Victor Valdes Arribas
バルデス


今シーズン選手評価(上)
(09/05/23)

ビクトル・バルデス イエェー!

リーグ戦最少失点ポルテロ賞、俗に言うサモラ賞をほぼ手中に収めていることは別として、多くのプレッシャーに負けないそのド根性を、二度三度、そして何度も見せてくれたことを評価したい。世界中どこを探しても彼以外バルサに相応しいポルテロはいない、などというお茶目なことは言わないまでも、少なくともバルサに相応しいポルテロであることは疑いのないところだ。バルセロニスタやメディアからのプレッシャーを受けながらも、それを友として成長していくことを運命づけられたビクトル・バルデス。彼にとって相応しい年俸額を伴う契約延長を、クラブは正しくおこなうべし。ところで、カンプノウに訪れる機会があったなら、是非ともこの選手の動きに注目してみてほしい。1人孤独に動き回っている彼はまさにスペクタクルだ。

「こちらカピタン」より


中央からやって来た代理人
(09/04/02)

フットボールの試合を観戦した人なら誰もが経験するように、試合観戦者の目はおのずとボールのあるところに行ってしまう。パスする選手やそれを受け取る選手、そしてドリブルで走り抜けようとする選手、あるいはそのボールを奪おうとする選手へと、観戦者の目はボールを追っかけてアッチコッチへと飛び回る。したがって、いかにポルテロへのバックパスが多いバルサの試合とは言え、バルデスにその目が行くことは非常に少ない。もちろん、テレビカメラもボールから遠く離れているバルデスの姿を撮すことは少ない。
新しく入ってきた選手がどういう動きをするのか、ボールを持っていないロナルディーニョやメッシーはいったいどこで何をしているのか、大量点で勝っていたり試合内容が退屈な試合に限って、1人の選手を追っかけて観戦することがある。そして時たま、目の前にいるバルデスは何をしているのか見てみたりする。ドリブルで相手デランテロを抜いていったり、攻撃参加することが許されない彼だから、攻撃時間が多いバルサというチームにあって、彼はいつも暇そうにしている・・・かと言うとそうではない。ペナルティエリア内で体をいろいろ動かして、いつか訪れるであろう相手のシュートに備えて準備運動している彼の姿が見られる。どこのチームのポルテロにしても同じようなことをしているのだろう。だが、彼の場合、その時間はどこのポルテロよりも長い。集中力がとぎれないようにするために、体が冷えないようにするために、彼はボールがアッチの方に行っている間でも、動き回っている。
バルサのポルテロに求められることは特殊なことが多い。足のテクニックに優れていること、デフェンサセントラル選手とのスペースが広大にあるため、三番目のセントラル選手として求められることもある。したがって出だしの判断の良さと一対一の勝負に強いことも要求される。そして相手の少ないシュートを確実に防ぐこと。3回のスーパーセーブより1回のミスが人々の脳裏に残ってしまう最後の守護神。そして彼は、肝心な場面で見事にそのミスを見せてくれる天才でもある。だが、それでも、バルデスよりペップバルサに相応しいポルテロがいるだろうか?
彼がプレーするカンプノウ、ここにも特殊な人々が集まる。チャンピオンズの試合などで、ビジター用に外国語のアナウンスがされた瞬間にブーイングする人々。ロベルト・カルロスに対して猿の鳴き声を真似してブーイングする人々。レイナだとかジョバニだとかのまだ18歳前後の若きカンテラ出身選手のミスにブーイングする人々。それにもかかわらず、クラシコへの出場を自ら放棄し、まったくもってバルセロニスタをおちょくってくれた、かつてのデコやロナルディーニョに拍手をする人々。あるいは、痛み止めを打ちながら出場し続けたリバルドのシュートミスにブーイングする人々。そして多くのスーパーセーブを忘れ、ちょっとしたミスを犯したバルデスにブーイングする人々。こういう、必要なきプレッシャーに負けていった選手は数え上げたらきりがない。バルサのポルテロはこういうつまらないことにまで戦わなければならない。だが、彼の素晴らしさの一つは、そういうプレッシャーに負けないことだ。ミスしたあとの集中力維持も半端じゃない。
そんな環境のもとでプレーしているバルデスも特殊な人物だ。この7年間で6人もの選手代理人を取っ替え引っ替えしているというマニアックな人物だ。そして、各国代表戦ばかりでバルサの試合が何にもないこの時期に、バルデスは再びミスを犯してしまった・・・と思う。最新の代理人がヒネス・カルバハルというじゃないか、それはまずいんではないかい?
多くのバルセロニスタには無関係ながら、馴染みの人物でもある。あのラウルやサルガドの代理人であり、そしてフアンデ・ラモスのそれでもある人物だ。レアル・マドリTV局の対談番組だけではなく、中央メディアがよく放映する“マドリ万歳”系の番組には必ず姿をあらわしている。フロレンティーノが去ったあとに、クラブの影の実力者として話題となった人物でもある。この代理人取っ替え引っ替えマニアック坊やは、何をトチ狂ってこんな人物を選んでしまったのだろう。
やれ、カシージャスと同じ程度の年俸を要求するだとか、4つ、5つのビッグクラブからオファーが来ているとか、クラブ側からは何の連絡もないとか、このメディア出たがり大好き代理人は、話題の少ないこの時期を狙ってすでに戦いを開始している。もっともクラブ側にまったく落ち度がなかったわけではない。安い年俸のまま、無責任にも今日まで放っておいた責任は重大だ。ここはひとつ、大岡越前様に登場してもらい、喧嘩両成敗ということでお互いに過ちを認めさせ、クラブ側はその財政が許す限りの年俸をバルデスに与え、バルデス側も無理なことを言わずそれをありがたく頂戴して一件落着・・・というわけにはいかないのだろうか。

「こちらカピタン」より


ビクトル・バルデス
(08/11/11)

ビクトル・バルデス、10歳の誕生日を迎えた1992年にバルサインフェリオール組織入団。すくすくと順調に成長していった彼は、バルサ入団10年後となる2002−03シーズン、当時の監督バンガールの手によってバルサAチームデビューを飾っている。このデビューシーズンに14試合に出場した彼が、本格的にバルサの守護神となってスタメン定番選手となるのは翌シーズンからだった。新たに監督に就任してきたフラン・ライカーによって、彼はバルサの正ポルテロとして起用され続けることになる。そして2008年11月8日、デビューしてから7シーズン目、カンプノウでのバジャドリ戦に出場したことで、わずか26歳292日という若さでリーグ戦出場200試合を達成。一シーズンの試合数が異なることから過去の選手と比較するのはあまり意味のないこととはいえ、歴代バルサのポルテロとしては最年少で200試合出場を記録したという。
あくまでもオーソドックスなプレースタイルで確固たる地位を築いたスビサレッタ。だが、近代フットボールに要求される足でのボール処理がイマイチのポルテロだった。バルサの守護神として長い間活躍してきた彼が去ったあと、その穴を埋めたのはカルロス・ブスケという風変わりなプレースタイルを持ったポルテロだ。一流のセントロカンピスタの選手が驚くほどの足技を持ちながらも、肝心の守護神としての才能には欠けるポルテロだった。ビクトル・バルデスはその2人を足して2で割ったようなプレースタイルを持っている。これまで7年間にわたりエリートチームでプレーしてきて、ひと試合における失点が0.88ゴール、ブスケはもちろんスビサレッタの0.91という記録に優っているポルテロだ。だが、それでも、なにゆえか、彼に対する評価は厳しいものを見受けることが多い。もちろん、メディアチックな選手とはお世辞にも言えない。メディアやバルセロニスタにとって愛すべき人物かというと、そういうこともなさそうだ。
彼の同僚であるチャビのように、メディア関係者に愛想が良い人物ではないからかも知れない。彼の親友であるイニエスタのように、マドリメディアにも受けの良い態度をとることがないからかも知れない。彼にとってカピタンであるプジョーのように、ファイトを外に表すタイプではないからかも知れない。あるいは、パンツを異常なほどに上げるのがみっともないからかも知れない。いずれにしてもバルデスは人気がない。いや、彼だけではなく、これまで見てきたバルサのポルテロで人気があったのは、ウルッティという例外の選手をのぞいて1人もいない。バルセロニスタはそういうファン気質を持つ。
バルサが獲得を狙っていると噂される、アセンホという若いポルテロがいるバジャドリ相手の試合。試合数日前からアセンホにかんするニュースがメディアを賑わしていた。
「それはいつものこと。これまでシーズン開始時だけではなく、シーズン中にも新しいポルテロ獲得の噂はいつもあった。それがバルサというクラブであり、別の言い方をすれば、そういう噂がでなければバルサらしくないということさ。個人的にはまったく気にしていない。」
バジャドリ戦後にそう語るビクトル・バルデス。
イニエスタを欠いた最初の試合ということ以上に、バルサBやバルサAでのデビュー戦を目撃したついでに200試合達成の目撃者となるのも悪くはない、ということで普段はいかないバジャドリ戦に直接観戦。試合開始まで時間があったので、久しぶりにバルサショップを散策。以前友人から聞いたことがあることながら、このバルサショップではポルテロのユニフォームは販売していない。と言うか、マネキンには飾ってあるものの、常に“在庫なし”状況が続いているそうな。そう言えば、背番号1番のユニを着て観戦に来るファンを見たことがないけれど、それは不思議でもなんでもないことになる。
4ゴールを決めたエトーもさることながら、メッシーの今シーズン最高の試合。だが、個人的にはバルデスお祝い試合。愛想なんぞなくてもいい、人気などなくてもいい、ユニなど売ってくれなくてもいい、パンツを異常に上げていてもいい、ゴールさえ防いでくれるポルテロであればいい。スビサレッタ以来の最優秀ポルテロバルデス、バモス!

「こちらカピタン」より