ルセー、クライフに一番遠い人物
(2004/04/06)

長年にわたってブラジルにおけるナイキの総責任者として活躍したサンドロ・ルセー、彼はその貴重な経験をいかしバルサ副会長としてクラブに貢献している。まだ1年もたたない副会長としての経験だが、すでに最高の仕事を多くのバルセロニスタに示した。ロナルディーニョ・ガウチョの獲得、それは彼の存在なくして実現することは不可能なことだった。スタッフ・テクニコであるチキ・ベギリスタインやフラン・ライカーによる来シーズンの構想の下に、彼らが必要とする選手獲得に向けて交渉に入るのがサンドロ・ルセーの主な仕事。すでに何か月も前から、深く静かに、そして慎重に、来シーズンに向けての仕事を開始している。そしてクラブ理事会の中ではクライフの影響から一番外れたところに位置している人物でもある。クライフがアイマール獲得を“助言”したにも関わらずロナルディーニョ獲得を主張したのは彼だった。

ビジャレアル戦での引き分けにより、リーグ制覇の夢ははかなく散ったことになるのか・・・

今シーズンの我々の目標は4位以内に入ることであると、シーズン開始直後から言っている。それは連勝を続けていた時期にもかわりがなかった。したがって、目標そのものは達成できそうな気がする。

多くのソシオはその目標に不満を抱いていると思うが・・・

9連勝という長い好調な時期に多くのソシオが優勝を目標に置いたとしても不思議なことではない。でも我々は現実的な観点からチームを分析しているつもりだ。もちろん自分も一人のソシオとして、優勝を期待している。だがこのインタビューは副会長サンドロ・ルセーとしてのものと聞いている。

シーズン開始直後には確かに4位以内目標と言っていたが、同時に何らかのタイトル獲得も目標に置いていたはずだが・・・

それは確かなことだが、タイトル以上に大事なものを我々は獲得することに成功していると思う。例えば、ソシオやバルサシンパの人々の中に、クラブに対する希望や誇りというようなものが戻ってきたことだ。つまりバルセロニスタであることに対する誇り、それが戻ってきたと思っている。

連勝がストップしたことによって、何か変化を感じたことがあるか・・・

充実した人生を送るためにはある一定の時間が必要なように、バルサというクラブにも変革が成功するための時間が必要ということ。もっとも、バルサというクラブを取り囲む環境には、猶予を与えられないという特徴があることは知っている。シーズンが開始されてからラポルタ会長に与えられたプレッシャーというのは想像もできないものだった。特にフラン・ライカー監督獲得に関する疑問符付きのプレッシャー。それについてはクラブ外からのものだけではなく、クラブ理事会内部からのプレッシャーもあったのには驚いた。我々は可能な限りの時間を有効に使って、どうにかこうにか乗り切れたと思っている。ダビッツの加入によりチームにキャラクターが生まれたこと、ロナルディーニョはクラックとしての仕事をキチンとし続けていること、チャビがかつてのチャビに戻ってきたこと、10年間保証してくれるポルテロがでてきたこと、そしてシステムが4−3−3と落ち着いたことによりチームそのものが落ち着きを取り戻してきたことが大きい。

今シーズンがどのような形で終わるとしても、多くの人々が考えていることは、ロナルディーニョ一人に頼らないですむ戦いの方法を可能にすること、それが来シーズンに向けての補強作戦で必要なことだと思うが・・・

我々の考えはこうだ。今シーズンに見られる多くの試合のように、ロナルディーニョの個人技で試合そのものが決まるということができるだけ少なくなればいいと思っている。彼の個人技はチームを機能させるものとならなけれなならない。つまりコンパクトにチームが機能していかなければならない。そしてそのアイデアはかなり実現の方向に向かっているように見える。チームそのものがシーズン開始当初に比べれば非常にコンパクトになっている。もっとも、カンプノウでの成績で不満を持つソシオが多いことも知っている。私も大いに不満だからね。現在のバルサの問題は、ポルテロの前に何台もの大型バスを置くシステムを起用してカンプノウにやって来るチームに対し、それを破壊する手段を見つけられないことだと思う。

それは9番の選手の獲得という解決手段になるのか・・・

確かに、我々にはシーズン30ゴールを決める選手が必要かも知れない。だが個人的な考えを言わせてもらえば、一人で30ゴール決める選手がいるチームより、5ゴール決められる6人の選手がいるチームの方が好きだ。そしてもし9番を獲得するのであれば、その選手はクルイベルを越える選手でなければならない。少なくともシーズンが開始される前のクルイベルに対するフットボール界の評価は、デランテロとして五本指に入るカテゴリーの選手。その彼を越えるデランテロでなくてなならない。もっとも、今シーズンのような活躍であるなら当然ながら我々は新たな9番を獲得する方向となるだろう。それはチキとライカーの仕事であるけれども、クルイベルはまだ契約期間が残っている選手であることも考慮しなければならない。

9番の選手は移籍相場が高いと思うが、クラブに獲得資金はあるのか・・・

獲得資金は毎シーズン3千万ユーロ。クラブの金庫に資金が眠っているというわけでもなく、はっきり言って余っている資金はまったくない。クラブが借金状態ということに関して言えば、我々は前クラブ理事会からの“病気”を背負ったままと言える。2億5千万ユーロの借財、この“病気”はいまだに完治しているわけではない。だが前理事会との状況の違い、それは“病気”の治し方を知っていることと、すでに快復に向けての治療がなされていることだ。今でも思い出すが、最初の3か月ぐらい、いったいどこの銀行にどのくらいのクレジットをしているのか、それさえはっきりしなかった。毎晩遅くまで会議が続き、家に着くのは深夜。それで朝刊を見ればチームがうまく機能しないことからクラブ理事会批判の記事で埋まっていることまであった。無給で1日18時間も働いてメディアには批判され、いったい自分は何をしているんだろう、そう思った瞬間もあった。もちろん学ぶことも多くあったように思う。特に“してはいけない”ことを前理事会のおこないから多く学んだと思う。

3千万ユーロという獲得資金に放出される選手の移籍料を足せば、その額はもっと多くなるということか・・・

それはそうだ。だが物事はそう簡単にはいかない。まず他のクラブが欲しがる選手は我々に必要な選手ばかりだから、彼らは放出されることはあり得ない。そして我々が必要ないとする選手、それらの選手の年俸を支払えるクラブが少ないということも考慮にいれないとならない。ヨーロッパのビッグクラブの中で彼らの年俸を保証できるクラブはぜいぜい7つか8つ、そしてどのクラブも我々が放出する選手の年俸を支払うことを拒否している。これが我々にとって大きな問題となっている。したがって今シーズンの最初と同じように、移籍料なしで放出される選手もでてくると思う。だがそれはクラブにとって必要なことであり、我々が批判を恐れてビビッてはいけないと覚悟している。その選手がどのような名前の選手であろうとも、必要とならばそうなるだろう。

トレセゲとの交渉は進んでいるのか・・・

彼と接触があったのは確かなこと。他の20人の獲得候補選手と同じように、いくらぐらいの年俸をとっているのか、クラブとの関係はどうなのか、バルサに来る気はあるのかどうか、そういう情報交換はしている。

ルイス・エンリケはどうなるのか・・・

知らない。知っていることは彼の事情は特別なものがあるということだけだ。なぜならバルサというクラブの歴史の1ページを担ってきた選手であり、選手間だけではなくソシオの間でも特別に意味のある選手。彼との交渉、というより彼の場合は話し合いと言った方がいいだろうが、それを我々は近々予定している。カピタンとか選手としてのルイス・エンリケとしてではなく、選手やバルサのことを誰よりも知っている一人の人物として話し合いにのぞむつもりだ。

ダビッツが残る可能性は・・・

可能性を数字で示せば75%の確率。この可能性の大きさはクラブに残りたいという彼の意思と同時にクラブ側も彼の残留を希望していることからだ。そして関係ないことだが、もし彼がクラブに残るようなことになれば、現役引退後もバルセロナに残って生活していくタイプの選手だと感じている。彼はバルサというクラブと共にバルセロナの街を本当に気に入っているようだ。

アンリ、ニーステルロイ、この二人の獲得は可能か・・・

まったく不可能。それはマドリやチェルシーにしても同じ。つまりどんなに資金が余っているクラブでも彼らの獲得は不可能。もっともマドリに資金があるかどうか、それは非常に疑わしい話だと思っているが。

誰かブラジルの選手は・・・

カカタイプの選手はいるが、ロナルディーニョタイプの選手はもういない。ブラジル選手に関しては個人的に情報網を持っているが、今すぐ必要な選手はいないようだ。ルイス・ファビアーノは非常に良い選手だが、セレソンでは第三のデランテロ。しかも外国人扱いになる選手は今の段階では問題となる。

サビオラは来シーズン開始と共にユーロパスポートを獲得しているだろうか・・・

こういうものに100%の保証というのはないだろうが、可能性として言えばそうなるだろう。我々の弁護士の経験では、申請時期から計算して遅くても7月にはパスポート取得となるのが普通のケースだという。だが役所がおこなう仕事に100%の保証として言えることはない。いずれにしてもサビオラとクラブの関係は非常に良好だということをこの場を借りて伝えておこう。パスポート取得ボーナス100万ドルということに関しても話し合い中であり、ゴールを決めるごとに6千ユーロというボーナスに関しても話し合い中だ。すべて前の理事会が決めたことだが、これらのことはバカげたボーナスだと思う。

ロナルディーニョ獲得の成功の鍵を握っていたのはあなたということは誰もが知っていることで、すでに多くのエピソードが語られていますが、それとは違う裏話みたいなものがありますか・・・

裏話、う〜ん、これを裏話と言えるかどうか。ロナルディーニョや彼の代理人、そしてクラブ側の人たちが集まって最後の詰めの交渉をしているときに、当時のカタルーニャ州知事のジョルディ・プジョーが携帯に電話してきた。とてつもなく古いバルサのソシオでもある彼がこういうんだ。
「いいか、サンドロ、どんなことをしてでもロナルディーニョをとらないといかんぞ。彼の獲得はバルサソシオだけではなくカタルーニャ人民に大きな希望を与えることになるのじゃ、わかるか?」

今さらながら、ロナルディーニョ獲得のキーポイントは・・・

きれい事を言うわけではないが、もし彼が年俸の額だけを最優先する選手だったらバルサには来ていなかっただろう。多くのフットボールファンは彼がどのようにボール処理をし、どのように走り、どのようなプレー傾向をもち、どのようなテクニックをもっているかは知っている。だが人間ロナルディーニョとなると、なかなか理解することは難しいと思う。もちろんあたりのいい人だとか、いつもニコニコしている明るい人だとかいうことはわかるだろうが、日常生活のことまでとなると外部からは理解できないのは当然だ。私がラッキーだったのは彼を個人的に知っていたから。決して金だけではなく、クラブの持つフィロソフィーにも関心があることを知っていた。だから彼には希望と将来を語ったんだ。現在のバルサというクラブがいかに希望と将来性にあふれているか、それを必死になって彼に説いたんだ。それがキーポイントと言えばそうなるかも知れない。彼がいま何をしているか知っているかい?バルセロナ近郊に家探しをしているんだ。ロナルディーニョはもうバルセロナに長いこと住むつもりでいるんだ。


■資料
LA VANGUARDIA紙