Title

5-0 花火 掲示板

 バルセロナ 11月30日 14時00分

雨中での歴史的フィエスタ!

FC BARCELONA 5 - 0 REAL MADRID

1-0(09M) XAVI
2-0(17M) PEDRO
3-0(54M) VILLA
4-0(66M) VILLA
5-0(90M) JEFFREN

[出場選手]
VALDES, ALVES, PIQUE, PUYOL, ABIDAL, BUSQUETS, INIESTA, XAVI(KEITA 86M), PEDRO(JEFFREN 86M), MESSI, VILLA(BOJAN 75M)

統計と呼ばれるほどのものではないから、あくまでもこれまでの傾向としよう。バルサ誕生111年目を記念するこのクラシコでは、その“これまでの傾向”そのままの結果がでている。例えば、モウリーニョ率いるチームは、これまでのようにカンプノウでは勝利できないこと。ロナルドはバルサ相手にゴールを決められないこと。同じように、メッシーはモウリーニョチームからゴールを奪えないこと。そして、どうでも良いことながら、モザイクが出るクラシコは雨になること。さらに付け加えるなら、勝利すれば監督のおかげ、負けたときには選手に責任になすりつけるモウリーニョが、やはり試合後には選手のせいにしていること。世の中、そう急激には変わらない。

しつっこく降り続ける雨の中、選手のいないグラウンドに突然のようにイムノが流れる。これはオフサイドイムノか、と思いながら、ハッと気がついた。そうだ、バルサ誕生111年目の、この日を祝うハッピーバースデーソングだ。ということで、試合前にイムノを2回も唄うという初の経験。世の中、新しいことは常にある。

普通、どんな試合であっても、見に行った試合内容はよく覚えている。試合中に誰がゴールを決めて、誰がスッテンコロリンして、誰と誰が揉めあったとか、そういうことを結構覚えているものだ。だが、クラシコだけは試合内容が記憶の中から消えてしまう。細かいことをすっかり忘れてしまう。興奮しすぎなのだ。周りの誰かさんと抱き合ったとか、どんな別れ方をしたとか、そういうどうでもいいことしか覚えていない。人間、興奮しすぎると、当然ながら冷静さが欠けてしまい、同時に記憶ノートに書かれたことも忘れてしまうのだろう。

それでも、この日のマドリの最高のプレーが、ペップに対するロナルドの個人プレーだったことは覚えている。この個人プレーで、それまで流れるようなボール回しをしていたバルサにほんのチョットとはいえ、リズムの衰えが見えたような気がした。だが、個人プレーはあくまでも個人プレーに過ぎず、11人の選手によって繰り広げられるチームプレーにはかなわない。

17年前、観客席に片手を広げて5点ということを強調したのは、クライフ監督の時にコーチをしていたトニー・スロット(こういうことはよく覚えている)だった。今回はピケが片手を高だかとあげて、5点を強調していた。そう、個人的にはカンプノウ・クラシコで経験する2回目の5−0というスコア。まことにもって象徴的なスコア。4−0より、6−0より、5−0というのは、どういうわけか象徴的な数字となる。

何日か前に、カンプノウに登場するであろう、いくつかのカンティコを列記してみた。予想通り、紹介したものはぼ出てきたが、“Preciaaaaado, Preciaaaaado”とか“Canaaaaaalla, canaaaaaalla”というのは登場してこなかった。その変わり、思わぬカンティコが誕生している。後半に入ってから、試合後の記者会見でどのような言い訳をしようかと考えていたせいか、一歩もベンチを出てこなくなったモウリーニョを見逃さない鋭いバルセロニスタ。そこで、ガンタナメラのメロディーを元にして、こんなのが誕生した。

“Sal del banquillo, Mourinho sal del banquillo”
サル デ バンキージョ モウリーニョ サル デ バンキージョ

モウリーニョ、ベンチから出てこいよ!というカンティコ。笑える、とても笑える。状況を的確に捉えたユーモア満載のカンティコ。良いセンスしているぞい、バルセロニスタ!

そして、今突然思い出した、モウリーニョの批判に対してのプレシアードが語った言葉。
「ツバを上に吐くと、自分の顔に落っこちてくるんだぞ。そこを考えた上で、ツバを吐け。コーニョ!」
立派な教訓のお言葉であります。

93−94シーズンのクラシコで5−0で勝利した“ドリームチーム”が、この何か月かあとに終焉を迎えることになるが、ペップの“ドリームチーム”は、このクラシコを更なるスタートとして、輝かしい歴史を、もっともっと作りだしていくような気がする。ああ、気持ちのよい朝だこと。早く録画放送を見て、どんな内容の試合だったか確かめなくっちゃ。


 バルセロナ 11月29日 16時00分

スエルテ!バルサ!

スタメン予想

シーズンが開始されてから、常に同じ11人のスタメンを用意してきたモウリーニョに対し、ケイタやマスチェラーノ、あるいはマクスエルなどを適度に混ぜながらも、基本的にはチャビ、イニエスタ、ブスケ、そしてアビダルを最優先して、11人のスタメンを形成してきたペップ。したがって、常識的にはいつものクラシコほどスタメン予想は複雑ではなく、それぞれお決まり11人となる可能性は大。ただ、人々をアッと驚かすのが好きな彼らだから、この常識的な予想を見事に裏切ってくれることもあるかも知れない。いずれにしても、モウリーニョの言葉は信用していないので、いつものスタメンから少々変えたものを予想してみよう。もっとも、この予想が当たろうが当たるまいが、いつものようにバルサはボール支配を目指し、マドリはいつものようにカウンターアタックを狙ってくる、これは間違いなし。

♪オレレ♪オララ♪セルデバルサエス♪アルミジョケア♪
♪オレレ♪オララ♪セルデバルサエス♪アルミジョケア♪
♪オレレ♪オララ♪セルデバルサエス♪アルミジョケア♪

そして、幸運がすべてバルサ側に舞い降りますよう!
スエルテ!バルサ!

ついに試合開始まで5時間だ!


 バルセロナ 11月29日 12時00分

試合当日午前

とてつもなく冷え切ったバルセロナ。これまで雨クラシコという天気予報があったものの、この国の天気予報の当たる確率は、50%と決まっており、寒いながらもどうやらハズレの方の50%となる可能性がでてきたバルセロナ。この午前中のとんでもない寒さが続くなら、ひょっとしたら雪のクラシコとなるかもしれんぞい。

雨だろうが、雪だろうが、何でも来なさいのクラシコ戦。そう、フットボール観戦には寒さが似合う。寒さに震えながら、熱い試合を見るのがグー。奇妙なことに、ここ4、5年続けてクラシコは12月、そして奇妙なことにいつもカンプノウ。したがって、今回も寒い寒い寒いクラシコ、だが、体は冷えない。いや、本当のことを言うと、とてつもなく冷え切ってしまうが、そんなことはちいっとも気にならない試合、それがクラシコというものだ。

試合当日月曜日午前11時30分。ペップバルサの最後の練習が始まる。ペップ監督は、試合前日から選手たちをホテルに缶詰にしないかわりに、試合当日の午前中に練習をしてしまう。軽い軽い1時間弱の練習。これが終われば、みんな一緒に、これまた軽いものを口にして解散し、試合開始1時間45分前、つまり19時15分にカンプノウ集合となる。

これまで二十数回見てきたカンプノウクラシコの中で、これほど強いバルサは見たことがない。マドリはいつものように強敵だが、歴史的にずば抜けたチームでもない。バルサ勝利、この予想はスペイン天気予報のそれより、遙かに信頼できるのであります。

はぁ〜。試合開始まで9時間!


 バルセロナ 11月28日 23時00分

試合前日

待ちに待ったクラシコを翌日に控えた日曜日。両チームの監督が、試合を前にしての最後の記者会見をおこなっている。ペップバルサの練習は昼の11時からと前もって予定されていたが、前日になって急きょ変更され、18時からとなった。マドリの練習は16時からと設定されていたから、記者会見はモウリーニョよりあと(監督記者会見は練習終了後におこなわれる)としたかったのか、そこら辺は外部からはわからないものの、そういう臭いがしないでもない。

さて、モウリーニョの記者会見はマドリTVで、ペップのそれはバルサTVで生中継されるので、見る機会に恵まれることはわかっており、両方ともここでだそうと思っていたが、17時30分ぐらいから始まったモウリーニョの記者会見は、期待されたほど面白くもなく、ジャーナリストと彼との単純な対応が続いた30分の記者会見だったので、ここではカット。ただ、大事な試合となると、いつもスタメン選手の“負傷”を作り出す癖のある彼(昨年のインテル戦ではエスナイデル、今回はイグアインとケディア)だが、イグアイン、ケディアとも何の問題もなく最後の練習に参加してきてるし、モウリーニョもいつものスタメン11人選手で戦うと、嘘か本当かこの人に限っては判断できないが、まあ、そう語っている。

モウリーニョの退屈な記者会見が18時に終了し、空港に行くために待っていたバスに乗り、マドリ御一行は19時のプエンテ・アエレオに乗り込みカンプノウ、いや、バルセロナへと向かっている。そして彼らがエル・プラット空港に到着した頃、ペップの記者会見が始まった。1時間近くの記者会見だが、クラシコ前のピリピリとしたイメージはなく、普段と同じように淡々と続いた会見であり、質疑もそれほど興味深いものとはならなかった。だが、そこはそれ、我らがペップ監督の記者会見内容を少しだけでも掲載しよう。

どういう試合になると思うか?

素晴らしい試合になると思うし、そうなることを期待している。カンプノウ10万観衆の前で、そしてテレビを通して何億人というフットボールファンが注目する中で戦うことになる試合。素晴らしい試合にしなくてはならない。しかも偉大なライバル相手の試合なのだから、心の底から素晴らしい試合になることを期待している。

試合内容としては、昨シーズンのインテル相手の試合と同じような展開となると思うか?

今のマドリは、確かに昨シーズンのインテルに似ているところがある。まあ、監督が同じなのだから当然と言えば当然のことだ。だが、試合は試合ごとに違うものとなるから、今度の試合もインテル戦とは違うものとなるだろう。マドリは世界で最も優秀なカウンターアタックチーム。それが可能となるのは、相手チームが攻撃しなければならないが、我々は堂々と攻撃していくだろう。それがバルサであり、こういう試合だからといって、我々のフィロソフィーを裏切ることはない。

選手たちにはどのような指示をだしたのだろうか?

前にも言ったように、彼らの最大の武器は、スピードあふれるカウンターアタック。もちろんそれを注意しながら、彼らの弱い部分を探しながらの試合展開となるだろう。だが、彼らはこれといった弱点をもっていないチームだけに、難しい試合となるだろう。

クラシコでの勝敗が、リーガの行方にどのように影響するか?

クラシコが大事な試合だというのは間違いないとしても、まだ半数以上の試合が残されているということを考慮しなくては。ポイント的には他の試合と同じ3ポイントであり、リーグ制覇の決定打となるものでもない。

モウリーニョはいつものスタメンで戦うと言っているが、それを信じるか?

疑わなければならない理由が何かあるのかな?

バルサのスタメンは?

それは明日わかることになるが、11人のスタメンが誰であれ、我々は攻撃にでるということぐらい、モウリーニョは理解しているだろう。勝てるかも知れないし、負けるかも知れない。それでも、前にも語ったように、結果などにかかわらず我々の戦い方に変化は起きない。それだけは約束できる。

試合開始まで22時間!


 バルセロナ 11月28日 19時00分

ウリスト様は語る

モウリーニョのように監督としての才能はコレッポッチもないものの、バロン・デ・オロを獲得した、時の最優秀選手である我らがウリスト・ストイチコフ様が、クラシコ前日に、呼ばれもしないのにメディアの前に登場して来ている。

「マドリ?まったくもってヘドのでるクラブだ。モウリーニョマドリとのクラシコ?いつものように、3ポイントを争う試合に過ぎないさ。モウリーニョが監督として来るクラシコだろうが何だろうが、3ポイントに変わりはないだろ!あいつをいつまでも主役にしちゃあいけないぜ!」

そしてバロン・デ・オロ候補について語る。
「ロナルドが優れたフットボール選手だとすれば、俺にとってメッシーは神様だ。確かにロナルドは勝者のメンタリティーを持った選手だし、強烈なキャラクターをもって、決して逃げ隠れしない選手だが、フットボール的には神様にはかなわないぜ。カンプノウにやって来れば、ロナルドもモウリーニョもブーイングの嵐で迎えられるだろうが、バルセロニスタが本当に憎んでいるのはやはりフィーゴだろう。奇妙なことに、みんなポルトガル人だけどな。」

だが、モウリーニョ個人に関してはウリスト節は聞かれない。
「ジョセは多くの人たちが考えるような悪いヤツじゃないぜ。彼の悪い印象の責任の多くは、メディアにあると思っている。俺がブルガリア代表の監督だったときに、ロンドンの彼のところに訪ねていったこともあるし、彼がブルガリアにチャンピオンズの試合でやって来たときには、俺の家で一時楽しい時間を過ごしたこともある。ヤツは人々が考えるほど悪いヤツじゃないぜ。」

試合開始まで26時間!


 バルセロナ 11月28日 14時00分

グランクラシコ

リーガでは首位を走るマドリ(これまで下位チームとの対戦ばっかりだったけどね!)と、わずか1ポイント差で2位につけているバルサ(すでに強敵バレンシア、セビージャ、アトレティコ、ビジャレアルと対戦し勝利!)。チャンピオンズの戦いでは、グループ最終戦を前に、マドリ、バルサ共に、すでにグループ首位を決定。スペイン内だけではなく、ヨーロッパ内でも最強軍団とされるチーム同士の対戦、それが今回のクラシコ中のクラシコ、グランクラシコ。

固いデフェンサと素早いカウンターアタックを強力な武器とし、多くの新加入選手をスタメンに配置しながらも、記録的な早さでチーム作りに(今のところ)成功し、第12節を終了した段階で負け知らず(10勝2分け)のモウリーニョ・マドリ。ムンディアルの影響で、主要メンバーたちのプレステージ開始が遅れ、しかも長いプレシーズンを送ることを余儀なくされたハンディーをさらりと乗り越え、9月中旬からは負け知らず、10月下旬あたりからは、昨シーズンを越える内容で快調さを取り戻し、シーズン開幕以来フエラでの6試合を全勝してきたペップ・バルサ。ここ2試合では11ゴールをもぎ取り、1点の失点も許していない。その両チームが繰り広げるのが、今回のグランクラシコ。

昨年のバロン・デ・オロがレオ・メッシー、一昨年のそれはピノキオ・ロナルド、この2年の間にバロン・デ・オロをとった選手がそれぞれ両チームでプレーし、ムンディアルチャンピオンとなった選手がなんと11人(バルサに8人!マドリはたった3人だよ〜)が繰り広げる今回のグランクラシコ。

スペイン化チームを目指すとほざいた会長がいるにも関わらず、10年前にデビューを飾ったカシージャスを唯一のカンテラ選手とし、7人の外国人選手(ぺぺ、カルバーリョ、マルセロ、ケディラ、オジル、ディ・マリア、ロナルド)がスタメン絶対選手となっており、フィリアルチームと言えば、20才中盤前後の選手を中心にしながら二部Bカテゴリー(二部Bなんてカテゴリーがあったんだ!)で低迷しているマドリ。バルデス、ピケ、プジョー、ブスケ、チャビ、イニエスタ、ペドロ、メッシーという、何と8人のカンテラ選手をスタメンに擁し、フィリアルカテゴリーでは10代の選手を中心に二部A!カテゴリーで上位に食い込んでいるバルサ。この両クラブが展開する今回のグランクラシコ。

これまで4回のクラシコを戦い、すべて勝利(11得点、2失点)という驚異の結果を出しているペップ・バルサ。この4回のクラシコで、昨年のカンプノウクラシコ以外、すべての試合でゴールを決めているレオ・メッシー。チェルシー時代であろうがインテル時代であろうが、モウリーニョが率いたチームは、いまだにカンプノウで勝利を味わったことがなく、マンU時代であろうがマドリ時代であろうが、バルサ相手にゴールを決めたことがない童貞ロナルド。

昨年の8月以来、54試合で50ゴール決めているペナルティー・ロナルド。一方メッシーと言えば、71試合中70ゴールを獲得し、ここ最近9試合では15ゴール(毎試合ゴール)を記録。

そして、もう一つの記録。それは月曜日に開催というのが今回のグランクラシコ。

これだけ例をあげれば、間違いなく今回はクラシコ中のクラシコであり、世界中のフットボールファンが注目する試合と言っても過言ではないだろう。そしてその日がやって来るのは、ついに明日だ!明日!

バ〜モス!バルサ!


 バルセロナ 11月28日 00時00分

カンティコ

日本とは違い、試合の経過なんぞとは無関係に観客を指揮するかのように応援し続ける、いわゆる応援団というものがないからか、観客席から自然発生的に沸き上がるカンティコ(コール?叫び?大合唱?)。相手選手や審判、あるいは成績の悪い状況での地元の選手や監督、首脳陣に飛び出すブーイングとはもちろん違う。ロベルト・カルロスが元気だった頃、彼に対してサルだがゴリラだか知らないが、例の“ウッウッウッ”という、個人的に不快感を感じたヤツもカンティコには入らない。

カンプノウによく流れるカンティコ、それはバルサイムノが一番であり、

Mil vuit cents noranta nou
Neix el club que porto al cor
Blaugrana son els colors
Futbol Club Barceloonaa!
la la la lala la
la la la lala la
la la la lala la
Futbol Club Barcelonaaaaa!

という、ファンの中には歌詞を知らない人も多いので、最後の“フッボクルバロセローォナ!”と部分だけ目立つことになる例のカンティコも多く出現する。そして今回のクラシコで状況次第で飛び出すでことが予想される、いくつかのものを紹介しよう。

Ole le ola la ser del BARCA es EL MILLOR que hi ha!!
オレレ オララ セルデバルサエス アルミジョケア
“バルセロニスタであるということは最高さ!”というこのカンティコはここ数年よく聞かれるようになったが、このカタランバージョンではなく、カステジャーノ版で他のスタジアムで歌詞を変えて聴いた覚えがあるし、いったいどういう風に誕生したものかよくわからない。

Ese portugues que hijo puta es
エッセ ポルトゲス ケ イホプタ エス!
あえて日本語に訳すことはしないが、フィーゴが白いユニを着こんで初めてカンプノウにやって来た時に生まれた記憶がある。ポルトガル人対する人種差別的な聞こえがあるので、嫌な感じがするという人もいるが・・・。まあ、試合状況に関係なく登場すること間違いなし。

Madrid. cabron, saluda al campeon
マドリ カブロン サルーダ カンペオン
もし後半あたりでバルサがリードしているようなシーンであれば、これまた登場すること請け合い。

Vete a teatro, Vete a teatro, Vete a teatro, Mourinyo vete a teatro
ベ〜テ ア テアトロ ベ〜テ ア テアトロ ベ〜テ ア テアトロ モウリーニョ ベテ ア テアトロ
チェルシーとの試合でメッシーに対してファールしたオルノ(確か、こんな名前でしたよね)が退場になったことがあるが、試合後に監督のモウリーニョが「カタルーニャは優秀なテアトロ(シアター)がいくつもあるが、メッシーのそれはまさにテアトロだ。」としたのがきっかけで、その後モウリーニョチームが来るごとに唄われることになったカンティコ。ガンタナメラのメロディーで歌われる。状況がバルサ優位であれば、間違いなく登場。

Preciaaaaado, Preciaaaaado
プレシアァァァード プレシアァァァード
上の三つとは異なり、まだカンプノウには流れたことのないカンティコ。モウリーニョとヒホン監督プレシアードとの確執から、嫌みたっぷりに登場する可能あり。

Canaaaaaalla, canaaaaaalla
カナァァァージャ カナァァァージャ
これもまだ未登場のカンティコ。モウリーニョの批判に怒り狂ったプレシアードが、モウリーニョはカナージャ(ろくどなしとでも訳しておくか)と言ったところからきている。それ以降、流行語の一つとなりつつある。これが登場する可能性は少ないが、ないわけじゃない。

Meeeeeessi, Meeeeessi
もうこれがでるようになれば、バルサの勝利間違いなし。

これらの楽しいカンティコの登場が予想されるが、一方、試合観戦を見事にしらけさせてくれる例のジミージャンプの出現はご遠慮願いたい。自らのHP(http://www.jimmyjump.com/)で、こやつハプニング実現を狙っているぞ。


 バルセロナ 11月27日 17時00分

第14節 ベティスーバルサB

13試合を消化した段階で9勝2敗2分け、奪ったゴール31、失点12、そして地元では6戦全勝という完璧な結果をだして、二部リーグ首位を走るベティス。彼らの本拠地を訪れるルーチョバルサは、これまで7勝4敗2分け、奪ったゴール21、失点19、フエラの試合では2勝3敗1分け。この数字を見ただけでも、明らかにベティス有利な試合となりそうな予感。

この試合、ルーチョバルサのリーダーとして活躍しているセルジ・ロベルトは軽い負傷のため出場できない。これまで控え選手となっているプラーナスもまた、風邪引きさんということで参加してきていない。ベテラン選手アルマンドはカード制裁でやはり不参加。ミーニョ、ベンジャ、マルティンは戦術的理由とかで遠征に加わっていない。ルーチョバルサには、このミーニョ、オイエル、そしてマシップという3人のポルテロがいるが、ミーニョが一番出場機会が多いとは言え、ルーチョ監督は誰を控えとするわけでもなく、他の二人にも多くのチャンスを与えてきている。前回はマシップ、そして今回はオイエルということになった。

「こういうスタジアムで試合ができるということが、あぁ〜、我々は本当に二部カテゴリーでプレーしているんだな、と実感させてくれる。試合結果に関係なく、こういう試合は我々が勝ち取ったプレミアだと感じている。」
バルサB相手の試合ということもあり、前日の予想では久しぶりの5万観衆によって埋め尽くされるとされていた。それを聞いてこう答えていたオリオル・ロメウ。そりゃそうだ、ミニエスタディじゃあ大盛況でも5千人程度。こういうところで試合経験を積むことにより、若手選手たちは成長していくってもんだ。

そして、それではと、テレビをつけたところ、いきなりガラガラの観客席。カメラがグラウンドにへと移行していくと、何とプールのような状態。審判三人組が出てきて、ボールを転がしグランド状態を確認。ボールはまったく走らず、ということで雨天中止となってしまいました。昨日あたりからスペインを襲ってきている低気圧の影響による大雨により、若手選手の経験値アップは残念ながらゼロとなりました。

今のところ地中海側は救われているものの、果たして月曜日のカンプノウ上空はいかがなものでありましょうか。モザイク=雨、ここ最近のパターンを粉砕せよ!


 バルセロナ 11月27日 14時00分

静寂と騒音

アルメリア戦が終了し、試合後の汗を流すレオメッシー。シャワー室をでたあと、廊下で待っていた彼のファンだという10才ぐらいの女の子のもとに一人で近づいていき、カメラを前にして一緒にポーズを取り、彼女の着ていたTシャツにサインをしている。その後、控え室に置かれていたバルサユニでいっぱいになっている段ボール箱を、アルメリア選手がいるロッカールームへと、やはり一人で向かうレオ・メッシー。だが、メディアの前に出てきた彼は多くのことを語らない。いつものように、ごく普通の23才の青年が語るように、淡々とブツブツと、それでもどこまでも恥ずかしそうに語るレオ・メッシー。

アルゼンチンジャーナリストのレオナルド・ファッチオが“エティケッタ・ネグラ”という雑誌の中で次のようにレオに関して書いている。
「小学生の頃、どこまでも内気な彼は、教師のドミナとのコミュニケーションにも問題があったようだ。レオ少年とドミナとの“会話”は、彼の隣に座っている仲の良かった女の子を通じておこなわれるほどだった。昼食のサンドイッチも一人で買いに行くことができなかったので、ほとんど彼女が代行して買ってくるという毎日だった。まるで母親のようだったけれど、レオがそれを望んだんだ。それほど内気な少年だった。」

23才となった今でも、基本的に当時のメッシーと変わっていない。どこまでも内気で、決して自分からは進んで物事を語ろうとはしない。隣に座る親友の女の子が当時の“母親”役を演じていたとすれば、現在のそれはペップ・グアルディオラが務めている。メッシーが望むことを誰よりも早く察して、希望が叶うようにしているのが、バルサ監督ペップだった。子供の頃の性格そのままであると同時に、フットボールに対する思いも、子供の頃のそれと変わっていない。誤解を恐れず言うなら、友達たちと楽しむために遊びとしてフットボールをしていた子供時代と同じように、スーパースターとなった今でも、楽しむためにフットボールをやっているような感じだ。それをペップ監督は許し続けている。その精神が、レオにとってもバルサにとっても、大事なものだと理解しているからだ。

グラウンドの中でのスペクタクルなプレーとは裏腹に、私生活の面では非常に地味なレオ・メッシー。言い換えるなら“退屈な生活”といっても良いだろう。プレーステーションで遊ぶのにあきた今、彼の唯一の楽しみは、自宅のソファーに横になってのシエスタだという。シエスタから目覚めた数時間後に、鳥の丸焼きがテーブルに用意されていれば、それは最高の日ともなる、世界最優秀フットボール選手のレオ・メッシー。

同じようにフットボールという世界に身を置きながらも、クリスティアン・ロナルドの世界はメッシーのそれとは別世界と言える。選ばれたものだけが持つ強靱なフィジカルをさらけだすのを好み、ステージにたつ一流モデルのように身だしなみに気を使い、映画スターのように女性問題で話題を提供し、うぬぼれ屋で気取りやであることを隠さない。

ビルバオ戦が終了し、彼を取り巻くメディアを前にして語るロナルド。
「果たして、アルメリア戦のように、バルサが8点もゴールを俺たちにきめることができるかどうか、それは見ものじゃないか。」
挑発的な発言と言えばそうなるだろう。メッシーの口からは決して聞かれることはないが、ロナルドからはこういう発言はごく普通に聞かれる。静寂と騒音。

メッシーを誰よりも理解しているのがペップのように、このロナルドを最も理解しているのがマドリ監督のモウリーニョと言える。騒音を好み、主役として注目されることを好み、批判などクソ喰らえとばかりに、考えていることをそのまま言葉にすることを好むこの二人。ワンタッチフットボールのスペクタクルよりは、あくまでも直線的なダイレクトフットボールを代表するという意味でも同じ二人だ。

フットボールをまるで“戦争”の一種だととらえるモウリーニョ。フットボールはゲームでありスポーツであると同時に、人々のセンチメンタルなものであるとするペップ。プロフェッショナルとして、結果をだすことが、すべての他のことを優先すると理解するモウリーニョ。フットボールを愛する人々に、スペクタクルを提供することが、結果を越えたところに存在すると理解するペップ。タルヘッタを清算させるように選手に要請しながら、そのタルヘッタを示した審判の判定に、ペットボトルをベンチに投げつけて、怒りの猿芝居をすることも仕事の一つだと考えるモウリーニョ。そのことを聞かれて、まるで俺には関係ないことだよ、という感じで沈黙を守るペップ。

マンチェスター時代にも現在のマドリ選手としても、これまで1ゴールもバルサ相手には決めていないロナルド。マドリ戦には数多くのゴールを決めながらも、モウリーニョ監督のチーム(チェルシー、インテル)には数試合出場しながら、まだゴールを記録していないメッシー。フットボール界を代表すると言っていい二つのビッグクラブの、それぞれのクラブを代表する二人のクラック。静寂と騒音。正反対のキャラクターを持つ二人の監督と同じように、やはり正反対の二人のクラックがプレーする世紀の祭典まで明後日と迫ってきた。

[ 参考メディア ] エル・パイス紙、その他もろもろ


 バルセロナ 11月27日 00時00分

マスチェラーノ

ビージャ、マスチェラーノ、そしてアドリアーノという今シーズン加入してきた3人の選手たち。ビージャはサラゴサやバレンシア、あるいはセレクシオンで見慣れていた選手ということもあり、どのようなプレーを見せてくれるかは、加入が決まった段階で、それなりにアイデアが浮かぶというものだ。アドリアーノはセビージャでプレーしているが、それほどスタメンで出てきている選手でもなかったし、マスチェラーノに至っては、よほど暇なときに見るイングランドの試合で、時たまあらわれた選手であることから、バルセロニスタにとっては、この二人の選手がどのような働きを見せてくれるのか、それは興味あることだっただろう。彼らがバルサユニを着てくれてから3か月程度たったいま、個人的には新加入選手全員、非常に気に入っている。そしてもちろん、彼らにとって初のクラシコだ。

「世界中が注目するであろうこういう試合に参加できることは、フットボールの世界に生きてきた自分にとって、これ以上の光栄はないと思っている。これまでクラシコと言えば、リーベル対ボカ、マンU対リバプールというのを経験してきたが、多くの関係者が語るように、バルサ対マドリのクラシコは超特別なものだろう。月曜日が来るのを首を長くして待っている。非常に楽しみだ。」
昨日あたりから、かなりの時間をさいてクラシコ特集モードとなったバルサTVのインタビューに、そう語る我らがマスチェラーノ。

「セビージャにいるときから、テレビ画面をとおして一試合も逃さずクラシコを見てきた。まさか、自分がこういう世紀の祭典に参加できるとは、今でも信じられないぐらいさ。出番があるかどうかわからないけれど、いつでもグラウンドにでる心の準備は欠かさないさ。」
アドリアーノもまた、こうバルサTVのインタビューで答えている。

これまでの試合を見る限り、マスチェラーノという人は、非常に学習能力が高い選手だという感じがする。プロ選手として10年近くフットボールの世界に生きてきて、これまで経験したことのないフィロソフィーとシステムの中でプレーすることを義務づけられた彼だが、試合ごとに馴染んできているようだ。これまで相手選手からボールを奪うことが、彼に優先された仕事であったのに、バルサに来てみればボールを所有しているのは常に味方の選手。シーズン開始当初は何が己に課された仕事なのか、これまでとはあまりにも違う試合内容に途方に暮れた、とも語っている。
「バルサのシステムは、その高いボール支配率をベースとして成り立っている。シーズン開始当初はそういう状況に慣れていなかったから、これまで経験したことのないシステムにどれだけ早く馴染んでいけるか、それが自分に与えられた課題だと理解した。毎日の練習が学習、学習、学習に明け暮れた。それは今でも同じさ。ポジションはこれまで経験してきたものとまったく同じだけれど、その役目は全然違うんだから。守備的なピボッテとしての仕事は過去に比べてだいぶ減っているが、集中力はこれまでにないほど必要だと感じている。」

ここ5試合で4回のスタメン出場。ペップ監督の彼への信頼度が高まっている証拠だ。
「今に限ったことじゃなくて、最初から監督は自分を信頼してくれていたさ。でも今の段階では、少なくても今回のクラシコは、やはりブスケがスタメンとして相応しいと思っている。今のところの自分が目指すものは、プレーするチャンスを与えられたときに、しっかりと役目を果たすことさ。」
何とまあ、控えめな方でありましょうか。

そして、このインタビューを次のように締めくくっている。
「クラシコは確かに大事な試合だし、クラブのためにも、ファンのためにも勝利したいと思う。だが、このクラブの、他の多くのビッククラブと呼ばれるところとの決定的な違いは、これまでこういう大事な試合に勝利したり、あるいはタイトルを獲得してきたこと以上に、その戦いのフィロソフィーにあるのだと思う。世界にある多くのクラブの中で、このバルサというクラブだけが持つ、バルサスタイルというものが確立していることにあるのだと思う。自分の人生の中で、こういうクラブに在籍したのはもちろん初めての経験だ。他のクラブと同じように試合結果が大事なことには変わりない。だが、その結果が例え否定的なものとなっても、このクラブのフィロソフィーが変わるということはないんだから、素晴らしいじゃないか。」
あなたも素晴らしいです。

アルゼンチン代表カピタンであるマスチェラーノ。メッシーはバルサといい、セレクシオンといい、とてつもなく良いカピタンたちに恵まれている。


 バルセロナ 11月26日 14時00分

ルーチョバルサ(2)

ルーチョ監督の方針の中で、一つだけ気になることがある。昨シーズンもそうだったが、試合前数日間の練習に参加してきていない選手は、ほぼ間違いなく試合には出場させないことだ。例えば昨シーズン、ティアゴがペップチームの練習に参加するようになってから、彼はほとんでルーチョバルサの試合に出場してきていない。決してペップチームの試合に招集されているわけでもないのに、ルーチョバルサでは出番が与えられなくなってしまった。今シーズンはジョナタンが同じ目にあっている。今シーズンがスタートしてから、ジョナタンはほとんどルーチョバルサでプレーしていない。後半あたりに顔を出してくることがあっても、スタメン出場というのはほとんどない気がする。この方針は、果たしていかがなものでありましょうか。

という、小さな批判というか疑問がありながらも、ルーチョ監督への賞賛は語り尽くせないほどある。その中の一つ、多くの若手選手の大胆な起用は、賞賛しても賞賛し尽くせないほどのものだと思っている。すべての選手を列記したら、このクラシココーナーが終わってしまうほど時間がかかるだろうから、ごく一部の特に気になる選手だけを紹介しよう。

ルーベン・ミーニョ
シーズンごとに成長を見せているポルテロだが、今シーズンはこれまでになく大きな成長を遂げている選手。ペップバルサチームで親善試合とはいえ試合出場を果たしたり、カップ戦などでベンチ入りすることができたのが、ステップアップしてきた大きな原因かも知れない。バルサB所属ながら、ペップバルサの第三ポルテロとなっており、来シーズンはバルデスの控えとなる可能性もあるだろう。

マルティン・モントーヤ
ベンジャミンカテゴリーからいる選手だから、クラブ在籍10年となるバルサの“ベテラン“選手だ。ルーチョバルサチームのアルベスと言えるほど運動量が多く、攻撃参加を好む選手であり、そしてアルベスと同じように試合出場数も多い。何と言っても、今シーズンが始まってから全試合スタメン出場なのは彼一人なのだから。来シーズンもこのカテゴリーで経験を積み、これまでどおり負傷などしないシーズンをおくることができれば、ペップチームでも確実に計算できる選手となることを期待。

マーク・バルトラ
体の線はまだ細い感じがするが、あと2、3年すればガッチリとしたフィジカルになるのだろう。ラテラルとセントラルをこなす器用な選手。ヒホンに移籍していったボティアと似た選手だったが、最近の彼のプレーを見ているとピケと似てきたところがあるようだ。ボールを持ってスイスイと上がっていくのが特徴だし、コーナーキックのさいのヘディングシュートもなかなかのもの。モントーヤと同じように、来シーズンもこのカテゴリーで経験を積むべし。

マーク・ムニエッサ
アレビンカテゴリーからセントラルをやったり左ラテラルをやってきた選手だが、カデッテ、フベニルカテゴリーあたりからセントラル専門になっていた。ところが今シーズンはセントラル選手があまっていたり、左ラテラル選手の不足と言うこともあり、ラテラルでプレーすることが多い。だが、個人的にはセントラルが似合う選手だと思っている。アンダーの代表戦への招集や負傷などが重なって、いまのところルーチョバルサでは目立った存在とはなっていない。だが、素材は素晴らしいものがある選手だけに、試合出場の継続性さえ与えられれば、更に大きく成長すること間違いなし。

オリオル・ロメウ
かつてのテージョがフィジカル面に問題があるとしてバルサを去っていくことになったが、このロメウも同じ理由でエスパニョールでは計算外選手となり、バルサに来ている。そしてやはりテージョと同じように、フィジカル的には大きな成長を見せている選手。ヤヤの移籍によってシーズン開始前にはペップバルサでの出番がやって来るのではと予想されたが、マスチェラーノの加入でそれはなくなった。だが、それでいいと思っている。ブスケと並んで、ペップバルサ将来の4番という評価は変わらないが、このカテゴリーでまだまだ経験を積む方が良い。

ティアゴ・アルカンタラ
ポジション的に同じチャビやイニエスタとよく比較されるが、タイプは少々異なる。誰かと比較するのなら、個人的には90年代後半に登場した若きイバン・デ・ラ・ペーニャの再来としたい。いや、イバンのブラジル版としたほうが正確か。彼にボールが渡った瞬間から周りの選手たちがそろって相手ゴールに向かう。そして観客はいつか飛び出すであろう“スーパーパス”を見逃すまいと彼に注目する。その期待に応えようとすべてのパスをスーパーにしようとしたところが、イバンの間違いだった。その誤りを繰り返さないように、ペップは慎重に起用し続けている。相手ボールの時のポジショニング、守備面でのお勉強、学ぶことは多くある若きクラック。冬の到来と共に、カンプノウへ引っ越して来るであろう一番手。

セルジ・ロベルト
個人的には一番楽しみにしている選手。バルサカンテラからはなかなか育ってこないフィジカルの強いセントロカンピスタで、左だろうが右だろうが真ん中だろうが、どこでもこなすオールランドプレーヤーだ。ルーチョバルサでプレーするようになってからゴールに恵まれていないが、決してゴール能力に欠けている選手ではない。時代ごとに“一番楽しみにしている選手”がいる(例えば、マリオ、トラッショーラス、ババンジーダ、バリエンテなど)ものだが、イニエスタやメッシーなどという数少ない例外をのぞいて、多くの選手がクラブをあとにしてしまった。だが、このセルジ・ロベルトは違うぞ、と思いたい。

アンドレウ・フォンタス
セントロカンピスタとしてバルサフベニルチームにやって来た彼を初めて見たとき、何やらレドンドに似ているタイプではないかいと感じたのと、色白でフワフワした感じがしたところから、マシュマロマンみたいな雰囲気の選手だったのを思い出す。翌年はバルサBに昇進するが、フベニル時代同様、あまりパッとしたところを見せていなかった。だが、昨シーズン、ルーチョ監督がチーム事情のせいでセントラルに起用し始めてから活躍するようになった。ほんと、こういうのは何がどうなってこうなるのか、よくわからないもんだ。ペップバルサの先日の試合でペドロへのロングパスが光ったことで更に注目度がアップ。彼もまたティアゴと並んでカンプノウ引っ越し組の一人となるか。

ジョナタン・ドス・サントス
シーズンの開始と共に上昇株、とはならず、逆に下降線をたどり始めてしまったかのようだ。メキシコ代表招集を断ってもバルサの試合にのぞんだ時もあったし、ここのところ負傷しているという話も聞いていないし、かといってペップバルサの練習に参加してきているわけでもなく、ルーチョバルサ漬けとなっているし、それなのに最近ほとんどスタメン出場していない。これは、何か臭うんじゃないかい?


 バルセロナ 11月26日 00時00分

ルーチョバルサ(1)

気がついてみれば、このコーナーも折り返し地点を曲がったあたりまで到着し、ここら辺で一息つく意味で、ルイス・エンリケ監督率いるルーチョバルサについて触れてみよう。

今シーズンから二部Aカテゴリーに昇進したルーチョバルサ。ふたを開けてみるまで、果たしてこのカテゴリーでどのくらいやっていけるのか、誰しもが抱いた不安だったが、今の段階で4位のサラマンカと同ポイントで5位につけているというのは、まことにもって立派な成績だと言える。昨シーズン在籍した二部Bカテゴリーの時と同じように快調に飛ばしているし、試合内容に至っては、昨シーズンより遙かに良いところがまた凄い。

シーズン開始当初、ミニエスタディでおこなわれるベティスだとかテネリフェ相手という注目度が高そうな試合では、ソシオからも料金を取ろうとしたセコイ・ルセー一派だが、さすがにこのアイデアは評判が悪く、いつの間にかこれまでのようにソシオはタダとなっていた。ただ、困ったことに、一般のファンには、メインスタンド、バッグスタンド、ゴール裏と三段階の入場料金となり、それぞれの境に警備員がしっかりと見張るようになってしまったことだ。陽の当たっている場所を追い求めて、バックスタンドからゴール裏へ、そして正面スタンドへと移動することがこれまで可能だったが、それができなくなってしまった。これは少々残念なり無念なり。もっとも、二部Aカテゴリーの試合ということで、試合開始時間が21時(この時間じゃあ陽の当たる場所などあるわけがない)だったり、ペップチームとの試合と重なる時間だったりすることも見られるようになった。そういうこともあってか、例年よりはほんの少しだけファンが来るようになったものの、まだまだ空席が超目立つミニエスタディ。ほんと、もったいないです。

さて、下から上がってきた若いカンテラ選手が中心のチームだから、当然ながら“ベテラン”選手の補強がなされている、
・24才デランテロ選手サウル・ベルホン君。ラス・パルマスから移籍
・23才セントロカンピスタ選手カルロス・カルモナ君。レクレから70万ユーロ移籍。
・24才デフェンサ選手アブラン・ミネロ君。ガスパー会長のサンタンドレウから移籍。
・19才デランテロ選手クリスティアン・テージョ君。エスパニョールから出戻り。

この4人が新たにルーチョバルサの一員となった。年齢を見ればわかるように、アレビン時代からバルサインフェリオールカテゴリーでプレーしていたテージョをのぞけば、3人ともルーチョバルサではベテランと呼ばれてもおかしくない選手たち。彼らの経験をいかして試合結果をだそうということと、その経験を若手の間に浸透させて、彼らの成長に役立てば良いということだろう。だが、時間の経過と共に、そのベテラン選手の出番が徐々に少なくなり、結局は下から上がってきた将来期待の若手選手がメインとなるのはいつものことだ。今のところベテラン選手でスタメン確率が多いのは70万ユーロ選手カルモナだけとなっている。

ラ・マシアHPの中の“キラキラ星コーナー”に入っていないものの、クリスティアン・テージョは将来を大いに期待された坊やだった。モントーヤ、バルトラ、テロン、ロメウ、ティアゴ、ロチーナ、パチェッコ、そしてガイという選手で構成されていた、1981年世代チームの貴重なデランテロの一人だった。だが、フィジカル面の成長不足とパチェッコの活躍が彼を次第に控え選手と追いやった。気がついてみればいつの間にかクラブを離れ、そして再び気がついてみれば、何とエスパニョールの選手となっていた。その彼がエスパニョールの延長契約を断って、今シーズンバルサに戻ってきている。身長も180センチ近くなって、大いに成長して戻ってきたようだ。幸運にもペップバルサのプレステージにも参加することができたし、個人的には非常に嬉しい復帰。

ルーチョバルサのおかげで、今シーズンから二部Aリーグの試合を見る機会が多くなった。そこで気がついたことが一つ、どこのチームにも10代の選手などほとんど見られず、大抵が20代後半という感じの選手たちによって、チーム構成されていること。ルーチョバルサのようにフィリアルチームではなく、ほとんどがそのクラブのトップチームの選手であるのだから、まあ、考えてみれば当然のことながら、なぜか不思議な感じがした。ペップバルサが多くのカンテラ出身選手でチーム構成されているのが特徴だとすれば、ルーチョバルサは多くの10代の選手で構成されているのが特徴だと言えるだろう。何たって、これまでの試合を見る限り、本当に若い選手がゴロゴロしているチームなのだ。

ここ最近の試合を例にとってみよう。ポルテロ21才ミーニョ、右ラテラル19才モントーヤ、右セントラル19才バルトラ、左セントラル18才ムニエッサ、左ラテラル19才プラーナス、この4人がデフェンサ4人衆。そしてピボッテに19才ロメウ、右インテリオールに18才ロベルト、左インテリオールにベテラン23才選手カルモナ、これがセントロカンピスタ3人衆。デランテロは右に19才テージョ、真ん中にはかつてのペリーコキラキラ星25才ソリアーノ、そして左に絶好調元気君24才ノリート。ちなみに彼の本名はマヌエル・アグード・ドゥラン、何でノリートというのか、一つ追求してみたいもんだ。

さて、これらの若手の選手の何人が、エリートチームに上がって来られるのだろうか。かつて、左ラテラル選手セルジ・バルジュアンを、右ラテラル選手カルラス・プジョーを、そして最近では右エストレーモ選手ペドロをミニエスタディでプレーしているのを見ながら、
「ふ〜ん、こいつらはエリートチームに上がれる器じゃねえな。売り飛ばしちゃうか、それが無理ならどこかにあげちゃった方がいいんじゃない?」
とブツブツ言っていたカピタンの分析は次回。


 バルセロナ 11月25日 14時00分

必死なんです(2)

モウリーニョの発言や行動に関して聞かれたブートラゲーニョ。ジェントルマンマドリの代表の顔であるはずの彼の返答はこうだった。
「タイトルを獲得するために、我々はモウリーニョを雇ったのであって、決してみんなと仲良くやっていくためじゃない。」
解説者時代には、さんざんモウリーニョを批判したものの、今となっては手をスリスリしながらフロレンティーノ番頭役となっているバルダーノはこうだ。
「我々の監督は理にかなったことを言っただけだ。それに対して意味もなく暴力的な発言をしたのはヒホン監督であるのだから、処分を下されるのは彼一人であり、反暴力委員会がこの二人を同じ穴のムジナとするのは間違っている。そしてその処分とは別に、ヒホン監督は我々に対して謝罪すべきだろう。」

何とまあ〜、ジェントルマンなクラブでありましょうか。本来であるなら、現場での悪意ある発言を消しにかかるのがマドリ首脳陣。だが悪魔のモウリーニョに魂を売ってしまった彼らにはそれはできない。それができないどころか、火にガソリンをそそごうとしているようだ。一方、マドリ背広組の常軌を逸した発言の後を追うかのように、マルカ紙やアス紙を中心とした中央メディアもいっせいにキャンペーンを張った。アンチ・プレシアードのキャンペーンだ。この生意気で、非常識で、口の悪い監督に処分を与えるべきだ、そういうキャンペーンだ。

かつてのレアル・マドリ、それはバルセロニスタの一人と自称する自分が指摘するのもお節介な事ながら、少なくともジェントルマンなクラブであろうと努力する姿勢が、あくまでも表面上は見られたクラブだった。20世紀最高のクラブという大きなプレッシャーがありながら、自己批判の態度を決して忘れようとしない姿勢を、表面上は見せるクラブだった。例え、思いがけなくも敗北という結果で終わろうが、言い訳をしたとしても最低限の言い訳を心がけ、まして弱小チームの監督を笑うような傲慢なマネをすることは、考えられないクラブだった。そこには、他人がどう思おうと、スペイン最高のクラブとしてだけではなく、ヨーロッパにおける最高のクラブとして、子供たちやフットボールファンの鏡であろうとするプライドがあったからだろう。それは中央メディアにしても同じだった。今のように、恥も外聞もなくマドリ万歳提灯記事のコメントで紙面が埋め尽くされることはなかったし、世界最強のクラブを支えているメディアという自覚からか、うぬぼれからか、常に公平の立場を貫く意志を、少なくとも表面上は保っていた。

クライフ監督の末期と、ガスパーが会長となってからの期間、今のマドリのような被害妄想的ともいえる、必死になって自己を正当化しようとするバルサを見ている。そして、その現象はいつの間にかシャトル便に乗ってバルセロナからマドリッドへと飛んで行ってしまったようだ。究極のライバルであるバルサから、何が何でもヘゲモニーを取り戻そうとする必死のマドリがそうさせたのだろう。チャンピオンズ準決勝でバルサを打ち破ったインテルの監督を獲得したのは、現代フットボールの最先端を行くバルサを粉砕するためであっただろうし、これまで表面的には綺麗事を言ってきたその仮面を脱ぎ捨ててまでも、タイトルを獲得しなければならないという、その必死さがそうさせたのだろう。

ベルナベウでおこなわれた先週のビルバオ戦。この試合数日前に、クラブ首脳陣はマドリペーニャに声をかけ、モウリーニョ支持の垂れ幕を用意するように要請している。そのせいもあり、この日の観客席には普段と違って多くの垂れ幕が見られた。その中に次のようなものがあったのを見つけた。
“モウリーニョはイングランドでは国王、イタリアでは法王、そしてスペインでは神だ”
どこまでも口の悪い神様だが、それはよしとしよう。本気かどうかは別として、こういう神にもすがる思いのマドリディスタが多い今だから、かつてのようにジェントルマンであろうとするマドリディスタの声は、今のところ浮上してこない。試合内容がどうであれ、勝利の3ポイントが確実に貯金される週が続けば、そういう声は隠れたままだろうということは想像できる。だが、結果が思うようにでず、ライバルのバルサが快調に飛ばし続けるのを横目で見る瞬間が訪れたとき、それらの声は間違いなく浮上してくるだろう。まあ、彼らからすれば、こんなことは余計なお世話だろうけど・・・。

だから今回のクラシコは楽しい。これまでプライドの固まりだったクラブがあっさりとそれをドブに捨てて、必死の形相でリーガのヘゲモニーを取り戻そうとするその姿勢。ジェントルマン精神などクソ喰らえとばかりに、挑発行為がタイトル獲得に役立つのであれば、喜んでしましょうというその姿勢。いいじゃないですか、楽しいじゃないですか、素晴らしいじゃないですか、そんなことをしてでもバルサに勝てないということを知ったときに、彼らのリアクションがどんなものか、楽しみじゃないですか。それだから、これまで見たことのない必死のマドリ相手のクラシコだから、とてつもなく楽しみなクラシコなのだ。

ビスカ・エル・バルサ!


 バルセロナ 11月25日 00時00分

必死なんです(1)

コペンハーゲンがカザンに敗れ、バルサがパナティナイコスに勝利したことにより、カザンとの最終戦を待たずにグループ1位が決定。実際はそんなことはないのだろうが、バルサの選手たちは普段より省エネモードで動いていたように見えたし、アドリアーノの軽い負傷以外、一人の負傷者もなしというということでメデタシメデタシ。

ということとはまったく関係なく、マドリはまったくもって必死なんです。

11月第二週におこなわれたマドリ対ムルシアの国王杯セカンドラウンドの試合。この試合途中、審判の判断に不満を持ったモウリーニョは、審判に向かってあからさまに暴言を吐いたとして退場処分を喰らっている。その後、彼に対して2試合の出場停止(まあ、監督が試合にでるわけではないから、ベンチ指揮停止とでもしたほうがいいのか?)という処分が下された。

週末のマドリの試合はモリノン・スタジアムに行ってのヒホン戦。あのマノロ・プレシアード監督率いるスポルティング・デ・ヒホン相手の試合だ。この試合の前日、観客席からの指揮をとることになるモウリーニョはラジオ番組に出席し、次のように語っている。
「バルサ相手の試合となると、勝利することを最初から諦めた布陣を用意してくるチームがある限り、我々マドリのリーグ優勝は限りなく難しいことになる。」
それは、第4節におけるヒホンがカンプノウでおこなった試合。負傷者続出ということもあっただろうし、翌週地元で戦われるバレンシア戦に備えるという意味もあってか、ヒホンはこれまでスタメン出場が多かった何人かの選手を地元に残し、普段とはかなり違うメンバーでバルサと戦っている。だが、そのメンバーを見れば、わずか1人をのぞいて、すべてヒホン一部チーム在籍の選手たちであり、カンテラ選手を何人もスタメンに起用して戦おうとしたチームではない。負傷中のメッシーを欠くバルサは地元の試合でありながら苦戦を強いられ、ビージャのゴールで1−0というスコアでやっとこさっとこ勝利することができた。

そして、この試合の翌日、モウリーニョはあの憎たらしい表情を崩さず、タンタンと皮肉っぽい発言をしている。
「バルサ相手の試合となると、勝利することを最初から諦めた布陣を用意してくるチームがある限り、我々マドリのリーグ優勝は限りなく難しいことになる。」
ヒホン監督プレシアードに対する、嫌みったらしいったらありゃしない批判なのは明らかだった。このセリフをヒホン戦を翌日に控えた日、再びモウリーニョは繰り返してインタビューで語ったのだ。

これを聞いたプレシアードの怒りが、正当にも大噴火した。
「試合のすぐ後は、監督にしても選手にしても熱くなっているから、的の外れた暴言も許してやろうってえもんだ。だが、2か月もたってから同じ暴言を吐くってえのは言語道断じゃねえかい。同業者としてとんでもねえ野郎だ。」

ヒホンは誰もが知るようにタイトル獲得を目指すチームではなく、あくまでもカテゴリー残留をシーズンの目的とするチームだ。すべての試合を勝利するために戦うのはもちろんだが、そこはそれ、ビッグチームとは違う戦略と戦術を用意しなければならない。そういうチームを率いている監督たち、例えば、ここ何シーズンかシーズン途中に順位が二部落ち降格ラインまで下がることが見られるエスパニョール監督ポチェティーノ、あるいはそのラインに今シーズン開始当初から腰を落ち着けてしまっているコルーニャ監督のロチーナ、そしてヘタフェ監督であり元メレンゲ選手でもあるあのミッチェルまでが、メディアを通じてこのプレシアード発言を支持することになる。

当然ながらモリノンでのヒホン対マドリの試合は、異様な雰囲気のもとで戦われているが、それでもスタジアム内での衝突や、子豚の頭がグラウンドに登場することなく終了した。だが、こういうヤバイ雰囲気に危機感を感じたのか、反暴力委員会はこの二人の監督に対して何らかの処分を下すように、フットボール連盟に提案している。

あきれた発言ながら、主役としてスポットライト浴びたがりモウリーニョだから、この手のコメントは別に驚きのものじゃない。プロフェッショナルとして自尊心を傷つけられたプレシアードの怒りの発言も理解できる。まあ、反暴力委員会というのも、呼ばれもしないのにちょくちょく顔を出す組織だから、彼らの要請も不思議じゃない。モウリーニョ対プレシアード、マドリ対ヒホンという、問題を起こした直接関係にあるチーム同士の試合が終了したのだから、このスキャンダルはこの時点で消えるものと思っていた。

だが、そうじゃなかった。これまでマドリを知る多くの人々にとっては、まったくもって驚き桃の木山椒の木という感じのスキャンダルがまだ続く。


 バルセロナ 11月24日 14時00分

アテネ

多くのバルセロニスタがアテネに到着している。その数22000人。人数的には2年前のウエンブリーの時とほぼ同じだ。だが多くのバルセロニスタから感じる雰囲気は、2年前のもの(注・ウエンブリーでの決勝戦)とは明らかに違っている。楽観的な雰囲気、ひたすらなまでに楽観的な雰囲気が彼らから伝わってくる決勝戦。だが、それはアテネに集合したバルセロニスタだけではなかった。クラブ首脳陣をはじめ、コーチングスタッフ、選手たち、そして彼らを24時間追い回していたカタランメディアにしても、ウエンブリーの時とは比べものにならないほど超楽観的だった。
(途中略)
それでも試合は戦ってみなければわからない。一つの試合が独自の歴史を作るように、90分の戦いでは何が起きても不思議ではない。まして相手は下降線状態にあるとはいうものの、何と言っても伝統あるミランであり、しかもコパ・デ・ヨーロッパの決勝戦なのだ。
(途中略)
何年もたってからこの試合のことをストイチコフが振り返っている。
「前半に2点のリードを許したとは言え、ハーフタイムでは我々はまだまだひっくり返せる試合だと思っていた。だが“大惨事”は彼らの3点目が入ったときにやって来た。サビセビッチが入れた3点目が我々を完全にノックアウトすることになった。あとはもう試合が1分でも早く終わることを願うような試合だった。4点で済んだことを神様に感謝しなければならないような試合でもあった。我々よりミランの方が圧倒的に強かったんだ。少なくてもあの試合ではな。」
バルサ百年史(第六章)より抜粋。

そう、バルセロニスタにとって、アテネは良い思い出の場所ではない。1994年コパ・デ・ヨーロッパ決勝戦、試合前から圧倒的な優位さを誰しもが認めながらも、バルサはミラン相手に大敗を喫している。歴史を振り返れば、いわゆるドリームチームの墓場ともなった場所と言っていい。だが、今日の試合相手はパナティナイコスであり、決勝戦でもなく単なるグループ戦であり、勝利することが大事な試合とは言え、生か死といったせっぱ詰まった試合とは言えない。ただ、試合前日の練習風景をテレビで見ていたら、スビサレッタの顔が見えたので、つい16年前のこの試合のことを思い出してしまった。敗戦後、空港に向かうバスの中で、クライフから突然来シーズンは計算外選手として通告された彼が、再びそのスタジアムにいるのは、何か歴史のいたずらのようだ。

そのアテネにペップバルサ御一行は試合前日火曜日に到着している。リーグ戦であれば、どんな試合でも当日移動というのがペップのアイデアだが、チャンピオンズとなるとそれが許されない。試合前日の公開記者会見に監督と誰か一人の選手が出席することが義務づけられている。この日はペップ監督とブスケが参加している。もちろん二人とも、クラシコのことに関しては触れていない。質問が飛んでも、このパナティナイコス戦のことしか語れないとして丁重に断っている。先にどんな試合が待っていようとも、最も大事なのは次の試合、それがペップバルサのモットーだ。

だが、それでもあきらめないジャーナリストたち。断っても断ってもクラシコの質問となってしまう。この記者会見もテレビで見る機会に恵まれたが、彼の口からクラシコがらみの返答がでたのは次の発言だけだった。
「クラシコは次の次の試合であり、しかもまだ6日後の試合のことだ。このパナティナイコス戦が終了してから、1日休み、その後ゆっくりと次の試合(クラシコ)について考えていこうと思う。時間はまだたっぷりあるさ。」

パナティナイコスの監督は、つい先日新監督として就任したばかりというヘスアルド・フェレイラ。どこかで聞いた名前だと思ったら、数週間前までマラガの監督をやっていた人ではないかい。世間は狭いと言うが、フットボールの世界は更にせまいようだ。
「監督が交代したばかりのチームとやるのは、どうもやりにくい。おおげさに表現してしまえば、一種のハンディー戦と言って良いだろう。どういう戦い方をしてくるか、誰にも予想できないからね。フェレイラがオポルトの監督をしている時は、4−3−3システムで戦っていたが、マラガでは4−2−3−1システムを採用していた。とにかく試合が始まってみないと、どういう布陣なのか想像できない。我々はここのところ快調に試合を経過してきているが、いずれにしても、良い試合内容をしなければ苦しいものになるだろうと予想している。」

リーガのフエラの試合ではいまのところ負け知らずだが、チャンピオンズのそれは、去年の12月の試合以来勝利していないそうだ。この試合で、その悪しき流れをストップしてしまおう。そして間違っても負傷者がでないように。そしてこの試合が終われば、“次の試合”はいよいよクラシコだ!

スエルテ!バルサ!


 バルセロナ 11月24日 00時00分

こんなこともあったとさ

以前にも触れたように、ジョセ・モウリーニョは1996年にボビー・ロブソンと一緒にバルサにやって来ている。彼は常に“通訳兼コーチ”という存在であったから、決して目立つ存在ではなかった。まして、ロブソンという監督はまさにジェントルマンを絵に描いたような人だったこともあり、グラウンド内でも外でもスキャンダルとなるような事件を起こしていない。監督がこうなのだから“通訳兼コーチ”のモウリーニョもまた地味な存在であった。ただ1回だけ、わずか1回だけながらメディアをほんのチョットだけ賑わしたことがある。

1996年11月23日、サン・マメスでのビルバオ戦。ビルバオの監督は、かつてフランス代表チームでプラティニと共に活躍した経験をもつルイス・フェルナンデスだ。この人もまた今のモウリーニョのように、ギャアギャアギャアギャアと賑やかな話題をぶち上げてくれる監督だった。ただ、メレンゲ監督と違うのは、フランス人ということもあってか、洒落と皮肉を混ぜ合わせてのギャアギャアだった。そしてこの試合中と試合終了後、モウリーニョがバルサにやって来て初めて、“主役”となる茶番劇を演じることになる。

ビルバオ戦だから、いつものように激しい戦いとなるのはしかたがない。その激しい戦いの前哨戦として、試合開催日の何日も前から、ルイス・フェルナンデス監督が、リーグ戦におけるバルサ有利の審判の笛を攻撃していた。ただでさえ盛り上がってしまう試合が、いつも以上に盛り上がるのは、あらかじめじゅうぶん予想された。ビルバオ選手の激しいタックルがバルサの選手たちに容赦なく襲いかかり、審判のファールの笛が吹かれるたびに、サン・マメスを埋め尽くしたファンのブーイングの嵐を呼ぶ。そんな嵐ではまだ足らないかのように、ビルバオ監督はベンチから飛び出しては、執拗に抗議を続けている。

決して動かないロブソンをよそに、モウリーニョがグラウンドに近づいて、厳しいファールにもかかわらず、タルヘッタを出さない審判に抗議した。“お前は誰だ、そこに控えて名を名乗れ!”という感じでモウリーニョに近づくビルバオ監督。言い合いとなったものの、もちろん殴り合いとはならない。

そしてビルバオの勝利となった試合後、ルイス・フェルナンデスはロッカールームに引き上げるフィーゴを、“ピスシネーロ(ほんとカナ事典参照)”と批判し、“お前は誰だ、名を名乗れ”と、しつっこくもモウリーニョに詰め寄った。その瞬間、我らがペップ・グアルディオラが間に入り、ビルバオ監督に怒鳴りつけ、こう語ったという。
「勝負に負けた相手を笑っちゃあいけないよ、監督。それは本当のプロがすることじゃない。」
それを受けて、
「真にもって正論。」
とは言わないフランス人。
「ハッハッ、ペップ、そうマジになるな。」と言ったとか言わなかったとか・・・。

試合後の記者インタビューで初の主役となったモウリーニョ。ビルバオ監督との小競り合いに関して聞かれて、彼はこう答えている。
「彼はスポーツ精神に反するきたない手段を使ってきた。試合の何日も前から審判に疑問を投げつけ、審判はもとより、ファンやメディアを操作しようとしてきた。ああいうしつけが悪く挑発的な監督には納得がいかない。」
今から14年前の若きモウリーニョのお言葉だ。

そして昨シーズンの、思い出したくもないカンプノウ・インテル戦。試合終了後、インテル監督はバルセロニスタを挑発するかのように、人差し指を立てながらグラウンドを走りまくった。まったくもって行儀が悪いったらありゃしない行為に出たこのモウリーニョに、ペップが詰め寄って次のように語る、
「モウ、サン・マメスの夜を忘れるんじゃない!」
それに対して、フランス人と違って洒落たことが言えない彼は、沈黙を決め込んだようだ。

若き“通訳兼コーチ”だったモウリーニョは、バルサで多くのことを学んだのでありました。


 バルセロナ 11月23日 14時00分

パコ・セイルロ・ノート

2010年7月11日、南アフリカ開催ムンディアル決勝戦。バルデス、ピケ、プジョー、ブスケ、チャビ、イニエスタ、ペドロ、そして新たに始まるシーズンからバルサの選手となるビージャ、この8人の選手にとって、異常に長かったシーズン最後の試合となっている。一方、バルサのプレステージ開始日は、このムンディアル決勝戦から1週間後となる7月19日からとすでに設定されており、当然ながら彼らは参加することはできない。バルサ監督ペップ・グアルディオラのアイデアは、何がどうであれ、選手たちは4週間の夏休みをとるべきだというものであり、そのアイデアはフィジカルコーチのパコ・セイルロもまったく同じものだ。他のクラブの代表選手たちが、2週間とか3週間の夏休みしか与えられなかったのとは違い、ペップバルサにとって4週間という期間は絶対のものとなっている。仕事納めから4週間後、つまり8月9日が、彼ら8人の選手たちにとっての仕事始めの日と決められた。

長年にわたってフィジカルコーチを務めるパコ・セイルロの経験によれば、選手がベストコンディションに到達するには、最低でも20回(1回90分間)の練習が必要だという。週末や週中に予定されているリーグ戦、チャンピオンズ戦、それにスペイン代表の試合などを考慮すると、彼ら8人の選手がベストの状態に達するのは、早くても10月の中旬と予想された。そう、奇しくも、強豪相手の試合が続く10月の中旬からだ。まず、バレンシア戦をスタートとし、その後のセビージャ戦、ビジャレアル戦、そしてクラシコという大事な試合に向けて、選手たちのコンディションをベストに持っていくことが計算上可能となった。

ちなみに、この20回程度の練習により、その後6週間前後にわたってベストコンディションを保つガソリン補給が可能となると言う。この6週間の間におこなわれる練習は体力回復を目指したものだけとなるから、6週間後となる12月から再び20回程度のガソリン補給練習が必要だ。でも、それはクラシコと関係ないのでここでは触れない。

さて、今シーズンのバルサは三つのグループに分かれてプレステージをおくっている。ピント、マックスウェル、ミリート、アドリアーノ、ケイタ、ジェフレン、そしてボージャンというムンディアル無関係派グループは、7月19日からスタートし、ムンディアル途中サヨナラ組のアルベス、アビダル、マスチェラーノ、メッシーといった連中はアジア遠征から参加してきている。そして最後のグループとなるスペイン人選手ムンディアル組。この三つのグループの選手の歯車がかみ合い始めるのが10月中旬となる予定だ。だが、それはあくまでも机上の計算に過ぎないし、特に今シーズンはムンディアル終了後のシーズンだ。何が起こっても不思議ではない。チェルシーやインテルの多くの重要なメンバーが負傷続きで病院送りとなっているように、バルサもまた例外とはならなかった。大きな負傷とはならなかったものの、プジョーとペドロが負傷し、そしてチャビやミリート、いつものことながらジェフレンもまた倒れてしまった。

そのような中、セビージャ戦を週末に控えた10月最後の週と、ビジャレアル戦を控えた11月の第二週は、スタッフテクニコにとって待ちに待ったものとなっていた。プレステージが開始され、親善試合が続き、そしてリーグ戦がスタートしてムンディアル優勝組が本格的に練習に入ってから、初めて訪れた週中に試合が入っていない1週間だからだ。いや、厳密に言えばセウタ戦相手のコパの試合が週中に用意されていたが、彼らの参加は当初から予定されていなかった。シーズンが開始されてから9週間後に訪れた、1週間毎日続けての練習が可能となった週。バルサにとって、この砂漠の中のオアシスのような2週間、ペップバルサはミニキャンプを張ることが可能となった。

それにしても異常なシーズンである。この8人のスペイン人選手にとって、リーグ戦第7節が終了するまでプレステージ期間が続いたことになるし、その間に2試合のチャンピオンズも消化しなければならなかったのだから。これまで、ムンディアルの決勝戦なんかに残ることがなかったスペイン代表チームに起こった奇跡。そして、その奇跡が生んだ異常なプレステージ期間。やはり、スペイン代表はこれまでどおり、1/8程度の経過で消えていくのが正しい道なのではないだろうか。

さて、そんな個人的な思いはともかく、クラシコを1週間後に控えたいま、バルサの選手たちは理想的とも言えるベストコンディションで待機しているようだ。10月の終わりにカンプノウで戦われたセビージャ戦で、今シーズン最高の内容を持って90分間戦い、そして2週間後のビジャレアル戦ではセビージャ戦を越える内容で戦ったバルサの選手たち。相手がアルメリアとはいえ、素晴らしくも8ゴールをもぎ取っったバルサ。これらのことは決して偶然のなせるワザとは言えない。スタッフテクニコが慎重にも慎重を期しておこなってきた長いプレステージの成果なのだから。

クラシコ前の最後の試合となるパナティナイコス戦では良い結果をだすことはもちろん、1人の負傷者も出すことなく、万全の体制で月曜日のクラシコに備えれらますよう、アーメン。


 バルセロナ 11月23日 00時00分

ソシオという概念の変化

これまで、少々のお金と顔写真さえあればバルサソシオになれたのが、ルセー政権となってからソシオ入会制限の見直しということで、次のような条件が付けられた。

1、親族(祖父母、両親、兄弟姉妹、孫、亭主、女房)の誰かがソシオになっている18才以上の人。
2、14才以下のすべての子供(ただし、まず14才以下の子供をソシオにしてその家族としてソシオになるという、誰しもが考えるであろうアイデアは、ロナルドの見え見えのピスシーナのごとく認められない。)
3、今はソシオではないものの、かつて2年以上ソシオの経験を持つもの。

この3つの条件にそぐわない人はソシオになれないことになった。あまり興味のない話題だったので、その理由をルセーがどのように説明していたか、それほど正確には記憶がない。なんでも、カタルーニャとしてのアイデンティティーを守るというものや、チャンピオンズなどの決勝戦があるたびに、ソシオ専用のチケットを手に入れようと、一時的“にわか”ソシオが増えてきたこと、スタジアムの収容可能人員に比べソシオ数が多すぎるとかなんとか、こんなことを理由にしていたのではなかっただろうか。

それでも、正直言って、ソシオ入会制度の見直しというのは、実のところ何が目的なのかよくわからない。カタルーニャとしてのアイデンティティーを守るというのも、どうも胡散臭い理由だ。カンプノウはバルセロナにあるのだし、クラブはカタルーニャのシンボルであるし、試合を観戦に来る人々はほとんどがカタラン(人)だろうし、クラブの公式言語は歴史的にカタラン(語)だし、どんなにカタラン以外や外国人のソシオが増えようが、アイデンティティーというのは不動のものだろう。そもそもガンペルというスイス人(つまり外国人)が創設したクラブであるのに、100年以上の長いクラブ歴史上において、そのアイデンティティーが消えたことがないのだ。チケットゲット目的の一時的“にわか”ソシオ(ねっ!柏蜂番さん!それでもチケットゲットできませんでしたね!)が増えてきたとはいうものの、それは大した数でもないだろう。ただ、スタジアムの収容可能人員にくらべソシオ数が多すぎるというのは、今に限った話ではないが、納得できる理由ではある。ソシオ、それはスタジアムに足を運ぶ人と同義語だった時代があるからだ。それもつい最近までの話しだ。

12万人収容可能なカンプノウが誕生したのは1957年のこと。この年のソシオ数は約5万人。それ以降、年間2千人程度のソシオが増えたり、あるいは減ったりというのを繰り返しながら、スペインムンディアルが開催された1982年に、クラブ史上初の10万人ソシオが達成される。そしてこの10万人ソシオ数というのはラポルタが会長に就任する2003年までほとんど変化のない数字となっている。この段階ではカンプノウ収容可能人員約10万人、ソシオ数10万人、キリのいい数字だった時代が長期にわたって続いたのだ。

この時代、アボノ(年間席所有者)ではなく、単なるソシオであっただけでも試合観戦することが許された。ただ、アボノの人たち違うことは、彼らがアボノカードを係員に見せるだけで入場できるのに対し、単なるソシオの人は、試合開始前に窓口に行って、チケット代を支払う必要はないものの、ソシオカードを見せてチケットを入手しなければならないこと、そして観戦場所はヘネラルと呼ばれる自由席であること、この違いだけだった。そしてそのころと今の大きな差は、現在はソシオ数がカンプノウ収容可能人員数を遙かに超えてしまったことだ。

“バルサはソシオのクラブである。1人1人のソシオの存在がクラブを支えている”
こう、よく語られる。大金持ちがクラブを買収し、会長の席につく他のクラブとは違い、このクラブではソシオが参加する会長選挙によってソシオの1人が会長の座につく。その意味においては、このフィロソフィーは今でも生きている。だが、かつては、このフィロソフィーを支える他の二つの理由が存在した。クラブ年間予算を支える大きな部分がソシオの支払う年間費用であったこと、そしてソシオのすべてがカンプノウでの観戦が可能だったこと。この二つ。

1990年代の末期、当時のヌニェス会長は、それまで想像もできなかった額のテレビ放映権とスポンサー料を獲得することに成功する。この結果、クラブ年間予算を構成する重要なベースがソシオ年間費用のみから、これら二つの収入へと変貌していった。そして、ラポルタ政権誕生と共に、ソシオ数増大政策がとられて、これまた、これまで想像もできないほどのソシオが入会してくることになった。この政策の重要なキーとなったのは、ソシオ入会の際に必要だった“初年度入会金(年間費の3倍額)”制度を廃止し、1年間だけの費用で入会できることにしたからだ。このアイデアはスペクタクルな成功をおさめる。4年分の年会費を支払わなければソシオになれなかったのが、わずか1年分の支払額でソシオになれる。カタルーニャ以外のスペイン各地のバルサファンや、外国に住むファンたちが大勢ソシオとして加わってきた。そしてこのブームは、日本語でソシオ申し込み可能とするビジネス業者まで生み出すことになる。時代は変わった。この時点で、ソシオ=観戦者という概念はすでになくなっている。

ソシオが急激に増え、カンプノウ収容人員とのバランスが崩れたことにより、単なるソシオという身分だけでは、無料での観戦は不可能となった。気がついてみればそのシステムはすでになくなっており、そのかわり、ソシオ専用割引料金というチケットシステムが誕生する。そしてヘネラルに陣取っていた単なるソシオ連中は、少々懐にダメージを与えることになるのを覚悟して、アボノ獲得に走った。だが、ラポルタ政権時に走ったそれらの人々に待っていたのは、ウェイティングリスト用紙だった。

つい先週の発表によると、アボノ待ちの人々の数は約9千人だとされている。そしてここ10年間の年間平均アボノ獲得者数は200人強(つまりアボノを辞めた人が年間200人強ということ)。ということは、単純計算でいくと、ウェイティングリストの9千番目に当たるソシオは、45年間待たないと夢は達成されないことになる。まったくもってシャレにもジョークにもならない数字だ。残念ながら、今さらいくらソシオ入会制限したところで、この人たちのアボノ獲得の夢が早くかなうことにはならない。

ソシオ入会制限の狙いが本当のところどこにあるのか、つまるところよくわからない。しかし、ソシオの概念が変わっていくように、そしてラポルタが入会制度を変更したように、時代や会長の変化と共に、このシステムも変わっていくのはしかたがないように思う。


 バルセロナ 11月22日 14時00分

サンドロ・ルセー新会長

どこの国でもおこなわれるであろう政治選挙と同じように、バルサのクラブ会長選挙の際にも、会長立候補者がいくつかの公約を発表することになる。経済部門の立て直しとか、クラブ内の隠し事をなくし透明化を目指すとか、古くなったカンプノウの改修だとかいう多くの公約の中に、ソシオ入会制度の見直しというのがあった。それはいったいどういうことなのか?という疑問を、彼の公約を聞いた人々はそれほど持たなかっただろう。そもそも、そんな公約を聞く酔狂な人々は、みんなソシオなのだ。あくまでも他人事に過ぎない、そう思った人々がほとんどだと想像される。

自分が投票した人物が初めて会長となった選挙であったことからわかるように、単純でわかりやすい選挙であった。フットボール部門ではこれ以上にない成績を収めながらも、グラウンド外でのスキャンダルにウンザリしていたソシオの人々が多くいたし、対立候補がそろったように“ラポルタの小番頭”のような人物だったから、クラブ内に新しい風を注入してくれるのは、サンドロ以外いないのは自明の理という雰囲気だった。したがって、クラブ会長選挙史上最多票で当選したことも、それほど驚きのことでもなかったように思う。

チグリン、イブラの移籍問題、セスク獲得の見送り問題、ペップ監督1年のみ契約延長問題、クライフのクラブ名誉会長問題などが、一部メディアやファンから批判が投げられたが、同時にそれらの政策に納得する意見も多かった。アンチは常にこのクラブにはつきものだ。誰が会長に就任しようが、歴史的にアンチは常につきまとう。最初のシーズンに6冠を獲得したあのペップ監督にも、批判がなかったわけではないクラブだけに、新会長に対するこの程度の批判は別に特別なことではない。それらの批判をよそに、ルセーは会長就任後100日間の沈黙を決め込んだ。個人インタビューにも記者会見にも一切応ぜず、とにかく100日後に会長としての仕事を評価してくれということだったのだろう。だが、100日過ぎても、かつての出たがりラポルタとは違い、メディアの前にはほとんで出てきていない。会長というのはそれで良いと、個人的には思う。目立って良いのはグラウンドで仕事する人々であり、決して背広組であってはならない。

沈黙をひたすら守っているが、決して仕事をしていないわけではないようだ。ラポルタ政権中に、いつの間にか3倍にも膨れあがったクラブ職員の一部整理。ラポルタが7割方個人用に使っていたチャーター便使用を廃止し、選手の移動のみに使用することにしたこと。背広組、選手用に配分されていた試合チケットの枚数を半分近くまで減らしたこと。これらの経費節減策だけかというとそうでもない。ラポルタ政権時に決定された“ミニエスタディぶっ壊し、その後は住宅ビル建設案”を廃棄し、スタジアムをそのまま残すことに決定したこと。すでに決められていたアボノ年間支払額大幅値上げという案を破棄し、例年通り物価上昇率分のみの値上げにしたこと。思い出しただけでもこれだけあるが、半年間の仕事としては評価されて良いのではないだろうか。

と、こう書いているうちに、一つ大事なことを忘れているのに気がついた。この半年の間にルセーが試みてきた大事な政策。それは、ラポルタ政権が意識的におこなってきた、政治色の排除だ。

「歴史的にマドリというクラブはひたすら外側に開こうとしてるのに比べ、バルサはカタルーニャという一部の地域の内側に目を向けている。」
かつてバルダーノが語った言葉だが、決して的外れな表現ではないような気がする。ひたすらクラブとしての政治色を排除してきたヌニェス政権時やガスパー政権時代はともかく、ラポルタが会長に就任してからというもの、バルサは政治色の強いクラブになってしまった。カタルーニャだけではなく、スペインの他の地域や外国の人も含めた10万人以上のソシをがいるにもかかわらず、カタルーニャ(独立色)の臭いがプンプンする発言や行動があったのは否定できないことだ。

バルサというクラブは、カタルーニャのシンボルでありながらも、政治的な観点からは常に独立した存在でなければならない。それが、かつてのヌニェス会長やガスパー会長の方針であり、ルセーはその原点に戻そうと動いていた。そして、その目的は徐々に達成しつつあるように思う。

また長くなってしまったので、新たにソシオになりたいと思っている人々には評判が悪いであろうソシオ入会制度の見直しということには、次回に触れてみたいと思う。


 バルセロナ 11月22日 00時00分

クラブ会長

月曜日開催という、世紀の祭典としては、少々不似合いなスケジュールとなってしまった今回のクラシコ。バルサはアルメリア相手にスペクタクルな大勝、一方マドリもまた、地元ベルナベウで弱小チームなみに相手にボールを渡してのカウンターアタック戦術で勝利。さあ、これでいよいよクラシコだ!といきたいところだが、まだ週中にチャンピオンズの試合が残っており、いつもおなじみのモウリーニョの話題こそあれ、クラシコそのものに関するネタはまだ少ない今日この頃。ということで、クラシコ話題に突入するのは、少々先にするとして、さて、さて、何からスタートするか。

永遠の工事中建物だと思われたサグラダ・ファミリアが、何と今から15年後の2025年に完成予定となったという話題に触れるのは、「こんな教会を設計した覚えはない!」と草葉の陰で怒り狂っているであろうガウディーさんを刺激するだけだし、かつて8時間もかかったバルセロナーマドリッド間の鉄道が、今では2時間半から3時間と短縮された話題も、“パン・コン・トマテ”のないマドリッドに行かない自分には関係ないし、かつて市内には5、6軒程度しかなかった日本レストランが、今では300軒近く(日本人経営が30軒ぐらいで残りは偉大な中国人経営)という話題も5行程度で終わってしまいそうだし、今では有名人となり懐の中も想像できないぐらい暖かくなった我らがカピタン・プジョーが、幼なじみだった彼女を捨てて、若くてきれいなモデルさんとイチャイチャし始めたという話題は羨ましすぎるし、やはりここは正当にもバルサクラブ会長の話題からスタートしよう。ジョアン・ラポルタからサンドロ・ルセーへと会長が移行してからまだ半年近くしかたっていないというのに、良いにつけ悪いにつけ、話題にはこと欠かないバルサクラブ会長。

さて、会長席から去ってまだ半年程度しかたっていないジョアン・ラポルタ。そんなわずかな期間であるにもかかわらず、やれ“赤字決算であるのに黒字決算としてごまかしていた”だの、“領収書なしの使途不明金がごまんとある”だの、“クラブの資金で個人用にチャーター便を使っていた”だの、あげくの果てには“ソシオの金で私腹を肥やしていた”とか“選手が受け取るギャラをピンハネしていた”だのという、かつての会長時代にも優る素晴らしいスキャンダルな話題が、ゴロゴロと連日のようにメディアを賑わしている。彼以前の会長といえば、ヌニェスとガスパーしか知らないが、彼らは二人ともすでに大金持ちだったこともあり、クラブ政策としての批判はあっても、さすがに“ソシオの金で私腹を肥やしていた”という、おぞましい噂は沸き上がらなかった。

決して少なくはないいくつかの疑惑が真実かどうか、それはそのうち裁判所によって判明されることになるのだろうが、今の段階で一つだけ明らかなのは、この小金持ちの息子として生まれたラポルタは、今ではかなりの財産を持っていることだ。つい最近のインタビューを聞いていたら、マンションのローンに日本円にして毎月60万円!、子供の学費に毎月15万円も支払っていると語っていた。バルサ会長になる何年か前に、バルセロナの日本領事館で、時給2000円程度の新聞の切り抜きのアルバイトを、1日2、3時間していた彼からは、想像もできないほどの裕福な生活をしていると思われる、とまあ、うらやましかぎりであります。

ごく普通の平均レベルよりほんの少し上の家庭で育ったラポルタとは違い、新会長サンドロ・ルセーはまったくもって裕福な家庭で育った坊やだ。いずれは、父親の経営している大企業の親分の座に着くのだろうという、彼とは無関係な第三者のどうでもいい思惑は別として、彼自身のおこなってきたスポーツビジネスも半端なものではないようだ。なんたって、バルサというクラブの会長になるにはクラブ年間予算の15%の資金を、銀行だかフットボール連盟だか知らぬが、とにかく見せ金としておさめねばならない。今年度のクラブ年間予算が4億ユーロぐらいだというから、その15%といえば6千万ユーロ、日本円にして現在のレートだと70億円程度か。もちろん彼1人で用意するわけではなく、20人前後のクラブ理事会員がそれぞれ持ち寄ってその総計額となればよいが、それでも単純計算で1人3億5千万円。彼は会長だから多分もっと用意することになったのだろうと推測される。ちなみにラポルタが会長の座に着いたときには、彼自身も語っているように、今では離婚している当時の金持ち奥さんの実家に用意してもらったという。

いつものことながらシナリオを予定せず、思いつくまま書いているコーナーだが、少々長くなってしまったので、サンドロ新会長のこの半年間の軌跡については次回としよう。


 バルセロナ 11月20日 12時00分

クラシココーナー イントロ

ペップ・グアルディオーラがバルサの監督に就任して来たのは2008年の夏。その年の1月にバルサ関係者はジョセ・モウリーニョと接触している。ラポルタ政権時に副会長を務め、今回の会長選挙で立候補して見事に散っていったマーク・イングラの自伝によれば、彼がモウリーニョとの接触係となっていたらしい。
「ライカー監督の後継者として誰を獲得するか。1月の段階では何人かの候補者が存在した。副会長たちの中でも意見が分かれていたが、私とソリアーノはモウリーニョが適切な監督候補ではないかと思っていたから、当然の接触だった。」
だが、スキャンダルを恐れてか、それ以上の細かいことについては触れていない。接触後もモウリーニョを監督候補として押したのか、あるいはこの接触によって最終的に理想の監督候補ではないと判断したのか、そこらあたりは明らかになっていない。いずれにしても、モウリーニョはバルサの監督候補の1人であったわけであり、そしてバルサの監督としての職は、彼自身にとっても、理想的な、願ってもない就職先であったことは間違いない。

ヌニェス会長とクライフ監督が大衝突したことにより、8年間続いたクライフ政権が崩壊し、1996−97シーズンにはイングランド人のボビー・ロブソンがバルサにやって来た。そして無名のモウリーニョもまた彼と共にバルサにやって来ている。口の悪い人はロブソンの通訳として、口の悪くない人はコーチとして彼の“職種”を語るが、個人的にはコーチ権通訳という役目だったと思っている。だが、それはどうでも良い。

国王杯とレコパ獲得というドブレッテを達成しながらも、ロブソンはわずか1シーズンのみでクラブを去っていく。それでも、モウリーニョはバルサに残った、翌シーズンから監督に就任したバン・ガールのたっての希望ということで、彼はコーチとしてクラブに残ることになる。最終的に、バンガールがそのでかいケツを叩かれながらクラブを去っていくまで、バルサベンチ生活4年間という貴重な経験を勝ち取り、モウリーニョもまたクラブを去っていくことになった。
「心に染みついたカラーはブラウグラーナ。バルサには心から感謝しているし、決してこのクラブのことを忘れることはないだろう。ビスカ・バルサ!」
彼が辞任記者会見でそう語ったシーンは、今でも鮮明に覚えている。そう、ここまでは、彼は非常に良い人だったのだよ、自分を含めた多くのバルセロニスタにとっては・・・。

ロブソンとバンガールという、まったくタイプの違う二人の監督の下につくことによって、多くのことを学んだのは間違いない。そして、もし一丁前の監督としてスペインのどこかのクラブに戻ってくるとすれば、彼の思いとしては、間違いなくバルサであっただろう。だが、歴史はお茶目なシナリオを用意していた。バルサの最大のライバルであるレアル・マドリの監督としてモウリーニョはスペインに戻ってきた。そして、そのことを、シーズンがスタートしてから3か月経過した今となってみれば、多くのバルセロニスタが大いに感謝することになる。記者会見の席上では毎回のように嫌みったらしい言葉を吐き散らし、バルサと対戦する相手チームの監督をどこまでも弱腰として批判し、バルサは常に審判の保護を受けていると怒鳴り散らす。こんな嫌な野郎があのマドリの監督になったなんて、これほどスペクタクルでワクワクさせてくれるシーズンはないではないか。

そのマドリが、いや、マドリだけじゃなくてモウリーニョが、カンプノウにやって来る。チェルシーの監督としてではなく、インテルの監督としてでもなく、マドリの監督としてやって来る。バルサ対マドリ、いわゆるクラシコの試合。毎シーズンある組み合わせながら、そのたびに“今世紀最大の試合”と呼ばれるクラシコの試合。来シーズンもまたマドリの監督としてやって来る保証はまったくない彼だ。こんなチャンスを逃しちゃあいけない。カンプノウでの90分間だけ個人的に楽しむにはもったいなさ過ぎる。ここはみんなで盛り上がらなくてはなるまい。そこで、思いがけなくも、突如のクラシココーナー出現だわい、ワイ、ワイ、ワ〜イ!