Thiago Motta
モッタ

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(07 - 08)
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モッタの裏切り
(07/08/08)

バルサB選手としてスタートした1999年、細身ながらもタッパがあり、テクニック的にはやはりブラジル人であり、インテリオール選手としてはやたらとゴールに絡む素質があり、そして何よりも左足から放たれる強烈なシュートが魅力的、それが初めて見たティアゴ・モッタという選手への印象だった。そして次のシーズンで見た彼は、フィジカル的にもかなり強くなり、相手選手の厳しいあたりにもじゅうぶん耐えられる選手として成長していた。

ラ・マシアから誕生した他の選手と比べると、明らかに異彩を放っていた。アルテッタ、チャビ、ババンジーダというようなテクニックはありながらも小柄で、しかもファイトが外にでることのない選手が多かったバルサBチームにあって、19歳という若さで、すでに本格的なセントロカンピスタとしての素質を誰よりも持っている選手だった。アルテッタに負けないワンタッチフットボールを展開するテクニックを持ち、チャビにも劣らない状況判断の早さを可能にするインテリジェンスを持ち、ガブリにも負けないゴールに絡むプレー能力を持ち、そしてバルサBにあっては誰も可能としなかった高いボールを処理する能力と、ピンチと感じた状況では、容赦ないファールを試み相手の攻撃を止めるずるがしこさを持っていた。そう、モッタはセントロカンピスタとして必要とされるすべてのものを持っていた選手と言っても大げさではなかった。

そしてミニエスタディを卒業。カンプノウではバンガール、セラフェレール、レシャック、アンティック、ライカーと、これらのすべての監督から厚い信頼を勝ち取っている。そしてこれらの監督の信頼に応えることなく、例外なくキッチリと裏切ってきた律儀な選手でもある。

ここ10年間でスペインが生んだ最高のデランテロは、ディエゴ・トリスタンだと思っている。モッタが完璧なセントロカンピスタとしての才能を持っていたように、トリスタンもまたバンバステンに近いデランテロとしての才能を持っていた選手だった。フィジカル的に強く、ヘディング能力にも優れ、相手のマークを外す天性の能力を持ち、両足どちらからも強烈なシュートを放つ才能を持ち、そして何よりもゴールと合い言葉の選手だった。セントロカンピスタとデランテロというポジションの違いがあっても、彼らには共通した一つのことがある。それは、プロ選手としての自覚が見られない乱れた日常生活からくる数々のスキャンダルな噂だ。エリート中のエリートフットボール選手として、絶対必要なプロ精神というものを持ち合わせていない人たちだった。フットボール選手として、24時間100%フットボールに打ち込む能力に欠けており、現実的に2人とも多くのスキャンダルな話題を提供している、が、ここではそれに触れない。

長いあいだ見てきたファンにとっとは、まったくもってフラストレーションがたまる選手と言える。これほど幸運に恵まれ、これほど甘やかされ、これほどチャンスを与えられ、これほどファンから期待されたカンテラ育ちの選手は少ない。モッタは誰よりもクラブ関係者に感謝し、彼を指揮してきたすべてのコーチングスタッフに感謝し、彼を甘やかし続けてきたメディアに感謝し、そして彼を支持してきた多くのバルセロニスタに感謝しなければならない立場にある。チキがマヌケな発言をしたからと言って、それを批判してはいけない唯一のバルサ選手でもある。それにもかかわらず平然と批判するところが彼の甘さであり、モッタがモッタである由縁だ。いくら感謝してもしきれないクラブに対し、自由契約にしろ!と要求する発想そのものが、この選手の甘ったれ精神を象徴している。

もしフットボール選手として、フットボールを最優先する生活を自己管理することができるようになれば、少なくとも7年間前後は第一線でやっていける選手。だが、その場所はバルサではない。クラブ関係者を裏切り、コーチングスタッフを裏切り、そしてもちろんバルセロニスタを見事に裏切り続けてくれた彼には、もうバルサに居場所はない。

と言うわけで、多くのバルセロニスタがまだ名も知らない頃から、“明日のキラキラ星”として個人的に期待していた選手でありながら、今となっては同情の余地もなく、お元気で、そしてアディオス、モッタ。

「こちらカピタン」より