Pep 4 ever !
(2001/4/16)

今シーズン限りでバルサを去り、外国で試してみると決意表明したグアルディオーラ。もう後には引けないキャプテン。
記者会見をおこなった翌日「エル・パイス」紙のインタビューに答えている。全文の9割方載せてある。

あなたの「さよなら記者会見」に関する新聞記事を読んだり、ラジオを聴いたり、テレビでのニュースを見たりすると、「選手の退団」についてというよりは、「選手の死亡」ニュースみたいな感じを受けたんですが。

あーーー、生き返った死体ですか、僕は。
いずれにしても、メディアの方々には感謝しています。今度の件である程度の衝撃を与えるだろうということは予想していましたが、まさかこんなだとは思ってもいませんでした。もちろん中には迷惑に感じるものがありましたけれど・・・。例えば、僕がすでにどこかのクラブと契約しているとかね。

本当に、まだどこのチームでプレーするか決めていないんですか?

もちろん決めていません。まるでプールに水が入っているのかいないのか、見もしないで飛び込んだようなもんです。私たちフットボール選手の発言に関し、確かに信憑性が失われつつあることはわかっています(フィーゴの例もありますから、とはもちろんグアルディオーラは言わない)。だから僕が決めたことに疑いがもたれるのかも知れないけれど、本当のことです。ただ次の批判は受けてもしょうがないと思っています。それは、記者会見招集の時期の選定が間違いではなかったか、ということです。しかし正直言ってこのような話しで、最適な時期なんてないんじゃないかとも思います。

チームに悪い影響を与えたと思っていますか?

うーーー、この僕のプレーにはイエロカードかも知れないけれど、決してレッドカードではないと信じています。だって、初めてのファールですから。僕の発言でチームに迷惑をかけたことは、以前なかったと思ってます。

あなたの決意は、チームに残留することの安楽を捨て、新たな冒険への旅立ちと考えていいのでしょうか?

バルサのキャプテンであるということに、安楽なんてありません。常に、神経を研ぎ澄ませていなければいけないんですから。それはそれとして、今シーズンの始めに足の手術をしたんですが、その前に会長から「契約延長」の話がありました。実はその時点で僕には具体的でないにしても、思うことがあったんです。まだアイデアは漠然としたものでしたがね。もし、再びプレーできるようになったら、もし、新たな冒険に旅立つとしたら、そんなことですけどね。

もうバルサではプレーそのもに、喜びというか、楽しむことはできなくなってしまったということはありますか?

クラブに関することには僕なんかが口をだすことではないでしょう。僕の仕事はフットボールをすることであり、そのことをエンジョイしてきましたし、これからもそうでしょう。もちろん個人としての人生も楽しんでいます。例えば今日、朝起きると強烈な太陽の光が眼に入ってきたんです。うーん今日も良い日だな、となぜか微笑んだんですが、すぐ次に思ったことは「お前はどこに行くのか知らないけれど、こういう太陽はないだろうな」
まだバルセロナにいるにも関わらず、もう郷愁の念を抱くような自分を楽しんでいる。他の文化を知ること、知らない街、知らないクラブ、違うスタイルのフットボール、興味は尽きません。大好きなこういう朝はないかも知れないけれど、きっと他のものがある。

バルサでしてきたフットボールシステム以外で、どのようなものに興味があるのでしょう。

えーーー、最近、特別に興味を引いた言葉があります。元ユベントスにいたデシャンプが言っていたのですが、
「僕はスペインナショナルチームはすごく良いチームだと思うよ。ただね、大きな国際大会でスペインが勝てるかどうかと聞かれたら、それは解らないと答える。フランスナショナルチームはどんな大会に臨むにしても、ディフェンスを優先している。まずディフェンスなんだ。そこで初めて相手のゴールを阻止することができる。そして、我々はワールドカップでもヨーロッパカップでもチャンピオンになることができた」
僕はね、こういうフットボール文化とは無縁なところで育ってきたんです。数多くの監督の下でプレーしてきたけれど「防御」ということを教わった覚えはほとんどない。もしこのままバルサに居続けたら、彼の言うところのフットボールのもう一つの秘密を、最後まで理解できないかも知れない。もっと視野を広げたいというのが正直なところです。

あなたの言葉を聞いていると、バルサのプレースタイルはもう時代にそぐわないということでしょうか。つまり、バルサの特徴としてよく語られる中盤のあり方、左右に広がるウイングのあり方、これらが「新しい近代フットボール」には合わないという意味ですか?

どこの世界を探しても、バルサほど攻撃的なチームは見つからないでしょう。そして今のフットボール現象の一つの傾向として、もう流行らないシステムかも知れません。どこのチームを見ても、バルサとは他の方向に向かっているのは明らかでしょう。例えば、フランスに勝とうと思ったら、今までやってきたことと全く違う方法で戦わなければならない。いかに相手のゴールを防ぐかということを重点にして、戦わなければならないでしょう。僕が学びたいのはそこなんです。

チャビがあなたのポジションを埋める最適の選手と見られていますが、あなたがバルセロニスタの「シンボル」として付けていたキャプテンマークを誰が継承するのか、ということに関しては未だにはっきりした意見がでてません。

おーーー、僕は「シンボル」になるために、子供の頃マシアに入寮したわけでもないし、人々が僕にどんな役割をあてがおうともそのことに関して何かを言う立場でもない。人々が僕にバルセロニズムの「シンボル」を見ようと、それは僕の問題じゃないとも思っている。ちなみに僕は「シンボル」という言葉が嫌いなんだ。もしできることならら、個人としてのグアルディオーラを評価して欲しい。良い意味でも悪い意味でも。

有名な「バルサはクラブ以上の存在」という言葉は、もう信じない?

それを知るのがまさに今回の旅立ちです。もちろん「バルサはクラブ以上の存在」だと信じてきました。そして今、他のクラブを通して、一体クラブとプレスの関係はどのようなものなのか、クラブと市民社会の関係、選手とファンの関係、etc.etc. それを確かめたい。

あなたの奥さんクリスティーナは、今回の件をどのように考えているのでしょう。

彼女は僕以上に納得していると思う。彼女の意見なくして、今回の結論はでなかった。いずれにしても、何回も何回も考え抜いて出した結論なんだ。そして今でも最高の結論をだしたと思っている。

あなたがロンドンやミラノ、あるいはパリで生活したり、プレーしたりする姿を想像するのは、それほど難しいことではないのですが、外国のチームで(バルサでしているようなスタイルの)あなたのプレーを想像するのは難しい。

あーーー、僕も同じことを考えています。新しいクラブ、新しいシステムのチームでどのようにプレーするのだろうかと。
僕はバルサでいわゆるリーダーみたいな立場で、あらゆることに干渉してきたけれど、それは監督の意思をみんなに伝えるためでもあり、つまるところどのようにチームが働かなければいけないかということを指摘してきたんです。それが僕の一つの役割みたいなものだった。でもこれからは、役割が違うのは明らかです。誰かの指示の下にプレーしなければいけないかも知れない。でもどうなんだろう、今までの癖みたいなものが出てしまうかも知れないし、この辺はわからないところです。

話は変わりますが、読書と映画鑑賞がゴルフとならんで最大の趣味と聞いたけれど。

読書はすいぶん長い間してないですね。娘のマリアのことで頭がいっぱいの毎日です。家にいる時はすべてのことが彼女優先となっちゃいます。優先事項が彼女の誕生で変わってしまったんですね。以前であればいつも次の試合のことで頭がいっぱいだったし、そうでない時は興味あることに手をだすことで時間が費やされました。でも今は、それほど外に出なくなったし、ゴルフも前ほどやっていない。読書量も減りました。彼女の誕生で本当に人生が変わりました。でも、少しずつ以前のように戻っていくんじゃないでしょうか。読書や映画は今でも好きだし・・・。

まだバルサの選手として数試合残っていますが、どのような形で去るのが理想的ですか?

大げさなことは一切必要ないし、4番の永久欠番もして欲しくない。僕はファンの人々に「アディオス」と言うだろうし、彼らも「アディオス」と言ってくれるだろう。それでじゅうぶんだ。将来のことに関して望みと言えば、それはもちろん戻ってきたい。でもどのような形でクラブに戻れるかなんてことはわからないけれどね。

記者会見も後、思いもかけない電話かなにかありましたか?

だいたい予想してたような感じのものでした。友達や元同僚などからの連絡がありましたね。でも一つだけ、予想もしない人から連絡をもらいました。その時思わず、泣いてしまいました。僕の今回の発言がこういうリアクションを生むなんて考えてもいなかったものですから。でも、残念ながら、その人の名前は伏せさせてください(プラティニか、あるいは彼を取りあげてくれた産婆さんじゃないかとカピタンはにらんでいる)。

カタルーニャ首相のジョルディ・プジョーが次回の選挙にはうって出ないと表明したと同時に、あなたのことに関しても発言しています。
「グアルディオーラはカタルーニャのシンボルである。彼がいなくなるのは非常に寂しいことだ」

カタルーニャとプジョーは永遠に一緒のものと感じていましたけどね。今後カタルーニャがどのように進化していくのか非常に興味あります。特に今の時代のように、スペインナショナリズムが大衆の間に広がりつつあり、しかも中央のマドリッドも非常に影響力を与えるようになってきている。今後スペインがあるいはカタルーニャがどのようになっていくのか、とても興味あります。どこにいようと知る手段はある時代です。友達とかインターネットとかね。

あなたの退団は、バルサの一つのサイクルが終わると言ってもいいでしょう。それはバルセロニズムを理解する上で象徴となった人物のがいなくなるとの意味も含めてですが。シーズンが始まる前、会長がかわり、監督がかわり、彼らのアイドルが逃亡し、そして今キャプテンであるあなたが従来のバルサシステムに一つの疑問を投げかけながら、外国に向けて出発する。何でこんなに一度にいろんなことが起きてしまったのでしょうか?

会長がかわるということは、同時に多くの変化があるということでしょう。フィーゴの問題で言えば、未だに消化しきれていないところはあるでしょうが、すでに事実は事実として受け入れているとおもいます。僕のことでも、間違いなく時間が解決するでしょう。時間はあっという間に過ぎていきます。