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第1節 期待を抱かせる引き分け バルサBーオスピタレ 開幕戦となるとさすがにミニエスタディもけっこう賑やかになる、と言っても1000人程度の入りと見たが、それでも普段の倍は観客席が埋まっている。第二次ラポルタ政権のアイデアとしてはミニエスタディの命もあと2、3年で消滅し、マンションかオフィスビルか商店ビルか何だか知らないが、いずれにしても土地そのものを売り払いビルが建つことになるらしい。まあ、確かにバルサBの試合に500人程度、バルサCの試合に300人程度しかファンが訪れない状況がここ何年も続いているから、ムダと言えばムダなスタディアムだ。だが、それでも10年以上通い続けている我が身としては、ミニエスタディの消滅は寂しい感じがする。 さて、昨シーズンと比べると半分ぐらいスタメン選手が変わっているバルサBの初試合観戦。それでも、まったくの新顔はディマスという名のセントロカンピスタだけで、あとの選手はバルサCやフベニルAからやって来た選手だから見慣れた選手だ。オルモは昨シーズンから続いているカード制裁のため試合そのものに招集されていない。 セントラルにはバリエンテとフラゴッソが配置されているが、この試合に関して言えばまったく問題なし。だがシーズンを通じて問題となりそうなのは左右ラテラル、特に左ラテラルという感じがする。オルモが戻ってくれば右ラテラルとして起用されてもそれなりに期待に応えそうだが、左ラテラルの出戻りフラン選手はどうもいけません。フベニルカテゴリーから上がってきたハイメは現在負傷中というこもあるし、リハビリ終了してバルサBデビューしても、リズムに慣れるのに時間がかかることが予想される。やはりペーニャは偉大な選手であったことを再確認。4番ピボッテにはマーク・クロッサスがバルサBデビュー戦とは思えない落ち着きで活躍。右インテリオールの位置には移籍したベルドゥの代わりにスタメン出場した新顔ディマス。これからじっくりと見てみないとよくわからないが,大したミスもなく90分間プレーしている。 このチームで最も豪華な選手が揃っているポジションは相手ポルテロに襲いかかるデランテロたち。ジョバニ、ジェフレン、オルランディ、トニー、シト、ビクトル、そして新顔のナノとルチアーノ。この初戦ではジョバニ、オルランディがエストレーモ、そして9番にシト。後半途中からジェフレンが左エストレーモに入り、オルランディが左インテリオールの位置まで下がり、プンタにはシトがベンチに下がりビクトルが入っている。フベニルAから上がってきた天才ビクトル・バスケスが彼らしいテクニックを見せてミニエスタディデビューを飾っていたのが嬉しいニュース。試合そのものはバルサB必死に攻撃するも、幸運の女神がとりついていた相手ポルテロによって、すべてのシュートがゴールに至らず残念な引き分けという結果。それでも第一印象はなかなか良い。 ■FC BARCELONA *順位表は「試合日程・順位」から |
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2006−07バルサB 前シーズンのスタメン選手がこれだけ大量にクラブをでていくことになったのは、バルサBとしては珍しいことだ。もっとも、ほとんどの放出選手がバルサBでは3年以上プレーしている選手だから、出て行くのが遅かったことはあっても早すぎたという感じはしない。しかもスペイン一部リーグに所属するクラブや、あるいは外国のクラブへと移籍していった選手がほとんどだから、彼らにとってはとてつもなく大事なチャンスをつかんだことを意味する。 上の図が昨シーズンの典型的なスタメン構成と言えるが、このメンバーからペーニャ、ロドリ、ダニ・フェルナンデス、アルナウ、ベルドゥ、クリスティアンという6人の選手が抜けることになった。だが、もちろん抜けた穴を埋める準備はされている。これまで控えだった選手や、バルサC,あるいはフベニルAから、そしてそれでも足りないポジションには、他のクラブからの補強が例年より多い感じでなされている。 2006−07バルサB選手の公式メンバー発表はまだおこなわれていない。ただ例年のことながら、シーズン開始と共にバルサC登録選手などがバルサBで恒常的にプレーするケースが多いし、しかも公式発表自体があてにならないというケースも多い。いずれにしてもここではこれまでのプレステージにおける練習風景や練習試合や、そして噂をもとにバルサBメンバーを作成することにした。時間の経過と共に誤解と誤りが見つかり次第、訂正していこうと思う。 ■ポルテロ ■デフェンサ ■セントロカンピスタ ■デランテロ |
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3シーズンで19選手がデビュー フラン・ライカーがバルサの監督に就任してから3年、この期間にどれくらいのカンテラ選手をAチームにデビューさせてきたのか、まず事実経過から見てみよう。(赤字はすでにいない選手) ●2003−04シーズンデビュー・・・・4選手 ●2004−05シーズンデビュー・・・・6選手 ●2005−06シーズンデビュー・・・・9選手 わずか3シーズンで19人のカンテラ選手がデビュー、数字だけを見ればとてつもなく多くの選手がデビューを飾ったことになる。まるで“黄金のバルサB”時代がやって来ているかのようだ。だが昨シーズンも二部昇格を逃したバルサBであるから、将来が期待される多くの選手がいるというような黄金の時代を迎えているわけでもない。事実、この19人の中でAチーム定着に成功したのは常時控えのジョルケラと、そして20年、あるいは30年に一度だけでも生まれてくればよい超クラック選手のメッシーだけだ。そして約半分の10人の選手はすでにバルサに在籍していないし、しかもレンタルというスタイルではなく完全移籍という形でクラブを去って行ってしまった。したがって、数字だけを上げて“ライカーはカンテラの強い味方”とメディアが持ち上げるのは少々無理があるというものだ。個人的には、カンテラ選手を起用しようという発想に関しては非常に保守的な監督だというイメージを持っている。 だが、そのことをもってフラン・ライカーを責める気にはならない。バルサAチーム監督としての彼の仕事は優勝を狙うことであり、決して新たなカンテラ選手をAチームに定着させることではないからだ。クラブ理事会もそのために高額な年俸を支払っているわけではない。問題となるのは“バルサ”というクラブだ。常にカンテラ選手を生み出すことを一つのクラブ理念としてきた“バルサ”としてはここのところカンテラ選手がAチーム定着を見せないことが問題となる。 この19人という驚くべき数のカンテラ選手がデビューを飾った理由としては、いくつかの偶然が上げられるだろう。スタメン選手カード制裁(クルービー)、もう1人のデランテロは代表合宿中(サビオラ)という状況からセルヒオ・ガルシアがデビューできることになったし、国王杯や消化試合となったチャンピオンズの試合でルーベンやリエラ、ベルドゥ、ダミア、ロドリ、ハビート、ジョルディ、クリスティアンなどが出場できた。すでにリーグ優勝が決まった後の最終戦でありワールドカップに出場する選手はすでに不在となっていたビルバオ戦では、オルモをはじめラモン、オルランディ(カード制裁中でバルサBの試合には出場不可能だった)、ピトゥ、マルトスなどという、バルサBでもCでも控えとなっている選手たちもデビューを飾ることができた。 昨シーズンは不運にも負傷してしまったが、これまで見てきた限りほとんど負傷欠場ということがなかったメッシーだから、普通にいけばAチーム定着、それもバッチリ定着となるだろう。ジョバニはみっちりとバルサBで鍛え上げるシーズンとなれば良い。そしてAチーム昇格に一番近くにいたオルモとバリエンテの二人には厳しいシーズンとなるかも知れない。プジョー、マルケス、オラゲール、トゥランと揃ったセントラルの位置に入り込むのは大変なことだ。いずれにしてもここ10年で3人のカンテラ選手(グティ、ラウル、カシージャス)しかAチームに定着していないメレンゲ軍団のようになることだけは避けて欲しい。 |
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第七回ビジャレアル杯 正式名称は“ビジャレアル・シウダー・デポルティーボ杯”といい、今年で7回目を迎えるジュニアクラスの大会だ。8月12日から15日までの4日間、ビジャレアルが誇るシウダー・デポルティーボで戦われた。参加クラブは毎年レベルが上がっているようで、今回はビジャレアルの他にセルティック、リバプール、ACミラン、ボカジュニオーズ、エスパニョール、レアル・マドリ、そしてバルサの8クラブが参加している。大会方式はこの8つのクラブを2つのグループに分け総当たり戦とし、それぞれのグループ首位クラブ同士で決勝戦をおこなうことになっている。 ■グループA そしてグループ戦の結果は次のようになった。 バルサーレアル・マドリ・・・・・・・1−0 レアル・マドリーリバプール・・・・・0−0 というわけで8月の15日にグループA首位ビジャレアル対グループB首位バルサというカードで決勝戦が戦われた。試合開始時間は何と22時45分、いかにスペインとはいえ、そして例え夏の真っ最中の時期とはいえ、フベニルカテゴリーとしての試合としては少々遅いんではないんかい?まあ、それはそれとして、今シーズンからこのカテゴリーに上がってくることが決まったヤゴとボージャンの二人が負傷中のため、試合出場が不可能となっているのが残念。そして前から噂としては聞いていた選手大移動が確認できない試合となった。つまりこの試合に出場したほとんどの選手が昨シーズンもフベニルAチームにいた選手であり、フベニルBから上がってきた選手は二人しかいなかった。そして他のクラブから来た何人かの補強選手も出場。試合はバルサに二人の退場選手がでたこともあり、ビジャレアルが2−0で勝利し優勝カップを手に入れている。 |
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ヤゴ、ジョバニ、そしてボージャン 選手が18歳にならないとプロ契約は結べないものの、クラブと選手間で“労働契約”というのは16歳を迎えた瞬間に結ぶことができる。だがこの“労働契約”だけでは、選手をクラブに引きとどめるための完璧な契約とはならないのはもちろんだ。これまで何人かのカンテラ選手がそうであったように、他のクラブから非常に魅力的で美味しい条件のオファーがだされ、そして両親がそのクラブのある町への住居変更という手続きが完了すれば、実にわずかな移籍料でクラブを離れることが可能となる。そのことはわかっていても、将来を期待される選手と“労働契約”を結ぶのは、責任あるカンテラ関係者として当然のことだ。他のクラブから来るであろうオファーに負けないような少しでも魅力的なものを提供すること・・・だが、これが難しいことでもある。 この手の話になるとナノという、かつてバルサカンテラ組織にいた選手を例に出すのが手っ取り早い。まだフベニルカテゴリーでプレーしていたナノに、アーセナルからとてつもなく美味しいオファーがやって来たのは、彼が16歳になった頃だ。将来が期待されていたこの大型エストレーモ選手に対し、バルサはアーセナルに負けない“労働契約”を提供する。年俸60万ユーロというものだった。もちろんニコニコとバルサ残留を決めた彼は、翌年からバルサBでプレーすることになる。これも“労働契約”に含まれていたことのようだ。バルサBでは当初それなりの活躍をすることになるが、ほとんどが年俸1万ユーロ前後という選手の中に混じってプレーする17歳のナノは、シーズンが進んでいくに従い“赤いメルセデスに乗って練習場にやって来るバルサB選手”として知られることになる。仲間内から浮き上がり、そして鼻が必要以上に高くなってしまった彼は、その後も期待されたほどの活躍を見せず、若くしてクラブを去っていくことになる。年俸的にはナノ以下でありながらも同じようなスタイルの“労働契約”を結んでいたサンタマリア、ババンジーダ、トラショーラス、ジョフレ、そして最近ではオリオル・リエラ、それぞれ事情は異なるものの良いところなくクラブを去っていったことだけは共通している。 だがクラブが“労働契約”を提供しようとしまいとクラブを去ることを選んだ選手たちもいる。例の“住居変更”という伝家の宝刀を抜き去りクラブを去っていった選手、最近ではセスク・ファブレガスがそうであり、ジェラール・ピケがそうであり、そしてフラン・メリダがそうだ。一人一人クラブを去っていった事情も違うし状況も異なるが、ここではそれに関しては触れない。ただ彼らのような例もあることだし、将来を期待されるカンテラ選手に対しては、できる限り引き留め工作を図ろうとするのはクラブとして当然のことだろう。16歳という若い選手が相手だし、リスクがないとはもちろん言えない。それを承知のうえで、バルサはこの16歳労働契約作戦を実行しつつある。バルサカンテラ組織に在籍し将来を期待されている何人かの選手の中で、ヤゴ、ボージャン、ジョバニは特別な存在と言えるかも知れないが、その彼らに対してバルサは“労働契約”を結んだ。そしてそれは大正解だと思う。 クラブ側から最初にこのオファーが出された選手は3人の中で一番年上のジョバニだ。去年の5月11日、16歳となった日に“労働契約”が結ばれた。そして今年の2月に新たな条件のもとに再びクラブと契約を交わし、年末に取得可能と見られているスペイン国籍手続きが済み次第、3回目の契約交渉がおこなわれる予定となっている。そして今年の1月4日、16歳の誕生日を迎えたその日に、ヤゴはバルサと“労働契約”を結んでいる。契約期間は5年間、彼が21歳となるまでだが、もちろんバルサAチームデビューを果たした瞬間に新たな契約が結ばれることになる。そして今月の28日に16歳となるボージャンにももちろん“労働契約”がすでに用意されている。 |
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