真夏のミステリー「消えた600万ドル」
(2001/6/28)

登場人物

ペレーダ 元バルサ選手にして、ナショナルチーム少年部の監督を20年務める。現在カバジェロの下で代理人業を勉強中。

カバジェロ FIFAエージェント、つまり選手代理人業を職とする。ペレーダの同郷人。

パレイラ 78年から96年までバルサでジェネラル・マネージャーを務め、その後パレイラ株式会社(各クラブのTV放映権の交渉、クラブ運営の管理、etc. 。ログローニェスのクラブを破産させた張本人)を設立する。ガスパーの会長選挙に協力し、そのままジェネラル・スポーツ・ディレクターとしてバルサに残る。

ミンゲージャ チキチキ「コミッション? なにそれ?」参照。彼はブラジル警察とのトラブルで、ブラジルには入国できない。

アルメイダ ペレーダが主張するところの、ジェオバンニ移籍に関するクルセイロ側正式交渉人。

ベロック バルサ側が主張する、ジェオバンニ移籍に関するクルセイロ側正式交渉人。ミンゲージャのソシオ。

マリオ ロッチェンバックの代理人。ミンゲージャのソシオ。

マチャード 去年の12月、バルサが狙ったクリスの代理人。ロッチェンバックの50%の所有権を所持。ミンゲージャのソシオ。

マテオ 代理人業、弁護士業を営むアルゼンチン人。ストイチコフをバルサが獲得したときに、ミンゲージャのソシオになる。ブラジル警察はミンゲージャが絡むブラジル選手の移籍に関する疑惑を解明するため、何回もマテオの自宅やオフィスを家宅捜査している。

ロベルト ジェオバンニの奥さんのお父さん。彼もFIFAエージェントである。


FIFAエージェント、またの名を選手代理人。この人たちの世界を「魑魅魍魎の世界」と題して以前チキチキに書いた。そして「コミッション? なにそれ?」にもミンゲージャなる、当人の言葉を信用すれば「元代理人」であり、現在はバルサの外部コンサルタントを務めている人物が登場した。今、そのミンゲージャと、彼のかつてのソシオであり仕事仲間であったバルサ・ジェネラル・スポーツ・ディレクターのアントン・パレイラ、この2人がバルサ内部の人間によって告発されている。

彼らを名指しで告発しているのは、バルサソシオであり、バルセロニスタの間で特別な親しみをもたれているペレーダ。そう、彼はかつてのバルサの選手でもある。その彼が問題にしているのは「ジェオバンニの移籍料」に関してである。


ペレーダの告白

ジェオバンニは2、3年前から興味を持っている選手だった。今年の1月に当時のテクニカル・ディレクターのレシャックやアレサンコとも相談し、彼をぜひ獲得すべきだという結論に達した。そこでブラジルに詳しいアルメイダに頼みジェオバンニの移籍条件をあたってみた。そして、彼の移籍料は1200万ドルということで、クルセイロの会長と口約束ではあるが結論を得た。
3月に入りクラブの許可を得て、私とカバジェロでブラジルに向かった。クルセイロの会長との交渉で、ジェオバンニの移籍に関する基本的合意に達した。ジェオバンニは確かに良い選手ではあるが、まだクラックとは呼べない選手だ、という印象だった。彼の移籍料は、以前から査定していた通り1200万ドルという基本的な確認がなされた。だが交渉次第で800万ドルか900万ドルには下がる可能性がじゅうぶんにあった。
3月27日、ジェオバンニからバルサオフィスにファックスが届いた。それは「わたしの義父にあたるロベルトと共に、アルメイダを移籍に関する正式な交渉役として受け付けます」というものだった(ペレーダはこのファックスを証拠書類として持っている)。


パレイラの証言

バルサにおけるジェオバンニ獲得の正式交渉役は、最初からベロックが担当していた。半年前からクルセイロが我々に示していたオファーは、1800万ドルを越えるものだった。具体的に言うと、クルセイロに移籍料として1800万ドル、それとは別に15%を報奨金として選手に、さらに何パーセントかの金額をブラジルフットボール協会へ支払われるものであった。
ペレーダには、もし彼の言うように1200万ドルで獲得できるのなら、クラブが彼にコミッションを払うと言ってあった。だがそのためにはサイン入りの基本的合意の正式書類が必要だとも言ってあった。だが、我々には最後まで提出されなかった。


ロベルトの証言

私はペレーダ氏とは今回初めて知り合いましたが、とても感じのいい人でした。ただ残念ながら、彼の所有しているジェオバンニが送ったというサイン入りのファックスは偽物だということです。ジェオバンニの代理人は私一人ですが、私もその様な許可をだしたことはありません。ジェオバンニの移籍料は最初の時点から1800万ドルと査定されており、1200万ドルなどということはあるわけがないんです。またバルサ側の正式交渉人は、ベロック氏と言っているパレイラ氏の証言は正しいと思います。


ペレーダの告白

5月24日、つまり私の親友であったウルッティが亡くなった日にパレイラから突然の電話がかかってきました。ちょうど19時半だったと思います。「ジェオバンニを獲得する事に決定した。31日に契約交渉をする段取りをしてあるから、ブラジルに飛んでくれ。成功すれば、君とカバジェロにコミッションとして200万ドル用意している」。
私とカバジェロは、急遽ブラジルに飛びました。パレイラの用意してくれたホテル「オウノ・ミナス・パレス」に宿泊しました。
約束の交渉時間は31日10時。だが時間になっても誰も現れないし、連絡も来ない。11時半になってパレイラからホテルに電話が入る。「交渉場所が変わった。急いで来てくれ」。指定された場所は、600キロ離れている、リオ・デ・ジャネイロだった。その場所に私とカバジェロ、そしてアルメイダが到着したのは16時であった。
交渉の席に着いたとき、我々は予想もしない人物が参加していることを知らされる。
そこにいたのは、クルセイロ会長、パレイラ、ロベルトの他に、マチャード、マテオ、ベロックがいるではないか。皆、ミンゲージャのソシオのFIFAエージェントだ。そして更に驚いたことに、ジェオバンニの移籍料が1800万ドルとして設定され、契約がほぼ終わりを見せていたことだ。
私はクルセイロ会長に聞いた。「我々との約束では1200万ドルではなかったか」。だが会長は私の質問に「そんなことを言った覚えはない」と言うばかりで、これ以上私にしゃべる事を許さない。
そこでパレイラに「彼は1200万ドルで獲得済みだ」といった。するとパレイラは「いいか、選手の価格を決めるのは私だ!」。


パレイラの証言

5月24日に電話したのは確かだ。もし、ペレーダが1200万ドルで獲得したという正式書類を示せるのなら、ブラジルに飛んでくれと頼んだ。だがもしその書類がないのなら、行くのは無駄だから行く必要はないとも言った。
我々の交渉により、コミッションなどを含めると2000万ドルを超える移籍料を、どうにかすべて含んだトータル金額で1800万ドルということで折り合いがついた。
交渉場所が変更になったのは、諸所の事情があってのことで申し訳なく思っている。ただ我々は彼らが到着する前にクルセイロ会長に1200万ドルで移籍させる正式書類は存在するのかどうか聞いたところ、そんなものは存在しないということだった。したがって、彼らが来ようが来まいが、交渉には関係ないことでもあった。

6月25日、クルセイロ会長とロベルトがバルセロナにやってくる。バルサオフィスで待ち受けたのはバルサ会長とパレイラ。ジェオバンニの正式なバルサへの移籍が決まった。移籍料1800万ドルとされる。


カピタン「ペレーダの告白を信用するとするなら、この600万ドルの差額はいったいどこへ消えたのだろう。最後の交渉に参加したミンゲージャのソシオ、パレイラ、クルセイロ会長などのコミッションとして消えていったのだろうか。そうだとすれば、もちろんミンゲージャも無関係であるわけがない。今日6月28日現在、ミンゲージャ、ガスパー会長は沈黙をきめつけている。」

「こぉんなバルサに誰がした!」