何はなくともアベラルド
(2001/8/25)

今年の3月14日、アベラルドは左足ヒザの手術を受けた。あれから早くも5カ月がたち、必死のリハビリの毎日が続く。
31歳になったアベラルドは、今シーズンで8年目のバルセロナ生活を送る。クライフ、ロブソン、ファン・ハール、セラ・フェレール、そして今シーズンからのレシャック体制のバルサ。彼はこれらの監督のもとで、常にスタメン選手として生き延びてきた少ない選手の一人だ。


リハビリは順調にいっているようですが、チームの練習に加われるのはもうすぐなんでしょうか?

うん、すべて順調にいっている。最初からリハビリには時間がかかることは知っていたし、復帰までには6カ月かかると当初から言われていた。今5カ月目を迎えているわけで、あと1カ月もしないうちにみんなと合流できると思う。まあ、そんなことより重要なことは、少しずつではあるけれど確実によくなってきているということだよね。

というと、クリスマス前にはデビューできそうですね。

それはもちろんだ。9月の中旬か下旬にはチーム練習に合流することが、今のところの第一問題。そこまで行けば、いつプレーするかは監督が決めることだからね。

同僚達と離れて一人でプレ・シーズンを送るというのは、結構つらいことでは。

一番つらいことは、負傷中ということだよ。負傷して思うことはね、試合に呼ばれなかっただとか、スタメンででられなかっただとか、そういうことで文句を言うことがどんなに馬鹿げているかということさ。フットボール選手としての基本は「練習」できることなんだな。
リハビリっていうのは結構つらいものがあってね、朝も昼も夜もないんだ。一日同じ事をして過ごしていかなければならない。もし200%の努力で飛ばしていけば半分の時間ですむと、いうわけでもない。やりすぎてもダメなんだから。地道に毎日のメニューをこなしていかなければならない、退屈な作業さ。ただ希望だけが唯一の力となる。俺は一度として希望を失ったことがないさ。試合にでたい、フットボールをしたいという欲求は、プロ選手になったときといまだに同じものだもの。もうおじさんだけどね、俺は。

チームとは離れて行動していますが、今シーズンのチームをどう見ています?

そう、ルイス・エンリケとかセルジとかよく話している。それにプレ・シーズンの試合はすべてテレビで見てもいたし。まあ、小さいスクリーンから受けた印象だけれども、プレ・シーズンの割にはなかなか良いと思う。もちろん細かいことを言えば、まだまだ連係プレーなんかは時間が必要だとは思う。

多くの新顔が登場してきました。どんな印象ですか?

みんなとてもよくやっていると思うよ。うん、いい感じだよね、みんな。新しい選手を加入させることの基本的な意味は、今までのレベルをさらに向上させることにあるわけだよね。そういう意味で、このままうまくやっていって欲しいと思う。

今年入ってきたサビオラはまだ19歳ですが、こんなに若い選手にこれほどの関心というか、注目をあびている状態をどう思いますか?

バルセロニスタが、新しい選手であろうが前からいる選手であろうが、選手に関心をしめすことはもちろん素晴らしいことではないですか。特にサビオラをアイドルと見るのはわかる気がするな。フットボールのなかでもっとも難しいゴールを決める選手だし、なによりも若い。彼から漂ってくる雰囲気は、まさに将来の大スター選手という感じだよ。ただまだ19歳ということをファンの人たちはわかって欲しいね。調子のいいときは当然キャーキャー言って声援するだろうけれど、落ち込んでいるときにも元気づけて欲しいね。そう、そうしてやって欲しい。おじさんからのお願い。

それにしてもサビオラ人気は、異常と言ってもいいほどのものですが。

そんなことはないさ。あんた若いね。思い出してごらん、ロマリオやロナルドが来たときのことを。同じだろう? 大なり小なりファンの人たちは選手を通して、クラブを見るのさ。自分の応援しているクラブをね。そして彼らにとってもっとも重要なことはチームが勝つこと。スペクタクルな試合を見ること。そしてお気に入りの選手が活躍するのを見ること。
去年、一昨年とオレ達は何の重要なタイトルをとっていないからね。ファンのひとたちが、サビオラを通して希望を持ったり、チームに期待する気持ちはよくわかる。

昨シーズンのディフェンスは、ひどかったと酷評されていますが。

うん、確かによくなかった。あんなにゴールを入れられるのは普通じゃないよね。。いくらバルサとは言え、あっ、これ冗談だよ。そう、オレを含めてすべてのディフェンスが悪かったとしよう。まあ、それは確かなことなんだけれど。59ゴールだったかな入れられたの。うん、多すぎる。でも悪かったのはディフェンスだけじゃなくて、すべてのラインが悪かったんだ。最終的に守るのはディフェンスの仕事だけれど、他の選手の協力も必要なんだ。わかるだろ、若いの。昨シーズンはそれがなかった。いや、オレは言い訳しているわけじゃないんだよ。ディフェンスをやる選手はいつも批判されるんだ。例えば、デランテーロが5回の決定的なシュートチャンスがあって、1回しか入れられなかったとしよう。しかし、それが勝利につながるゴールだったら、そのデランテーロはヒーロー扱いになる。もしオレ達ディフェンスが、相手の5回の決定的なチャンスを4回防いでもたった1回のミスで点を入れられたら、どうなると思う? 試合の敗因者さ。ゴミだよ。フットボールっていうのは、そういうものさ。

レシャックは昨シーズンの反省をして、ずいぶんとディフェンスを固めようとしているようですが。

去年だけじゃなく、最近の傾向を見てるとディフェンス中心に構成されているチームが、ビッグタイトルをとってきているよね。バイエルンやバレンシア、そしてカンプノウでのリバプール。あるいはチャンピオンズに優勝した時のレアル・マドリ。どこもかしこも5人ディフェンスだった。ちなみにね、若いの、「3人セントラール」というシステムにだまされちゃあいけないよ。例えばバイエルンだとか、先日ガンペル杯に来たパルマだとかね。あれは世の常識から言えばたんに「5人ディフェンス」っていうんだ。わかるかな?
ディフェンスは確かに固めなくっちゃいけない。でもそれはチームブロックとして固めればいいんだと思うよ、オレは。バルサは間違っても5人ディフェンスなんかできない。何故かって? そんなことしたらオレ達、家から外にに出られなくなっちゃうよ。