2008年
7月
2009年

地元での最初のテスト
(07/07/31
)

バルセロニスタの中でもごく一部の存在と言っていい“ミニエスタディ観戦中毒患者”は別として、ほとんどのバルセロニスタにとって、最もワクワクする試合観戦はやはりカンプノウとなる。それは、まあ、当然のことだろう。出場する“俳優”の質が違いすぎるし、内容も比べものにはならない。言ってみれば、ミニでの試合観戦は、無名俳優が出演する低予算映画を見るようなものであり、一方カンプノウでは、超高額予算によるハリウッド映画が上映されているようなものだ。だが、そのハリウッド映画がグータラ監督指揮の下に、グータラ選手によって繰り広げられる三流映画と成り下がるとなると、話は少し変わってくる。それなら、モチベーション豊かな監督の下に、モチベーション豊かな若者によって構成される低予算映画の方が面白いんではないかい、という状況を生み出してしまう。それが昨シーズン終了間際のバルサファミリーに生まれた風景だ。

今年の5月中旬から6月末にかけてのミニエスタディは、個人的には昨シーズンのバルサ的ハイライト期間となった。サンアンドレウ相手の首位攻防戦、フベニル国王杯ダービー戦、バルサBのプレーオフ第一戦、フベニル国王杯マドリ戦、そしてバルサBプレーオフ第二戦。これらの試合が5月から6月にかけておこなわれ、ミニエスタディとしては異常な数と言って良い人々が観戦に駆けつけてきていた。

プレーオフ第一戦となったカスティージャ相手の試合では、8000人もの観衆が集まり、6−0というスコアーでバルサBが勝利。フベニル国王杯マドリ戦にもほぼ同じぐらいの観衆が、ミニエスタディを埋め尽くしていた。そしてプレーオフ最終戦のバルバストロ戦では、何と1万2000人が観戦に来ている。ミニエスタディに最も人が集まってきていたイバンやセラーデスなどが在籍していた“キンタ・デ・ミニ”時代にも、これだけの観衆が集まったことはないと記憶している。昨シーズンのバルサBチームが、地元ミニエスタディでは圧倒的な強さをみせていたことも関係があるかも知れない。リーグ戦19試合、プレーオフ2試合を含め、21戦19勝2分けという地元での圧倒的な数字を見せてくれる成績。果たして今シーズンのルーチョバルサは、いかなる数字を残してくれるだろうか。

新しいシーズンの入り口に入った7月28日月曜日、ルーチョバルサにとっては、初のミニエスタディ練習試合がおこなわれている。相手チームはウエールズの二部チームであるスワンシー・シティー。昨シーズンは三部リーグでプレーし、今シーズンは二部カテゴリーに昇進してきたチームだが、かつてバルサBでプレーしていた色男アンドレア・オルランディがいる。そしてやはりかつてバルサカンテラチームでプレーし、昨シーズンにエスパニョールに移籍したジョルディ・ゴメス(キラキラ星にも登場!)が、今シーズンからレンタルでプレーすることになっている。

19時試合開始が予告もなしに、いきなり20時となるラテン的プログラムとなったこの試合。何でも、ペップバルサが急きょミニエスタディで練習することになり、試合開始時間が1時間ずれたそうな。入り口にはスワンシーと書かれた白いユニを着た大勢のウエールズ人が、今か今かと開門を待っている。バルサフィリアルチームの試合に、しかもプレステージの試合にこんなに人が来ているとは、と、久しぶりに会った知り合いのカメラマン女性と無駄話。このクソ暑い中、しかも多くの人々はバケーションを楽しんでいて街にはいないから、バルサファンは当然ながら少ない。800人ぐらいの観衆の内、半分以上はウエールズ人と見た。

ガイ、ゲーラ(翌日知ったことながら、ゲーラはすでにクビになっていた)、ボティア、ムニエッサなどが観客席にいたところを見ると、彼らはまだ体調がイマイチなのだろう。練習を終えたばかりのメッシーも観戦。ちなみに観戦位置的には次のようになる。自分の右上5mのところにガイ、左5mのところにメッシー、前方10mにルーチョ監督、左斜め15mのところにペップ監督。カンプノウでは絶対あり得ない構図だ。

さて、試合結果の方は3−3というスコアーで引き分け。Aチームにしてもそうだが、プレステージでの練習試合の結果などはどうでもよく、新たなシーズンが始まるという、その雰囲気だけを楽しめれば良い。ティアゴとロチーナの活躍が目立った試合となったが、どうやらロチーナはルーチョバルサでプレーするような気がしてきた。そして、ベンチ前で檄を飛ばすルーチョ監督は、まさしく元ガッツ・エンリケ選手その人でありました。


ムンタニャでの合宿
(07/07/29)

7月17日木曜日から練習を開始したルーチョバルサ。ペップバルサと同じように午前と午後の1日2回のスケジュールが組まれ、21日からはムンタニャへ練習場を移し、最終日に当たる26日には地元のトナというチーム相手に練習試合をおこない、試合終了後バルセロナへ戻ってきている。この約1週間のムンタニャ合宿に招集された選手は次のとおり(カッコ内は昨シーズン在籍したカテゴリー、あるいはチーム)

●ポルテロ
オイエル・オラサバル(バルサB)
ルベン・ミーニョ(フベニルA)
ジョルディ・マシップ(フベニルA)
出戻り中ルーベン・マルティネス(ラシング・フェロールにレンタル)

長い間バルサBのポルテロを務め、昨シーズンはレンタルされていたルーベンが戻ってきている。彼とバルサとの契約はまだ残っているものの、ルーチョバルサに加わる可能性はゼロと言って良い。移籍先が早く見つかると良い。昨シーズンはフベニルAでプレーしていたミーニョとマシップが招集されている。個人的にはオイエルをどこかにレンタルさせて、この2人が残れば良いと思っているが、そうはならないだろう。昨シーズンの後半には大活躍を見せていたミーニョは間違いなく残るとして、マシップはどこかにレンタルされる可能性が大と見た。

●デフェンサ
アルベルト・ボティア(バルサB)
ビクトル・エスパサンディン(バルサB)
マーク・ブラスコ(フベニルA)
マルティン・モントヤ(フベニルB)
マーク・ムニエッサ(カデッテA)
新加入ホセ・アントニオ・ソラーノ(エシハ)
新加入エクトル・ベルデス(ヘレス)

1年以上入院していたブラスコの父親が、ルーチョバルサ練習開始の前日に亡くなった。それにもかかわらず、初日から練習に(当然ながら下を向きながら元気なさそうに)顔を出している。フベニルBチームで昨シーズン活躍したモントヤが招集されているが、いきなりルーチョバルサでプレーするかどうかはわからない。しかしシーズン途中からは間違いなく加わってくるだろう。それはカデッテAでプレーしていたムニエッサにも同じことが言える。彼の場合は、昨シーズン三分の二が過ぎたあたりで大怪我をしてしまい、残りのシーズンはリハビリにあてられている。フベニルAあたりでスタートし、リズムが戻ってきたところでルーチョバルサに参加してきそうな気がする。何と言っても期待のデフェンサなのだ。そして、エシハというチームでプレーしていたソラーノと、ヘレスでプレーしていたベルデスいう選手を獲得。またテスト生としてビティという選手も参加してきている。

バリエンテは負傷という理由で参加していないが、それはあくまでも“公式”発表に過ぎない。7月21日から練習が始まったセビージャ・アトレティコの招集メンバーに入っていたが、クラブ同士の話し合いがゴチャゴチャしてしまい、最終的に参加できないことになった。契約書内ではなく“口約束”で自由契約の身となったバリエンテだが、セビージャ側の発表によれば、ここにきてバルサ側が態度を変え、今後2年間の買い戻し条件を突きつけているという。7月29日現在、セビージャとバルサの交渉はストップ状態となっている。

●セントロカンピスタ
チャビ・トーレス(バルサB)
ホセ・マヌエル・ルエダ(バルサB)
ダニエル・トリビオ(バルサB)
アンドレウ・フォンタス(フベニルA)
ポラコ(フベニルA)
ティアゴ・アルカンタラ(フベニルA)
オリオル・ロメウ(フベニルB)

個人的にお気に入りのルエダが、ルーチョバルサに残るかどうかは微妙なところ。下からファンタス、ポラコ、ティアゴ、ロメウという将来を期待される優秀な選手が徐々に上がってくるからだ。しかもペップバルサに招集されているV.サンチェスやブスケ、あるいはアブランという選手が戻ってきたら、かなりのオーバーブッキングとなってしまう。ただ。V.サンチェスはペップバルサチームの一員となる可能性もあるだろう。いずれにしてもルエダはギリギリのところにいる感じ。このポジションにもイブラヒムというテスト生が参加してきている。

●デランテロ
エミリオ・ゲーラ(バルサB)
セルヒオ・ウルバーノ(バルサB)
ガイ・アスリン(フベニルA)
ヤゴ・ファルケ(フベニルA)
ルベン・ロチーナ(フベニルB)
新加入ルベン・ラジョス(ビラホヨッサ)
新加入マヌエル・アグード“ノリート”(エシハ)

ガイとゲーラはムンタニャ合宿から参加してきている。ガイの場合はイスラエルでの懲役義務(2年間)を避けるための手続きが長引いてしまい、イスラエルを離れられなかったらしい。またゲーラの方は新婚旅行が長引いてしまったというノーテンキな結果。このポジションにはルベンという選手とノリートという選手が新加入してきている。昨シーズンそれなりに活躍したゲーラもいるし、フベニルBから上がってきたロチーナにはいきなりの招集は期待できない。とりあえずフベニルAでプレーし、シーズン途中から上がってくるのだろう。ジェフレン、V.バスケス、ペドロが今シーズンどこでプレーするかはっきりしていないが、果たしてガイとヤゴの左右エストレーモが見られるかどうか・・・。


ルーチョバルサの誕生
(07/07/28)

「8年間プレーすることができた上に、現役生活そのものを閉じることができたクラブで、新たに監督としてスタートすることができるようになった。こんな幸せなことはない。何と言っていいか、まあ、我が家に戻ってきた感じだ。」
2008年6月18日水曜日、バルサフィリアル(二部)チームの監督就任記者会見で、ルイス・エンリケはこう語っている。

奇しくもバルサフィリアルチームの名称が、彼の監督スタートシーズンから変更になっている。バルサアトレティクという名称で1970年にバルサ二部チームが誕生しているが、1991年からバルサBと名称が変更された。そして2008−09の今シーズンから、再びかつての名称であるバルサアトレティクに戻ることになった。だが、このラ・マシアのHP上では“ルーチョバルサ”と呼ぶことにしようと思う。バルサアトレティクという名称は長すぎるし馴染みも少ない。せっかくルイス・エンリケが監督として戻ってきたことでもあるし、現役時代の彼の愛称だったルーチョという名を頂いてルーチョバルサ、戦闘的なバルサがシーズンを通して見られることを期待しよう。

昨シーズンからバルサBの監督としてスタートしたペップの契約期間は2年だった。だが、ラポルタ理事会の政治的な判断により、ペップは2008−09シーズンからAチームの監督に就任した。すでにスペインU19代表の監督に決まりかけていたルイス・エンリケだが、アレサンコからの監督要請に、迷うことなくOKの返事を出すことになる。彼の言葉を借りれば、バルサは“我が家”であり、文字通りバルセロナにある“我が家”から仕事場に通うことも可能となる。スペイン代表ディレクターの肘鉄イエロも何の問題もなく彼を解放し、バルサアトレティクの監督に就任することが可能となった。もちろん昨シーズンのペップ監督と同じように、新米監督である彼にも、未経験さについての質問がジャーナリストから飛ぶ。
「そう、監督としての経験はゼロ。だが、いつかはスタート地点にたたなければ走り始めることはできない。しかも監督としての経験は確かにゼロだが、ロッカールーム内のことは誰よりも知っているつもりだ。心配することなど何もない。目標は二部Aカテゴリーに昇格すること。そしてできる限りペップチームに選手を送り込むこと。自信はある。」

スポルティング・ヒホン(ちなみにかつて彼の同僚であった元バルサ選手アベラルドは、今シーズンからヒホンBの監督に就任している。)で、デランテロ選手としてデビューし、移籍したレアル・マドリでもデランテロとしてプレーした彼が、ロブソン監督の下では一時的にラテラルというポジションにまで下げられたことがある。あくまでもデランテロというのが自然なポジションでありながら、不満をこぼすどころか“生涯ラテラル選手”かのようにプレーしていたのを思い出す。ゴレアドールであると共に、マルチプレーヤーとしても魅力的だったルーチョは、果たして監督としてどのようなフットボールを目指すのか。
「クラブのフィロソフィーであり、そして自分の好みでもある攻撃的なフットボールが展開できればいい。ただ、飛び抜けた個人プレーによるフットボールの魅力よりは、チームが一つとなってのトータル的なフットボールを魅力としたい。デランテロ選手たちは守りの手助けを心がけ、デフェンサ選手たちは攻撃の起点となるような、11人の選手が一つに固まり機能するフットボール、つまりトータルフットボールを目指したい。」

自ら認めるように、リーグ戦での相手となるチームに関しての知識はほとんどない。ペップもバルサB新監督に就任した時も同じだった。したがって監督の目となり耳となり頭脳となり手助けする知識豊かなコーチが必要となる。ペップ監督にはティトという経験と知識豊かなコーチがいた。そしてルーチョにはジョアン・バルベラというベテランコーチが付く。2003−04、2004−05シーズンにはバルサCのコーチを務め、その後はバルサBのキケ・コスタス監督の下でコーチをした経験を持つ。

7月17日木曜日、シウダー・デポルティーバ練習場でルーチョバルサ号が出航している。多くの選手がペップバルサのプレステージに参加しているため、ルーチョバルサには多くのフベニル選手が加わってきている。最終的なルーチョバルサの選手構成はまだまだ先の話となるが、今シーズンも昨シーズンと同じように、若手選手とベテラン選手を混ぜ合わせたチーム構成となりそうだ。

スエルテ!ルーチョバルサ!