2004年11月24日 カナルチキート・コメント

たぶん5回以上は読み返しているであろう“La Pasion de un Pueblo”というバルサの歴史に関して書かれている本の著者であるジミー・バーンズ氏がクラシコを生観戦し、あるメディアに短評を発表している。タイトルは“スペクタクルをありがとう!”というもの。ここでそれのほんの一部を。

“多くのことに感謝しなければならない。それは、とてつもなく多くのことだ。例えば、この偉大な試合をダイレクトに観戦することができた幸運に感謝したいと思う。自分がクレであったことにも感謝しなければならない。なぜならクレ中のクレであったからこそ、これほどの大きな喜びを感じることができたのだろうから。もちろん多くのバルセロニスタにも感謝したいと思う。人種差別意識からというよりは無教養さからくるのであろうロベルト・カルロスに送られた品のないブーイングに対し、すぐさま“バルサ!バルサ!バルサ!”という叫び声でそれを消し去ろうとした多くのバルセロニスタにだ。そして何よりも感謝しなければならないこと、それは歴史の証人の一人となれた幸運にだ。時代の変化を如実に示した90分間のスペクタクルな試合、そう、カンプノウというステージに幸運にも参加できた人々は、歴史の変化を自らの目で垣間見ることができた生き証人なのだ。”

すべては書ききれないものの、彼の主張は“時代の変化”だ。彼のこの短評では触れていないが、このクラシコが戦われたほぼ1年前の2003年11月24日、バルセロナ市民だけではなく多くの観光客に愛されたコピート(バルセロナ動物園に住んでいた世界唯一の白ゴリラ)が寿命を全うし他界した。大げさに言ってしまえばバルセロナ市のシンボルの一つでもあったコピート、彼はカタルーニャで愛された唯一の白いものだった。そして彼がいなくなってからちょうど1年後、メレンゲもこの世からいなくなった、って言い過ぎか?

そんな独りよがりの思いつきはどうでもいいとして、本当に時代の変化を示したのは両チームの選手交代の風景かも知れない。それもマドリにとっては実に屈辱的な風景だろう。彼らにとってシンボルと言っても良いであろう選手たちの交代風景、つまりベッカム、ジダーン、そしてラウル。交代して姿を表してきた両チームの選手たちも印象的だ。今後10年間はチームの重要な役割を果たすであろう今日の星アンドレス・イニエスタを出したバルサに対し、マドリの方はかつてのバルサカンテラ選手で選手としては最後の時代に突入しようとしているセラーデスだ。この選手交代劇、これも一つの時代の変化を象徴しているのかも知れない。


 2004年11月20日 あと240分
チキートスタメン予想


ガッツの予想

マラソンマンと化して毎日バルセロナ近郊を走り回ってトレーニングに余念のないガッツ・ルイス・エンリケ。昨シーズンで現役を引退した彼だが、カンプノウの試合には時間が許しさえすれば可能な限り駆けつけて、かつての同僚たちを応援しているバルサソシオの一人だ。
「まあ、間違いなくバルサの勝ちだろうな。それは今までの両方の試合内容を見ていれば一目瞭然というものだろう。確かに90分という限られた時間の中では、実力とは別の何かが加わって想像外のことが起きる可能性がないとは言えないが、常識というヤツで考えればマドリが俺たちに勝つ要素なんてないだろう。俺は常識家だからそう思うね。しかも彼らと俺たちの力の違いとは別に、カンプノウにはこれまでなくパワーを持った12番目の選手がわんさわんさといるんだぜ。間違いなくカンプノウはバルセロニスタで埋め尽くされるだろうし、俺もその一人として、つまりバルセロニスタの一人としてかつての同僚を応援するんだ。それにしてもクラシコとなると今でも胸が熱くなるのを感じるのは、俺が根っからのクレっていうことだな。3−0、こんなスコアーじゃないかと思う。」


モッタの予想

カンプノウから約1万キロ離れたサン・パウロに来てからもう1週間たったティアゴ・モッタ。だがこれほどの距離がありながらも彼はクラシコをテレビ観戦する幸運を授かっている。ブラジル全国にオープン放送でこのクラシコの様子が伝えられるからだ。
「久しぶりにブラジルに戻ってきて驚いたことがある。それはバルサの試合をすべて中継していること、そしてさらに、とてつもない数のバルサファンがいるということさ。こちらのアンケートではブラジル人フットボールファンの70%がバルサファンだという結果を出している。今まではマドリファンの方が多かったのに、もう完全に逆転しちゃってるんだ。そしてその70%の人々が予想するクラシコの結果は、もちろんバルサの勝利。俺も間違いなくそうだと思う。前節でバルサがベティス戦で負けたことや、マドリが圧勝したことでこのクラシコを心配している人たちもいるかも知れないけれど、それは無用な心配だと思うよ。これまでの試合を見ればわかるけれど、マドリとうちらじゃ試合内容がまるで違うことを忘れちゃあいけないさ。もう、間違いなくバルサの勝利だな。4−2というスペクタクルな予想はどう?」


チャッピーの予想

故郷であるバルセロナに戻ってきてラジオ解説やテレビ解説、あるいはメディアにコメントすることで毎日忙しいチャッピー・フェレール。
「仕事がら多くの試合を見るようになったけれど、これまで見た限りマドリとバルサの力の違いははっきりしている。それでも勝負はあくまでも90分間あるわけで、色々な要素がからみあって前評判の高いチームが勝てないという結果は多くある。審判の誤審や、選手たちの考えられないミス、そういう要素が生まれてくることもあるからね。それでも一般的な言い方をすれば、もちろんバルサが試合を有利に展開していくことになるだろうと思う。3−1、こういう結果でいいんじゃない?」


クライフの予想

「0−0にはならないと思う。両方とも攻撃面で良い選手が多いからね。」


ストイチコフの予想

今週水曜日におこなわれたブルガリア代表の試合が終わり、スタッフたちとの反省会もせずにすぐにバルセロナの自宅に戻ってきているウリスト・ストイチコフ。代表監督であるからして代表の試合は最も大事なものの、クラシコとなればそれどころではない。バルセロニスタ・ストイチコフの血がギャアギャアと騒ぐのだ。まったくうるさいっちゃぁありゃしない。
「クラシコといえども他の試合と同じように3ポイントを争う試合、俺も現役時代にはそう言ったものだ。だがな、本心はそうじゃなかった。この戦いは3ポイントなんてもんじゃないんだぜ。勝った方はガビーンと勢いに乗って次からの試合に弾みがつくし、負けた方はガックンときてしばらく立ち直れないんだ。少なくても俺はそうだった。だからな、この試合はバルサにとってとんでもない絶好の試合となるんだ。メレンゲ共をギャフンと長い間沈めてやるまたとないチャンスなんだ。わかるだろ?女性週刊誌カメラマンあたりにパチャパチャと写真を撮られたり、歩道でキャピキャピした若い姉ちゃんにキャアキャアいわれるのが生き甲斐なのがギャラクティコ選手。そんな奴らにフットボールというのはどんなものか親切にも教えてやって、そいでもってついでに半年ぐらい落ち込ませてやるってのが今度のクラシコのテーマだな。」


カラーを変えたかつての選手たちの思い

あらゆる状況の変化から生まれるフットボール選手のカラーの移動。ある時はアスールグラーナであり、ある時はブランキアスールであり、そしてある時はブランコと色々だ。今ではレバンテの監督をしているシュステルも色々とカラーを変えた選手。そして、アスールグラーナとブランコの色の違いに最も苦しんだ選手の一人でもある。当時会長のヌニェス、そして監督であったベナブレスとの衝突が彼をアスールグラーナカラーから脱色してブランコとした理由だ。
「マドリの選手として初めてカンプノウでプレーしたときは、さすがの自分も頭の中が真っ白になってしまった。心の準備はできているつもりだったんだが、いざ10万観衆のブーイングを経験してみると、準備なんてクソみたいなものさ。それ以来、カンプノウに来るときはもう何も考えまいと務めるようになったんだけれど、結局マドリを離れるまでそれは意味のないことだった。なぜなら、そんなことは不可能だったからさ。」

ラウドゥルップもシュステルと同じような状況でカラーを変えた選手の一人。クライフとの衝突が基本的な理由ではあるが、ちょうど契約切れとなることもありマドリ選手となった。だが、彼は毎年そうであるように、クラシコの戦いを前にしてメディアの前でそういう話題のひとりになることを拒否している。いっさいの発言をおこなわないラウドゥルップ。だが唯一の例外、それは彼が白いユニに身を包み、初めてカンプノウにやって来た翌日のインタビューだ。
「まさか、こんなブーイングを受けるとは思わなかった。人生最悪の日とはっきり言える。正直言って、試合どころではなかったし、精神がぜんぜん集中できず、ボールを触るたびに沸き上がるブーイングが頭の中まで入ってきた。プロ選手は観客席から送られるプレッシャーなんか試合が始まってしまえば何ともないとは言うけれど、物事にはすべて限界があるじゃないか。」
そう語ったラウドゥルップ。現役引退後に応じたいくつかのインタビューでは、クラブ誕生百周年記念試合に参加してきた彼にカンプノウを埋めつくした10万観衆から暖かい拍手が送られたことに非常に感謝していると語っている。

多くのクラブをわたり歩いたミケル・ソレールもアスールグラーナとブランコを経験した一人。
「自分のケースは当時の監督が起用してくれず、ベンチ生活が続いたからバルサを離れることを決意したのさ。でも直接マドリに行ったわけではなくセビージャでプレーしてからマドリの選手となったんだ。どこにいても自分はクレという意識はあったけれど、プロ選手はプレーしてなんぼの世界だから心の動揺はなかった。でもフィーゴにいまだにブーイングがいくのは理解できること。4千万しかもらっていなかった選手が2億もらえるからという理由で移籍していくのは理解できるけれど、2億という契約更新をしたばかりの選手が6億もらえるからといって、しかもカピタンマークを付けていた選手がライバルチームに移籍するというのはバルセロニスタには裏切り者とうつってもしょうがいないと思う。」


 2004年11月20日 あと600分
静かにひっそりとメレンゲ到着

例年のクラシコであれば、カタルーニャに住む多くのマドリディスタがエル・プラット・バルセロナ空港まで押し寄せ、メレンゲ御一行の到着を待ち受ける。だが、金曜日20時近くのエル・プラット・バルセロナ空港にはわずかなマドリディスタしか駆けつけていなかった。そしてその多くが子供だったということが印象的な歓迎風景だ。

多くの少女たちの目的はベッカムを一目見ること。もし可能なら体に触ってしまうこと。そしてさらに可能ならサインをもらい一緒に写真をとってもらうこと。だが空港に集まった人々と同じぐらいの警備陣の前に、可能となったのは“一目見ること”、それだけだった。移動バスに乗り宿泊予定ホテルに向かうマドリ選手。そう、例年であれば、宿泊ホテルにも大勢のマドリディスタが待ち受けているはずだ。だが、今回は両手と両足で数えられるぐらいの人数の子供たちがホテルの前で待ち受けているに過ぎなかった。彼らの目的は、やはりもちろんベッカムだ。そして、ここでも例年のように、ペセテロに生卵を投げる暇なバルセロニスタは今回は一人も登場しなかった。子供たちの嬌声は別として、静かに、そしてひっそりと、まるで敗戦するのが暗黙の了解のように、メレンゲ族はバルセロナ入りしている。


世界で2番目の回数を記録するクラシコ

11月20日22時に試合開始されるバルサ・マドリのクラシコは、この試合を含めて149回目を迎える。もちろんリーガでの試合だけのクラシコ回数だ。そしてこの数字はフットボール界でクラシコと呼ばれる対戦で2番目に多い対戦数となる。

今となってはフットボールの歴史書をひもとかなければ発見できない1番回数の多いクラシコ、それはイングランドのアストン・ビラ対エバートン戦のクラシコ。その回数は179回を記録している。そして2番目がバルサ・マドリのクラシコとなるわけだが、3番目に記録しているのはカルッチオのユベントス対インテルの対戦。回数は148を記録している。それにしてもユーベ対インテルの対戦などというのがクラシコというのは初めて知ったわい。


クラシコ、スペイン全国にテレビ中継

放映権を所有するフォルタとスペイン各地方局との間ではすでにクラシコ放映に関する問題は何もなかったのに、地方局を持っていない地方への放映を“義務”づけられているスペイン“NHK”が放映料問題でフォルタともめており、金曜日の夜中までクラシコの全国中継は危ぶまれていた。だが、そこはスペイン、「全国民関心行事」として政府に認定されているクラシコだからして、当然ながら政府が介入してきた。

テレビ関係者の間にスペインスポーツ大臣が加わって何時間もかけておこなわれた交渉で、これまたスペインらしく、とりあえずこの試合だけは放送しましょう、こういう結果に終わったため、地方局がない地方でもクラシコ戦のテレビ観戦が実現することになる。また、この交渉とは別問題にマドリッド州だけは地元のテレマドリがストライキ中でクラシコ放映はおこなわないと発表していたものの「この試合の間はストライキ解除」という、これまたスペインらしい決断のもと、マドリッド州に住む人々も地元チームが完膚なきまでに叩きのめされ敗北するところを実況中継で見られることになった。おめでとう!


 2004年11月20日 あと27時間
メディア的公式ニュース

スビサレッタが去って以来、常にポルテロの存在が話題となってきたバルサだが、昨シーズンからのバルデスの活躍がそういう話題を消し去ってしまっている。まさに今後10年間にわたってバルサの守護神となる男、ビクトル・バルデスは旬の時期を迎えようとしている。「6−1という結果に胸を張ってカンプノウに来るようだが、マドリが上昇気流に乗っかったチームだとは思っていない。確かにマドリは良い選手が多いチームだし経験を多く積んだ選手が多いことから手強いチームには変わりがない。でも今シーズンのバルサは昨シーズンとは一味も二味も違うことはすでに立証済み。ライバルクラブ同士の試合とはいえ、あくまでも3ポイントを争う戦いでしかないと思っているけれど、何が何でも勝ちたいとも思う。」

コクーなどがオランダ代表としてミニエスタディで試合をした時に、ほんのチョット話題になっただけのジオ。クラシコに関してもあまりメディアの話題となる人物ではないようだ。地味な存在と言ってしまえばそれまでだが、クラシコにおける彼の役割は大きい。左サイドからの攻撃を封じること、そして同時に左サイドからの攻撃スタッフともならなければならない。だが、メディアでは彼の話題はまったくない。
ジオ「もし誰かとクラシコの結果に関する賭をするとすれば、2−0というところだろうな。」クラシコを前にしてメディアにのったコメントはこれぐらいのものだ。

ベティス戦で負けたことの楽観的総括として、これでさらにクラシコの戦いで選手のモチベーションが高まるだろう、そうブラボー・ライカー監督が発言している。その翌日、地味なオラゲールの発言がメディアに登場している。
「我々カンテラ育ちの選手たちにとってマドリ相手の試合にモチベーションなんか問題にならない。普段の試合でももちろんできる限りプレーしているつもりだけれど、クラシコは我々にとって特別な試合。だからベティス戦に負けたことによる楽観的総括は個人的にはできない。」

ベティス戦で負傷したことにより大いなる話題の持ち主となったプジョー。クラシコに間に合うかどうか微妙、どこのメディアもこんな感じの同じようなトーンでサスペンスを誘う。だが、そんなメディアの思惑とは別に何にも心配していなかった多くのバルセロニスタ。そしてその彼らが正しいことが再び証明された。
「負傷具合がどんなものであれ、プロ選手であればこういう試合には身銭を切っても出たいもの。でも自分の場合は痛みもそれほどないし、ほぼ普通の状態で出場できると思う。」

そのメディアが奏でるサスペンスへの誘いはベレッティに対しても同じ。ベティス戦の翌日にはすでに合同練習に参加してきたベレッティであるにもかかわらず、クラシコ出場は微妙というラインは崩さなかったメディアだ。だが木曜日にあるテレビ局のインタビューに応じた彼はすでにスタメン出場は間違いなしといった表情でクラシコへの戦い方を教えてくれている。
「マドリはスター選手が多いチームだし、名声に応じた実力を持っている選手で構成されている手強いチーム。だが我々がしなければならないのは彼らを気にすることではなく、これまで通りのバルサらしい試合内容をすること、そういうことだ。勝利するキーポイントとなるのは、今まで通り90分にわたって集中力を維持することと我々らしい戦い方ができるかどうかにかかっていると思う。」

昨シーズンには1回もクラシコに出場することができなかったマルケスだからして今回が最初のものとなる。それに加えてバルサに入団してきて以来の最高の調子を見せている彼だからしてメディアも放っておかない。各メディアが彼のインタビュー記事や写真を連日掲載している。
「プレシーズン中にもしクラブが外国人選手問題からの他クラブへのレンタル話を言ってきたら、それを受け入れるつもりだった。だが、エドゥミルソンがユーロパスポートを取得したことにより、その話はなくなったようだ。人生なんてわからないもので、バルサに残ることができたおかげで選手生活の中でも最高の調子を維持できている。昨シーズンは続けて試合に出場することが少なかったけれど、今シーズンは監督の信頼感を得ているようだ。マドリ戦でさらに良い活躍できれば最高。」

代表戦で活躍したチャビのプレーを、まるで初めて見たかのような評価をするマドリメディア。ラウドゥルップやフィーゴ、ロナルドの時も同じようなものだったが、どうやらバルサでの活躍だけではマドリメディアの目には入らないようだ。というわけで、全国的規模で話題の人物となったチャビ・エルナンデス。カタルーニャメディアでは代表戦前もその後も連日にわたってチャビを特集している。
「代表戦でのプレーが特別冴えていたとは思わない。いつもどおりの普通のプレーだったと思う。でもベルナベウで拍手されるというのは不思議な感じ。もっとも代表のユニフォームを着ていたからだろうけれど。マドリとの試合はカンプノウでのものだし、彼らを再び引き離す意味でも負けるわけにはいかない。」

クラシコに関してデコが話題となるのは、どうしてもペセテロがらみとなるのは致し方ないところ。彼がポルトガル国籍を取得し代表入りしたことに関しペセテロが批判したのはそれほど昔のことでもない。したがって彼に対する質問もマドリに関することと言うよりはペセテロとの関係みたいなこととなる。
「憎しみからは何も生まれないということはみんな理解していると思う。でも個人的には、カンプノウに集まる人々が彼のことを非難するのも理解できる。試合後に彼とユニフォームの交換をするかって?自分から頼むことは絶対ないだろうけれど、もし彼が頼んできたら交換するだろうね。」
どこのメディアを見ても、デコが“彼”としか呼ばないのが印象的だ。

特別な選手だからしてセレソンに呼ばれて不在中もロナルディーニョに関するコメントは日常的にあらわれる。しかも彼にとって初めてのカンプノウクラシコとなる試合であり、メディアにとっても彼にとっても特別な試合なのだ。そして彼が新聞の一面に載るか載らないかでは当然ながら売れ行きにも影響を与えることになる。
「カンプノウを埋め尽くす12番目の人々にとっても、そしてもちろん我々選手にとってもパッションという意味では非常に特別な試合。個人的には去年負傷していて出場できず非常に悔しい思いをしたカンプノウクラシコだし、あくまでも3ポイントを争う試合だとはいえ、勝利する方、あるいは敗北する方にとって、メンタル的に影響の大きい試合となる。しかも我々にとって、世界中にバルサの好調さを示す絶好のチャンスでもあるからね。」

だが、今週もっともメディアの注目を浴びた選手はロナルディーニョではなくこの人、サムエル・エトーだ。かつてトミー・コーノがエスパニョールに入団するにあたって「現在の抱負は?」という質問に「黒人のように走り白人のように稼ぎまくること」という名セリフを残したが、彼もまたバルサ入団の際にこのセリフを使っている。そして“因縁”関係にあるマドリとの試合を前にして、多くのジャーナリストはエトーにとって一世一代の試合となるだろうと分析している。
「プレッシャーがないと言ったら嘘になる。それは相手がマドリだからという意味からではなく2位のチーム相手の大事な試合だからさ。こういう試合には黒人の自分だけではなく、すべての選手が黒人のように走り回らなければならない。フロレンティーノがエトーにはマドリ移籍の門が大きく開いているって言ったって?ウフッ、それじゃあ彼に言っておいてくれ。ムーチャス・グラシアス、でもその門は閉じていいってさ。だって俺はバルサがお気に入りなんだから。」
エトーの記者会見は誰のそれよりもスペクタクルだ。

ジュリーがメディアに登場したのは代表戦で負傷したことによる。木曜日の朝にバルセロナに戻ってきた彼に多くのメディアが集中するものの、精密検査がおこなわれるまで確かな負傷具合はわからない。結果的には軽い負傷、そういうことになったものの負傷箇所が筋肉系統だからして無理して試合に出場すると長期のリハビリが必要となってしまうやっかいなもの。それでもブラボー・ライカー監督は彼をクラシコ戦に招集することに決めた。だが、金曜日の練習風景を見ている限り、試合当日までグランドにでられるかどうかわからないという感じ。彼はブラボー・ライカー監督によって招集されてから次のように語っている。
「こういう試合でプレーすることを夢見てこれまで頑張ってきたんだ。完全な体調でなければ監督はスタメンで出してくれないだろうけれど、今持っているすべてのものを投げ出しても良いから負傷が完治してくれることを願っている。」

ラルソンが話題の中心人物となったのはスエーデンの2004年最優秀選手に選ばれ、その際にバルサに関して褒めちぎった内容のコメントをしたとき。本来ならばこのことだけで彼への注目度は幕を閉じるはずだったが、ジュリーの負傷というニュースが再びラルソンを新聞の片隅に登場させることになる。試合ギリギリまではっきりしないものの、もしジュリーが出場不可能であるならば当然ながらラルソンのスタメンとなるのではないか、それは誰でも予想することだ。
「木曜日あたりから多くの友人やジャーナリストが連絡してきて、ひょっとしたらスタメン出場じゃないかと言ってくれている。もしそうなら最高だし、こういう試合でゴールを決めることができれば文句ない。でも、これまでのように、最終的にスタメン選手を選考するのは監督の仕事。最初からチャンスがやって来れば満足だし、途中からでも出場機会があるようだったら最高の仕事をしたいと思う。」

マドリや他のクラブからのプレッシャーが功を奏したのか、あるいはクラシコ前に良いニュースをバルセロニスタに贈ろうと考えたのか、いずれにしてもイニエスタの契約更新交渉が突然のごとく終わりを見て、クラブ、イニエスタ、そしてファン共々万々歳のうちに2010年までの延長契約成立。これがカタルーニャメディアだけではなく、全国のメディアに注目されないわけがない。彼だけはクラシコのことよりこの契約のことで注目を浴びることになった選手だ。
「これまで何回も言ってきているように、自分の夢はバルサでできる限り長いあいだプレーすること。今回の延長契約で少なくても2010年までそれが可能となったんだから、これ以上嬉しいことはない。そして時期が時期だけに、マドリ相手の試合に勝つことによってさらに喜びを倍増できれば100%の週となる。」


チキート的非公式ニュース

バルデス「もう俺の実力はベルナベウクラシコで実証済み。怖いもんなんかないからドンドンかかってきなさい!」
お願いします。

ジオ「コクー、レイジゲル、マーク、パトリック、もういなくなった彼らの分も頑張っちゃうぞ!」
例のヤツをグチャグチャにお願いします。

オラゲール「この試合が、オラゲールここにあり!というような人生最高のプレーをするような気がする。」
抜かれないようにお願いします。

プジョー「負傷したおかげで体を休めることができた。予定通り金曜日には完治したからクラシコは100%プジョーだ。」
いつも通りお願いします。

ベレッティ「初めてのクラシコ。こういう試合では、行ったり来たりベレッティになるんだ。」
お願いします。

マルケス「初めてのクラシコ。こういう試合では、なぜか普段より足が速くなるんだ。」
ポカなしお願いします。

チャビ「カラコーレス(例の、くるくる回ってボールをとられないようにするワザ)をやりまくっちゃうぞ!」
お願いします。

デコ「初めてのクラシコ。こういう試合では、ウマの合わないペセテロとの違いを世界中に見せてやることができる。」
是非、是非、お願いします。

ロナルディーニョ「初めてのカンプノウクラシコ。こういう試合では、フリーキックが入るような気がする。」
お願いします。

エトー「初めてのクラシコ。こういう試合では、黒人のように走り回り白人のように金を稼ぐんだ。」
よくわかんないけれど、お願いします。

ジュリー「初めてのクラシコ。こういう試合では、例え怪我していても試合に出ちゃうんだ!」
お願いします。

ラルソン「初めてのクラシコ。こういう試合では、ジュリーさん無理すると怪我の具合が悪化しますから、ここは一つ私が出ましょう。」
是非、お願いします。

イニエスタ「初めてのクラシコ。こういう試合では、う〜ん、経験したことないからよくわからない。」
お願いしますよ。

ジェラール「みなさん、頑張ってください。」
あなたには何もお願いしません。

シルビーニョ「初めてのクラシコ、こういう試合では、キリスト様の助けがきっとやって来ると信じている。」
神頼みでも何てもいいからお願いします。


 2004年11月19日 あと33時間
クラシコに向けた招集選手発表

それほどの驚きはないバルサ18人の招集選手リスト。金曜日の午前中におこなわれた練習後にブラボー・ライカー監督がクラシコ招集選手を発表している。すでにジェラールの不在というのは暗黙の了解事項であったからして当然のことだが、試合ギリギリまでわからないと言われていたジュリーがこのリストに入っている。彼がどのくらいの体調でプレーできるかどうかはわからないものの、そして余程の変化がない限り、いつもの絶対11人のメンバーでマドリを粉砕することになる。つまりバルデス、ジオ、オラゲール、プジョー、マルケス、チャビ、デコ、ロナルディーニョ、ジュリー、そしてアフリカの星から世界の星として生まれ変わるであろうサムエル・エトー。

■クラシコ絶対勝利招集選手
バルデス、ルーベン、ジオ、シルビーニョ、オラゲール、ナバーロ、プジョー、ベレッティ、ダミア、マルケス、チャビ、デコ、イニエスタ、メッシー、ロナルディーニョ、ジュリー、ラルソン、エトーの光り輝く18人。


 2004年11月19日 あと37時間
カンプノウ史上空前のモザイク模様

圧倒的な実力の差を確認することになるであろう今回のクラシコ。バルセロニスタによって繰り広げられるであろう大勝利のフィエスタの前祝いとして、試合前のカンプノウ史上最大の規模によるモザイク模様が登場する。その数、なんと9万。

多くのバルセロニスタがこの試合をビデオに収録し“思い出に残るあの試合”の一つとするためにも、やはりスタートからしてスペクタクルなものとしなければならない。メレンゲ共が9万8千人の大ブーイングの元にカンプノウに登場する。そしてバルサイムノが流れると共に我らがバルサ戦士がカッポカッポと姿を現すその瞬間、バルセロニスタで埋められた超満員のカンプノウ観客席に一斉に色とりどりのモザイクが登場することになる。そのモザイクの中であらわれる文字、それは北ゴール裏に“BARCA!”、南ゴール裏に“1899”、そしてバックスタンドめいっぱいに“JA SOM 125000”という文字。もちろん、ソシオ数が12万5千人を超えたことを記念してのものだ。

そしてこのモザイクはこの瞬間だけではなく、バルサ選手がカシージャスに向けて彼の手の届かないところにボールを突入させるたびに出現することになる。ということは、選手登場時に1回、試合が終わってみれば合計6回も出現することになるということか。


 2004年11月19日 あと52時間
クラシコを前にイニエスタ延長契約成立

これまでずいぶんと長い間おこなわれてきたイニエスタの延長契約交渉、それがクラシコを2日後に控えた木曜日、クラブ・イニエスタ双方が満足できる形でついに終結をみた。バルサとイニエスタ間におけるこれまでの契約は2006年6月30日までのものだったが、新契約は2010年までのもの。今年20歳となったイニエスタだからして少なくても26歳まではバルサに所属することになる。契約を破棄する際の違約金は6千万ユーロ。

カンテラ時代のイニエスタに関することはこのHPでイヤッというほど触れてきているので省くとして、今シーズンに限って言えばスタメン出場はほとんどないものの、チャビとバルデスと並ぶ全試合出場選手。ブラボー・ライカー監督が彼に期待するものは後半から出場して試合リズムの変化をつけること。その重要な役割を20歳の選手に期待しているところを見るだけでもブラボー・ライカー監督の信頼感がわかるというものだ。しかもその期待に試合毎に確実に応えているイニエスタも凄い。

イニエスタの望みはいわゆる契約違約金を設定しないことだった。カピタン・プジョーがやはり新契約を結ぶに当たって同じようなことを望んだが、残念ながらフットボール協会がそれを許さず、あまり話題にならない額の違約金を設定している。今回もやはり同じように、イニエスタの違約金は6千万ユーロと設定されたものの、それはあくまでも“義務的”なもので、どこのクラブから誘いがあろうと耳を貸さないというのがバルセロニスタ・イニエスタの気持ちだ。いずれにしても新契約交渉はメデタシメデタシと終結し、新契約を結んでからの初めての試合となるクラシコに燃えるイニエスタです。


クラシコでスタートする二つの現象

今週土曜日おこなわれるバルサ・マドリのクラシコで、これまで見られなかった二つの現象がスタートする。一つは前にも触れたように冬季用のカラーボールの使用。ほとんどが黄色に包まれたナイキの新ボールがこの試合から春がやってくるまで使用されることになる。もう一つの現象、それはバルサのユニ左袖にTV3のロゴが入ること。これまで長年にわたってバルサのスポンサーの一つとなっている地元テレビ局TV3だが、度重なる交渉の末やっと実現することになった。クラブ側とTV3側の契約では今シーズンいっぱいというものだが、両者の話し合い次第では来シーズンもつく可能性がありそうだ。まだクライフが監督をしていた時代、プレステージを利用して日本ツアーに行ったバルサがJALのロゴをつけたことがあるが、それはあくまでも親善試合でのものであり、ユニの袖とはいえ公式試合でコマーシャルロゴがつくのはこれが初めて。

つい先日、胸ロゴのスポンサーの一つとして話題になった“ベタウイン”が、バルサ側からの拒否回答が伝えられたことにより、他のクラブを探すという発表を自社のHPを通じておこなっている。もともと変な話であったことは何回も触れているが、さらに変なのはバルサ側が拒否回答したことをメディアの前に発表していないだけではなく、拒否回答そのものを否定していることだ。ここで考えられる一つの推測、ひょっとしたらバルサはおちょくられていたんではないか、そういうこと。

グラマネ戦敗北の翌日にカタルーニャメディアに雨後の竹の子のように発生した“ベタウイン“スポンサー情報。クラブ側かスポンサー側が意識的に流したニュースであることは100%確かなことだ。そしてそれから何日かしてからバルサオフィシャルHPの一角にも、これまで多くの人々にとって無名であった“ベタウイン“のコマーシャルが流れ始めている。そして今回の“一方的”なスポンサー側からのバルサ拒否回答のニュース。最初から最後までおかしい話だ。

“ベタウイン“というスポンサーが下りようと下りまいと、バルサが胸ロゴによる収入を諦めたかというととんでもない誤解となる。金庫番ソリアーノを筆頭に、胸ロゴ賛成派はソシオの中にも多数いるし、何よりもソシオ審議会ですでに認可されている胸ロゴ問題であるからして、バルサはいまだにスポンサー探しに忙しい。


 2004年11月18日 あと56時間
最初で最後のクラシコ

1974ー75シーズン、ベルナベウでおこなわれたクラシコ戦でこのシーズンから加入してきたヨハン・クライフを筆頭とするバルサに0−5という歴史的敗北を喫したレアル・マドリ。その時のポルテロが現在のマドリ監督のガルシア・レモンだ。現役引退後はコーチ業を営むもののことごとく失敗を繰り返してきたレモンちゃんは辞任したカマッチョの推薦で現在の地位につくことになった。だが、いかにノーテンキなマドリディスタとはいえ、彼らの誰一人としてレモンちゃんが来シーズンも監督を続けるとは考えていない。誰一人としてそんなことは想像していない。所詮、彼は臨時のアルバイト監督なのだ。だが、そのことを理解していない人物が一人だけいる。ガルシア・レモン、その人だ。

「相手が誰であろうと戦う場所がどこであろうと、我がレアル・マドリは常に相手チームより上をいっているというのが私の考えだ。したがってカンプノウクラシコでも我々が有利な立場にあると信じている。」
こりゃまるで大本営発表の国民だましコメントみたいなものだ。だが、こんなものは戦いの前のアジテーターが流すアジ演説だと思えばすむが、次のようなコメントを聞くと、やはりこの人はアルバイト監督以外何物でもないことがわかる。監督としての資質がゼロだ。
「バルサが素晴らしい試合展開をしているというが、これまでの我々の試合内容とはそれほど違いがないものだと思っている。我々はコルーニャ戦で理想的な試合展開をしたが、不運の前に敗北してしまった。だが、もしあの試合が内容に沿って結果もついてくるものであったら我々はバルサと1ポイントしか違わないのだよ。しかも個人的な意見を言わせてもらえば、バルサの試合展開は少々メディアが持ち上げすぎという気がするけどね。わかるかね?」
チッともわかんねえぞ。

さらに彼のメチャクチャコメントは続く。
「我々は土曜日、とっくに閉鎖されていなければならないスタディアムで試合をすることになる。あれがベルナベウという名だったら、とっくに閉鎖されているのに。」
法律的に閉める根拠がないから閉まらないのだ。そこらへんがわかってないのにグチャグチャとお節介なことを言うのはやめてレモンちゃん。


 2004年11月18日 あと61時間
世界中が注目するクラシコ

スペイン国内では放映権問題で見られない地方(ナバーラ、アラゴン、カスティージャ・レオン、アストィリアス、カンタブリア、エストレーモマドゥーラ、そしてマドリッドなど)が出てくる可能性があるのに比べ、ヨーロッパ諸国はもちろんアジア諸国やアフリカ諸国などの多くの国ではテレビ中継を楽しむことができる。ダイレクトでこのクラシコを中継する国は実に70か国以上に達するようだ。

放映権を持つフォルタと実況中継を望むTVEの間で連日にわたって交渉がおこなわれているものの、いまだに解決を見ていない。テレマドリもストライキの姿勢を崩していない。したがってこのままの状況が続くとすると、スペイン国内に住む人々の約半分はクラシコのテレビ観戦が不可能ということになる。

それに比べ、アフリカの中部と南部やインドや中近東諸国などをのぞいた世界各国では、ダイレクト放送でクラシコを観戦することができる。すでに700人前後のメディア関係者がバルセロナにやって来ているし、実況アナウンスをカンプノウでおこなおうという30か国前後のテレビ関係者もスタディアムを訪れている。いずれにしてもここ何年かのクラシコでは、世界中で最高の注目を集めているメディアチックな試合となることは間違いない。


感謝する気持ちを忘れない人々

「この賞を2回も受賞することができるなんて人生最高の出来事と言って良い。個人に対する賞ではあるものの、こういう賞を受賞することができたのはあくまでも同僚の選手たちのおかげ。これまで一緒にプレーしてきた多くの選手に感謝したい。」
スエーデンの2004年最高殊勲選手に選ばれたエンリック・ラルソン。だが感謝する言葉はこれだけにとどまらない。
「バルサと契約できたことはフットボールを職業として選んだ自分にとってこれまで持っていた大きな夢を実現したことなんだ。バルサに入団したから言うのではなく、すでにこれまでの同僚なら知っていることだけれど、個人的には非常に気に入っていたクラブ。このクラブでプレーするのはもう何年も前からの夢だった。そしてその夢が実現して発見したこと、それは他のクラブとはスケールの大きさが違うクラブということさ。セルティックももちろん偉大なクラブだった。でも、偉大さが違うんだ、バルサというクラブは。そういうクラブでプレーするチャンスを与えてくれたクラブ首脳陣やスタッフテクニコの人々に心から感謝している。」
スペインメディアでのインタビューではなく、彼の国のスエーデンメディアへの言葉だからして、決してお世辞で言っていることではないようだ。

ラルソンにとって初めてのクラシコとなるが、今シーズン加入してきたデコにとっても同じように初めてのクラシコとなる。そして彼もまた感謝の気持ちを忘れない選手の一人だ。
「昨シーズンにバルサに入団するチャンスがやって来たのだけれど、クラブ同士の交渉が最終的に合意に達しなかった。正直言って非常に残念な思いをしたのだけど、それでも再びチャンスがやって来たことに満足しなくちゃね。これまで何回も言ってきたけれど、バルサというクラブのフィロソフィーやクラブカラー、そして何よりも歴史的に攻撃的な試合展開をするのに非常に興味を持っていた。そして今ではバルサの一員としてプレーできるのだから不満なんか何にもないさ。家族もバルセロナの街を非常に気に入っているしね。今の目標は何が何でもクラシコの勝負に勝利すること。バルサが快調に飛ばしていく証となるし、我々を支えてくれているバルサファンに喜んでもらいたい。」


 2004年11月18日 あと75時間
バルセロニスタ・コクーの思い

「今でも時々フト思うことがあるんだ、何で俺は今シーズンもバルサでプレーしていないのかってね。」
すでにバルサとの契約が切れて半年近くが過ぎようとしている11月、コクーはオランダ代表選手の一人としてバルセロナに戻ってきた。その彼の頭を今でもよぎるのは契約更新交渉のことだ。クラブ側が出してきたオファーとコクー側が要求していた額との差はほんのわずかなもの、だからコクーは最後の最後までバルサに残る可能性を信じていたという。だが、誰もが知っているように、彼は最終的にオランダに戻る道を選ぶ。そうさせたのはバルサ側の意志だったと理解しているコクー。なぜならそのわずかな年俸額差をクラブはいっさい譲らないまま契約更改交渉を閉じてしまったからだ。

だが、もちろんコクーはそんなことでクラブに対して恨みを抱くような人物ではない。プロの世界ではよくあることだと理解しているからだ。
「誰かを名指しにして批判する気はないし、自分はそういう立場にもない。バルサに対してはひたすら感謝の念しかないし、特にバルセロナの街やバルサファンの人々に対する思いに変わりはないさ。第二の故郷と言っても良いし、将来住むことになるかも知れないバルセロナの街、そして自分はどこにいても多くのバルセロニスタの一人だと思っている。」

残念なことにカンプノウでのクラシコ観戦は不可能となっている。彼もまた試合があるからだ。だがどんなことをしてもテレビ観戦だけはすると語るコクー。
「今シーズンのバルサは素晴らしいよ。エトーやデコの働きには想像していた以上のものがある。一回りも二回りも大きくなったチャビやカピタンとして更に大きくなったプジョーも素晴らしいと思う。マドリの試合もいくつか見たけれど、今まで以上に個人プレーのチームになっているという印象だった。バルサがこれまで通りの戦い方をすれば間違いなく勝てるさ。そう信じているし期待している。」
グラシアス、コクー!
ブエナ・スエルテ


バルサに惚れたバンバステン

水曜日、アンドラ代表はミニエスタディを地元スタディアムとしてオランダ代表を迎える。アンドラ国内にある最も素晴らしいスタディアムでもFIFAの要求する基準にそぐわないためアンドラ代表はミニエスタディをよく利用する。

というわけで何人かの顔見知りのオランダ選手がバルセロナを訪れていることになる。ジオ、コクー、ダビッツ、だがクルービーはいない。彼をまだ一度も招集していないオランダ代表監督バンバステン、その彼はスケジュールが許す限りバルサの試合を見るためにカンプノウにやって来ている。もちろん先日のミラン戦にもやって来ていた。そしてバルサの試合を見終わり、さらにバルサに惚れたと語っている。
「ライカーは素晴らしい仕事をしていると思う。バルサの展開するフットボールは非常に攻撃的なスタイルだし、そして何よりもスペクタクルを提供してくれる。フットボールファンとして、もちろんフットボールに生きる人間として、これほど嬉しいことはない。」

ほぼ30年前から、バルサはオランダ代表からの影響をかなり受けているクラブだと言っても言い過ぎではないだろう。多くのオランダ人選手が加入し、何人かのオランダ人監督がバルサにやって来ている。トータルフットボールに代表される攻撃的なフットボールがバルセロニスタのお気に入りであり、そして攻撃的なフットボールこそがクラブカラーと認識されている。だが、そのオランダ代表もここ何年かで変貌を遂げてきていることもあり、オランダフットボールの原点に戻ること、それが新たに代表監督に就任したバンバステンの思い。そしてその見本はバルサの戦い方にあるとまで語るバンバステン。
「我々オランダ代表はバルサのような試合展開をすることを目標としてやってきている。だから個人的に知り合いが多いバルサということ以上に、クラシコではバルサが勝利することを願っている。そしてバルサがバルサらしい戦い方をすれば、もちろん勝利する試合になると思う。」


 2004年11月17日 あと80時間
気になるあの人 エトー

エトーにとっては超特別な試合と言って良いクラシコ。
「もちろんクラシコの試合に初出場するわけだから自分にとって特別な試合となるさ。バルサファンにとってマドリ戦が何を意味するのか、そんなことは承知の助だからね。バルサ・マドリという試合は3ポイントを争う以上に常に特別な試合さ。」
それ以上の“特別性”は語らないエトーだが、彼にとってはさらに特別な意味を持つ試合であることは間違いない。

これまでも何回も同じセリフを口にしてきているサムエル・エトー。
「マドリに恨みなんかないさ。むしろアフリカからヨーロッパへと進出するきっかけを与えてくれたことに感謝しているぐらいだ。」
15歳の時にカメルーンを離れマドリカンテラの一員となる。初めてのスペインへの旅、だが彼が到着したマドリッド空港にはクラブ関係者が誰も迎えに来ておらず、彼はタクシーを拾ってクラブまで一人で向かったエピソードは今では有名となっている。マドリカンテラとなって練習に励むエトーだが、マドリBでの出番はなかなかやって来ない。小さなクラブに次々とレンタルに出される彼だが、マジョルカにレンタルされたことが現在の彼を生み出していると言えるだろう。マジョルカでの活躍、そして何よりもカメルーン代表での活躍が、彼に2003年のアフリカ最優秀選手の賞を与えることになる。そう、彼はまだバロン・デ・オロは獲得してはいないがすでにアフリカの最優秀選手に選出されている。

ロレンソ・サンスが会長の時代にも、そしてフロレンティーノ・ペレスが会長の今も、レアル・マドリは決してサムエル・エトーに興味を抱いたことがない。マジョルカと半々の権利を所有し、あくまでも誰かの移籍の際の“替え玉商品”としてしか彼のことを認識していなかったマドリ首脳陣。そのことを誰よりも知っている彼がマドリ戦に特別の感情を持ったとしても不思議ではない。だが彼は決してそのことを口にしない。そしてアフリカ中だけではなく世界中の人々が注目するこの試合に、もし彼が勝利につながる貴重なゴールをたたき込んだとしたら、サムエル・エトーにとって、フットボール選手サムエル・エトーにとって、“クラシコ前”の彼と“クラシコ後”の彼というように分けられる存在となることも知っているのだろう。もしかしたらバルセロニスタにとってロナルディーニョと同じような、あるいは彼さえも超える存在となるかも知れない、エトーにとって特別意味を持つ試合なのだ。


 2004年11月17日 あと84時間
気になるあの人 ロナルディーニョとペセテロ

バルサに5年間在籍したルイス・フィーゴは2000−01シーズンにレアル・マドリに移籍し名前までペセテロと改名している。そして今シーズンが終了するとやはりメレンゲ歴5年目となる彼はすでに32歳、貯金通帳にどんなにゼロの数が増えようと体力の衰えは隠せない。来シーズンまでの契約が残っているものの、今シーズン終了後にどこかへと移籍する可能性は大だ。契約をまっとうするとなると33歳となっている彼だからして、移籍料がいらないとはいえ美味しいオファーが来るとは思えない。この年齢の選手で1つ違いというのはカンテラの少年のそれのように大きい。だから今シーズン限りでマドリを去るであろうペセテロ。ということは、彼にとってカンプノウクラシコは最後のものとなる。いろいろと悪口を言ってきたけれど、これまで楽しませてくれてありがとう。そして、ついでに地獄に堕ちることころまで見せてくれるとなお感謝しちゃう。

急激な下降線をたどっているペセテロと対照的に、着実に世界最高選手の一人として成長し続けている24歳のロナルディーニョ。その彼にとっては、これまたペセテロとは対照的に、カンプノウでの初めてのクラシコに出場することになる。ほぼ1年前におこなわれたカンプノウクラシコでは残念ながら負傷中で出場できなかった苦い経験を持つ。21年目にして初めて敗北の味をかみしめたバルセロニスタ。
「お前らは俺たちに勝つのに20年かかったんだぞ〜」
という捨てぜりふを残してショボショボとスタディアムを後にしたソシオの一人が印象的な試合でもあった。そしてロナルディーニョのカンプノウクラシコデビューを境に再び新たな歴史が作られることになる。さあ、また20年間負け知らずのカンプノウクラシコが始まる。


マドリメディア

クラシコが近づいて来るにしたがい、マドリメディアもお調子づいてきている。日曜日におこなわれた試合の結果が彼らを調子づかしていることは間違いない。地元でアルバセテ(アルバセテ!)相手に派手に勝利したレアル・マドリに対し、ルイス・ロペラという一癖も二癖もあるアウエーでのスタディアムで敗北したバルサ。その結果、バルサとマドリの差が4ポイントと接近したことによるマドリメディア大喜び現象だ。

マドリディスタが苦々しい時期を過ごしてきていることは確かだろう。今年の夏にリーガの試合日程が発表され、11月のカンプノウクラシコを前にしてあのカタランチームに4ポイント差もつけられて首位の位置を譲っているなんてマドリディスタの誰一人として考えもしなかったことが起きているのだから。しかも彼らにしたって長年にわたってフットボールを見てきている人々。自分のチームの試合内容が良いか悪いか、それぐらいはわかる。認めたくはないもののバルサのフットボールが素晴らしいものであることもわかっている。今年に入ってから(今シーズンではない)バルサには30ポイント以上も差をつけられていることを密かに発見している統計好きのマドリディスタもいるだろう。苦しい11か月を耐えてきた彼らにマドリメディアが早すぎるクリスマスプレゼントを用意したとしても不思議じゃあない。

「震えるバルサ」
「恐怖心に包まれるバルサ」
「怖じ気づいたバルサ」

こんな感じの表現で毎日紙面を埋め尽くしているクラシコ前のマドリメディア。良い試合をしていないことを知っているレアル・マドリがそれでも何となくバルサに4ポイント差に近づいてきて、これはひょっとしたら本物の調子になっているのではないかと思いだしてきた、そういう“誤解”を解いてあげるのが今度のクラシコにおけるバルサの役目。ライバルには常に親切でなければ。


 2004年11月17日 あと99時間
このノーテンキな人々

スペクタクルな試合内容で結果も出し続けている我らがバルサに、気がついてみれば4ポイント差と近づいたことに大喜びをしているメレンゲ集団。マラガ、ヘタフェ(ヘタフェ!)、そしてアルバセテ(アルバセテ!)に勝利したことにより上昇気流に乗ってきたとノーテンキにも勘違いしてしまっている幸せな人々だ。あまりにも辛い時期を過ごしてきたためか、クラシコが迫って来るにしたがい、鬱屈した思いが一気に吹き出し、生意気にも多くの選手などから強気な発言が繰り返されている。

地元ベルナベウでの試合であのアルバセテ(アルバセテ!)に6点を上げたことにより、メレンゲは実力ではバルサを上回っていると強引にも信じようとするノーテンキ会長フロレンティーノ・ペレス。試合終了後に選手控え室に飛んでいき、笑みを満面に浮かべ次のように選手たちに“お願い”している。
「次の試合には軽く3点ぐらい入れてくれれば勝てるから頑張ってくれ!」
レアル・マドリが抱える多額の借金を一時的にも忘れさせてくれるであろうクラシコ勝利を夢見るフロレンティーノ・ペレス。まあ、せいぜい週末まで楽しい夢を見ればいい。

アルバセテ(アルバセテ!)相手に2ゴール決めたことで、どこまでも単純な性格をしているロナルドはもう浮かれっぱなしだ。
「バルサ?たいしたことないさ。我々はいわゆる上昇気流にのっかているチームだし、バルサは下降線をたどっているチーム。4ポイントなんてあっと言う間に縮まってしまうさ。彼らはこのままミスを続け、そして我々は勝ち続けることになり長いシーズンが終わってみればギャラクティコチームの大勝利となっていると思うよ。」
勝手に思っているが良い。

ほとんどバルサ戦には出場の見込みのないエルゲラも仲間のノーテンキ組に混じって大はしゃぎだ。
「俺たちは大事な試合を前にしてアルバセテ(アルバセテ!)相手に6点も入れたんだぜ。なにやら地中海側のメディアは俺たちのことを『点の取れないチーム』とかなんとかほざいていたようだが、6点も(アルバセテ!)入れたことを忘れちゃあいけない。まあバルサ戦もそれに近いような得点となるかも知れないね。」
そうですね、6−1、そういうスコアーの可能性はじゅうぶんあり得ます。

普段はあまりしゃべらない選手がこうだからして、ロベルト・クチカルロスが黙っているわけがない。
「これまでは確かに良い試合内容ではなかったことは認めよう。それでも、例えば良い試合内容で我々に立ち向かってきたヘタフェ(ヘタフェ!)相手にもアルバセテ(アルバセテ!)相手にも我々は結果的に勝利してきている。もしカンプノウで我々らしい良い試合内容で戦えることができたら、そりゃあバルサといえども俺たちに勝てるわけがないさ。ヨーロッパの中でも最もスペクタクルな試合をしていると言われているバルサに俺たちはたった4ポイント差しかないんだぜ。イマイチの試合内容でこれなんだから、良い試合をしたら俺たちの勝ちに決まってるじゃん。」
ベレッティとジュリーのプレッシャーの前にセンターラインを一歩もこえられないであろうクチカル。


両チームの練習

バルサ、マドリとも多くの代表選手によって構成されているチームのため、今週はほとんど練習期間がない。全員揃ってのまともな練習日は多くて2日間、少なければ1日しかないというのが現状だ。だが、代表戦がある週にはよくあることだからして、クラシコに向けての言い訳にはならないのはもちろんだ。

余裕のレモンちゃんはただでさえ練習日が少ないというのに月曜日、火曜日と完全休養日としている。もっとも、普段使用している練習場はスペインフットボール協会の持ち物であり、このグランドでは代表の選手たちが練習しているため彼らがいる限り満足な練習はできないことも理由となっている。そう、ギャラクティコを抱える世界一のクラブを目指すレアル・マドリはクラブ専用の練習場さえ持っていない珍しいビッグクラブなのだ。あのヘタフェやアルバセテでさえ立派な練習場を持っているのに。

もともとこのチームは選手全員揃っての練習はそれほど必要ない性格を持っている。素晴らしい才能を持った個々の選手がチームそのものを形成させていくという発想がバルサであるならば、やはり素晴らしい才能と名声とゼニを持ったクラック選手がいかに勝手に試合を決めてくれるかというのがレアル・マドリだからして、彼らには選手全員揃っての練習はそれほど必要ないビッグクラブなのだ。しかもクラック選手はそれぞれ代表のチームで練習しているからしてレモンちゃん監督は安心な週を過ごすということになる。

一方、我らがバルサといえば、選手が少ないながらも月曜日は普通の練習をしている。火曜日ももちろん練習となり、開始時間は午後の5時30分。すでに負傷なんて平気のチャラのベレッティは周りの選手と同じようなメニューをこなし、金曜日までの負傷選手であるプジョーもジムでのトレーニング。そして水曜日は完全休養日としている。この日、ミニエスタディではアンドラ代表対オランダ代表の試合があり、多くの選手が観戦にいくことになるからだ。

木曜日の練習は午後の6時から。もしロナルディーニョが予定通りバルセロナ入りすることが可能となれば全員揃っての初の練習日となる。そしてクラシコ前日の金曜日にはプジョーも参加しての本格的な練習がおこなわれる予定。


 2004年11月16日 ●●●
クラシコ前日まで多くの選手が不在

日曜日におこなわれたベティス戦が終了し、月曜日からは気分も新たに週末のクラシコに向けての練習が始まった。だが、いつものことながら、週中に多くの代表戦が組まれているため、それに参加する選手は早ければ木曜日の練習に参加、ロナルディーニョみたいに地球の果てで試合をする選手は金曜日だけの練習参加となる。

スペイン国内での試合が予定されているスペイン代表とスペインU21代表。したがってチャビとイニエスタ、ルーベンは旅の疲れもまったくなく木曜日の練習に参加してくることになるだろう。そしてもう一人、スペイン国内で試合をする選手がジオ。アンドラ対オランダ代表の試合はミニエスタディでおこなわれるため、カンプノウから道路をひとつ隔てればいいだけのジオが一番ラクチン。ラクチン組は彼以外にもいる。代表戦がありながらも参加しないことを許されているマルケスとラルソンはバルセロナに居残るからだ。負傷ということで代表戦には出場できないプジョーもクラシコまでの良い休暇となるだろう。

フランス代表は地元で試合をするためジュリーもラクチン。ルクセンブルグで戦うポルトガル代表に参加するデコもラクチン組だ。したがって3000キロ前後の距離を往復するロナルディーニョだけが疲れを伴う代表参加となる。それでもここのところ運動不足の彼だからして、クラシコに向けてのいい調整となるかも知れない。


プジョー、ジェラール、エルゲラ

クラシコ出場が危ぶまれている三人の選手、それがプジョー、ジェラール、エルゲラ。間に合ってもギリギリと思われていたベレッティはすでに月曜日の練習で平気な顔して参加してきているからクラシコでの出場は間違いないところだろう。したがって数日を残した現在の段階でヤバイのはこの三人だけだ。

アルバセテ戦前から右足ヒザの痛みを訴えていたエルゲラは試合中に更に悪化させてしまったようだ。土曜日までに完治する可能性はほとんどないものの、もしレモンちゃん監督がどうしても彼の力を必要だと考えた場合、痛み止めをめいっぱい打った上に故障箇所を厳重に固めることによって出場は可能となるかも知れない。だがメレンゲドクターはこの緊急処置に反対している。それでもレモンとエルゲラが合意に達したら緊急出場の可能性がある、が、そんなことはどうでもいい。出たければ出なさい。

プジョーの怪我は右足ヒザ。ベティス終了後に簡単におこなったバルサドクターによる診断ではクラシコに間に合うかどうかギリギリの負傷となっている。ということは全治1週間程度の負傷ということであり、プジョーはプジョーだから金曜日には治ってしまうだろう。したがってプジョーの試合出場の可能性は大の大。やはりベティス戦で誰にも知られずひっそりと負傷していたジェラール。彼の今度の負傷箇所は右足筋肉だと自分で語る。
「痛みがとれそうもないのでクラシコの試合に出場するのは難しいと思う。」
うん、それじゃあ、やっぱり出場は難しいね。


 2004年11月16日 ●●
グランド

クラブがおこなっているクラシコに向けての準備は大がかりな警備体制とか、貴賓席に誰を招待するとか、子豚の丸焼きが投げられてもグランドに届かないようなネットを張るとか、まあ、想像する限りたくさんのことがある。そういう準備の中でも選手たちにとって最も重要なこと、つまり安心して快適に走り回れるためのグランド整備が上げられる。

通常2週間に1回しか使用しないカンプノウ。したがって一試合終わる事に2週間の整備期間があり、次の試合相手がどこであろうと整備体制に抜かりはない。だがクラシコとなると普段とは違う整備体制がひかれることになる。世界各国へのテレビ同時中継がおこなわれるようなビッグ試合であれば世界中の注目を浴びることになるカンプノウだからして、バルサが展開するフットボールと同じような美しいグランド風景を提供することがクラブに義務づけられるからだ。さらに今シーズンは芝の影響かどうかは別として多くの負傷者を出しているカンプノウでもある。これまでの試合を見る限り、南北両方のゴール前の芝はすでに削られ土が露呈して見える情けない風景だ。整備スタッフの目的はペンキを塗ろうが何しようがとにかく真っ青な美しい芝に見せること。もちろん選手たちが負傷しないようにできる限り平らなグランドにすること。そして時間が許せば、ゴール前にも芝を植え付けること。ちなみに、ゴール裏のネットはすでに完成されている。豚の丸焼きどころか象が投げられようがバッチシと防ぐような丈夫なネットが張られている。


チケット

昨シーズンのクラシコと違い、今回は一般販売用のチケット窓口は開かないことになるだろうとすでに発表しているクラブ側だが、それでもまったくチケット窓口が開かないかというとそうとは言い切れない。なぜならこの試合に来れないソシオや少しお小遣いを稼ごうというソシオが“シエント・リブレ”システムを利用して彼らの席を第三者に譲る可能性は十分あるからだ。3週間前にはこれらの人々が放棄した500席のチケットが売りに出されていた。だが、もちろんそれらのチケットはすでに売り切れとなっている。そして試合前日、あるいは当日にチケット窓口が開いたとしても、その対象はアボノではない2万人のソシオ専用のものとなる。

したがってソシオではない人がクラシコを観戦しようとすると、基本的には当日たくさんでるであろうダフ屋から購入するしかないことになる。だが、それはあくまでも“基本的”なことであり、21世紀に住む現代人はインターネットを通じての購入が可能だ。いろいろなチケット屋がすでにこの試合のチケットをインターネットを通じて発売している。その中には“シエント・リブレ”では儲けが少ないし、当日カンプノウに行ってダフ屋の真似事をするのも面倒だというソシオが、直接インターネットで競売をしているのも多いようだ。


 2004年11月16日 ●
ブーイングされる審判はこの人

アルベルト・ウンディアーノ・マルエンコ、1999−00シーズンに一部デビューを果たし現在31歳という最も若いバスク人審判がクラシコの笛を吹くことになった。これまでこの若き審判はバルサの試合を10試合、マドリには7試合の笛を吹いている。4勝1敗5分け、それがバルサ戦の結果、5勝1敗1分けがマドリ戦の結果となっている。

「審判としては夢の一つであるクラシコの笛を吹くことになった感想は?」
と聞かれたウンディアーノ審判。
「試合前にはいっさいのコメントをしないのが審判としてのエチケット。したがって私も個人的な感想であれ何であれいっさいのコメントは避けようと思う。もちろんこの職業に就いている人間にとってこの試合は特別なものであることは認めよう。だがいっさいのコメントをする気はない。」
こう、コメントしている。


テレビ中継

スペインでは土曜日におこなわれる1試合だけがオープン番組として無料で全国に放映される仕組みとなっている。残りの9試合のうち日曜日に開催される1試合だけがカナル+に加入している人々だけに無料で放映されるものの、その他の試合はすべてペイ・パー・ビューとなり有料だ。だが先週の土曜日におこなわれたア・コルーニャ対レバンテの試合はオープン番組であったにも関わらず何百万という人々がテレビ観戦をすることが不可能となった。

土曜日のオープン番組は各州にある地方局を通じておこなわれている。だが現実的にこの地方局というのは大きな州、例えばカタルーニャ、マドリ、バレンシア、バスク、アンダルシア、ガリシアというような大人口を抱えている州にしか存在せず、これらに属さない小さな州に住む人々には、全国局であるTVEが地方局に変わって映像を送ることなっている。そして今シーズンの大きな問題は、リーガの放映権を所有するフォルタという会社とTVEがいまだに放映権料をめぐって合意に達していないことだ。したがって先週末のような事件が起きてしまう。だが問題はここで終わらない。なぜなら先週のア・コルーニャ対レバンテの試合はマドリ州に住む人々も見ることができなかった。その理由は簡単明瞭、マドリ地方局のテレマドリがストライキ中だからだ。そしてクラシコという大事な試合を前に大きな変化がない限り、マドリ州に住むメレンゲ族は彼らのクラブが圧倒的なバルサの強さの前に沈没するところを幸運にも見なくてすむことになる。