救世主ペドロ・ロドリゲス
(08/10/04)
7つの島から構成される、スペイン最南端に位置するカナリア諸島。その一つの島サンタ・クルス・テネリフェというのは、そのカナリア諸島の中でも最大の面積を有するだけではなく、観光拠点としても重要な島だ。と、今日のコーナーはスペイン観光局風にスタート。大瀧詠一だったかハッピーエンドだったか、彼の(あるいは彼らの)歌うそのカナリア諸島にはいまだに行ったことがない。なんせ遠いのだよ。バルセロナから2千キロ以上離れているというから、日本で言えば北海道の真北から九州の真南に行くようなものだ。とても自転車では行けない。
このサンタ・クルス・テネリフェという島の中にサン・イシドロという、人口約1万4千人程度の街があるという。ここにあるフットボールチームの名はフットボール・デポルティーボ・ラキ・サン・イシドロ、通称ラキと呼ばれるクラブだ。1970年創立というからかなり新しいクラブであり、これまでの最高カテゴリーが2005ー06シーズン在籍した二部Bカテゴリーだという。そして今シーズンは三部リーグはおろか、地方リーグにまでと落ち込んでしまっている。二部Bカテゴリーに昇格した際に、大金をはたいてカナリア諸島が生んだ“クラック”選手を何人か獲得してしまったため、現在は借金で苦しんでいるともいう。いや、それどころか、クラブの延命自体が難しい状況となっているらしい。彼らが抱えるその経済的問題を解決し、彼らが生き延びる方法、それは一つしかない。このクラブのカンテラ組織で育ったペドロ・ロドリゲス救世主に、果たして後光がさすかどうか、それのみにかかっている。
我らが27番ペドロ・ロドリゲスは、ラキから2004年夏に移籍してきている。フベニルカテゴリーでゴレアドールとなった彼に、バルサスパイ団の1人が目を付けての入団だった。バルサでもフベニルカテゴリーでスタートし、毎シーズン確実に成長し続けてきた彼は今シーズンからペップバルサでもプレーするようになった。
いかにラキのクラブ首脳陣が彼を救世主と拝めたてようが、ブスケやサンチェスと同じような3万ユーロの年俸しかとっていない彼だから、クラブ借金返済の手助けをしようと財布の中身を見ても助けにはならない。いかに頑張って貯金通帳を眺めて見ても、とてもとても40万ユーロというクラブ借金の数字を越えるものは見つからない(と、勝手に想像)。だが、彼が救世主となる由縁は、ラキとバルサが結んだ契約書の中にある。
6000ユーロというほぼタダ同然の形でバルサに移籍してきたペドロながら、契約書の中にはいくつかのオプション条項があるらしい。まず、フィリアルに上がって10試合以上プレーした場合、2万4000ユーロのオプション料がラキの懐に入る。だが、これは大した金額ではない。ラキの経済状態を救うのは次のオプションだ。もし彼が(奇跡的に)バルサAチームで10試合以上(1試合45分以上の出場が条件)の公式試合に出場した場合、バルサはラキに30万ユーロの支払いをしなければならないというもの。オラゲールに同じような条件を付けてバルサに移籍させたグラマネの例を見るまでもなく、奇跡がおきるのを信じて一応はオプションを付けてみるもんだ。
そのペドロ選手。昨シーズンはムルシア戦とバジャドリ戦に出場しているが、両試合とも公式試合とはいえ、数分間のプレー時間だったためこれらは計算外。今シーズンは第二節ラーシング戦に90分間出場し、チャンピオンズ予備選ビスワとの試合でも64分間プレーしているから、オプション条件としては2試合出場したことになる。そして3試合目となることが大いに期待されたシャクター戦。だが、大方の予想を裏切ってベンチにも入れてもらえず、観客席に90分間。う〜ん、10試合出場達成というのは、かなり高いハードルだ。それを越えることを可能にしてくれるのは、やはり国王杯次第となるのだろう。もし順調に準決勝まで進めるとすれば、この大会だけで6試合の出場が可能となる。
ラキというクラブの延命はペドロ・ロドリゲスの試合出場回数にかかっており、同時に監督のペップの選手起用法にも関連してくる。毎週末のバルサの試合を今日は出場するだろうかどうだろうか、とテレビの前に座って待ち続けるサン・イシドロの人々。彼らにとってはバルサが勝利すること以上に、救世主ペドロがプレーするかどうかの方が大事に違いない。それでも、メッシーの怪我を期待しちゃあいけないよ。それだけはダメ。
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