーニャに7ポイント差となった今、誰が見てもリーグ優勝は絶望的、あるいはそれに近い状態であることは間違いない。しかしいかなる状況であろうとも、バルサ首脳陣や選手達が数字的に決着がつくまで「もう、今シーズンは終わりだ!」などと言えるわけがない。それは10万ソシオに対する侮辱行為であり、クラブの自殺行為でもある。
しかし彼らの「公式発言」が全くの「ファンの心をくすぐる」ための発言であるかというと、そうとは言えない。それは過去の歴史が証明している。たった10%の可能性でも、可能性はあるということであり、「命ある限り希望あり」である。
バルサは残された試合を、傷ついた誇りにむち打って戦わなければならない。世界の5本の指に入るといわれるクラブでプレーしているプライドにかけて、頭を上げなければならない。それが彼らの、プロの中のエリートとしての存在価値であり、バルサ選手としての使命である。

セラフェレールは、背伸びをし過ぎてしまったかも知れない。マジョルカとベティスを躍進させた彼のシステムは、守りを固めてのカウンターアタックが最大の武器であった。それは地元であろうがフエラであろうが、終始一貫したシステムであり、チームの目標はあくまでも、2部落ちさせなければ成功、UEFA CUPに参加できれば大成功というのが誰しもが認めるとこであった。その意味で言えば、彼は両方のクラブで大成功を収める。85年、2部にいたマジョルカを1年で1部に昇格させ、90年には国王杯の決勝戦まで進ませた。93年に引き受けた2部のベティスをこれもまた1年で1部に昇格させ、翌々年UEFAを戦っている。
セラフェレールは「宝くじが当たるような確率」のもとに、バルサの監督になってしまう。それは全くの気まぐれな状況によってであった。新会長選挙によって生まれた空白期間により、新監督への交渉期間がほとんどなかったこと、前監督ファンハールが残していった、たちの悪い残飯物を処理するのには、カタラン(正確にはマジョルキン)をしゃべる彼でもよかった。もちろん、彼の監督としての期待もあったに違いない。

セラフェレールは新補強にあたって、ジダーンかベッカム、それがだめならアーセナルのアンリを首脳陣に要求している。いわずもがな、抜けたフィーゴの穴埋めである。そしてやってきた選手は、ドゥトゥエル、オーフェルマルス、プティ、これらは今はなきファンハールのアイデアであり、ジェラールは選挙戦で敗れたバサット氏の置きみやげだったし、デラペーニャ、アルフォンソは新会長ガスパーの気まぐれによるものだった。新体制のスタートそのものが、理想的と呼ぶにはほど遠い状態であったことは間違いない。クライフやファンハールが来るときは、新しく始まるシーズンのだいぶ前から決まっていた事もあり、来るべきシーズンに向けてのチームを構成する時間が許されたが、セラフェレールにはほとんど時間がなかったといってもよいだろう。

ここ何年かのバルサにとって、「プレーシステム」自体がクラブチームカラーの一つの象徴だとすれば、そのシステムは左右にエストレーモを配置し、相手のディフェンスを広げ、グランドを大きく使うものであった。自他共に「攻撃的フットボール」とか「スペクタクルなフットボール」を目指しているクラブとして認められるバルサとしては、このシステムが非常に似合う数少ないチームの一つである。それはディフェンスが3人なのかあるいは4人なのかということや、1人のピボッテか2人のピボッテかということ以上に、バルサのスタイルを決定づける重要なポイントである。セラフェレールは、バルサの伝統を継承することを自分に義務づける。それはビッグチームにおけるビッグコーチの使命と感じたためか、あるいはロブソン時代に6−0と勝ちながらも試合内容のお粗末さにブーイングが出たことを覚えたいたからかも知れない。いずれにしても彼は、ビッグを目指す。

だが悲しいかな、彼はロブソンと同じで1年だけの監督であった。試合結果に関わらず、やれカッペロだのクーマンだのといった次期監督候補の名があがっていたのが、その証拠である。来シーズンへの地固めは許されず、ひたすら結果を要求された。グアルディオーラ(彼が出場した20試合のうち、負けたのはコルーニャ戦だけ)の負傷、クライハート、シマオ、オーフェルマルスと故障が続く不運に見舞われながらも、3人ディフェンスから4人へ、エストレーモを起用したり2トップを揃えてみたり、勝利の道を模索する。だが結果を要求された監督が結果をだせなければ、失格である。

システムがどうであれ、それを良いものにするのも悪いものにするのも、実際にプレーする選手である。その意味で新しく加入した選手で合格なのは、オーフェルマルスだけだ。ジェラール(バレンシア時代の彼とはほど遠い状態)、プティ(本来の自分のポジションでも目立たず)、アルフォンソ(ポジションの違いに苦しんでいる)、ドゥトゥエル(18歳の控え)。だが否定的なことばかりではない。疲労の固まりとなりながらもプライドをみせたリバルド、マルチ商品のコクー、ルイスエンリケ、例年になくゴールを決めているクライハート、そしてじきに戻ってくるであろうオーフェルマルスとシマオ、まるで嘘のようだが、まだバルサ選手のデラペーニャ。

リーグはまだ終わっていない。