バルサの宝石箱、バルサB
(2002/2/22)

カンプノウでの試合の他に、密かにバルセロニスタが楽しみにしている出来事がある。それは、いつかは一人前の選手となって成長し、バルサの一部のユニフォームを着けてカンプノウに立つことを夢見るカンテラの動向だ。

二部Bリーグの第二グループに所属するバルサB。ソシオにとっては、今年のバルサBのニュースは楽しいことばかりだ。25節を終了しダントツのトップであると共に、52ゴールというスペインリーグのすべてのカテゴリーの中で最高のゴール数を記録している。そしてさらに最近の8試合では負け知らずの8連勝という記録まで作っている。

このバルサBの活躍の中心となっていた一人の選手。左インサイドを自然のポジションとするイタロ・ブラジレーニョ(イタリア系ブラジル人)のティアゴ・モッタがその選手だ。19才になった彼は、すでにカルラス・レシャックによって一部デビューを果たしていいる。記憶に新しいところでは、先日のテネリフェ戦で初のスタメンデビューを成し遂げ、レシャックの期待に見事に応えている。

今から2年半前、当時スカウトのボスとして世界各地を回っていたセラ・フェレールの働きによってバルサに入団している。テクニック的にも優れたモッタは、恵まれた体をフルに生かしてのロングショートが得意。また1.86mという長身を利用してのヘッディングにも冴えを見せる。

レシャックやクライフの元同僚であるキケ・コスタスが今年からバルサBの監督に就任している。54才になる彼は、去年とほぼ同じメンバーによるチームを引き継いでいる。去年は9位に終わっているバルサBだ。
「去年の監督がうまくチーム作りしなかったということではなく、去年の経験を選手自身がふまえて、それが良い方向に向かっているということだろう。もともと小さい頃からエリートだった選手の集まり。みな才能はあるんだ。それに経験が積まれて初めて機能していくということだな。」

バルサ二部でのプレーシステムは、クライフが1988年にバルサの監督に就任して以来、常に一部のチームと同じシステムを採用することになっている。クライフがいなくなった今もその習慣は守られている。だが現在のバルサ二部では事情が少々異なってきている。

レシャックが監督に就任してからのシステムは、ほとんどの試合では4−4−2というものだ。4人ディフェンスライン+菱形中盤4人+ツートップ。だが試合が展開されて行くに従い、このシステムも柔軟性あるものとなる。今まで数は少ないが、両ウイングにオーベルとジェオバンニを置いた4−3−3システム。あるいは中盤を厚くしての4−5−1システム。そしてチャビとコクーの二人ピボッテを採用しての4−2−3−1システム。さらにトリデンテがこれに加わると、非常にバリエーションの激しいシステムとなる。そしてレシャックを筆頭とするコーチングスタッフは、二部の監督であるキケ・コスタスに4−3−3と3−4−3システムの採用を要求している。それは将来のバルサにとっての本来のスタイルであり、長期展望を持って一部でも採用したいシステムだからだ。

バルサBの選手にとって、これまで一緒にプレーしていた仲間の誰かが一部に呼ばれるということほど刺激的なことはない。
「彼らにとってたった一日だけでも一部の合同練習に呼ばれることは、バルサBでの練習の1年分ぐらいの刺激があることなんだ。それがその選手に良い方向に影響を与えればいいんだが、かえって悪い効果をだすこともある。だから我々指導部は慎重にいかなくてはいけないんだ。それは我々としても才能ある子供たちをなるべく早く一部に上げたいさ。だが、例えば、ナノが17才でバンガールによって一部に引き上げられたことがあった。確かに才能的には何の問題もなかったはずなんだ。だが精神的には彼はまだ準備ができていなかったんだな。あれ以来、彼はだいぶ寄り道をしてしまった。幸運なことに今年のナノは本来の彼に戻ってきた。ようするに、彼らみたいな若い選手の場合、才能だけではなくメンタル面での計算も必要になってくる。だから難しいんだ。」

またキケ・コスタスは、実力やメンタル面での準備以外にも若い選手が大きく羽ばたくには、「運」が大きな要素を支配しているとも言う。
「いいかい、今モッタという選手がとても注目されているだろ。だが例えば、テネリフェ戦でコクーがカード制裁をされていなかったら当然のごとく彼は呼ばれていなかった。しかも0−6という大げさな結果じゃなく0−1ぐらいの地味な試合だったらモッタもこれほど騒がれてはいないわけだ。それと、同じポジションにどのような選手がプレーしているかということも重要な要素となる。例えばトリデンテの場所にカンテラが食い込むのは非常に難しいことになる。」

キケ・コスタスの最大の任務は有望な選手を一部に上げることではない。もちろんそれが可能ならそれに越したことはない。なぜならカンテラの最終的な目標はそこにあるのだから。だが当面の課題は違うところにある。それはバルサBを二部のBからAに上げることだ。
「我々は素材的には素晴らしい選手を抱えている。彼らを少しでも早く爆発させるには、やはりできるだけ高いレベルとの勝負が必要だ。そして二部のAはBより当然レベルは高い。しかもBのクラブよりは格段いいグランドをもっており、審判もレベルが高いのは当たり前のことだろう。だから我々はできるだけ早くAに戻りたいし、戻らなければならないんだ。」

現在、キケ・コスタスの指揮するバルサBには、次のような将来の楽しみな選手がいる。

■VICTOR(ビクトル)
オスピタレ(バルセロナ)生まれの20才のキーパー。ALEVINカテゴリーでバルサに入団。1年間テネリフェの下部カテゴリーでプレーしたあとバルサに戻って来た。アンダー21にも呼ばれている。

■FERNANDO NAVARRO(フェルナンド・ナバーロ)
バルセロナ生まれの19才。左ウイングが自然なポジション。INFANTILカテゴリーでバルサに入団。コルーニャでおこなわれたデポルティーボ戦では45分プレーしている。

■DANI TORTOLERO(ダニ・トルロレーロ)
アンダー21代表。エスプルガス・デ・ジョブレガット(バルセロナ)生まれの20才。ALEVINカテゴリーでバルサに入団。セントラールがポジション。

■ANDRES INIESTA(アンドレス・イニエスタ)
チャビのあとを追う17才の中盤選手。アルバセテ生まれの彼は12才でマシアに入寮している。これまですべての少年部カテゴリーで代表に選ばれている。ヨーロッパアンダー16では優勝、1999年のナイキ・プレミア・カップでも優勝し最高殊勲選手に選ばれている。

■HARUNA BABANGIDA(ハルナ・ババンジーダ)
エストレーモのポジションを得意とする19才のナイジェリア選手。今シーズンはこれまで16ゴールを決め得点王となっている。外国人枠選手であるため、いまのところ一部でプレーするのは難しい状況となっている。

■NANO(ナノ)
コルーニャル生まれの19才。バルサの歴史の中において最も若くして(17才と4か月)一部デビューを果たした選手。その後、落ち込んでいたものの今年はかつての調子を取り戻している。

■ROBERTO TRASHORRAS(ロベルト・トラッショーラス)
2月22日に21才の誕生日を迎える、メディアプンタの選手。彼もコルーニャでのデポルティーボ戦に出場しているし、チャンピオンズでのクラコビア戦にも出場を果たした。今シーズン10ゴールを決め、ババンジーダに次いで2番目のゴール数を記録している。

※この筆者は触れていませんが、カピタンはDAVID SANCHES(ダビ・サンチェス)という選手がお気に入りです。去年はJUVENILカテゴリーでプレーしていて、今年はバルサCに上がってきたかと思ったらいきなりBにまで上がってきて、ほぼスタメンの選手となっています。

EL PAIS 2002.2
ROBERTO ALVAREZ
(訳・カピタン)