ペップとメッシー
(08/10/09)
「彼とペップ・グアルディオラとの関係は非常にうまくいっている。ペップがしてくれたことをレオは決して忘れていないからさ。」
メッシーの父親ホルヘ・メッシー。
「彼は満足していると思う。非常に満足していると思う。不満など一切なく満足している状態だったら、どんなに良いプレーが見られても不思議じゃないさ。彼は世界最高のプレーヤーなんだから。」
バルサ監督ペップ・グアルディオラ。
「非常に満足しているさ。今の自分に、そしてなによりもチームの状況に満足している。」
ムンディアル2010の予選を戦うために、アルゼンチンに向かうレオ・メッシー。
独りよがりのプレーではなく、チームの一員として攻撃に走り、そして守備にも積極的に参加するメッシーのこれまで見られなかったプレースタイル。その変化の最大の原因はペップ監督にあると言われている。グラウンドの中だけではなく、ロッカールームの中でも、あるいは練習から解放された私生活の面でも、メッシーになにか大きな変化が生まれている。
「それもこれもペップのおかげさ。ペップとレオは非常に良い関係だ。」
再びそう語るホルヘ・メッシー。
だが、プレステージが始まる頃は、メッシーとクラブの関係は決して良好なものではなかったようだ。その理由はロナルディーニョの移籍が最大のものとなっていたと思われる。誰もが認めるように、ロナルディーニョがメッシーに与えた影響は限りないものだった。好影響、悪影響、どちらかと言えば悪影響が支配する関係だった。当時の副会長の1人であるマーク・イングラが、ホルヘ・メッシーと何回も会合をもち、その悪影響に関する対応を練っていたと言われている。彼の同僚たちも、プレステージに参加してきたメッシーの態度が、どこか普段と違っていたことを認めている。
スコットランド遠征に旅立ったペップバルサ。アルゼンチンのメディアからは“メッシーを開放し北京オリンピック準備中の代表に参加させろ!”というキャンペーンが連日のように伝わってきていた。そんな中、メッシーはある日、いつもの彼からは想像できないような怠慢な練習態度が見られたという。それを見たペップがレオに近寄っていく。
「どうしたんだレオ、やる気がないのか?自分のおかれている状況に満足していないのか?俺に言ってみろ、何が不満で何が必要なのか。俺の顔を見ながら正直に言ってみろ。もし、それができないようなら練習に出てくる必要はないし、今この場から去っていった方が良い。もし、自分に満足していないレオだったら、我々は君を必要としないのだよ。」
そして2人の話し合いは、この日の夜にも再びおこなわれた。
執拗なペップを前にして、メッシーはようやく心の中にあるものを正直にはき出した。
「北京に行きたい。」
「わかった、ラポルタ会長を説得してみよう。心配するな。」
アメリカ遠征に旅立つ前、ペップバルサはイタリアのフィオレンティーナと親善試合をおこなっている。結果的に、メッシーにとってこの試合がプレステージでの最後の試合となった。この試合が終了したあと、彼はアルゼンチン代表に合流するためにバルサを去っているからだ。もし、TASがバルサの主張を認め、メッシーをオリンピック代表に参加させる義務はないとした場合、彼はすぐに戻って来るというメッセージを残してクラブをあとにしている。
8月6日、そのTASがバルサ側の主張に合法性を認めると発表。ペップバルサがプレステージのキャンプを張っているニューヨークでは、朝の6時のことだった。メッシーのいる上海は午後となっており、ちょうどアルゼンチン代表の練習が終わったばかりの時間だった。
「我々の勝利だ。メッシーをすぐさま戻すことにしよう!」
その時、ペップはラポルタに、チキを含めた3人で話し合いをもつ場を要求している。そしてこの要求をラポルタにする前に、彼はすでに上海にいるメッシーと電話で話し合いを済ましていた。
「監督、どうにかならないだろうか?自分は上海に残りたいんだ。どうにかしれくれないだろうか。」
「心配するなレオ、俺がどうにか話をまとめてみるから。」
キンタ・アベニュー53にあるサント・レジス・ホテルのスイートルーム。ペップ、チキ、そしてラポルタによる会合が持たれた。ペップはラポルタだけではなく、チキをも納得させなければならなかった。メッシーの好きなようにさせてやって欲しい、それがバルサにとって将来役にたつことになるのだから。そうペップは説得し続ける。この会合が終わったときは、アメリカでの最後の練習試合が近づいているころであり、上海にいるメッシーはすでにベッドの中で深い眠りについている時間だった。試合が終了し、バルセロナに向かうために飛行場にいるペップはついにメッシーと話すことができた。
「お前はそこに残れ。そしてしっかりと楽しんでこい。」
「オリンピックに参加できたのはひとえにペップのおかげだということを、レオは決して忘れるような子じゃない。彼は心の底からペップに感謝しているのさ。それは、もちろん今でも同じだ。」
ホルヘ・メッシーがそう語り、そしてこの物語は終了している。
"Te quiero feliz"
LUIS MARTIN - Barcelona - 07/10/2008
El Pais
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