Xavier Hernandez Creus
チャビ

-
-
-
-
07-08

前半戦での各選手総括(下)
(08/02/09)

チャビ
先月このコーナーで、チャビに関して次のように書いている。
“中盤でのフィジカルな戦いが必要とされるフエラでの難しい試合や、チャンピオンズでの大事な一発勝負の試合には向いていない。すでに勝負が決まり試合そのものを“殺す”必要が生じた後半20分あたりからの出場が理想的な選手。”
その発想は、オサスナ戦で劇的なゴールを決めたあとでも変わっていない。例年のシーズン以上に“火花’が見られず、ボールに追いつくのにいつも1秒遅く、相変わらず足を突っ込まない悲惨なシーズンをおくっていると言って良い。10年間にわたる絶対スタメンというプレッシャーが重たく襲ってきたのか、あるいは“定番選手”としてリラックスしすぎてしまったのかも知れない。新たなサイクル作りに、間接的に協力していく貴重な存在。

「こちらカピタン」より


チャビ・エルナンデス、28歳
(08/01/27)

もしカンプノウで試合を見るチャンスが訪れたなら、一度でいいからチャビだけを追って試合観戦することをお奨めする。いかに運動量が多く、そして誰よりも常にボールのそばにいる選手であるかということが、一試合だけでわかるというものだ。まるで審判のように、常にボールがある位置から3メートルぐらいのところにいてボールを見つめているのはチャビだと思えばよい。1998−99シーズンからバルサAチームにデビューして以来、ほぼすべての監督から厚い信頼を受けてグラウンドを走り回ってきた選手であり、そしてこれまで決してメディアやファンからの批判が出現しなかった希少価値な選手でもある。

チャビへの批判はタブーだと言っていい。バルサカンテラ組織から順調にスクスクと育って現在に至っている選手であり、もちろんクラブ批判やチーム内部批判など一度もしたことはない。とてつもなく“まとも”な性格ゆえか、多くのスポーツジャーナリストと仲が良いときている。グディや神父さんなどが正しくも内部批判をしたあとには、必ずメディアの前に登場してきて、クラブ擁護、あるいはチーム擁護をしてくれる。クラブ内に一切の問題がないことを期待するファンに対し、安心の言葉を提供してくれるのはいつも彼だ。ファンが“聞きたい”ことをしゃべらせたいなら、チャビの右に出る者はいない。ひたすらバランスがとれていて、とても健康的。もし、フットボールが肉体的な衝突のないスポーツであり、ネットを境として戦われるテニスのようなものであったら、彼は今以上に高く評価される選手となると思う。

カンプノウにおける去年最後の試合。バティスタがゴールを決めたあと、ヤヤとデコがチャビに詰め寄り何か怒っているシーンを見た。何週間後かにゴールシーンをテレビで見るまで、なにゆえ彼らがチャビに怒っているのかわからなかった。途中までバティスタを追いかけていったチャビだが、マルケスがタックルする前後で止まってしまい、その後バティスタをフリーにしてしまっている。最後まで追いかけて、バティスタをしっかりとマークする役目はチャビにあったのだろう。もし、そうしていれば、シュートする前におこなわれた壁パスを防ぐことがじゅうぶん可能となっていた。それを知っていたからこそ、ヤヤとデコが怒ったのだ。それでもメディアからのチャビ批判は起こらい。そんなことがあっても、例え、ロナルディーニョやデコに対する批判はあっても、チャビにはない。これまで多くのこういうシーンがあったにもかかわらず、チャビには批判がなされない。それは、タブーということもあるし、あるいは得な性格ということなのかも知れない。

イニエスタはデコから多くのことを学んで現在に至っている。だが、チャビはデコに学ぶのではなく、彼の影で生き延びてきていると表現した方が合ってる。相手選手からボールを奪うということは、決して3メートル離れたところで審判のようにボールを見つめることではなく、相手選手にピッタリとくっつくことであり、そして同時に足を突っ込むことだとデコは示してくれる。だが、ユニフォームが汚れたり負傷の危険がある“タックル”という単語はチャビにはない。スポーツ精神に富んだ彼に“戦術的なファール”という単語もない。それでもデコがデコとしての仕事をしている間は、チャビにも輝きがみられた。何と言ってもボールを奪われない選手であり、平行パスが多いことが彼の特徴でもあるから、パスミスということも少ない。だが、昨シーズンから奪うボール数を遙かに超えて奪われるボール数が多くなっているデコが隣にいるとなると、話は別だ。他の選手が光らないと、自動的にチャビも光らない。彼はイニエスタと違い、発光性を持つ選手ではない。

中盤でのフィジカルな戦いが必要とされるフエラでの難しい試合や、チャンピオンズでの大事な一発勝負の試合には向いていない。すでに勝負が決まり試合そのものを“殺す”必要が生じた後半20分あたりからの出場が理想的な選手。その選手を初めて見てから15年、バルサAチーム入りしてから10年、そして彼はもう28歳となった。偉大な選手にして、時には貴重な控えとなる選手、チャビ・エルナンデス。

「こちらカピタン」より