おらぁ、ジェオバンニだ
(2001/6/27)

デイベルソン・マルシオ・ジェオバンニ、1980年1月11日生まれの21歳。171cm、67kg。

彼の生まれたアカイアカは、山に深く囲まれた人口3千人の村である。両親は未だにこの村に住み続けている。父の名はエフィジェニア、母はエマニュエル。9人の子供達に恵まれ、ジェオバンニは9番目の末っ子として育った。母エマニュエル、48才の時の子供であった。

彼はこの村では「エル・ニーニョ」、家族、友人からは「ジェオ」と呼ばれる。バルサの契約と共にこの村の3千人の人々は、すべてバルセロニスタになったという。「エル・ニーニョ」は、この村からの出身者としては初めてのヨーロッパクラブ選手となる。

生涯を鉄道員として過ごした72才になるエフィジェニアの自慢は、「村公認の鶏」を飼っていることだという。村一番の大きさを誇るこの鶏が朝一番に鳴くと、村の朝が始まるという。したがって「村公認の鶏」。だが今では、ジェオがバルサの選手になったことが、彼の一番の自慢となっているのはもちろんだ。そして彼の自慢の息子はバルサとの契約で得たお金で、両親に家を買う計画を立てている。具体的な土地までもう既に決まっており、シーズンのクリスマス休暇に入る12月に実現を予定している。

ジェオバンニ家の息子たちは、みなフットボール選手を目指していたという。コーチは父のエフィジェニア。ジェオバンニも子供の頃、父の教えの下に練習をしていた。

彼が14才を迎えた年、クラブ・クルセイロが選手募集テストをするということを知った父は、早速ジェオバンニを参加させる。一日限りのテストには300人の子供達が集まっていた。テストの結果、合格に決まったのはたった一人だけ。それがジェオバンニだった。こうして14才のジェオバンニは家族の元を離れ、プロ選手になるための第一歩を踏む。住まいはバルサのマシアと同じように、クルセイロのカンテラが集まって寝起きを共にする寮である。

これから3年後、ジェオバンニ17才の時、彼の才能に注目する人々が現れてくる。

1997年、チリでジュニアーの世界クラブ大会がおこなわれた。クルセイロやバルサも参加していた。この大会でジェオバンニは、ひときわ目立つ活躍をすることができた。バルサの選手として参加していたガブリも、目立つ選手の一人だったということも付け加えておこう。そしてバルサのスカウトマン、ジョアン・マルティネス・ビジャセカもジェオバンニに目を付けた一人だった。彼はこれ以来、ジェオバンニの参加するすべての試合の情報を集めるようになる。当時、ロブソン政権の下でスカウトも担当していたアレサンコ(現サブ・コーチ)も加わり、ジェオバンニの情報集めがさらに盛んになる。

その後、ジェオバンニはエジプトでおこなわれたアンダー17のワールドカップに参加し、決勝戦でガーナを敗り優勝している。さらにナイジェリアでおこなわれたアンダー20のワールドカップにも参加。結果はセミ・ファイナルで、チャビ、ガブリ、ベルムードを擁するスペインに敗北することになったが。シドニーオリンピックではレシャックも参加して、彼に非常な興味を示す。結果として、彼が一番ジェオバンニを高く評価する一人となっていく。

元バルサの選手であり、また元ジュニアナショナルコーチでもあったチュス・ペレーダが、ジェオバンニを次のように分析している。

・今はたんに「とても良い選手」の枠を出てはいない。だがクラックになる要素は十分にある。

・一人の選手を誰か他の選手と比較するのは馬鹿げたことだが、もしその比較を許してもらえるとすると、フィーゴがスポルティング・デ・リスボアにいたころに非常によく似ている。体力的には劣るものの、スピードと一瞬の爆発性は彼の方が勝っている。

・彼の自然なポジションはウイングというよりは、中盤の右の位置。これもフィーゴがバルサに来る前と同じだ。ただ彼も器用さを持った選手だから、左でも真ん中でもやっていけるだろう。

・1対1に強い選手。両足を同じような器用さで使える利点をもっている。しかも、全体の状況を「読む」能力も持ち合わせている。そういう意味で、非常に頭の良い選手だ。

・フリーキックには冴えた才能をもっているものの、ゴールを決める選手ではない。どちらかといえばアシストとしての役目を果たせる選手。センターリングのテクニックはゼンデン、シマオを越えている。

ある日、ジェオバンニは父に次のような質問したという。
「パパ、家の家系でポルトガル人はいないの?」
「ジェオよ、我々はすべてインディオの血をひいておる」
したがって、ジェオバンニはヨーロッパパスポートはしばらく取れない。

奥さんのロベルタと共に娘のジェオバンナは、バルセロナで家を探している。それもカンプノウのそばが良いという。彼らの夢は、この街で2人目の子供を得ることだ。もちろん、バルサで「クラック」になるのが一番の夢ではあることは、間違いない。


チキートコーナー 01-02