リーボーへの最後のファンレター
(2002/7/22)

リーボーまたの名を大聖人様へ

6年前にコルーニャのユニフォームを着ているチョット色の黒い長身の選手が、どこかとの試合で度肝を抜く長距離シュートを放った時の驚きは今でも忘れません。あの瞬間、この選手が欲しい、この選手が欲しい、とバカの一つ覚えみたいに繰り返していたことも忘れていません。そう、この選手がロナルドと一緒にプレーしてくれたら10年は続けて優勝できる、その思いは日増しに強くなっていきました。

ロナルドは去っていき、そしてクライフ2世というふれ込みでバンガールという監督が来ました。その監督がクラブに要求した補強ポジションは左エストレーモでした。具体的にはオーベルマルスという選手でした。ところがクラブが連れてきた選手はマクマナマンでした。彼はバルセロナのホテルに滞在し、クラブ首脳陣との交渉が続けられているのを連日メディアが流していました。ところがギリギリになって彼ではなくリーボーがバルサに来ることになったのは、やはりロナルドが抜けた穴を埋めるのはリーボーしかいないというクラブ首脳陣の決断だったのでしょう。もちろんバンガールはリーボーのことなど知らなかったと思います。彼はバルサに来るまでアヤックスを中心としたオランダの選手しか知らなかったのですから。

バンガールという監督はクラブ事務所にいようがベンチにいようが左手にもったノートは常に離さない人でした。そのノートには試合前であれば各選手を配置した作戦図が、試合が始まれば途中経過の感想で埋められていきました。バンガール第一次政権時で唯一そのノートからはみ出る行動をした選手はリーボーだけでしたね。湯気を立てて怒ろうが、ツバを飛ばして怒鳴れられろうがリーボーは常に自分の可能性を信じ、ひたすらノートからはみ出ようとした印象を受けました。ある時は監督だけではなく観客席からも怒鳴り声が上がりました。それでもリーボーはリーボーの道を、スイスイと歩んでいきました。バンガールが左エストレーモに配置したからこそバロン・デ・オロがとれたのだ、という恐ろしく間違った考え方をしているオタンナスコメディアやノーテンキファンがいました。勘違いもはなはだしいと思っているのはリーボーだけではないことを知って欲しい。ノートをはみ出したプレーをしたからこそ賞がとれたと認める人は少ないです。少ないけれどそれが真実だと信じています。

常に作戦ノートからはみ出してしまうあなたのプレーは「問題」であると同時に「解決」でもありました。リーボーは左エストレーモの選手ではありません。少なくともいわゆるアヤックスシステムでのエストレーモではあり得ないのです。もっと自由が与えられるポジションがリーボーの自然なポジションでした。「問題」はリーボーがバンガール率いるチームの選手であり「解決」はそんなシステムでも難しい試合を勝利に導いてくれるリーボーのゴールでした。「問題」と「解決」、これは常にバンガール第一次政権時に言われてきたことでした。そしてそのバンガールが第二次政権を敷くために今シーズン戻って来ました。

バンガールの監督就任と共に、アベラルド、セルジが解雇されたときにすでに今回のことは予想されたことかも知れません。来るべきものが来た感じです。このような急激な状況の変化を生んだのはひとえにクラブ首脳陣の責任だと思います。歴史的に見ても我がクラブのお偉いさんは、現会長ガスパーに限らずこの手の問題が苦手のようです。どうもいつもスッキリとはいきません。いや、よく考えてみればヌニェスが会長をしクライフが監督をしていた時代よりは、ずいぶん良くなっているかも知れません。アベラルドやセルジは公式に「サヨナラ」を言えるチャンスをもらえました。でもあの時代の選手はほとんどそういうチャンスもなく突然と一方的に「サヨナラ」を言わされ消えていきました。それでも救われることは時間の経過がこれらの傷を癒してくれることです。アテネのミラン戦後の帰りのバスの中で解雇を言いわたされたスビサレッタや同じような扱いを受けたエウセビオやチキにしても、今ではしょっちゅうバルセロナを訪れクライフやファンの人々と旧交を温めています。リーボーもきっとそういう一人になるでしょう。2年前にドル札の臭いに中毒状態となってバルサから消えていった選手は一つの街を失いました。いや、街だけではありません。何百万という人々の心を傷つけたのです。彼は現役を辞めても訪ねることのできない街を作ってしまったのです。クラブ的にも魅力があり、経済的にもプロの自尊心を満たしてくれるであろうバルセロナから600km離れたクラブへはリーボーは間違っても行かないでしょう。リーボーは頭のいい人です。同じ過ちを犯さないであろうリーボーに心から拍手を送ります。

毎日入る喫茶店でコーヒーを飲むことと同じぐらいにカンプノウでリーボーのプレーを見るのが習慣となっていましたが、それももう終わりました。いつの時でも見慣れた選手と別れるのは辛いことです。もちろんその辛さは選手によって多少変わってくるでしょう。ドゥガりーやボハルデ、そしてリトゥマネン、ゼンデン、ペティなどとと別れるのに辛さなどはこれっぽっちもありませんでしたから。自分にとってはカンテラの時代から見ている選手が離れていくのと同じようにリーボーの不在は辛いものとなるでしょう。これほど長く在籍していたのに、決してロマリオやロナルドを越えたクラックとして認められなかったリーボー。でも、再びバルサのユニフォーム姿が見られなくなったこの瞬間から、リーボーはバルセロニスタの心の中に残る選手になったと思います。誰一人としてバレンシア戦の落雷のようなゴールを忘れる人はいないでしょう。最後となったセルタ戦での足を引きずりながらのゴールを決して忘れません。これで「リバルド次第」と陰口をきかれることもなくなったバルサです。そして誰もリーボーの悪口は言わなくなるでしょう。思い出は楽しいものばかりとなります。

決断は正しかったと思います。この監督のもとでは遅かれ早かれ問題が起きていたでしょう。個人的にはジェオが残れることになったことで感謝しています。まだ少なくても2年はかなりのレベルでやれるリーボーです。新天地を探すことにした決断は、決して間違っていなかったと思います。いつか、そういつの日か、またバルセロナに訪れてくれることを楽しみにしています。すべての幸運を!

グラシアス リバルド!
ブエナ スエルテ!
アミーゴ パラ シエンプレ!

一ファンより