ストイチコフ、アメーリカでの独り言 2
(2001/8/31)

俺の体はアメーリカにあるけれど、心はいつも地中海。ルルーン♪ルルーン♪ルルーン♪。そして考えることはいつもバルサのこと、ルルーン♪ルルーン♪ルルーン♪。

「ボカァー、幸せだなぁ」ってとこのウリスト様さ。だってバルセロナの自宅にいるんだ、今。というのも先日の試合で右足がつっちゃって、痛いのなんのって。クラブの医者がいうには全治一か月の筋肉痛だそうだ。アメーリカにいて、ハンバーガーばっかし喰っているのもなんだから、さっそくクラブの許可をもらって帰ってきたっていうわけさ。ということで、体も心も地中海なんだ、ルルーン。

ところでこの前のセビージャ戦のクライハートはよかったねえ。なんか皮が一枚むけて大人になったような感じだったな。もちろんバルサもよかった。開幕戦でしかもサンチェス・ピスフアンという難しいグランドでの試合。オレもあそこに行って試合したことあるけれど、アンダルシアの熱風っていうのかなあ、ファンが熱いんだよね。北の人たちとはちょっと違うんだ。まあ、とにかくそういうところで貴重な3ポイントをあげたというのは、スペクタクルな試合をするよりずーと価値のあることなんだ。スペクタクルはそのうちカンプノウで見られる。これは間違いない。セビージャで必要だったのは、快進撃のスタートとなる3ポイント。チャーリーはそういうことオレと同じぐらいわかっているから、嬉しかっただろうな。

嬉しいと言えば、パトリックの活躍は個人的にもとても嬉しいことなんだ。ヤツが再契約するしないでもめてるときでさえ、オレはヤツを援護してきたし、かってに電話して「早く、サインしちまえ!」なんて言ってやったぐらいなんだから。まあ、ヤツにしてみれば迷惑な話しだったかもしれないけどね。実を言うとガスパーにも電話して「ヤツを逃がすな!」とも言っておいたんだ。ガスパーは「わかった、わかった」と答えていたけれど、結果的にオレの根回しが効いたのかもしれないなあ。でも、そんなこたあどうでもいいんだ。パトリックにはバルサが必要であり、バルサにはパトリックが必要ということなんだから。ヤツが2本のシュートを決めたときには自分のことのように嬉しかった。今シーズンはオレたちバルセロニスタを、うーんと楽しませてくれる「オッレーイ!」って感じのゴールを、たくさん決めてくれる予感がするな。がんばれ、パトリック。

サビオラファンには残念だっただろうけれど、ベンチスタートっていうのはあの試合しょうがないね、オレの気分としちゃあ。あの子は他の大陸から来たばっかりだし、まだ19歳だってことを忘れちゃあいけない。師匠のクライフもそうだったけれど、若手は大事に大事に使っていかなきゃならないんだ。徐々に徐々に新しい土地の水に合うようにね。だからチャーリーは正しいと思うよ。なかなかやるぜ、チャーリーも。

あの試合見てて、妙に印象に残った選手がいるんだ。それはロッケンバック。彼もまだ19歳だっていうじゃないか。あのいつも睨んだ目つきで、あの神経の太さで19歳っていうんだから、こわいぜあのガキは。でもね、オレはアイツの中にかつてのバッケロを見たんだ。あの戦いの精神、ここは誰も通さねえという仁王様みたいな通せんぼスタイル、ヤバイと思ったときのファールするタイミングの良さ。気に入ったねえ、あの若いの。これからもっともっと経験積んで、体以上にでっかい選手になりそうな気がする。

ディフェンスじゃあ、やはりアンデルソンが目立ったな。だてに経験を積んでいるわけじゃないんだヤツは、オレもそうだけど。それに比べクリスタンバールってのは、ちょっと心配。今日、バルサの練習を見に行ったときにアレサンコにそのことを話したんだ。そしたらちょっと体重オーバーだというじゃねえか。何と92キロだって。そりゃないだろう。ヤツはオレの出稼ぎ先で流行っている、アメフト選手じゃねえんだから。どおりで動きが遅いし、体のキレもよくないわけだ。

でも原因がはっきりしているだけに救われようがあるってもんだ。アベラルドやデブーの脇で一生懸命に勉強すれば良い選手になるんじゃないかな。それと何と言ってもアレサンコがコーチなんだから、彼からしっかり学べばいい。オレの元キャプテン、現サブコーチのアレサンコは、バルサ史だけじゃなくてスペインフットボール史でも名前の残る選手だったんだからな。まあ若い人は知らんだろけれど。

ついでにマドリのこともしゃべっちゃおうかな。
プレシーズンではジダーンの補強で、やたらめったらとおにぎやかだったけど、テストマッチを重ねて行くうちになんだかジダーンがチームにとけ込まないだとか、監督が彼のポジションを決められないだとか、違う意味でこれまたおにぎやかになってたよな。そういうことはアメーリカまでも伝わってくるんだ。そして開幕戦でいきなり負けちゃったら、今度は「ジダーンを反則から守らなくちゃいけない」とか「アンチマドリキャンペーン」だって。まったく、いつもおにぎやかなチームだよな。

実はあの試合もアメーリカで見たんだ。それで思ったんだけどもファールの激しさっていうのは、まあそれはたいしたことはなかったなぁ。誰もケガしたわけじゃないし、死んだわけでもなかったんだから。ただファールの多さは目に付いた試合であったのは確かだよ。それに例えばフィーゴだけど、20回近いファールを受けているにも関わらず、3,4回のファールを相手にしただけで退場っちゅうのもなんかなぁ。可哀想っちゃあ、ぜんぜん可哀想じゃないけれど、ちょっとおかしいんじゃないか?

昨日バルセロナに戻ってきたばっかりだというのに、マドリッド系のテレビ局のインタビューに偶然あっちゃったんだ。それでオレに聞くのさ、
「ジダーンはマドリでどうなるでしょうか?」
ってね。そこでオレはきっぱりと言ってやった。

「第二のアネルカでしょう」