Victor Valdes Arribas
バルデス


バルサポルテロ
(06/12/11)

「バルサに入団してきてから意外に感じだ選手はいますか?」
グジョンセンにおこなわれた最近のインタビューの中にこのような質問があった。
「イングランドにいるときに、すでに何人かの選手がメディアを騒がせていたし、自分が直接対決した試合などでその素晴らしさを実感していた選手も何人かいた。例えば、ロナルディーニョとか、デコ、メッシー、エトー、チャビなどという選手。だが、ここに来てメディアにそれほど注目されない二人の選手の素晴らしさにビックリした。一人はバルデス、そしてもう一人はイニエスタ。バルデスはポルテロとしての必要な要素をすべて備えている選手。フィジカル的にも強いし、スピード、反射神経、インテリジェンス、そして何よりも強いキャラクターを兼ね備えている。そして信じられないテクニックを持つイニエスタ。リズムの変化のつけようといい、視野の広さといい、セントロカンピスタとしては五本指に入る選手だと思う。」

だがこの2人ともUEFAが選ぶ2006年各ポジション最優秀選手のリストに入っていない。前回のチャンピオンズでの一連の戦いを通して、最優秀ポルテロに選出されて当然のバルデスの名がない。そう、なぜかポルテロ部門にビクトル・バルデスは選ばれていない。そして、残念なことに、バルセロニスタの間で絶大の人気があるかというと、それも怪しい選手となる。これほど活躍しているポルテロでありながら、残念ながらバルサのポルテロはそれほどアイドル選手とはならない。攻撃的なスタイルをモットーとするチームの中で、ポルテロの存在は過小評価される、そう、バルサは歴史的にそういうチーム。

ウルッティはバルサのポルテロとして、唯一と言っていいぐらいファンから絶大な人気のあったポルテロだ。何と言っても、11年ぶりのリーグ優勝をとげた瞬間のヒーローとなったポルテロでもある(バルサ百年史 参照)。だが、彼のあとにやってきたスビサレッタに人気があったかというと答えはノーだ。我らがアイドル・ウルッティを控えに回したポルテロとして、最初のシーズンは何試合かブーイングを受けていたのをカンプノウで目撃している。そして300試合以上の出場回数を誇る歴史に残るポルテロであったにもかかわらず、彼がバルサに在籍した期間に大いなる人気があったわけでもない。

1992年5月。ウエンブリーでのコパ・デ・エウロッパ決勝戦。スビサレッタは相手チームの決定的なゴールチャンスを、まさに“神の手によって”と呼んでもおかしくないぐらいに奇跡的に防いだ。それでもヒーローはゴールを決めたクーマンとなるのは仕方がない。スビサレッタが語る。
「審判の笛が吹かれ試合が終了した瞬間、クーマンが走って近づいてきた。唯一のゴールを決めて、ウエンブリーのヒーローとなったクーマンがこう言うんだ。『ありがとう、スビ!我々は失点をゼロとすることで優勝できたんだ。ありがとう!』自分にはこの言葉だけでじゅうぶんだった。」

2006年5月。負傷を隠して出場したチャンピオンズ決勝戦で、バルデスは試合開始早々2回のアンリのシュートを防いでいる。0−1というスコアとなっていた後半にもアンリとの一対一の勝負に勝利している。この試合の前にもチェルシー戦ではロベンの2回のゴールチャンスを防いでいるし、ドログバとの勝負に勝利している。だが、例え決定的なゴールチャンスを防いでも、それはポルテロとしての当然の仕事であり、数少ないミスによる失点だけがファンの脳裏に残ってしまう。ロナルディーニョやエトーなどのデランテロ選手が決定的なゴールチャンスを決められなくてもそれほど批判の対象とはならないのに比べ、ポルテロのはそういう恩恵は受けられない。それがポルテロというポジションの宿命であり、バルサのポルテロとなればなおさらだ。
バルデスが語る。
「あの試合後に特別な賞賛を受けた覚えはないけれど、ライカーがメチャクチャ褒めてくれた。それだけでじゅうぶんさ。」
昨日のレアル・ソシエダ戦で大活躍したバルデスに、ベレッティ、ロナルディーニョたちが試合後すぐに近づいていき抱擁していた。非常に珍しいシーンだった。

バルデスインチャがいないわけではない。南側、北側を問わず、ゴール裏に陣取るファンからは試合開始前と後半開始直後にバルデスコールが起こる。ポルテロに最も近い場所にいる彼らたちはバルデスの活躍を高く評価している数少ないファンたちだ。

「こちらカピタン」より