ドクター・カペーロの巻

9月26日、ブレッシアはアウエーでウディネッセと対戦、そして後半32分、ブレッシアの若き選手ダニエレ・マニーニが決勝点となるゴールを決める。1−2というスコアーとなった貴重なゴール。だが、ウディネッセのポルテロが倒れている瞬間でのゴールだった。試合終了の笛が鳴った瞬間、ごうごうと響く罵声のなか、マニーニ選手は涙をためながらロッカールームに消えていったという。彼にとって初のゴールに大喜びしたからではもちろんなく、エチケットを破る形になってしまったことへの悔しさからだ。試合後、観客だけではなく多くのメディアが彼を批判した。

だが、このゴールシーンのスロービデオを見た人は批判したことを後悔することになる。ゴール前に高いボールが送られ、ポルテロは相手ディフェンスとぶつかりながらもボールを大きくはじき飛ばす。そのボールは味方の選手にいくものの、ブレッシアのマニーニに奪われる。ここまでポルテロは倒れていない。だが、この瞬間、いきなりバタッと倒れてしまう。マニー二がボールをとった瞬間はポルテロはゴールから離れたところでまだ立っていたのだ。だが、ゴール前に戻る時間がないと判断したのか、このポルテロは倒れることを選んだ。この“テクニック”をカルッチオでは“いきなりぶっ倒れ症候群”と呼び、たちの悪い伝染病の一つとしている。

スロービデオで症状を解明されてしまった“いきなりぶっ倒れ症候群”でありながら、例年通りこの症候群はカルッチオの各試合で伝染している。この伝染病誕生の責任者の一人であるカペーロであるにもかかわらず、その彼があまりにもひどい状況を見かねたのかドクター・カペーロと名を変えてこの伝染病対策に乗り出した。
「相手の選手が倒れていようと決してボールを外に出してはいけない、そういう要請をすべての選手に出している。唯一例外となるのは倒れた選手の負傷箇所が頭部の可能性があるときだけだ。それ以外、我々はもうボールを外に出さないことに決めた。試合をストップするのは審判に任せればいい。」
つまり、ユベントスは相手選手が倒れていてもボールは外に出さないことに決めたわけだ。そして彼の決意を他のクラブの監督に伝えたところ、ほとんどの監督が同意したという。ただ、二人だけドクター・カペーロに同意していない人物がいる。アンチェロッティとマンチーニだ。果たしてこの伝染病、絶滅することができるのかどうか。
(2004/12/10


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