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Camp 掲示板

 バルセロナ 05月04日 23時00分

グラシアス!バルサ!

FC BARCELONA 1 - 1 REAL MADRID

1-0(54M) PEDRO
1-1(64M) MARCELO

[出場選手]
VALDES, ALVES, MASCHERANO, PIQUE, PUYOL(ABIDAL 90M), BUSQUETS, XAVI, INIESTA, PEDRO(AFELLAY 93M), MESSI, VILLA(KEITA 74M)


朝から快晴のバルセロナ。やはりクラシコ4連戦の最後の試合なんだから、こういう気持ち良い天気の下での観戦がヨロシイ。きっと、アビダルの突然の復帰がこういう良い天気での試合を用意してくれたのだろう、とノーテンキなことを考えていたら、午後から空模様がおかしくなり、試合開始2時間前くらいから恐ろしいほどの雨が降ってきやがった。雷がゴロゴロ、稲妻がピカピカ。とても止みそうもない雰囲気。珍しく試合開始30分も前に到着してみると、雨降る観客席にはほとんど人が入っておらず、みんな屋根のある通路で時間つぶし。クラシコ、モザイクときたら、雨が降る要素の強い試合。それでも、試合開始5分くらい前から奇跡的に小やみ状態となり、9万5000人もの人々がカンプノウを埋めていた。

選手が出てくる前にバルサイムノが流れる。ここのところ、チャンピオンズの試合となると恒例となっている選手なしイムノ。チャンピオンズのテーマが流れる前にやはりイムノを、というのがこのオフサイドイムノが誕生した理由。そのイムノの一番が終わると、チャンピオンズテーマ曲と共に選手たちがグラウンドに登場。だが、多くの人たちがバルサイムノの二番を唄っているので、チャンピオンズテーマはほとんど聞こえない。

試合開始前にすでに2ゴール差で勝利している試合。マドリ相手の試合なので普段以上の緊張感はあるものの、この180分の試合に負けるという雰囲気はまったくなく、自分を含めて周りの仲間たちも、楽観的な気分での試合観戦スタート。だが、そうとは言え、やはり必死になって戦ってくるであろうマドリだから、簡単な試合とはならないだろう。それどころか、非常に難しい試合、2点の優位さがありながらも、そう簡単には後半90分の試合が終了しようなどとは誰も思っていない。

試合スタート。ホテルの部屋に引きこもって、カンプノウにやって来なかったモウリーニョだが、誰ひとりとしてヤツのことを忘れないバルセロニスタ。その彼らから試合開始早々カンティコが流れる。前回のクラシコでは

“Sal del banquillo, Mourinho sal del banquillo”
サル デ バンキージョ モウリーニョ サル デ バンキージョ

モウリーニョ、ベンチから出てこいよ!と言うカンティコが試合途中から誕生したが、今回のは、やはりいつものグアンタナメラという曲のメロディーにのって次のようなものだった。

“Por que? por que? Mourinho por que? por que?"
“Por que? por que? Mourinho por que? por que?"
“Por que? por que? Mourinho por que? por que?"

“なぜ?なぜ?モウリーニョ、なぜ?なぜなの?”
だが、どうも語呂が悪いので、長続きしない。そこで登場したのが、メロディーなしのカンティコだ。

“Por que? por que? por queeeeeeeeeeee?"
“Por que? por que? por queeeeeeeeeeee?"
“Por que? por que? por queeeeeeeeeeee?"

笑えます。とっても笑えます。

後半に入ってバルサが先制。ポルテロからデフェンサへ、デフェンサからセントロカンピスタへ、セントロカンピスタからデランテロへとわたってゴールとなる、まさにバルサらしいスタイルでのゴール。このゴールで勝負は事実上ついたと言っていい。それにしてもと思うのは、ペップバルサというチームも大人になったもんだということ。この試合、例えば2点差で勝たなければならないという状況設定だったなら、それなりの試合をしていただろう。5点差で勝たなければならないとするならば、やはりそれなりの戦い方をしていただろう。だが、すでに前半90分で0−2で勝っているこの試合、ゴールを奪うのに決して無理する必要はなにもない。ボールを支配し、攻撃の糸口を見つけようとするのはいつものことだが、つまらないカウンタアタックを避けることも忘れていない。まさに、大人の香りのするフットボールとなって参りました。

アビダルの登場。カンプノウのフィエスタが最高潮に達した瞬間。そして審判の笛が鳴り、抱き合って喜んでいたバルサの選手たちが、アビダルを胴上げ。この国では胴上げというものに慣れていないので、かつて野球を見ていた者からすれば、非常にだらしがない胴上げとなるが、それはそれでヨロシイ。しばらくしてから、グラウンドの真ん中でカタルーニャ名物サルダーナ風に大きな輪を作って、勝利を喜び合うバルサの選手やスタッフたち。この瞬間、チャンピオンズ決勝戦に進出という、実感がわいてきたシーンでありました。

180分の試合で3回しかシュートのないマドリ。いつものごとく、試合後にアルバイト監督や選手たちが、審判のせいで負けたという情けないことをほざいていたが、このシュート数がすべてを物語っている。

 

このコーナーの幕を閉じる最後に、クライフのコメントを掲載しておこう。

モウリーニョ監督、しっかりとメモをとりなさい。君の率いるレアル・マドリのカンプノウでの試合で、ファール数は31回あった。このチャンピオンズの試合の中で、どのチームも可能としなかったファール数を記録している。なぜ?なぜ?なぜなの?の解答はこの数字が示している。ベルナベウでの試合で退場者がでて、そのことに不満の意思表示をしていた監督だが、このカンプノウの試合で退場者がでなかったことを、幸運の女神に感謝しなければならないだろう。ラス、カルバーニョ、アロンソ、この中のひとりが、あるいは全員が退場となってもおかしくないプレーをしていたのだから。

それでも、なぜ?なぜ?なぜなの?、と問いかけるかも知れない。なぜ、退場者がでちゃうの?それは簡単なことだ。ボールを相手にわたすシステムで戦うなら、しかも相手がワンタッチフットボールで、しっかりとボールを走らせる戦いをしてくるチームであるなら、当然ながら君たちの選手は、ボールを追いかける立場となる。的確なタイミングでボールに追いつくこともあれば、タイミングが遅すぎる場合もあるだろう。いずれにしてもボールを追いかけるのは、大きな疲労を呼ぶ。その疲労が招く現象は、ボールを奪うタイミングが遅くなり、カード制裁を喰らうファールが多くなる。したがって、退場者がでる可能性は、相手チームより圧倒的に多くなるのは当然だ。だが、こんなことはなぜ?なぜ?なぜなの?と問いかけるモウリーニョも、実は知っていることだろう。

1.大量失点を防いだカシージャス
ホーム&アウエーという180分の試合を戦うに当たって、前半90分の試合結果を考慮にいれないで戦うことはバカげたことだというのは、子供でもわかることだ。このカンプノウでの後半90分の試合、0−2という願ってもない財産を持って始まった試合だが、ペップバルサはほぼパーフェクトだと言っていい戦い方をしていた。パーフェクト?地元の試合で勝利できなかったのにパーフェクト?そう、別に勝つ必要のない試合だったということを忘れてはいけない。だが、それでも、バルサの方が勝利する可能性が高かったこの試合がそうならなかったのは、ひたすらカシージャスの活躍があったからだろう。

2.頂点に立つペップバルサ
多くの選手が参加したムンディアルのあったシーズンであるにもかかわらず、リーグ制覇は目前、チャンピオンズは決勝戦進出決定という事実を見ると、そのメリットは計り知れないものがある。一言で表現するならば、バルサが追求してきたプロジェクトの頂点にたどり着いたことを意味するかも知れない。常に攻撃的であることを心がけ、常に試合そのものを支配することを心がけ、常にスペクタクルを忘れることなく戦うことを心がけてきたのが、ここ何年かのバルサプロジェクトだった。ペップを筆頭に、メッシー、イニエスタ、チャビ、そしてすべての選手たちが、そのことを心がけて戦ってきた。国王杯決勝戦が残念な結果に終わった直後、私は本当のチャンピオンを決定させるのは、リーガの戦いであり、チャンピオンズの戦いであると公言してきた。その意味で、バルサはそのチャンピオンに確実に近づきつつある。モウリーニョはこれからもなぜ?なぜ?なぜなの?と問いかけ続けることだろう。何を問いかけようと、何を語ろうと、それは彼の自由というものだ。だが、それでも、現実はこうだ。世界中のフットボールファンの人たちが、この180分の戦いで見たものは、決してレアル・マドリがバルサの優位にたつことはあり得なかったということだろう。

3.もしボール支配を拒否し続けるなら、ファールの数はますます増えることになる
レアル・マドリが唯一勝利する可能性があったのは、国王杯決勝戦だけだったということになる。それも、90分の戦いではなく、延長戦での勝利だった。しかも、後半に勝負を決めるチャンスが圧倒的に多かったバルサ相手への勝利だった。この試合以外の3回のクラシコを顧みるとき、ゴール数こそ少なかったものの、優位さという点で見れば、バルサが圧倒的に優っていたことは、誰しもが認めるところだろう。レアル・マドリがもしそのバルサに追いつこうとするならば、その戦いのスタイルを変える必要がある。それは交渉の余地のない事実だ。今の段階において、バルサはレアル・マドリを大きく離していることを、昨日の試合が証明している。同時に、モウリーニョのなぜ?なぜ?なぜなの?という問いかけの答えも、この試合が明らかにしている。


 バルセロナ 05月03日 17時00分

あと4時間

●スタメン予想●

スタメン予想

●試合展開シミュレーション●


 バルセロナ 05月03日 14時00分

走れ!走れ!ボールよ走れ!

二週間にわたって旅してきたこのユーロクラシココーナーも、ようやくゴール地点に到着しかけている。それにしても、何という楽しい旅だったのだろう。前日から降り続いていた雨も止み、今のところ快晴のバルセロナ。これもすべて、スーパーアビダルのおかげだ。

リーガクラシコから始まったクラシコ4連戦。地元ベルナベウに、8ポイントも差をつけられている首位バルサを迎え撃ち、当然ながら、勝利の3ポイントを獲得するために、マドリは攻めてくるのではないか、と想像するのが普通だ。いかにモウリーニョとは言え、そこはそれ、攻めという姿勢を優先するのではないか、と想像するのは健康な人だ。だが、モウリーニョは底知れず奥の深い監督だった、という表現をすると格好いいが、どのような難しい幼少時代を過ごしたのか、健康的な発想を無視してくれる監督だった。マドリの選手たちが、世界最高額の選手たちが集まるマドリが、地元ベルナベウで7人の選手がデフェンサとなって堅い守りを続ける試合となった。初めて見る不思議な光景、だが、それ以上に不思議な光景は、試合終了後にやって来る。引き分けという、リーグ優勝がほぼ不可能となった結果にもかかわらず、ベルナベウ観客席を埋めた人々から選手たちに大きな拍手が送られたのだ。今までは考えられない不思議な風景。これが、モウマドリと彼を支持するマドリディスタの人々が作り出す不思議な世界。

負けないこと、特にバルサには何としても負けないこと、そのためにはあらゆる手段が正当なものとなる世界。それは試合中だけではなく、試合前におこなわれる記者会見も、その手段のひとつとなり、同時に試合後の記者会見もまた、次の試合に向けたひとつの武器とする世界。審判を批判することで、次の担当審判にプレッシャーをかけることを、インテリジェンスのある監督だと勘違いする泣き虫おじさん。

そして、すぐにやって来た国王杯決勝戦。120分の戦いとなったこの試合は、マドリの方に幸運の女神が舞い降りた。バルサというチーム相手に久しぶりの勝利。国王杯というものが、マドリメディアにとって、スペイン史上最高に栄誉あるタイトルとして生まれ変わった瞬間だ。一年を通じて戦われるリーグ戦なんかよりも遙かに尊いタイトル、それが国王杯。マドリメディアにとって、マドリディスタにとって、そしてモウリーニョ崇拝者たちにとって、この世で最高に幸せな日となった。辛い時代を生きている彼らだって、幸せを感じる一時があっても良いじゃないか!いや、おめでとう、マドリディスタたち。

だが、クラシコの戦いは止まらない。18日間クラシコ4戦という、こんな煮詰まったスケジュールの中でのクラシコの連戦が、今後いつ実現するか、それは20年後かあるいは30年後でさえないかも知れない。その歴史的なクラシコ連戦のハイライトがやって来る。ウエンブリーへの道を可能とするかどうかのユーロクラシコだ。

ベルナベウでの0−2という、バルセロニスタにとってはヨダレの垂れるような結果で終わったユーロクラシコベルナベウ編。それから6日後、カンプノウでの仕上げが待っている。夢のような理想的な設定で戦われるユーロクラシコカンプノウ編。果たしてモウマドリは、これまでと違い、攻める姿勢を見せての戦いとなるのか、はたまたいつものように後ろに大型バスを配置してのものとなるのか、それは何時間か後に明らかになる。

ウェ〜ンウェ〜ンと泣き続けようが、なぜ?なぜ?なぜなの?と叫びまくろうが、ならず者を雇って素人衆をいじめにかかろうが、怪しげなフォトショップを持参してお代官様に訴えようが、なんでも思いついたことをやり続ければいい。モウマドリが相手しているのは、レジェンダと呼んでいいペップバルサなのだ。この時代を生きた人々が、何十年か後に、私たちはこのチームをこの目で見たのだよ、と孫たちに話すことになるであろうチームなのだ。監督がペップ・グアルディオラという素晴らしい人で、グラウンドの中にはメッシーとかチャビ、イニエスタなどというバルサの歴史に残るすばらしい選手がいたのだよ、そう語られるであろうチームなのだよ。

「24時間後に控えた試合を前にして、いま、すべての選手たちに感謝の気持ちを伝えたいと思う。バルセロニスタだけではなく、多くのフットボールファンにスペクタクルを提供し続けてけてくれたすべての選手に、有難うと感謝の気持ちをいま伝えたい。この選手たちのプレーを見るために、多くのバルセロニスタがカンプノウに押し寄せてくれるだろう。そういう彼らに対して、我々は最高の形でスペクタクルな試合ができるように務めたいと思う。我々の歴史的な意味での宿敵であるレアル・マドリを粉砕し、ウエンブリーでの決勝戦に参加できるように頑張りたいと思う。」
試合前日の定例記者会見でそう語る我らがペップ・グアルディオラ監督。

レアル・マドリが今後どのような道を歩もうが(個人的にはすんごい興味があることだが)、それはバルセロニスタにはどうでも良いことだ。再び挑発行為をしてこようが、それもどうでもいいことだ。試合後にウェ〜ンウェ〜ンと泣き続けようが、なぜ?なぜ?なぜなの?と叫びまくろうが、それもどうでもいいことだ。我々バルセロニスタが唯一興味あることは、ボールが走り回ること、ひたすらボールが走り回ること、その一点に尽きる。

スエルテ!バルサ!


 バルセロナ 05月2日 23時00分

試合前日

ユーロクラシコ最終戦となるカンプノウでの決戦を明日に控え、何かとあわただしく感じるバルセロナの街。この試合では、久しぶりにカンプノウにモザイクの花が咲くことになるが、クラシコ+モザイク=雨降り観戦というのが、ここのところの傾向となっているので、明日は雨の可能性大。さて、2年前の今日は、ベルナベウで2−6という記念試合があった日であり、その2年後の今日は、本物か偽物か知らぬがビン・ラデンが殺されたとかなんとかいう日ともなった。さっそくバルセロニスタ関係のフェイスブックでは、“ビン・ラデンを殺したのはどうやらぺぺらしい。その死体の写真をフォトショップして流したのはマドリメディアということも警察の調べでわかっている”という、試合前日5月2日月曜日。

ペップバルサの選手としてソシエダ戦に招集されながらも、残念ながらモントーヤやミリートなどの負傷というハプニングがあったため、出場チャンスがやって来なかったジェラール・デウロフェウ(通称デウロ)。土曜日の深夜に、ペップバルサのメンバーと共にバルセロナに戻ってきて、数時間の休養をとってから、今度はフベニルAチームの練習に参加している。月曜日から始まる、各グループフベニルカテゴリー優勝チーム同士で、スペイン一番を争う“コパ・カンペオネス”に参加するためだ。今日月曜日の午前中はすでにセビージャに入り、夕方から始まる大会に備えている。

明日の星デウロがセビージャにいるこの日の午前、バルセロナにはかつての星だった選手が戻ってきている。バルサB所属の元天才ビクトル・バスケス。彼は今シーズン終了と共にクラブとの契約が切れるが、いずれにしてもバルサB在籍5年目となるし、来シーズン、もしトップチームからお呼びがなければ、他のクラブに移籍することは明らかだった。この5月に入っても何の進展もないところから、早速他のクラブからのオファーを検討することになったようで、先週末にはベルギーに飛んでブルッハスと交渉していた。まだ最終的にはサインはされていないようだが、どうやらベルギー行きの可能性はかなり強いらしい。1998年からいる選手だから、13年間バルサに在籍したことになる。でもクラブが見つかってヨカッタ、ヨカッタ、おめでとう!

ユーロクラシコベルナベウ編で、バルサの何人かの選手が、グラウンドの中で反スポーツ的な行為をしたとして、それらの輩になにがしかの制裁を、とマドリというジェントルマンクラブがUEFAに訴えていた。そこで、UEFAが今日の午後に集まり、その訴えを検討することになった。ジェントルマンクラブが訴えたバルサの選手は、アルベスをはじめ、ペドロ、ブスケ、ケイタ、バルデス、メッシー、ピケ、マスチェラーノ、ピントなどの選手らしい。ジェントルマンクラブの意図はシロウトにもわかる単純なものだ。これまでこんなことで制裁を加えたことのないUEFAだから、今回も当然ながら拒否されることになるだろうが、この訴えによって、多くのマドリディスタに満足感を与えられること。もし、何かの間違いでバルサ選手に制裁が加えればみっけもの、予想通り、制裁の可能性の検討拒否ということになれば、“それみろ、UEFAはバルサの味方だ!”という安っぽいシナリオとなる。

午後3時頃、UEFAはこのジェントルマンクラブの訴えは、検討さえしないことを発表。UEFAとバルサの癒着がこれではっきりしたぞ、と単純派マドリディスタは思うのであります。これじゃあ、バルサに勝てるわけがない、そう思って世間の冷たさを恨み、世の中の不公平さをなげき続けましょう。

18時30分、チャンピオンズ試合前日の定例記者会見がカンプノウでおこなわれた。バルサ、マドリ、両クラブからそれぞれ選手がひとり、そして監督。と言っても、モウリーニョはここカンプノウでの記者会見を避けるために、すでにベルナベウの試合で退場となっているから、彼の代わりに提灯持ちカランカが担当する予定とのこと。まず最初はバルサからチャビ選手登場。約15分間ぐらい何かしゃべっていたが、記憶に残ること何もなし。次の記者会見は20時からペップ。そうこうしているうちに、モウ御一行がバルセロナに到着し、ホテルに向かっている映像が流れる。

19時半くらいからバルサ練習開始。水が思いっきりまかれているのが笑えるカンプノウ。まずグラウンドの真ん中に選手全員が集合し、大きな輪を作っている。その中にはなんとアビダルさんまでいて、なにやら彼に向かって全員で拍手をおくっている。まるでドクター許可がおりて練習復帰が許されたような感じだが、もちろんまだ完全に練習に戻ってこれる体調ではない。
「こんなオレが頑張っているんだから、みんなも明日の試合ガンバレ!」
というメッセージと見た。

20時、急きょ予定が変わって、ペップではなく、ベンセマとカランカが記者会見場に登場。ここらへんがチャンピオンズとはいえ、スペインだ。
「UEFAの判断にはガッカリしている。全世界の人々が見たであろう反スポーツ的なプレーを、フットボール組織の最高権威であるUEFAが何もしないというのは納得できない。」
もっといろいろな批判をカランカは語っていたが、いかにもモウリーニョの書いたシナリオをそのまま読んでいるという感じで、まったくもって面白みに欠ける。なぜ?なぜ?なぜなの?も出てこないし、偽物だけあって、良い意味でも悪い意味でも、本物の迫力にはまったく到らない。それにしても、このクラブは計り知れないほどのスピードで落ち込んでいっちまているイメージだ。ベンセマにはほとんど質問が行かず、20分ほどで終わって最後にペップの順番となった、

20時45分、ペップ記者会見。約20分間の会見。
「アビダルが招集されている。」
これでぶっ飛んだ。あの輪を作っての楽しそうな光景は、アビダルの招集を祝ってのものだったのだろう。招集と言ってもオーバーブッキング招集だろうし、ベンチに入れるかもわからない招集。それでも招集扱いされるところが凄い。バルサを訴えることでファンのご機嫌取りをしているマドリに対し、アビダル招集を発表することで、当人のアビダルはもちろん、同僚選手やスタッフたちに、そしてバルセロニスタに大いなる喜びを与えてくれたペップの偉大さ。

ワクワクドキドキのカンプノウフィエスタまで、もうちょっとだ!


 バルセロナ 05月02日 14時00分

クラシコをこう見る

●ジュップ・ヘインケス(バイエル・レバクーゼン監督)

約3週間という短い期間の中で、4回のクラシコを戦わなければならないというのは、これまでどのような高い評価をされてきた監督であろうが、とてつもなく苦労することだと思う。まるでバスケのプレーオフシリーズを戦うようなもんだ。まず最初のクラシコは、この4連戦の中で最も重要ではない戦いと言っていいだろう。引き分けという結果に終わったが、これまでクラシコ敗戦が続いていたマドリだけに、次のクラシコに向けて、少しだけ希望が出てきた試合となった。国王杯はマドリの方に勝利の女神が微笑んだが、ペップは、彼の持つフィロソフィーの原点に戻って第三戦を戦うことに成功していると思う。クラブとしてひとつのフィロソフィーを持つこと、これがバルサの強みであり、その意味ではまったく正反対の立場となるのがマドリということになる。

ここ何年間のマドリをみればわかるように、彼らに継続性を望むのは不可能だ。例え何らかのタイトルを獲得しようが、監督が毎シーズンのように変わるチームに、継続性を望むことはできない。バルサにはラ・マシアというベースがあって、継続性のあるフィロソフィーのもとで、継続性の与えられているスタッフのもとで、継続的に新しい若手選手が育ってきている。多くの選手が“我が家”から育ってきた選手だから、教育という意味でも問題ない。フットボール選手としても、ひとりの人間としても、常に謙虚であれという教育こそが、勝利したときだけではなく、敗北したときにも、子供たちへの見本となるような姿勢を見せることを可能とする、というのが私のフィロソフィー。その意味で、バルサとかドルトムンドというクラブは、理想的なクラブであると思っている。

●マルセロ・リッピー(失業中)

フットボールというのは、いろいろな戦い方があると思うが、マドリとバルサも、もちろん違うスタイルで戦っている。その違いがどこから来るのか、それは簡単なことだ。各選手たちのもつ才能やフィジカル面の違いとは無関係に、各クラブの持つフィロソフィーの違いから来ているのは明らかだ。バルサにはラ・マシアという素晴らしい選手養成所があり、子供の頃から、トップチームと同じフィロソフィーで戦うことが義務づけられている。したがって、そういう環境に育った選手たちは、トップチームに上がってきても、簡単にひとつの駒としての役割を演じることができる。だが、マドリにはそれは不可能だ。彼らには違うフィロソフィーがある。第一線のクラブで第一線の活躍をしている、飛び抜けた選手たちを獲得してきて、ひとつのチームを作ろうというのが、少なくとも現在のマドリのフィロソフィーといえる。

●キケ・フロレース(At.マドリ監督)

1回だけの勝負ならバルサに勝利することは可能だ。この1回というのが、彼らに勝利する唯一の条件であり方法だ。先日の国王杯決勝戦という一発勝負であれば、バルサに勝つことも可能だ。だが、2回となると、それはかなりの確率で不可能と断言して言い。どんな優れた選手がいても、どんな素晴らしいデランテロを用意しても、彼らの繰り広げるボール支配とコントロールを破壊することは不可能だ。ただ、ボールなんぞなくても90分だけの試合ならどんなことが起こってもおかしくないから、勝利の女神が何気なく近寄ってきてくれて勝てることもあるだろう。だが、2試合続けてはそんなことはおこらない。

マドリにひとつだけ優位な点を見つけるとすれば、彼らの相手となるバルサは、いつも同じ戦い方をしてくることが、試合前からわかっていることだろう。バルサはどこが相手だろうと、彼らのもつフィロソフィーに背くことなく、同じ戦いをしてくる。しかし、だから事前に彼らの弱点となるところを研究しておきさえすれば、勝機はやってくると思うだろうが、それが難しいからこそ、リーガのヘゲモニーをバルサが持ち続けることができているのさ。

●ミゲランヘル・ロティーナ(コルーニャ監督)

モウリーニョの監督就任以来、スペインフットボール世界で変わったことがあるといえば、彼らがベルナベウで、まるでビジターチームのオサスナのように守りを固めて戦っても、それが批判の対象とならなくなったことだ。彼が来るまでは、弱小クラブのみが、後ろに大型バスを並べるシステムを使うことを許されたが、彼が来てからは、マドリという超ビッグクラブがそれをしても批判などされず、試合後には、マドリディスタから拍手までおきるという状況が誕生してきている。これもまた、モウリーニョという監督の偉大さからくることなのだろう。

一方のバルサには、変化はまったくみられない。いつものごとくいつものように戦って、好結果を引き出している。もちろん、チームが素晴らしいからと言って、メッシー抜きではまた違うチームとなるように、偉大な選手がいて初めて、偉大なチームを作り上げるのが可能となるということだ。攻撃面だけではなく、守備面でも素晴らしいチームだが、もちろん守備を担当する選手が変わればそれなりの弱点も出てくる。国王杯でのロナルドのゴールなどは、他のチームでは決して可能とならないゴールだ。バルサ相手だからあのヘディングが生まれたのだと思っている。

●ラドミル・アンティック(失業中?)

今度のカンプノウでの試合は、見かけとは違い、バルサには危険な試合だと思う。ベルナベウでの0−2という好結果が、バルサの選手たちを保守的なプレーを試みようとする気持ちにさせたとしたら、という条件が付けばの危険な試合。だが、それもペップが指揮しているチームでは、余計な心配となるかも知れない。

一方のマドリは、どんなに頑張っても、ボール支配優位となる試合展開はのぞめないだろう。世界最高額の選手たちを集め、世界の中で最も偉大とされるこのクラブが、クラシコ第四戦で試みなければならないのは、メスタジャでバレンシアを相手として戦い、3−6という撃ち合いスコアとなった試合展開だ。だが、バルサ相手にあのような試合展開が可能かどうか、それはかなり難しい注文と言えるかも知れない。ここに来て、ロナルドをはじめ、オジルにしても、元気が無いように感じられる。また、ムンディアルチャンピン選手のひとりであるアルビオルが、先日の試合では6回も誰もいない前線にペロタッソしているシーンなど見せられると、見ている方もビックリする感じだ。そして、バルサにとってプジョーの復帰は大きいと思う。3か月も現場を離れていて、何事もなかったかのように、復帰日の試合に普通にプレーしているのをみると、つくづく偉大な選手だと思う。


 バルセロナ 05月02日 00時00分

カピタンプジョー

今から9年前の昨日、ユーロクラシコ第二ラウンドがベルナベウで戦われている。個人的にも初めてお目にかかる、バルサとマドリによって戦われるチャンピオンズ準決勝の試合。40年ぶりのユーロクラシコとか言っていたから、当然ながら初の経験だ。今回との違いのひとつは、第一ラウンドがカンプノウ、第二ラウンドがベルナベウという順番
。だが、日程的には非常に似ていて、4月23日サンジョルディの日と、5月1日メーデーの日がそれぞれ試合日となっていた。会長はガスパーとフロレンティーノ、監督はレシャックとデル・ボスケ。当時を生きたバルセロニスタには、非常に懐かしい暗黒の時代にして、それでも不思議なことに、笑えることもいっぱいあった時代だ。

カンプノウ第一ラウンド。“ユーロクラシココーナー”をみると、プジョー、チャビ、リバルドが出場できない苦しい試合となったとある。それでもデル・ボスケはしっかりと5人デフェンサをおき、カウンターを狙ってくる戦いをしている。何だか今と変わらないレアル・マドリ。バルサは執拗に攻めるも、効率悪い攻撃でゴールが決まらないまま、ジダンとマクマナマンのカウンターアタック&ゴールが見事に決まって0−2でマドリ勝利。なんだ、この試合結果はバルサとマドリを逆にすれば、今回と同じじゃないか。

そしてベルナベウでの第二ラウンド。この試合にもリバルドは出場できなかった。クラックを欠いたバルサに、ラウルが前半にゴールを決めて、ほぼ勝負がついたような感じとなり、後半に入ってエルゲラがオウンゴールを決めてくれて、1−1というスコアとなったが、雰囲気的にはとてもとても、“いける!”というものではなかったような印象が残っている。

ところで、具体的な数字や当時の雰囲気を探るために“ユーロクラシココーナー”をいろいろのぞいてみたら、“プジョー物語”というのが出てきた。これがなかなか面白いので、ここで再び登場させてしまおう。

昨日のプジョーは、何の心配もなくグッスリと眠れたに違いない、多分。それは8日前の夜とは比べものにならないほど平和な夜だったはずだ、少なくとも。

8日前の夜、プジョーは大きな決断を前にしてベッドにつくことを義務づけられていた。翌日のカンプノウでのユーロクラシコ、つまりマドリ戦に出場するか否か。彼にとってはもちろん初めての経験であり、クラブとしても40年ぶりのユーロクラシコ。カンテラ育ちのプジョーにとってこれほどの大事な試合が再び将来やってくるかどうか、それは誰も彼に約束できないほどの試合だ。外が明るくなってくる朝の6時まで、一睡もしないで決断を迫られることになる。そして結局ドクター・プルーナの忠告に従うことにした。朝が来るまでに何回も寝返りを打ちながら考えたプジョーの、最終的な結論がそれだった。

ドクター・プルーナにしてみれば当たり前の結論だった。もしマドリ戦に無理をして出場し、痛めている筋肉に再び問題が起きたら、今シーズン残りの試合は絶望的であり、ワールドカップ出場も微妙なところとなるほどの負傷状態だったのだから。それはセルタ戦の後にすでに彼に伝えてある内容だった。だがプジョーは、かつてもそうであったように、ひとり出場の望みを抱いてリハビリに励んでいた。ドクター・プルーナは今回ばかりは彼がどのように言ってきてもドクターストップをかけるつもりだった。それでもプジョーの方から欠場を納得するコメントが届いたことに、安堵していたドクター・プルーナ。彼の次の目的は、ベルナベウでの試合には間に合わせるリハビリのカリキュラムを考えることだった。

マドリ戦でレイジンハーが負傷するところを目の前で目撃していたプジョー。次のビジャレアル戦にはもちろんレイジンハーは出場できない。しかもガブリもカード制裁をくらっていた。マドリ戦がおこなわれたのが火曜日。プジョーは水曜日、木曜日、そして金曜日とスーパーリハビリに励む。そしてビジャレアル戦のある土曜日、ドクター・プルーナはもうプジョーを止めることはできない。再びオフサイド気味に復活を遂げたプジョーの登場だ。

ピレネー山脈の麓に位置するラ・ポブラ・デ・スグールという小さい村で生まれたこの若者が持つ、これほどまでのエネルギーの秘密は何か。今ではこの村出身の元大臣であるジョセップ・ボレールより有名になったその名声が彼のエネルギーの源でないことは確かだ。

彼の若さ、日々のトレーニングで鍛えられた鋼鉄のような肉体、そして何よりもその精神的な強さが彼の持つ秘密だ。度重なる負傷による痛みや、誰よりも運動量が多いところからくる疲労に対して、それに耐えることを知っている強い精神力が彼の秘密だ。
「彼の場合はすべてスピリッツの問題。人間の体は複雑な機械のようにできている。唯一頭脳だけが、生命あふれるものなんだ。そして彼の持つ生命力は、まるで限界を知らないかのように息づいている。活動がストップすることが、どんな負傷による痛みよりも痛むことなんだ。それでなければビジャレアル戦に出場したことの医学的説明がつかない。」
そう語るドクター・プルーナ。

誰しもがもう完全にリハビリを終えてビジャレアル戦に戻ってきたと思ったプジョー。だがそうではなかった。彼は同僚やジャーナリストがいないところでは、常に氷が詰まったビニール袋を右足ヒザに当てていた。

どうしようもなく肉体的に衰えを見せてきたリバルド、まだ成長段階であることははっきりしているサビオラ、当たり前のようにゴールを外しまくるクライハート・・・。カンプノウに試合ごとに足を運ぶバルセロニスタにとって、ルイス・エンリケの心と、プジョーの精神が唯一の救いだ。ここ2年間の彼の飛躍は記録的なものであろう。2年前にセラ・フェレールがマラガへの移籍をほのめかしたとき、断固として拒否したプジョー。2部への格下げを覚悟しながらもバルサに残ることを決意したプジョー。彼の決断は固く、そして誤りではなかった。移籍をほのめかされた2か月後、カンプノウでのクラシコでフィーゴの影となり、完全にポルトガル人を封鎖した。

レイジンハーを完全に押しやり、スタメンを獲得したプジョー。バジャドリ戦では豪快なシュートを決め、テネリフェ戦ではチレーナによるゴールまで奪っている。そしてデポール戦ではクライハートに対しての見事なセンターリングを決めたり、ローマ戦ではカンデーラからボールを奪って同点につながるセンターリングをクライハートにあげている。プジョーはこの時、顎の骨にヒビが入りながらプレーをしていたことを、多くのバルセロニスタは忘れていない。

そして今日の試合を前にプジョーは語る。
「確かに難しい試合。でも彼らを敗ってグラスゴーに行くのに奇跡はいらない。信じることだ、必要なのは。」

これから9年という月日がったった今、彼はすでに33才というベテラン選手になり、そして押しも押されぬバルサの偉大なカピタンとなっている。以前と比べれば、やはりオフサイド気味に負傷から戻ってくることはなくなった。それはしかたがないことだ。だが、このユーロクラシコカンプノウ編では再び負傷を吹っ飛ばして戻ってくるだろう。

バモス!カピタン!
ムーチャスエルテ!


 バルセロナ 05月01日 14時00分

気がつきゃ、あと二日

試合開始15分前のベルナベウが映し出される。観客席はガラガラ。このベルナベウにしてもカンプノウにしても、常連たちがやって来るのはせいぜい試合開始5分前ぐらいだから、ガラガラの風景がテレビ画面に映し出されても不思議じゃない。でも、両チームの選手たちがすべてグラウンドに登場し、審判の笛を待つ瞬間となっても、多くの空席が見られるベルナベウは珍しい。

首位のチームとのポイント差は8もあるし、相手はカテゴリー下降ラインをさまようサラゴサだし、わずか3日前には、このスタジアムでユーロクラシコを観戦していることもあるし、ということで空席が多くなる理由はいろいろ見つかる。両チームの選手たちや監督たちが、当然のごとく慎重な態度を崩さず、ナンダカンダと語ろうと、ファンの人々はリーガの行方がすでに決まっていることぐらいわかっている。ファンはフットボールにはシロウトだけど、ファンとしてはプロなのだ。したがって、大雨の降る中を我慢して、どうしても観戦したいとする試合でもないし、空席が目立つことになるのはしかたがない。彼らの関心はこのリーガの試合ではなく、3日後におこなわれるユーロクラシコカンプノウ編。2点というハンディーをおいながらも、まだ90分間残っている試合。リーガとは違い、この90分間での戦い次第では、まだ勝利する可能性が残っているチャンピオンズの戦いだ。

ところがどっこい、そういう甘酸っぱい夢に胸をいっぱいにしているマドリディスタは少ないようだ。以前触れたように、4500枚ものカンプノウチケットがマドリディスタ割り当用となっていたが、すでに1000枚ものチケットがバルサオフィスに送り返されてきているという。もうあきらめたか、マドリディスタ。

レアル・マドリの試合目的が、ひたすら“終わらせる”ことにあったとすれば、サン・セバスチャンへと飛んだペップバルサの目標はただひとつ、それは2位との差8ポイントを維持し続けること。それが可能となれば、リーグ戦残り4試合・12ポイントしか残っていないから、12−8=4ということで、あと4ポイントだけ獲得すればリーグ優勝が決まる。つまり、来週日曜日のエスパニョール戦には、土曜日におこなわれるセビージャ・マドリ戦の結果次第となるが、とにかく優勝を決定することができる。そうすれば、チャンピオンズ決勝戦まで3週間近くのミニキャンプがはれるというものだ。もちろんウエンブリーへ行く権利を得られればの話だけれど・・・。

初めてのスタメン出場という栄誉を得たモントーヤが、いきなり元ペリーコにぶちかまされ、1か月の負傷を負ってしまったことや、久しぶりスタメンのミリートもまた、今シーズン終わりという負傷をしてしまうとか、はたまたフエラでの初敗北という結果に終わったソシエダ戦ながら、8ポイント差確保という目的は達成された。試合前日に想像したものとはまったく違うスタイルながら、とにかく目的は達成された。サラゴサ相手に地元で戦ったレアル・マドリが敗北したことで、すでに目的は達成されていた。長いシーズンの中で、敗北という結果に終わりながらも、試合前の目的が達成されるというおめでたいことは、そうそうあるもんじゃない。

リーグ戦の試合が終了したところで、それでは、ユーロクラシコ後半90分の戦いにスタメンが予想される選手たちの今週末の働き具合を見てみよう。

●バルサ
バルデス・・・・・・・0分
アルベス・・・・・・77分
ピケ・・・・・・・・62分
マスチェラーノ・・・28分
プジョー・・・・・・・0分
ブスケ・・・・・・・23分
チャビ・・・・・・・90分
イニエスタ・・・・・・0分
ペドロ・・・・・・・・0分
ビージャ・・・・・・・0分
メッシー・・・・・・90分

●マドリ
カシージャス・・・・90分
アルベロア・・・・・・0分
アルビオル・・・・・・0分
カルバーリョ・・・・86分
マルセロ・・・・・・37分
アロンソ・・・・・・・0分
ラス・・・・・・・・・0分
ディ・マリア・・・・37分
オジル・・・・・・・30分
ロナルド・・・・・・・0分
ベンセマ・・・・・・90分

両チームとも似たようなものだ。完全休養が与えられた選手がそれぞれ5人、90分間仕事した選手もやはり2人ずつというような感じ。そんなこんなで、それぞれサラゴサ戦・ソシエダ戦というシエスタから目覚めてみれば、カンプノウフィエスタまで残り2日となりました。


 バルセロナ 05月01日 00時00分

オリオル・トルト・ラ・マシア

「ベンチにいるときは神経質になっていた。アドリアーノが故障を訴えていたし、自分の出番がやって来そうな感じだった。そして突然『モントーヤ、3分間のウオーミングアップをしたら、すぐにグラウンドだ!』と監督に言われた。ウオーミングアップの時のことは何も覚えていないけれど、グラウンドでプレーしている時は、ベンチにいる時より冷静になれたのを覚えている。たった5分間だけの出場時間だったけれど、ラ・マシアで育ったカンテラ選手である自分にとって、生まれてきてから最高に幸せな瞬間だった。」
マジョルカ戦でペップバルサチームデビューを飾ったモントーヤがそう語る。ベンジャミンカテゴリーからすべてのカテゴリーを経て、トップチームでデビューできた選手というのは、このモントーヤが初めてじゃないだろうか。

現在のペップバルサには、10人のカンテラ選手がいる。バルデス、プジョー、ピケ、ブスケ、チャビ、イニエスタ、メッシー、ボージャン、ジェフレン、ペドロ。そして11番目の選手となりつつあるティアゴもラ・マシアで育った一人だ。
「ラ・マシアは、まず基本的に人間形成の場であるということは、ここに入寮した者なら誰でもわかることさ。まだ10才を過ぎたぐらいの年齢でここにやって来る。もちろん、一人さ。親や兄弟や友達と別れてやって来る。やって来たところは、年齢的には離れている人もいるけれど、目指すものは同じ。つまりフットボールの選手として一丁前になること。だが、時間がたっていくうちに友達ができて、コーチたち、自分たちにとっては、学校の先生みたいなものだけれど、彼らがフットボール以外のいろいろなことを教えてくれることになる。少年から若者に成長していく過程で、人間的にも成長することが義務づけられる。要するに、この環境に育った自分たちにとっては、ここはごく普通の人間形成の場でもあるんだ。」

これまで、多くの少年たちがラ・マシアにやって来ているが、トップチームはもちろん、バルサBでプレーする栄誉を与えられるカンテラ選手はごくわずかだ。この右ラテラル選手モントーヤや、セントロカンピスタのティアゴなどは、幸運にも、ほんとうに数少ない、そういう栄誉を勝ち取った選手と言える。

だが、本格的にトップチームに上がってくるのは大変なことだ。デビューを飾ったものの、彼らにとっての戦いはこれからが本番となる。もちろん、このラ・マシアが生んだ世界最優秀選手三人組、つまりメッシー、イニエスタ、チャビのようには、誰もがなれるわけではない。トップチームデビューを飾ったからといって、もちろん将来への保証はなく、まだ本格的にプロ選手としてやっていけるかどうか、それさえも怪しい状況だ。ラ・マシアから育ったエリート選手の一人と言っていい彼らにしてこうなのだから、カンテラ組織の中にいる多くの若者にとって、プロのフットボール選手として生きていけるかどうか、ということへの答えはまったく未知のものだ。

すべての若者がプロ選手となることはできない、それが現実。したがって、例え、フットボールカンテラ組織の名門と言っていいラ・マシアに入寮することができたとしても、将来のことを考えて、フットボール以外の世界のことも学んでいくことを要求される。

La Masia 物語 第1章LA MASIA 創設編(2000/11/ 17)に次のような文章がのっている。それは、ラ・マシアオープンの際に語られたものだ。
“家族、友人たちが住む生まれ故郷を離れ、将来の偉大なるスポーツマンを目指す若者たちよ、同時にここは君たちにとって、一人前の大人になるための人格形成の場でもあることを忘れてはならない”

単に若手エリートスポーツ選手の寮としてではなく、年齢に相応しい勉学の場としても意図されたラ・マシア。今シーズンから二部Aカテゴリーに上がり、最初のシーズンであるにもかかわらず、素晴らしい成績を残しているバルサBだが、このチームでプレーしている選手たちの過半数は、ラ・マシア育ちだ。そして、驚くべきことに、プロ選手の卵と言っていい彼らの多くが、現役大学生でもある。ラ・マシアがまさに“一人前の大人になるための人格形成の場でもある”ことを証明している。例えば、バルサBで今シーズンプレーした選手の中に次のような現役大学生がいる。

ルーベン・ミーニョ(ポルテロ)、マルティン・モントーヤ(デフェンサ)、マーク・バルトラ(デフェンサ)、マーク・ムニエッサ(デフェンサ)、セルジ・ゴメス(デフェンサ)、カルラス・プラーナス(デフェンサ)、オリオル・ロメウ(セントロカンピスタ)イリエ・サンチェス(セントロカンピスタ)、アンドレウ・フォンタス(セントロカンピスタ)、セルジ・ロベルト(セントロカンピスタ)、マルティ・リベロラ(セントロカンピスタ)などの名が見られる。

バルサ選手の練習場であるシウタ・エスポルティーバ・ジョアン・ガンペルという場所に、今年の夏からラ・マシアが移動する。30年以上続いたこの寮よりもっと収容人員が増えて、新しい環境のもとにカンテラ選手の宿泊施設が移ることになる。新しい宿泊施設の名は、オリオル・トルト・ラ・マシアとつけられた。“La Masia 物語”によく登場してきた、あのオリオル・トルト氏の名前が、この新しい寮の名となった。だが、場所や名前が変わっても決して変わらないものがある。それは、前述したラ・マシアオープンの際に語られた言葉だ。“家族、友人たちが住む生まれ故郷を離れ、将来の偉大なるスポーツマンを目指す若者たちよ、同時にここは君たちにとって、一人前の大人になるための人格形成の場でもあることを忘れてはならない”


 バルセロナ 04月30日 14時00分

なぜ?なぜ、なぜ言い訳するの?

20世紀最優秀クラブであるレアル・マドリの偉大さを示すひとつの逸話がある。古くからのマドリディスタたちが自慢のひとつとする逸話らしい。

バルダーノがマドリに移籍してきて、初めて獲得したタイトルはUEFAカップだった。優勝が決まり、大喜びでロッカールームに走ってきたバルダーノに、すでにロッカールームで着替えようとしていたチームカピタンのカマッチョが語る。
「来シーズン獲得するであろうタイトルに乾杯したら、今日はおひらきだ。もう終わったことを祝ってもしかたがない。」
「エエッ!でもこのタイトルは、自分がマドリ選手として始めてとったカップだぜ。それなのに、何も祝わないの?」
何が何だかわからないという表情のバルダーノに、カマッチョが再び口を開く。
「へい、サラゴサからやって来たアルゼンチン坊やよ、まだあんたはレアル・マドリがどんなクラブか、わかっていないようだな。タイトルをとることは、ここではひとつの義務なんだ。カップを獲得できなかったことをみんなで嘆くことはあっても、義務を果たしただけのことを祝うことなんかないんだぜ。」

この新米経験から何年か後に、バルダーノは語る。
「あの瞬間に、レアル・マドリというのが、どんなクラブなのか知ることができた。サラゴサでプレーしていた頃は、負けた試合のことを聞かれると、審判のミスを言い訳のひとつにするのが普通だったし、他の小さいクラブでも同じだった。例え小さいとはいえないクラブでも、なんらかの言い訳が聞かれるのが普通だ。だが、マドリだけは別なのだということを知った。このクラブには、言い訳という要素は入り込めないことを知った。」

バルダーノがマドリに移籍してきたのは1980年代の半ばだから、25年くらい前の出来事だ。ブートラゲーニョを中心に、ミッチェルだとかマルティン・バスケスなどのカンテラが軸となってチームを構成し、コパ・デ・ヨーロッパのタイトルこそ獲得できなかったものの、リーガを毎シーズン制覇していたキンタ・デ・ブイトレと呼ばれた時代。レアル・マドリというクラブが何たるものか、カンテラ選手が中心だったからこそ、いつも以上に認識されていた時代でもある。ひたすらジェントルマンであれ、ジェントルマンに言い訳は似合わない、そんな遙か昔の時代。

「審判に誤審があったかどうかは別として、チームとして、あるいは監督として、あのような試合結果に終わったことをどのように総括、反省しているか?」
ユーロクラシコベルナベウ編が終了してから2日後におこなわれた記者会見で、ひとりのジャーナリストがモウリーニョに問いかける。
「ゼロ」
UEFAの陰謀か、はたまたバルサがユニセフのロゴを付けているので保護されているからか、いずれの理由にしても、審判のせいで負けたと主張するなぜなぜオジサンだから、敗北に他の原因などみつかりもしないとばかりに、シンプルにして単純明快な答え。その発言にかすかながらも笑いが起きる記者会見場。そう、ペップが語ったように、モウリーニョは記者会見場のクラックであり、彼らのボスでもあった。何と答えようが、常にモウリーニョの勝利に終わる記者会見。だが、同時に、栄光あるレアル・マドリのイメージは、とめどもなく下がり続けることにまだ気がついていない。

まだ興奮の冷め止まぬ試合終了直後に、ロッカールームに続く通路でおこなわれたロナルドに対するインタビューが印象的だ。
「もうこういうスタイルでプレーしなければならないのはウンザリだ。カテゴリー降格を避けるチームのような戦い方は自分には向いていない。でも、監督がこういう戦いを望む以上、自分を含めて選手たちはすべてをださなければいけない。」
こう語ってしまったロナルドは、次のサラゴサ戦には招集されていない。試合勝利やタイトル獲得が、選手の活躍やチームプレーのおかげではなく、「私の勝利、私のタイトル獲得」とする監督と、メッシーのゴール数を越えることこそが、ピチッチ賞やバロン・デ・オロ獲得への近道だと、ひたすら日々努力を続けるロナルド。果たして、この超クラックたちの間に、かすかながらもヒビがはいってしまったのでありましょうか・・・・。

問題もなくスムーズにいっているペップバルサとは違い、あふれるほどの話題の宝庫となっているモウマドリは、どこまでも魅力的だ。こんなモウマドリを、今シーズンだけで終わりとするのはあまりにも寂しい。国王杯という、スペインで一番重要なタイトルを、最初のシーズンでもぎ取ることができたのだから、是非とも来シーズンも、なぜ?なぜ?と居続けるべし。


 バルセロナ 04月30日 00時00分

こちら三面(アンケート編)

マドリッドに本部を持つスペインビール協会が次のようなアンケートをおこなっている。
「あなたは誰と一緒にビールを飲みたいと思いますか?」
どのような状況でビールを飲むのか、という具体的な部分には触れていないが、スペイン的に理解するなら、強い日差しが降り注ぐバルのテラスで、リラックスしながら気兼ねなく話し合える仲間と過ごす時間、というように考えればいいのだろう。

クラシコとなるとマドリメディアによく登場してくる“ロナルド対メッシーの戦い”というアイデアを借りるなら、この勝負はメッシーがロナルドに圧倒的な差をつけて勝利している。言葉を換えるなら、バルサの圧倒的な勝利とも言える。

1位 ラファ・ナダル
2位 イケル・カシージャス
3位 フェルナンド・アロンソ
4位 レオ・メッシー
5位 ペップ・グアルディオラ
6位 アンドレス・イニエスタ
7位 ジェラール・ピケ
8位 アルベルト・コンタドール
9位 クリスティアーノ・ロナルド
10位 パウ・ガソール

まだ暫定的な順位らしいが、ペップが5番目に登場してきている、もちろんモウリーニョの顔は見られない。そりゃ、そうだ。ビールを飲みながら楽しい時間を過ごそうとしているのに、なぜ?なぜ?なぜなの?おせぇ〜て、おせぇ〜て、などと独り言いったかとおもうと、とつぜんウェ〜ンウェ〜ンウェ〜ンと泣き出すようなヤツと一緒だったら、美味しいビールもまずくなるというものだ。

そして、個人的に相手を選ばせてもらえるなら、やはり脱獄囚ぺぺと一緒に楽しい時間を過ごしてみたいものだ。テラスの椅子に座りながら、通りすがりの人に足を引っかけてみたり、蹴りを入れてみたり、おまけに、倒れた相手を羽交い締めして喜んでいるようなぺぺと一緒がいい。ほろ酔い加減でスペクタクルを楽しむ、こんな、時間の過ぎていいくことも忘れるような楽しい一時を過ごしてみたいものだ。

今年の初めに、カタルーニャ州庁内にあるカルチャー・カウンセリングというセクションがおこなった調査によると、州内に住む64%に相当する人々が、バルサファンであるという結果がでている。カタルーニャの人口は約6500万人とされているから、単純計算で4000万人の人々がバルサファンということになる。

バルサが一番の人気を誇るクラブであることは誰にも簡単に予想できるが、2位に位置するのはエスパニョールだろうと思う人々も多いだろう。それが違うんだなぁ、以前にも触れたことがあるように、カタルーニャ州での2番人気は天下のレアル・マドリなのだ。この調査でもそれが明らかになっており、約10%(60万人)がマドリファンだと白状してやがる。こういう傾向がなにゆえあるのかとは、この調査では触れていないが、個人的には次のような理由だと思う。昔、むかし、遙か昔、日本のテレビ野球中継といえば、読売ジャイアンツの試合しかやっていなかった時代があったが、その影響で当然ながらジャイアンツファンが多くなったように、この国でも、やはりマドリの試合しか中継しなかった暗い暗い、暗黒のような時代があった。したがって、マドリファンがいまだに多いのは致し方がないこと。そして、もう一つ、やはり中央から出稼ぎにやってきたり、仕事の移転先となってそのまま住むことになった人々が多くいること。こんなところだろうと思う。

と言うわけで、エスパニョールは3位につけているチーム。この調査結果によると2%強(15万人)程度のペリーコがいるらしい。

バルサやエスパニョールを応援する人々はどんなタイプの人々か、そのことについても触れているこの調査。まず、バルサファンは年齢的にも、性別的にも、社会的立場でも各種それぞれ、という結果がでているが、唯一目を引くのはカタランを第一言語とする人々が圧倒的だったということ。そしてペリーコといえば、年齢的にはなぜか35才から44才までの人が多く、性別的にはなぜか男性が圧倒的、そして生活レベルはなぜか中級程度で会社勤めのサラリーマンが多く、彼らの使用言語はカタランではなくカステジャーノが多かったとされている。


 バルセロナ 04月29日 14時00分

絶大な権力

グランドの芝を普段より長くしたり、あるいはUEFAの指示に背き、試合1時間前に水をまくことを拒否したり、あるいはまた、試合後のマドリ監督によるスキャンダラスな記者会見。これまでのレアル・マドリという、少なくとも表面上はジェントルマンであれとしてきたクラブが、徐々に違う道を歩もうとしているようだ。“相手選手の反スポーツ精神”をUEFAに訴えるなどということは、まさに前代未聞といっていいし、さすがにマドリメディアの一部からも批判の声が起きている。クラブ内の何が変わったのか。そのヒントとなるひとつのコラムがある。本来なら国王杯決勝戦終了後すぐにだせば良かったのだけれど、どういうわけか出すきっかけを逃してしまったコラム。このコーナーのイントロで紹介したディエゴ・トーレスというジャーナリストの長いコラムを、単純明快に短くして紹介。

「これがフットボールだ!」
「そう、これこそがフットボールと言うことがわかっただろう!」
マドリッドに向かうために、バレンシアの空港の待合いサロンに集まるモウリーニョを中心にして輪を作っているコーチたちが叫んでいる。
「これが、フットボールさ。バルサの名声はメディアが作り上げたものだということがはっきりしただろう。ここ一番の大事な試合となると、彼らのフットボールはそれほどたいしたものじゃない。」

リーガクラシコが終わってから国王杯決勝戦前日まで、モウリーニョは選手とのミーティングを何回も何回も毎日のように繰り返している。選手たちの耳にタコができるほど繰り返し語られたこと、それはボール支配などは決してする必要がないこと。目指すことは、バルサの中盤機能を崩壊すること。つまり、ブスケ、チャビ、イニエスタなどによって構成される中盤を破壊することだ。そうすれば、ペップバルサ特有の、前線での相手デフェンサに対するプレッシャーが無効になる。と同時に、プレッシャーを受けないデフェンサ選手からの、前線に向けたロングパスが可能になると語るモウリーニョ。後方からのデランテロ選手に対するロングパスが、ペップバルサをやっつける唯一の方法、構図的にはこうなる。

スペイン語でペロタッソ、つまりボール放り込み作戦などというものは、プライドの高いエリート選手が集まっているマドリでは、あまり受けの良いものではないことぐらいモウリーニョは理解している。スペイン代表やポルトガル代表選手などによって構成されているチームなのだから、ボール支配などクソ食らえで、ペロタッソを心がけよ、というのは彼らのプライドを傷つけることぐらい理解できる。だから、何回にもわたるミーティングが必要だった。一発勝負となる大事な試合では、プライドを捨てた戦い方もまた有効になることを、彼らに納得させる必要があったからだ。バレンシア空港でのコーチングスタッフの異様な喜びの風景が生まれたのは、選手に示した彼らのアイデアが正しかったことを証明したからだ。

プレシーズンが始まって今日に至るまで、フットボールの戦術という観点では、目新しいものを学んだことはない、と語る多くのマドリ選手。モウリーニョは決してアリゴ・サッキでもペップ・グアルディオラでもないことを知っている。なぜなら、彼らの作り上げてきたような魅力的なフットボールが展開されるためには多くの時間が必要だし、モウリーニョに求められているのは、今すぐのタイトル獲得ということを知っているからだ。だから、例えプライドが許さなくても、モウリーニョのアイデアのもとにプレーするのが、タイトル獲得への早道であると考えるマドリ選手。

モウリーニョ監督の特徴、これまでどこのチームであれ、彼のもとでプレーしてきた選手たちが語る二つの共通事項。ひとつは、相手チームの卓越した部分と弱点となる部分の分析にとてつもなく優れた監督であり、同時に、相手の卓越する部分をつぶし、弱点となる部分をつく具体的な方法を選手一人一人に説明する能力に長けていること。そしてモウリーニョの最大の特徴は、あらゆる意味での選手たちの保護だという。それはメディアからの保護であったり、クラブ上層部からの保護であったり、クラブスポンサーや選手スポンサーからの保護であったりする。それは同時に、監督としての役職を通り越しての、クラブ内における絶大な権力の確保をも意味することになる。カピタンのカシージャス以外の選手たちにインタビューをおこなうには、モウリーニョの許可が必要だし、バルダーノを選手たちから遠ざけたのも彼の持つ権力のなせるワザだ。

まだその権力を手に入れていなかった去年の暮れ、ぺぺの契約延長を会長に依頼したものの解答は得られず、ウゴ・アルメイダの獲得を頼んだにもかかわらず無視された12月。すでにクラシコでのマニータの敗北に傷ついている彼に、クラブからの助けは何もなかった。モウリーニョはバルダーノを無視して、フロレンティーノ会長との直談判を試みる。そして、フロレンティーノを前にしてモウリーニョは次のように語る。
「どうやら私はあなたが望んだタイプの監督ではないようだし、あなたもまた私の望んだような会長ではないようだ。」

すでにモウリーニョが、選手たちからの信頼感や、ファンからの絶大な支持を得ていることを知っているフロレンティーノは、彼をクビにできない。いや、もともと莫大な移籍料をインテルに支払ってまで獲得した監督を、シーズン途中で更迭することは、彼の会長としての立場さえ怪しいものになる。ここは彼に譲るしかない。アルメイダはすでに獲得不可能となっていたが、モウリーニョの望むもう一人の選手アデバヨルは獲得できそうだ。

モウリーニョのクラブ内における、これまでにないほどの権力を手に入れるスタートともなった瞬間だった。

冬のミニバケーションが終わり、最初のミーティングで選手を前にしてモウリーニョは次のように語る。
「歯にものがはさまったような言い方は好きではないから、単刀直入に言おう。もしシーズン終了時にバルダーノがクラブを離れないとするなら、この私がクラブを去っていくことを意味する。そして、もし私がクラブに残ることになったのであれば、クラブのマーケティング部分とバスケセクション以外は、すべて私が何らかの形で指揮をとることになるだろう。これが可能となるかどうか、それはすべて君たちの手腕にかかっている。もし、ひとつでもタイトルをとれば、私はクラブに残り、バルダーノを追いだすことが可能となる。もし君たちが何もタイトルをとれないとすれば、私は去りバルダーノが残ることになる。今日のこの瞬間から、誰が私の味方で、誰がそうではないか、それをじっくりと観察することにする。」

このミーティングの後、リーダーとなる何人かの選手が集まって話し合いを持っている。その中の一人が次のように語っている。
「監督は我々を試そうとしている。彼と我々は運命共同体のような関係となりつつあることは間違いない。我々が死んだ気になって走り回り、ひとつでもタイトルを取ることができれば、選手たちが監督を全面支持してきたおかげであると、モウリーニョは会長に語るだろう。だが、もし、我々がどんなに頑張っても結果がでなかったとしたら、我々は監督を支持しない集団と認識されることになるのだろう。」

ある意味で、選手たちの間に団結が生まれたと言える。ここ何シーズンにもわたってタイトルと無縁の選手たち。クラブとの契約が破棄されることなく、そしてプロ選手としての誇りを保つためにも、絶大な権力を持ち始めた監督に従うことが、彼らにとって唯一生き残る方法となった。そして国王杯制覇という成功が、クラブ史上初と言っていい絶大な権力を持つ監督を誕生させることになった。

ディエゴ・トーレス
2011年4月25日
エル・パイス紙


 バルセロナ 04月29日 00時00分

ジェラール・デウロフェウ

ジェラール・デウロフェウ・ラサーロ、1994年3月生まれだから、今年で17才になったばかりのバルサカンテラエストレーモ選手。カタラン名というよりはフランス風の香りがするデウロフェウDeu-lo-feu(カステジャーノになおすとDios-lo-hizo)という名は、日本語に直訳すると“神が創造した”となる、凄い名だ。ここでは2007年に将来性豊かな少年選手として、キラキラ星コーナーで紹介している。あれから4年たった今、幸いなことにもバルセロニスタの期待通りに確実に成長しているようだ。

2003年夏にベンジャミンカテゴリーに入団して以来、毎年一歩一歩カテゴリーを上げてきているが、昨シーズンはステップアップして、フベニルBカテゴリーとフベニルAカテゴリーを行ったり来たりしていた。そして今シーズンに入ると、ルーチョバルサチームにも、16才という年齢で早くもデビューを飾っている。もちろん、この年齢でバルサBチームでプレーできたのは、これまでわずかな数の選手しかいない。イニエスタ、メッシー、ボージャンといったところが、その数少ない選手たちだが、たぶん記憶に間違いがなければ、二部Aカテゴリーで、この年齢でプレーしたのはジェラールだけだと思う。そのことだけでも、彼への期待のほどがわかるというものだ。だが、いずれにしても、今シーズンの彼のベースとなるカテゴリーはオスカーが監督を務めるフベニルA。右足利きの彼の自然なポジションは左エストレーモだが、試合によっては右エストレーモもこなし、これまでチーム最多ゴール数となる15ゴールを決めている。

それにしても、これほど“メディアチック”なカンテラ選手は珍しい。彼に比べればティアゴなど可愛いものだ。9才でバルサに入団してきているが、12才の誕生日を迎えた瞬間に、ナイキとのとてつもない高額な契約を結んでいるし、ジェラールを獲得するための“選手代理人戦争”まで起こしている。この若さで、グラウンド外でも“活躍”してしまった彼を、ティアゴと同じように、監督やスタッフたちが慎重に教育してきただろうということは容易に推測される。

それでも、今から2、3年前、つまり彼が14、5才だった頃、自らのブログを立ち上げて、ファンの間で議論の的となった時期があった。中味はといえば、自宅に大勢の女友達を集めてのパーティーでの写真や、彼女といちゃついている写真とか、夜中の浜辺での仲間たちとのパーティーの写真などが掲載されていたもので、まあ、当然ながら話題になる内容だった。そういう年代なんだからいいじゃないか、というファンの声もあったようだが、たぶん、クラブのスタッフが注意したのだろう。気がついてみれば、いつの間にかそのブログは閉じられていた。

インファンティルAとカデッテBで彼の監督を務めたフラン・サンチェスが語っている。
「彼は最初から、周りの選手とは違うものを持っていた。私のチームに来たばかりの頃は、ひたすら個人技に走る選手だったが、時間の経過と共に、どこの場面で個人技を優先し、どこの場面でチームプレーを優先するかということを学んでいったようだ。私としては、彼に限らず、決して個人技に走るな、などとは言ったことがない。個人技は選手の価値を高めるために必要なものだ。だが、同時にチームプレーも学んでいかなければ、と教えている。そういう意味では、私の教えを理解した頭の良い子でもある。そして、もう一つ、これも彼だけではなくすべての選手に語っていることだが、常にメッシーやイニエスタ、そしてチャビなどを自分の鏡として成長すべし、ということだ。」

メッシー以来と言っていい、この天才的少年デランテロ選手に対し、クラブ関係者はすでに特別待遇をとっている。今シーズン、すでに数回にわたってペップチームでの練習に招集されているのだ。わずか16才で1回だけではなく、数回にわたって練習に参加してきている選手は、これまで本当に数少ないように思う。そしてこの特別待遇と同時に、ティアゴの4か月間テストと同じように、“大人”になる作戦もすでに開始されている。

今年の初め、ルーチョ監督は初めてジェラールを招集し、そして試合後半からではあったものの、バルサBデビューをさせている。ところが、これまでのところ、初の招集にして最後の招集、初の試合出場にして最後の試合出場となっている。試合後、ルーチョ監督は記者会見場で次のように語っている。
「まだ彼は、あらゆる意味でこのカテゴリーでプレーするには若すぎる。今は、フベニルA監督のオスカーの教えからしっかりと学ぶことの方が、バルサBでプレーすることより重要なことだ。急ぐ必要は何にもないさ。練習中でも、試合中でも、一丁前のプロの選手としての自覚ができるようになったら、再び彼はこのチームに戻ってくるだろう。」
ハッハッハッ、厳しいお方です。

フベニルAチームに戻ったジェラールは、何事もなかったかのように、これまでと同じように練習に励み、試合でも活躍し続けている。これから何回もこういうテストが繰り返されていくであろうジェラール。見るからに生意気なツラをしたガキだし、それなりの根性はありそうだ。いつものことながら、これまでアーセナルやリバプールからの強烈なオファーが来ているようだが、バルサの選手としてプレーするのが夢と語るだけに、そんな遠くない将来に、彼の姿がカンプノウで見られるかも知れない。何と言っても、神が創造した人物なのだから。


 バルセロナ 04月28日 14時00分

なぜ?なぜ?なぜなの?

何ともはやスッキリとした目覚めの後、新聞を手に入れるために、いつものキオスコへ。ニコニコ顔のキオスコ兄ちゃんが「これ見て!」とばかり、左手にアス紙、右手にマルカ紙。何と、ライバル関係にあるマドリメディア両紙の一面は、同じ写真の上に同じタイトルを使っている。新聞社のロゴさえ違え、まったく同じデザインの一面。審判に赤紙を見せられて驚いているぺぺの写真、“なぜ?”これがタイトル。なぜ、なぜ?なのか。

試合前日の記者会見場外乱闘事件で、ペップに岩石落としを喰らったあとに四の字固めを決められて、ノックアウトとなったモウリーニョが、ユーロクラシコ試合後の記者会見場にあらわれた。本来なら、ビジターチームの監督が最初に登場し、そのあとにホームの監督があらわれるというのが順番となっているが、ペップの了解を得たのか、あるいはそういうルールを無視したのか、勝手に一番乗りしている。試合開始1時間前にグラウンドに水をまくというUEFAの決まりを無視し、いっさい水まきしなかったチームの監督(当然ながらUEFAからのクレームがつくことになるのは間違いない)だけに、あまりルールなどにはこだわらないのだろう。

「なぜ、バルサ相手の試合となると、我々は常に10人で戦わなければならないのか?なぜ、ファールを犯したわけでもないぺぺを退場処分にし、やはりファールには値しないプレーをしたラモスにイエローカードがでるのか?なぜ、あんな素晴らしい選手と優秀な監督によって指揮されているバルサというチームが、審判の助けを借りなければならないのだろうか?なぜ、我々チェルシー(マドリの監督という自覚がないのか)には、明らかな4回のペナルティーがあったにもかかわらず、審判は笛を吹かなかったのか?なぜ、我々インテル(今度はインテルだ)の選手モッタが退場とならなければならないのか?なぜ、審判に拍手をおくっただけの私が退場処分とされなければならないのか?なぜ?なぜ?なぜなの?」

なぜなのオジサンはジャーナリストの質問を無視して一人でしゃべり続ける。
「もし、これまで笛を吹いてきた審判たちや、UEFAという組織に関して思っていることをそのまま語ったとしたら、私は明日から監督としてやっていけなくなるだろう。だが、なぜ、私と対戦する時のバルサは審判に保護されることになるのか?ユニセフのロゴをつけているからか?スペインフットボール協会会長のビジャールがUEFA組織の幹部となっているからか?なぜ?なぜ?なぜなの?」

さらに、なぜなぜオジサンの独り言が記者会見場に流れる。
「私はこれまで、2回のチャンピオンズを制覇してきている。オポルトとインテルという、それまで長い期間にわたってチャンピオンズ制覇とは無関係だったチームを指揮して、ヨーロッパの頂上に立ってきた。ひたすら練習に励み、私やすべての選手が日々の努力をし、勝利することの可能性を探ってきたからこそ、誰の助けも借りずに目的を達成することができた。ジョセップ・グアルディオーラは確かに素晴らしい監督だ。だが、もし私が監督であれば、彼が獲得したチャンピオンズ優勝という成果を恥ずかしく思うだろう。スタンフォード・ブリッジでのスキャンダラスな試合(あのアビダルが、不可思議にも退場となった試合のことですか?)を思い返すだけで、バルサには相応しくないチャンピオンズ制覇だったではないか。今回のチャンピオンズに優勝することがあったとしても、このベルナベウでのスキャンダラスな試合を経てのものだから、私なら恥ずかしいと思うだろう。」
この“負け方を知らぬ”お方が何を言おうと、バルサの勝利に気をよくしている私には、お経にしか聞こえませぬ。そして、そのお経は次のような戯言で終わりをみる。

「不当にもカードをもらったラモスに加え、ぺぺも次の試合には出場できない。監督の私もベンチには入れない。そして0−2という結果。こんな要素を抱えてのカンプノウの試合が待っている。常識的には我々には可能性など残っていないと考えた方がいいだろう。例え、我々がゴールを決めて少しでも決勝戦へ行ける可能性を開いたとしても、その後には必ず審判のリアクションが待っているだろうし、どう考えても、我々の可能性はゼロだ。」

2008年の冬、ラウルを筆頭とするカピタン派が、当時の監督シュステルに反旗を翻したことがあった。カンプノウクラシコを前にして、今のバルサに勝利するのは不可能に近いと語ったシュステルに対しての反旗だった。この監督の言葉に、多くのマドリディスタの間で不満が発生したのは当然だ。何と言ってもレアル・マドリなのだ。クラシコの試合前に“勝利は不可能”などという監督の発言はあり得ない歴史を持つレアル・マドリだ。最終的に、この発言がきっかけとなって、シュステルは更迭されてしまった。そして、いま、モウリーニョもまた、彼なりのこじつけで、来週のユーロクラシコを前にして降参の白い旗を揚げている。だが、今のところ、選手たちから反旗が翻る様子はない。マドリメディアに踊らされている多くのマドリディスタたちも、今のところ動きを見せていない。だが、試合後のベルナベウの風景を流していたテレビカメラが、スタジアムから出てくる70才ぐらいと思われる一人のベテランマドリディスタにインタビューしている。

「こんな戦い方をするマドリを見たことがない。40年間にわたってこのスタジアムに通っている私が言うのだから、間違いないことだ。ボールを相手チームに渡して戦おうなんて、それは我々マドリの戦い方ではないよ。ぺぺの退場?黄色でも赤でもおかしくないファールのように思えた。でも、そんなことはどうでもいいことだ。そんなことは言い訳にしか過ぎい。私が知っているマドリは決して言い訳なんかしないチームだった。ここのところ、私のマドリはなにか、おかしいんじゃないかと思う。」


 バルセロナ 04月28日 00時00分

Messi, puto crack !!!

REAL MADRID 0 - 2 FC BARCELONA

0-1(76M) MESSI
0-2(85M) MESSI

[出場選手]
VALDES, ALVES, MASCHERANO, PIQUE, PUYOL, BUSQUETS, KEITA, XAVI, PEDRO(AFELLAY 70M), MESSI, VILLA(S.ROBERTO 89M)

試合後のモウ記者会見


 バルセロナ 04月27日 17時00分

あと4時間

どこまでも陰湿で果てしなく陰険、さらにマゾヒスティックにしてサディスティックでもあるジョセ・モウリーニョの記者会見が、試合前日15時からベルナベウ記者会見場で始まった。もちろんテレビで生中継されている。外国からやって来たジャーナリストも含め、多くのカメラマンがモウリーニョの登場を待っている。スペクタクルな記者会見となるのはすでに保証済みだ。

この試合の審判が誰になるかということより、あるいはペップがUEFA審判協会にプレッシャーを加え、彼の好みとなる審判がこの大事な試合で笛を吹くようにした事実(注1)などよりも、もっともっと驚くべき、かつ重要なことがある。それはバルサの監督であるペップが、新たな時代を築いたことである。これまで、監督という職業を持つ人々の中には二つのタイプがあった。ひとつは、まったくもって数少ない監督のグループであるが、いっさい審判に関しては触れない監督によって構成されているグループ。そしてもうひとつは非常に数の多いグループ、このグループには私も入ることになるが、このグループの特徴は、もし審判が試合中に重要な誤りを犯した場合は、はっきりとそのミスを指摘することだ。このことを私は恥ずかしいとも思わないし、悪いことだとも思っていない。そして今、ペップは新たなグループを誕生させてくれた。まだ、彼一人の限りなく小さいグループとはいえ、ひとつの新たなグループを形成しようとしている。このグループの特徴は何か?それは単純なことだ。審判の正しい判断を批判することが、このグループの特徴(注2)だ。これまでの自分の監督経験で、決して見たことのない世界をペップが登場させてくれた。果たして、ペップを尊敬しているであろう多くのファンたちが、これからも彼をアイドルとして見続けていけるかどうか、それは大いに興味あるところだ。

(注1)この試合を担当する審判は、ポルトガル人審判となる可能性が強いということを、マドリメディアは数日前から予想し、紙面で発表していた。オサスナ戦後の記者会見でそのことを聞かれたペップが、「もしその通りなら、モウリーニョは大喜びしているだろう。昨年のインテル戦でも彼と同じポルトガル人が笛を吹いてくれたが、アルベスへのPKや彼らの3点目のオフサイドゴールを見逃したのがポルトガル人審判だから、もし今回もそうなればモウリーニョに不満はないだろう」という発言を指す。

(注2)やはりオサスナ戦後の記者会見で、国王杯決勝戦のことを聞かれたペップがこう答えている。「ああいう一発勝負の試合は、ささいなことで勝負が決まるものだ。もしラインズマンが、ペドロの2センチオフサイドを見逃して誤審でもしていれば、結果は違うものになったように、本当にささいなことで勝負が決まるものさ。だが、審判たちは正しい判定を下したし、総体的にみてもマドリが優勝する価値のある試合をしたのだと総括している。」と語ったことを、陰湿にして誤魔化し屋のモウリーニョ的解釈で、まるでペップが審判批判をしたかのように語っている。

例をあげたらきりがないが、例えば、チェルシーの監督時代、デル・オルノがメッシーに体当たりをかませて、審判が正しくも退場処分としたことがあったが、試合後の記者会見でその審判を罵倒したのはモウリーニョ。そして最近の例で言えば、先日のリーガクラシコで、これまた正しく、審判がメッシーにファールしたアルビオルを退場処分としたが、このことをもっておおげさに審判批判していたのは、まさにこのモウリーニョだった。彼はすでに何年も前からこの“正しい審判判断”を批判するグループの親分となっていたのではないか。そのことを触れる勇気あるスペインジャーナリストは、この記者会見場にはいない。唯一、イングランドからやって来たジャーナリストが、皮肉を込めてモウリーニョにひとつの質問をしている。
「これまでさんざんUEFAの審判と揉めてきたあなたが、ペップのことを批判するなんて、多くのファンやジャーナリストの笑いものになるとは思わないか?」
もちろん、この質問には答えない卑怯者モウリーニョであった。

それから5時間後の20時。やはり同じ場所で、多くのジャーナリストが待ち受けるところにペップがあらわれた。もちろん生中継を担当するテレビカメラも同席している。ペップに対する最初の質問は、当然ながらモウリーニョの言葉に関しての質問となる。

まず始めに、彼は自分のことをグアルディオーラ氏ではなく、ペップと呼びつけにしていたらしいから、こちらからも彼のことをジョセと呼ぶことにしよう。ジョセ、我々は明日の20時45分に、ベルナベウというグラウンドで戦うことになる。クラシコという戦いだから、どちらが勝利してもおかしくない試合だ。だが、そのグラウンドを離れての戦いは、ジョセ、あんたの勝ちだ。これまでもそうであったように、そしてこれからも、あんたが勝利していくことになるだろう。なぜかって?それは、あんたはグラウンド以外のところではクラックだからだ。いや、超クラックと言った方が良いかも知れない。あんたは、グラウンドを離れてのチャンピオンズの戦では、誰にも優る超クラックと言っていい。ジョセ、同時にあんたはこのベルナベウ記者会見場でのボスでもあるだろうから、ここであんたに戦いを挑むことはしない。あんたをボスとし、フロレンティーノ提灯持ちが集まっているこの場での戦いはしない。我々が戦いの場とするのは、あくまでもグラウンドの中だ。

自分が何を語ったかは、自分が一番よく知っている。国王杯決勝戦では、あんたたちが素晴らしい戦いをして、それに相応しい勝利を得たことを称賛したに過ぎない。同時に、ミスなくジャッジし続けた審判たちも称賛した。もっとも、その発言をそのまま理解するか、あるいは発言の行間を読み取って、他の解釈を試みたいというのなら、それはあんたの自由というものだ。何と言っても、あんたはここに集まっているジャーナリスたちのボスなのだから、好きなように振る舞えばいいだろう。

この記者会見場というところではなく、あんたたちが、どのような戦い方をグラウンドの中でしてこようと、それを批判する気持ちはまったくない。自分の同業者たちが、どのような戦い方をしてこようが、そのアイデアを批判する気持ちはまったくない。すべてのシステムが有効性を持っているからだ。ジョセ、あんたと私はバルサというクラブで、4年間にわたって同じ釜のメシを喰ってきた。だから、あんたのことをそれなりに知っているし、あんたも自分のことを知っているだろう。あの4年という間でもそうであったように、グラウンドでの指揮者としてのあんたには、これまでも、そしてこれからも多くのことを学んでいくだろうと思う。ジョセ、あんたは何と言っても、多くのタイトルを獲得してきた優秀な指揮者であるのだから。だが、そうは言ってもジョセ、グラウンド外でのあんたに学ぶことはまったくないだろう。

我々は、このベルナベウという歴史的なグラウンドにフットボールをしにきた。チャンピオンズ準決勝という大事な試合をしにきた。これまでのクラシコ2試合で、選手としても、そして監督としても、自分が経験したことのない暴力的とは言わないまでも、とてつもなく激しい戦いを挑んできたレアル・マドリというチーム相手に、試合をしにきた。カカ、ロナルド、ディ・マリア、ぺぺなどという素晴らしい選手を擁する強力なチーム相手に、我々は11人のカンテラ選手を用意して戦おうとしている。ジョセ、それが我々のフィロソフィーであることは、あんたもよく知っているだろう。グラウンドの中ではあんたたちが勝つかも知れない、あるいは我々が勝つかも知れない。だが、どのような結果に終わろうと、我々の持つフィロソフィーを後悔することは、間違ってもないだろう。明日の20時45分、ジョセ、我々の本当の戦いが始まる。

クライフ以来、何百回と監督記者会見を見るチャンスに恵まれてきた。だが、これほどスッとする、スッキリ感満載、と同時に血を熱くする記者会見にお目にかかったことがない。発言だけを見れば、激しい場外乱闘だ。だが、ペップの言葉の一言にも興奮状態というのは見あたらない。神経質になっている風でもない。どちらかと言えば、非常にリラックスし、楽しそうに語っている。言葉の内容とは裏腹に、戦いの前の静けさが広がる記者会見と言っていい。だが、ヤツらが血に飢えた戦い方を望んでくるのであれば、それはそれで良し。しっかりと受けて立ってやろう。マスチェラーノが強烈にキックしたボールがベンチ前に立つモウの頭に当たり、ブヒャーと血が吹き飛び、プジョーの怒濤のようなタックルがロナルドの右足にあたり、パクッとあいた傷から血がドロドロと流れ、ブスケのエルボーキックが見事にあたり、あの醜い顔を血で真っ赤にするぺぺ。そちらが望むなら、こういうシーンも見せてやろうじゃないか。

バモス、バルサ!そしてスエルテ!


 バルセロナ 04月27日 12時00分

第一ラウンド試合当日

ついに、ユーロクラシコ第一ラウンド試合当日となった。リーガの試合であれば、この試合当日に現場にかけつけるペップバルサながら、チャンピオンズの試合では、そのペップ流は許されない。試合前日には試合会場となる町にいなければならない。というわけで、試合前日となった4月26日午前11時、ペップ御一行はバルセロナ→マドリッド間を結ぶプエンテ・アエレオに乗り、敵の待ちかまえるマドリッドへと飛んでいる。

さて、ここでこのユーロクラシコ第一ラウンドに出場が予想される両チームの選手を見てみよう。ついでに、選手一人一人の移籍料までつけてしまおう。

●レアル・マドリ
カルバーリョはカード制裁のためこの試合には出場できない。またケディラは負傷中のため、この試合には出場できない。大方の予想では、カルバーリョの代わりにアルビオル、ケディラの代わりにラスが出場するのではないかとされているようだ。まあ、誰が出てこようが、我々バルサにはそれほど関係ない。ちなみに、ロナルド、ラモス、ディ・マリア、アルビオルの4人はカードリーチがかかっているので、もしこの試合で審判に黄色い紙を見せられたら、次のユーロクラシコ第二ラウンドの試合には出場できない。

カシージャス・・・・・・・0ユーロ
アルベロア・・・・・600万ユーロ
ラモス・・・・・・2700万ユーロ
アルビオル・・・・1500万ユーロ
マルセロ・・・・・・650万ユーロ
ぺぺ・・・・・・・3000万ユーロ
アロンソ・・・・・3000万ユーロ
ラス・・・・・・・2000万ユーロ
ディ・マリア・・・2500万ユーロ
ロナルド・・・・・9400万ユーロ
ベンセマ・・・・・3500万ユーロ

ご破算に願いましては、カカという7000万ユーロもした選手がでていないにもかかわらず、合計2億8850万ユーロのスタメンとあいなります。

●バルサ
アビダル、アドリアーノ、マクスエルという3人の左ラテラル選手がそろいにそろって負傷中のため出場不可能状態。その代わり、出場が危ぶまれていたプジョーとミリートの二人が復帰してきている。噂によれば、イニエスタがイマイチ状態ということだが、まあきっと出場してくるだろうと思っていたら、試合前日の練習を10分で切り上げ、ダメ状態であることが確認された。ペップ監督によって招集された選手は合計20人だが、イニエスタもダメということで、この中から一人だけ観客席送りとなる。
その招集メンバーは、バルデス、ピント、アルベス、ピケ、プジョー、ミリート、マスチェラーノ、ブスケ、ケイタ、チャビ、イニエスタ、ペドロ、アフェライ、メッシー、ジェフレン、ビージャという16人のトップチーム在籍選手に加え、バルサBからティアゴ、フォンタス、モントーヤ、そしてセルジ・ロベルトの4人が招集されている。

バルデス・・・・・・・・0ユーロ
アルベス・・・・3000万ユーロ
ピケ・・・・・・・500万ユーロ
マスチェラーノ・2200万ユーロ
プジョー・・・・・・・・0ユーロ
ブスケ・・・・・・・・・0ユーロ
チャビ・・・・・・・・・0ユーロ
ケイタ・・・・・1400万ユーロ
ペドロ・・・・・・・・・0ユーロ
メッシー・・・・・・・・0ユーロ
ビージャ・・・・4000万ユーロ

ご破算に願いましては、無料のイニエスタの代わりに有料のケイタが入ったため少々お高くなりましたが、合計1億1100万ユーロのスタメンとあいなります。それでもマドリに比べて、だいぶお安くなっております。

もう一つおまけとして、これまでの両チームの統計的なものも出してしまおう。チャンピオンズがスタートし、グループ戦6試合、1/8で2試合、1/4で2試合、これまで両チームそれぞれ合計10試合戦ってきているが、その10試合の各種統計だ。

●マドリは地元での試合では1ゴールも相手チームに許していない。

●バルサはフエラのすべての試合でゴールを決めている。

●ゴール数
マドリ 24
バルサ 24

●失点数
マドリ 3
バルサ 7

●ゴール枠内シュート数
マドリ 82
バルサ 75

●ゴール枠外シュート数
マドリ 83
バルサ 69

●ファール数
マドリ 124
バルサ 104

●ファールされた数
マドリ 141
バルサ 145

●イエローカード数
マドリ 24
バルサ 10

●レッドカード数
マドリ 2
バルサ 0

まあ、ここまではたいしてビックリするような数字は出てきていない。マドリの失点数が非常に少なかったり、カードの数が多いのは、彼らのとるシステムから納得いく数字だ。だが、次の数字は驚き桃の木山椒の木だ。
●ボール支配率
マドリ 62%
バルサ 61%

何と、マドリの方がバルサよりボール支配率が高いのだ。この現象をどう考えればいいのか。アウセール、アヤックス、ミラン、リヨン、トッテンハムという、マドリが対戦してきたチームがよほどクソだったのか、パナティナイコス、ルビン・カザン、コペンハーゲン、アーセナル、シャクターというバルサの対戦チームがよほど素晴らしかったのか、はたまた、いや、他のことは何も思いつかない、不思議な数字であります。

さて、試合開始まで8時間45分。試合開始4時間前あたりに、場外乱闘にしてスペクタクルな試合前日記者会見の模様を。


 バルセロナ 04月27日 00時00分

こちら三面(健康編)

2000−01シーズン、つまりガスパー会長・レシャック監督という神をも恐れぬ驚異のコンビが誕生し、そのおかげでバルセロニスタにとっては暗黒の時代となったシーズン。このシーズン、カンプノウで7名の死亡が記録されている。別に彼らが殺したわけではないが、試合観戦中の死亡だった。死因はすべて心臓発作。どのような試合で、どのような状況だったかは記録されていないが、年齢的には20代から80代と幅が広い。そしてこの次のシーズンから、カンプノウ内の23か所に電気療法による心臓の拍動異常を押さえる器械を設置した結果、ひとシーズン15人平均の心臓発作のうち、90%の人は命を落とさずにすむようになったらしい。この世界にしっかりとはまってしまうと、試合観戦は命がけのものとなるのだ。

ドイツムンディアル2006期間中における、“フットボールと心臓発作”の関係を示したレポートがある。

ムンディアルが開催された約1か月の期間中、ドイツの試合がおこなわれた日の心臓発作患者数は、普段の日の3.26倍にも増えたいう。もちろん、スケジュールが煮詰まってくればくるほど、ファンにとっては緊張感が増してくるから、ドイツ代表が勝ち抜くにしたがって、患者数も増えることになる。準決勝進出をかけて戦われたドイツ対アルゼンチン戦。ドイツ代表は最終的にペナルティー合戦でアルゼンチンを退けることになるが、ミュンヘンの病院では60人もの心臓発作患者が緊急入院している。そしてその3日後、イタリア相手に戦われた準決勝でも、やはり同じ数の患者を扱っている。この試合ではドイツが敗退しているが、興奮度は勝とうが負けようが同じということらしい。そして更に、この試合から数日後におこなわれた3位4位決定戦の日には、患者数は30人に減っていると記録されている。

試合の重要性が増せば増すほど、心臓発作の可能性も増してくることは明らかだ。クラシコ第一ラウンドのリーグ戦が終了し、第二ラウンドの国王杯決勝戦もすでに過去のものとなった。試合の重要性という意味では、これから始まるユーロクラシコ2戦は、これまでのスパーリング2試合とは比較にならない。ここまで病院のお世話にならず生き延びてきたバルセロニスタが、更にユーロクラシコ2戦を生き延びるにはどうしたらいいだろうか。

スペイン心臓病専門医協会というところが、このユーロクラシコ2連戦前にして、“すべてのマドリ・バルサファンの皆さんに”というタイトルで、観戦中に起こる可能性のある心臓発作を防ぐためのメッセージを送っている。これ、本当の話です。

“両クラブを応援するファンの人々にとって、ただでさえ緊張感を与えるであろうクラシコの試合であるのに加え、1週間の間に2度も開催されるチャンピオンズクラシコともなると、更に緊張感が高いものとなることがじゅうぶん予測されます。この強度の緊張感がひとつの要因となって発生する心臓発作は、特に50才以上の方、糖尿病の方、喫煙者、高血圧の方、コレステロールの高い方、太り気味の方、座ったままの時間が多い方、熱狂的で感情の激しい方に発生する確率が高いとされています。”

ということだが、早い話、ほとんどの人が“危険人物”に該当するということじゃないかい?

“いざというときに、すぐに救急車を呼べるように、一人ではなく家族や友人たちと一緒に観戦することが望ましいが、緊張感が必要以上に高まるであろうスポーツバルなどでの観戦は、なるべくなら避けた方が良い。そしてハーフタイムには足や体全体の筋肉の緊張を和らげるために、歩いたり屈伸運動をおこなうのが望ましい。もし、試合観戦中に気分が悪くなったりすることがあったら、必ず2、3分間のリラックスタイム、つまり散歩したり、トイレに行ったり、気分転換を図ることが必要だ。その間、深呼吸を繰り返し、気分をリラックスすることに務めればいいだろう。また、試合前には食べ過ぎないように注意することが望ましい。また、試合前であれ試合中であれ、喫煙したりアルコールを飲んだりしないのが一番だが、水分を取ることは必要だから飲み水を用意するのが良いだろう。”

簡単にまとめるとこんな感じになるが、最後に次のように締めくくっている。

“もしあなたの応援しているクラブが勝利したとしても、度の外れた喜び方をしてはいけない。心臓に大きな負担をかけるからだ。そして例え負けたからといって、極度に落ち込むことも避けるべきだ。なぜなら、何事も楽観的に総括することこそ、健康を保つ秘けつでもあるからだ。”

まあ、おっしゃってることはわかります。でも、相撲やゴルフやゲートボールや体操やハンマー投げファンじゃなく、何と言ってもフットボールファンなんだから、最後の部分はなかなか難しい注文でございます。


 バルセロナ 04月26日 14時00分

再びクライフの登場

“完全に上昇気流に乗り始めたレアル・マドリが有利となったユーロクラシコ”
これが、国王杯決勝戦以降のマドリメディアの一般的な見方と言える。もちろん、このアイデアが、すべてのマドリメディアに共通しているものではない。あくまでも一般的な予想である。そして、マドリの監督が、選手たちが、そしてマドリディスタたちが、同じように感じているのであれば、それはバルサにとって決して悪いことではない。それどころが、歓迎すべきことだと言っていい。表面的なことのみを見つめ、現状を分析することを避け、現実を回避することは、大きな過ちを犯すことになる。

バルサはこれまでマドリより優れていたし、今でもそのバランスは崩れていない。もし、それが逆だというのなら、リーガの首位はバルサではなくマドリであるということを証明すべきだろう。控え選手が中心となったバレンシア戦で6ゴールも決めたのに、オサスナ相手に同じように控え選手を用意して戦ったバルサは2ゴールしか決めていないって? 大事なチャンピオンズの試合を前にしたリーグの試合で、唯一大事なことは、勝利の3ポイントを獲得することだ。2位のマドリと8ポイント差を保ち続けることのみが大事な試合だった。

二つのチームの違いは、シーズンを通じて戦われるリーグ戦での8ポイントという差でその相違を見るべきであり、例え国王杯の決勝戦とは言え、120分間で戦われたその試合結果で見るものではないだろう。この戦いは、マドリにとってまさにシーズンをかけた戦いであり、一方のバルサと言えば、クラシコの戦いのひとつでしかなかった。もし、私がマドリの監督であったとしても、死ぬ気で選手たちを指揮しただろう。それほど大事な試合だったのだ、彼らにしてみれば。

決勝戦はささいな出来事で勝敗が決まる。前半はマドリ、後半はバルサ有利の試合となり、延長戦となったこの試合を決めたのは、ゴールチャンスをいかしたマドリの方となった。勝利がどうしても必要なチームに栄冠が与えられることになるのは、これまでの歴史が証明してきたことでもある。だが、1試合で決まるものではなく、ホーム&アウエーの2試合となるチャンピオンズの試合は、まったく異なったものとなる。ここには、勝利の必要性があるチームが有利という理論は通用しない。ここでも、もちろんささいなことで勝負が決まることになる可能性が残るものの、2つの試合をこなさなければならないということは、本来持っているそれぞれのチームの実力がものをいう世界となる。したがって、一発勝負の国王杯決勝戦の試合などは、まったく参考とはならない。もちろん、二つのチームの違いを、カンプノウクラシコの5−0という結果で見るバルセロニスタがいるとしたら、そういう彼らも間違いを起こしていることになる。マドリとバルサの違いは、10年に一度起きるかどうかというそういうマニータの試合ではなく、毎週毎週戦われるリーグ戦で勝ち取った8ポイントという、その差に見るべきだ。

ここ2試合でのモウマドリの変化を見てみよう。最も目立つのは、セントラルではなく中盤へのぺぺのポジション変化だ。それはメディオセントロであったりインテリオールであったりする違いはあるものの、いずれにしても中盤へのポジション変化だ。だが、それだけではない。7人もの選手をポルテロの前に位置させるシステム変化も見てとらなければならない。ひとつひとつの場面で、激しい勢いでのボールの奪い合い。カード制裁を受けてもおかしくないほどの激しいあたり。この特徴に加えて、コパクラシコでは10mほどディフェンスラインを上げるシステムもとっている。このシステムが素晴らしいものかどうか、気に入るかどうかということは別として、ペップバルサはこの現実に立ち向かう作戦をとらなければならない。

それは単純なことだ。モウリーニョがクラシコ4戦に向けて、新たな要素を加えた戦いをしなければならなかったのに比べ、ペップバルサはこれまでのフィロソフィーを実践に移すことだけを心がければよい。ボールを支配することはもちろん、素早いスピードでのボールの移行。これまでのリーグ戦での試合のように、相手の挑発に乗ることなく、つまりフットボールとは無関係の選手同士の衝突や、相手のベンチからの挑発をも無視する戦いを挑むべきだろう。それは彼らのスタイルであったとしても、我々のスタイルではない。もちろん、芝の状態がどうのこうの、審判がどの国の出身であるかどうか、そんなことは忘れるべきだ。そんなことを心配する暇があるのなら、もっと奥行きのあるフットボールを心がけることを追求すべきだろう。この奥行きのある、つまり空いたスペースを追求しないフットボールが生むものは、動きのとれない中盤でのプレーを発生させるし、同時にボールを簡単に失う可能性が高くなるということでもある。

もし、ペドロのゴールが有効と認められていれば、もし、カシージャスが今シーズン最高の仕事をしていなければ、バルサの選手層は薄くマドリのそれは厚いなどという議論は発生しなかっただろう。どうでも良い議論ながら、ペップにしてみれば、あのチグリンスキーを彼の意思とは別に売ってしまった事実を恨んでいるに違いがない(注・これまたクライフのクライフたる一面だ。ラポルタ万歳・反ルセーという立場のなせるワザのコメントである。それにしても、この大事な試合を前にして、あのスローモーション・チグリンの存在がないことを残念に思うバルセロニスタが果たしているのだろうか?いるわきゃないっち)。だが、いずれにしてもこの段階で選手層が薄い厚いという議論をしても始まらない。ユーロクラシコのキーを握るのは、現在抱えている選手たちで、どのようにペップバルサらしく戦えることができるか、それだけにかかっている。

ヨハン・クライフ
2011年4月25日
エル・ペリオディコ紙


 バルセロナ 04月26日 00時00分

ユーロクラシコチケット

ユーロクラシコ・ベルナベウ編のチケットゲット希望者の申し込みは、4月14日から開始されている。リーグ戦とは違い 、チャンピオンズの試合だから、UEFA規約によって、入場者可能数の5%のチケットがフエラ応援組に割り当てられているが、その数3500枚。これもまた15%はスポンサー関係者にいくから、実際は3千枚強というところか。そして、この中から各ペーニャに割り当てられる枚数を差し引かないとならないので、つまるところ2500枚ぐらいということ。予想されたように、申し込み初日からこの数字を越えてしまい、締め切りの17日には約1万6000枚の申し込みがあったようで、18日の月曜日に抽選がおこなわれている。

いったいチケットはいくらぐらいするのかと思い、マドリサイトをのぞいてみた。どうやらベルナベウには、アボノ(年間指定席所有者)に陣取られていない空席が1万5000席ほどあるようだ。しかもリーグ戦専用、チャンピオンズ専用アボノというシステムがあり、チャンピオンズの試合となると3万ほどの空席ができるらしい。したがって4万5000枚のチケットが窓口で売り出される。

さて、チケット料金表を見てビックリしてしもうた。一番安いところで80ユーロ、最も高いところで325ユーロ。ギョェー!高い!だが、もっと高い席があることを発見。ベルナベウにはグラウンドに面してレストランがあるが、そこで観戦すると1652ユーロとなるらしい。こんなユーロを支払って、バルサにギャフンとされてしまうところを見に行くなんて、この人たちはサドマゾの世界に生きる人々だ。

レストランで食事をしながらの試合観戦。個人的にはちょっと想像できない世界だが、イングランドのスタジアムにはこういうレストランが多くあるらしい。それにしてもと思うのは、食事をしながら観戦するのだから、フォークとナイフを持ちながらのものとなるのだろう。もしそんな試合観戦を、カンプノウ観戦常連組のヤツらとしたら、それは想像もしたくないおぞましい光景となるだろう。フォークやナイフ、皿やコップが飛び交い、頭にナイフが刺さってしまったり、血を出す者があらわれ、その血を見て荒れ狂うヤツもあらわれるおどろおどろしい世界。特にクラシコの試合となったら死人まで出るかも知れない。もっともそういうインチャはレストランなんかで試合観戦することなど一生ないだろうから、どうでもいい話だ。

そして、ユーロクラシコ・カンプノウ編チケット。ベルナベウより収容人数が多いので、5%というと、4500枚程度がマドリディスタの手に渡る。カンプノウの収容人員はバルササイトによると、9万8935人となっているが、御存知のとおり9万席近くがアボノの人たちよって占められており、しかもケチマドリと違って、ガンペル杯以外はどんな試合であれ、アボノカードを提示すればスタジアムに入れる。ということで、一般の人たちが入り込める隙間席というと9千席前後となるが、マドリディスタに売り出される4500枚プラスUEFA関係者に渡される2700枚のチケット数を引くと、2000枚弱となる。ところが、バルサ関係者(クラブ理事会員、選手、スタッフ、クラブ職員)にまわさなければならないチケットもあるわけで、この2千枚弱のチケットはあっという間に彼らの手元にいってしまう。

そこで、結論。“普通”のチケットはゼロ枚ということになる。クラブ発表によると、5月2日月曜日、つまり試合前日にソシオ専用にチケット販売します、となっているが、“普通”のチケットはない。したがって“普通”のチケットではないアボノの人たちが“この試合行きませんよ!”、として譲るシエント・リブレ方式によって提供されるチケットに頼るしかないということだ。


 バルセロナ 04月25日 14時00分

チャンピオンチーム

国王杯というものが、いったいいつからスペインリーグ最大の戦いとなったのだろう。1年間を通じて戦われるリーグ戦に代わって、そのリーグ戦では控え選手となっている選手たちが出場する傾向のあるこの国王杯が、いつからリーグ制覇より価値あるものとなったのだろう。これまでの長いスペインリーグの歴史の中で、数限られたクラブしか栄誉を勝ち取っていないリーグの戦いより、サラゴサだとかエスパニョールだとか、あるいはベティスだとかマジョルカなどというチームが優勝を飾っている国王杯が、いつから最も栄誉あるカップとなったのだろう。そう、思わざるおえない、ここ数日間のマドリメディアのバカ騒ぎ。

「ペップのあとにバルサの監督になる人は大変だ。これまで彼が作り上げてきたバルサは、まさに芸術と言っていいのだから。この芸術作品は、これから多くの専門家によって、真剣に研究・分析される対象となるだろう。それほど、これまでの常識では考えられない作品を、ペップは作ったのだ。そして、同時に、モウリーニョのメリットも、正当に評価しなければならないと思う。レアル・マドリという、世界の三本指に入るビッグクラブを指揮し、その戦い方といえば、毎シーズンカテゴリー落ちに片足を突っ込むことを余儀なくされているチームのようだ。これは皮肉で言っているんじゃない。間違いなく多くのマドリディスタやマドリメディアが批判するような戦い方をしていながら、そんな声はまったく聞かれない。それどころか、状況はまったくその反対で、彼への支持が圧倒的というじゃないか。これは普通の監督には不可能なことさ。あのカペーロにも不可能だったことさ。私のようなごく普通の監督が、セルタ時代にベルナベウに行って、ついこの間のベルナベウクラシコで見られたモウマドリと同じような内容で試合に望んだことがあった。結果も同じ引き分け。だが、その戦い方に、マドリメディアはもちろん、セルタの地元メディアでさえ、多くの批判の声をあげていた。私はセルタの監督だよ。二部にいてもおかしくないチームが、モウマドリと同じような戦い方をして批判されたんだ。つまるところ、私はごく普通の監督だったということだな。」
ベルナベウクラシコの何日か後におこなわれた、ロティーナ現コルーニャ監督へのインタビュー。なかなか興味深い発言でありまする。

どのような戦い方をしても、それが許されるのは、すべてカンプノウクラシコのマニータのおかげだ。もし、今シーズンのクラシコがベルナベウから始まり、つい先日のような戦い方をしたなら、マドリご意見番ディ・ステファノだけではなく、多くのマドリディスタはもちろん、提灯持ちマドリメディアからも批判があっただろう。あのマニータ以降、それはそれは辛い時期を過ごしていたのだ。クライフ時代のベルナベウクラシコで5−0で負けた試合を経験している自分だから、それは良く理解できる。そりゃあ辛いさ。最大のライバルにマニータで負けるなんて、眠れられない夜が続くこと請け合いだ。

したがって、負けなければいいのだ。試合内容がどうであれ、負けなければいいのだ。例え勝利できなくても負けなけりゃ良い。リーグ戦首位を走りながらも、試合内容がお粗末ということで、マドリ首脳陣がアンティック監督をクビにしてしまったことなど、まるで嘘のような大昔の話。だから、リーガの行方がかかっている試合でありながら、引き分けという結果に大勢のマドリディスタが拍手を送っちゃう。だって、負けなきゃいいんだも〜ん。

それが、コパクラシコでは勝利してしまった。延長戦でのゴールとはいえ、あのバルサに勝利してしまった。リーグ戦がまだ続いている最中だというのに、試合終了後には、選手たちもシベーレス広場でファンと共に勝利の雄叫びをあげている。そして、メディアといえば、その翌日からモウマドリのことを、チャンピオンチームと呼ぶようになっている。そう、リーグ戦ではなく国王杯を制覇した彼らは、スペインのチャンピオンチームと呼ばれるようになった。

チャンピオンチームという名は怖くないが、何をしようが許されるチームは、それなりに気持ちが悪い。なんせ、3億ユーロも4億ユーロもかけて良い選手を集め、それでカウンターアタックしてこようというのだから、それはそれなりに気持ち悪い。だが、そのチャンピオンチームが対戦するのは、彼らに8ポイントも差をつけて3年連続リーガ制覇を目前にしているペップチームだ。もちろん、恐れることなど何にもない。例え、ポルトガル人審判が笛を吹くことになろうが(最終的にドイツ人審判に決定)、恐れることなどありゃしない。全世界が見つめるチャンピオンズ準決勝ベルナベウクラシコまで、残りあと2日となりました。


 バルセロナ 04月25日 00時00分

来シーズンのバルサB(下)

いつものように何人かの選手がクラブを去ることになる。あるものはファンから惜しまれながら、そしてあるものは、このチームにいたことさえ忘れられてクラブを去っていく。外部からの補強作戦は当然ながら展開されていくだろう。だが、誰が来ようが、最終的には下から育ってきたカンテラ選手が、いつの間にかスタメンを勝ち取っていくことが繰り返される風景が見られるだろう。来シーズン、バルサBに上がってくるカンテラ選手、それはもちろん、今シーズンフベニルAチームでプレーしていた選手となる。

そのフベニルAは、リーグ戦最終戦で、グループ3のリーグ優勝を決めている。オスカー・ガルシア率いるこのチームは、30戦し、敗北の味を噛みしめたのはわずか1回だけ。チーム成績もさることながら、将来有望とされる何人かの選手の顔が見られるチームでもある。将来を期待されたアルゼンチン人選手イカルディとか、キラキラ星選手だったセバージョスは、シーズン途中でクラブから去っていったが、ここでは、来シーズンにはバルサB在籍となりそうな何人かの選手をピックアップしてみよう。

●ポルテロ

カルロス・カスタルナド(1992年12月26日生まれ)
もし、フベニルAチームから上がってくるポルテロがいるとすれば、このカルロスとなるだろう。今シーズンは、ほぼすべての試合にスタメン出場しているポルテロで、いわゆるクラック候補ではないが、バルサBでは多くのことを学ぶことができるだろう。この選手の控えとして、かつてバルサでポルテロ、現役引退後はコーチをしていたウンスエの息子ヘスス・ウンスエ(1993年12月25日生まれ)がいるが、来シーズンはフベニルカテゴリーでのスタメンを勝ち取るのが目標。

●デフェンサ

アルベルト・ダルマウ(1992年3月16日生まれ)
モントーヤの去就とは無関係に、この右ラテラル選手がバルサBに上がってくることは、じゅうぶん予想される。実力的にはモントーヤに接近する選手ながら、そのキャラクターが、バルサBスタッフにどのように受け入れられるかが問題だ。今シーズン、モントーヤがカード制裁で欠場となった試合に、このダルマウが出場してきたが、次の試合ではフベニルAに戻されたことがあった。それからしばらくフベニルAの試合にも出場せず、オスカー監督に2週間ほど“頭を冷やせ!”期間がおかれたことがある。バルサBにそのまま残れなかったことが不満だったようで、練習態度が非常に悪かったらしい。その後、少しは大人になることができたかどうか、それ次第。

セルジ・ゴメス(1992年3月28日生まれ)
今シーズンは、すでにルーチョバルサでもプレーしているし、スーペルコパでは、ペップバルサでも出場させてもらっているフベニル選手。身長は185cm、がたいも丈夫にできているし、いざというときには断固たるあたりを容赦なくぶちかます根性もある。この選手が来シーズンから本格的にバルサBに上がってくるのは100%間違いない。

セルヒオ・アヤラ(1993年3月19日生まれ)
セルジ・ゴメスがプジョータイプの選手とするならば、このアヤラ選手はピケタイプと言っていいだろう。彼もまたフィジカル的に恵まれた選手だが、テクニック的にも素晴らしいものを見せてくれる。セントラルが自然なポジションながら、左ラテラルもこなす。来シーズン、バルサBに上がってくるとすれば、この左ラテラルというポジションかも知れない。

●セントロカンピスタ

ハビエル・エスピノッサ(1992年9月19日生まれ)
繊細なボールテクニック、そして特に肌が白いこともあって、カデッテ時代から、第二のイニエスタと呼ばれている。ポジション的には右インテリオールというのが自然なところだが、左でも何の問題もない。ゴールを決めるのに苦労するところもイニエスタと同じだが、ルーチョバルサデビュー戦ではゴラッソを決めている。来シーズンからいきなりバルサBでのスタメンというわけにはいかないだろうが、徐々に経験を積んで、シーズンが終了する頃にはかなりの試合数をこなして行くかも知れない。

ラファ・アルカンタラ(1993年2月12日生まれ)
このティアゴの弟のラファは、左足利きの左インテリオール選手。だが、時として、9番でプレーしているところも見た覚えがある。ティアゴよりもキック力は強いようで、バルサには珍しい、中距離からのシュートもよく決めている。もし、イングランドからの誘惑などを無視し、バルサに残ることを決意したのなら、来シーズンからバルサBの貴重なセントロカンピスタの一人となるかも知れない。

●デランテロ

ガエル・エトック(1993年7月5日生まれ)
エトー財団から育ってきた最優秀選手ながら、期待通りの成長は見せていない。9番の選手だから当然とはいえ、彼の最大の魅力はゴールにある。そして最大の欠点はイレギュラー性。とにかく波の激しい選手だ。誰一人としてデランテロ選手をとりあげないのは寂しいから、あえてこのエトックを紹介しているが、まず、少なくても来シーズンは、バルサBには上がってこないだろう。

結論

ポルテロは、ミーニョが再び正ポルテロとして起用されるのではないだろうか。ピントが延長契約したこともあり、来シーズンもこのカテゴリーに残ることになるのは間違いない。控えポルテロは外部補強か、あるいはカルロスとなるかも知れない。

右ラテラルにはモントーヤ、あるいはダルマウ。二人ともダメとなると補強が必要なポジションとなるが、フベニルAのエドゥ・カンパバダル(1993年1月26日生まれ)を徐々に試していくのも面白いと思う。もともとはセントラルの選手だが、今シーズンはこのポジションでも活躍している。

左ラテラルにはプラーナス、あるいはエドゥ・オリオル。そしてフベニルAからセルヒオ・アヤラを徐々に試していくのが良いアイデアかも。もっとも、ムニエッサを本格的にこのポジションに落ち着かせる可能性もありそうだ。いずれにしても、外部補強は必要ないポジション。

セントラルはバルトラ、ムニエッサ、そしてセルジ・ゴメスがいるから何の問題もない。困ったときにはアヤラも起用できる。ここもまた、補強する必要のないポジションと言える。

セントロカンピスタ候補には、才能ある選手がゴロゴロとしている。ロメウ、セルジ・ロベルト、ラファ、マルティ、エスピノッサ、そしてイリエ。この6人でやり繰りしていけばじゅうぶんだろう。

デランテロ、ここだけは現在抱えている選手だけでは期待できない。サウル、ベンジャ、ノリートはいなくなるとして、ソリアーノもまた移籍する可能性が大だ。残るはテージョ、カルモナ、あるいはエドゥといったところだけとなり、ジェラールが上がってくるとしても、このカテゴリーに慣れるのには、時間が必要だろう。3人、4人と補強が必要なポジションとなる。


 バルセロナ 04月24日 14時00分

偉大さ

「家族は無事だったか?友人たちは被害を受けなかったか?」
「うん、だいじょうぶだった。」
行きつけの場所、それは例えば、朝刊を買いに行くキオスコだったり、朝のコーヒーを飲むバールだったり、家の近くにあるスーパーだったり、そういうところで、地震発生から一週間ぐらいは朝の挨拶の言葉となっていた。津波を体験した人などはいないだろうが、地方によっては地震がまったくないわけではないスペイン。そんな彼らが、テレビ画面や新聞の写真を通じて、その被害の大きさと、犠牲になった人々の多さにビックリするのは当然だ。スペイン人だけではなく、世界中の人々がビックリしているはずだ。地震の恐ろしさをよく知っている、外国に住んでいる日本人だってビックリなのだ。だが、彼らが更にビックリしたのは、スーパーなどの店が襲われなかったり、便乗値上げが起きなかったり、黙々と駅の改札口に並び続ける人々の風景。彼らは、日本人の偉大さをこういう風景に見る。

一週間を過ぎるあたりになると、朝の会話内容が違ってきた。
「スーパーなどを襲わねえのもすごいけれど、立ち直りの早さに比べたら、そんなことたいしたことじゃないように思えてきたぜ。日本人の立ち直りの早さ、それは彼らが本当に偉大な国民だってことだよな。」

スペインはフラメンコと闘牛と太陽の国、日本は芸者とお相撲と電気製品の国、江戸っ子は喧嘩早く、関西人はケチ。こういう、大雑把というか、当たっている部分もあれば、同じぐらいに外れている部分もある言い回しを真似てみれば、カタラン人はそのマイナス思考で知られている。ワインのボトルの中味が半分になっているのを、“まだ半分も”残っているとは考えず、“半分しか”残っていないと考えるカタラン人。そんな彼らにとって、どんな逆境に襲われようと、すぐに頭を上げ前を見ようとする人々の風景は、まさに偉大なものとうつる。

こじつけ臭いイントロの終了。

例え、ショックの大きい敗北を味わったとしても、すぐに立ち直るのが偉大なクラブの証。そこが並のクラブと偉大なクラブとの大きな違いだ。決して目標を失わず、常に前を見続ける、その姿勢を持ち続けるのが偉大なクラブ。昨シーズン、チャンピオンズ準決勝でインテル相手に敗北し、シーズン開始当初目標であった“チャンピオンズ決勝戦ベルナベウでの戦い”に進むことが不可能となったペップバルサにとって、残る唯一の目標はリーガ制覇となった。次の試合はマドリガルに行ってのビジャレアル戦。まさにリーグ制覇をかけた戦いだった。そして、インテル後遺症からわずか4日後の大事な試合に、ペップバルサの選手たちは頭をしっかりと上げ、偉大なチームであることを示した。難しいチーム相手に1−4という、偉大な勝利だった。

それから1年後。チャンピオンズの試合ではなく、国王杯決勝戦という違いはあるものの、選手たちが大きなショックを抱えていたことは同じ。その彼らには、チャンピオンズとリーガを制覇する戦いが残っている。まず、このオサスナ戦はリーガ制覇を決定的にするための大事な試合。90分が過ぎてみれば、2−0の勝利。だが、正直言って、果たして頭をスッキリと上げて前進したのかどうか、それはよくわからない試合だった。

3日前のスタメンからは、アルベス、マスチェラーノ、ブスケ、ビージャのみの4人しか出場しておらず、残りは、ジェフレンに象徴されるように、とてもクラシコには起用できない控えの選手。楽観的発想をすれば、ピケ、プジョー、チャビ、イニエスタ、ペドロ、そしてメッシーを休ませることができ、しかもエンジン全開ではなく省エネ気味に勝利し、水曜日の試合に望むことができたこと。しかもここ11試合にわたって空振り状態だったビージャにゴールが戻ってきた。マスチェラーノが冴えに冴えていること。付け加えるなら、ピケとシャキーラの微笑ましいカップルが見られたこと。そして、悲観的に総括すれば、相変わらず中盤でボールを簡単に取られてしまうこと、アルベスやブスケ、途中から出てきたイニエスタやチャビなどが、かつての輝きを見せていないこと。ゴールチャンスがなかなか作れないこと、ただでさえ人のいない左ラテラルのマクスエルの負傷、エトセトラ、エトセトラ・・・。

スッキリとした試合ではなかったものの、それでも、このチームを疑う気持ちはまったくない。頭はチョットしか上がらなかったかも知れないが、ユーロクラシコ前半90分までまだ3日間ある。後半90分まで9日間もある。彼らがスクッと頭を上げて、偉大なバルサが見られることを期待しよう。


 バルセロナ 04月24日 00時00分

来シーズンのバルサB(中)

●セントロカンピスタ

オリオル・ロメウ(1991年9月24日生まれ)
今年に入ってからの最初の試合となったラス・パルマス戦で膝を負傷をして翌日手術、最終的に全治3か月から4か月という辛い時間を過ごすことになってしまった。今シーズン開始前にはマスチェラーノ獲得がなければ、ペップチーム招集の可能性もあり、と言われた選手だけに、残念なシーズンをおくっている。来シーズンをバルサBカテゴリーでのスタートとし、更に成長を獲得すべし。

イリエ・サンチェス(1990年11月21日生まれ)
ロメウが負傷する前までは、ほとんど出番がなかった選手だが、ルーチョ監督の期待に応えて、4番選手としてそれなりの活躍を見せてきている。ラテラルをまかされたり、インテリオール選手としても起用されり、なかなか器用な選手だ。その意味では、かつてのガブリとダブルが、スケール的にはだいぶ小さい。彼の祖父がラ・マシアの関係者だったこともあり、根っからのバルセロニスタだが、才能的には、カンプノウまで届くのはチョイときつい感じ。来シーズンも貴重な控えとして、バルサBチームに残ることになるだろう。

ビクトル・バスケス(1987年1月20日生まれ)
まだ24才とはいえ、バルサBでは5シーズンもプレーしているカンテラベテラン選手。今年こそは、今年こそは、とステップアップが期待されてきた選手だが、いかんせん負傷に泣くことが多すぎる。今シーズンも長期負傷という不運に見舞われ、元気になって戻ってきても、なかなか継続性ある出番を与えられなかった。才能があふれかえった選手だったが、ここ2シーズンにわたって、徐々にスケールが小さくなったような印象を受けている。ペップバルサでの出番もないであろう来シーズン、もうバルサBに残ることはない。彼を必要とするクラブで、継続性ある出番が与えられれば、かつてあった輝きが戻ってくることだってあるだろう。彼のプレーを見るためだけに、カデッテやフベニルカテゴリーでの試合に行って楽しんだこともあった。本当にグラシアス、そしてブエナ・スエルテ!

セルジ・ロベルト(1992年2月7日生まれ)
“セスク獲得不要論”を主張するバルセロニスタにとって、このセルジ・ロベルトの存在が大きいことは否定できないだろう。フィジカル的にもテクニック的にも優れ、状況判断の鋭さも見られるし、そして何よりもこの若さでリーダーシップを発揮するセントロカンピスタ。今シーズンからバルサBチームに上がってきた選手ながら、シーズン途中には、すでに中盤でのリーダー的な存在となっている。バルサ期待のキラキラ星選手。

ジョナタン・ドス・サントス(1990年4月26日生まれ)
シーズン開始当初はペップバルサの練習に合流することが多かったため、バルサBでの試合にそれほど出場していない。シーズン途中から、彼に代わってティアゴの方がペップバルサの練習に参加することが多くなり、バルサBへと戻っているが、それでもなぜか、ルーチョ監督は彼を起用しなかった。そのジョナタンが、試合にやっと継続性をもって出場してくるようになったのは、つい最近のことだ。まだ契約期間は残っているというものの、彼がバルサに残るかどうか、非常に微妙なところではないだろうか。ペップバルサではもちろん、バルサBでもどうしても必要な選手という気がしない。

マルティ・リベロラ(1991年1月26日生まれ)
今年の1月からオランダのビテッセというチームにレンタルされている。チャッピー・フェレールが監督をやっているチームだ。レンタル期間は半年間だけ。つまり来シーズンにはバルサBに戻ってくることになる。彼にとってバルサBデビューとなった今シーズン、レンタルされるまで、決して出番が多かったわけではない。控えとしてベンチに置いておくよりは、オランダリーグでプレーさせて経験を積ませてやろう、というのがカンテラ首脳陣のアイデアだったのだろう。オランダでは試合にもそれなりに出ているらしく、いまのところ修行はうまくいっているようだ。

●デランテロ

クリスティアン・テージョ(1991年8月11日生まれ)
昨シーズン、在籍したエスパニョールとさんざん揉めた後、彼の希望どおりにバルサに戻ることができた。だが、ルーチョ監督の信頼を勝ち取っているかといえば、とてもそうは思えない。後半あたりからときどき出場することもあるが、ポジションは右エストレーモであり、カンテラ時代の9番とは違うポジションだ。だが、テージョがバルサBで生き延びるには、このエストレーモのポジションの方が良いかも知れない。彼もまた、来シーズンがスタートの年となる。

ノリート(1986年1月15日生まれ)
いろいろなチームを渡り歩いてきたノリート。そんな彼にとって、プロ選手としては最も充実したシーズンとなったであろう今シーズン。運動量の多い選手大好き監督のルーチョの信頼を勝ち取り、しかもペップバルサでも、ほんの少しだけとは言え、出場時間が与えられた。確かに運動量は多いし、ゴール能力もそれなりに持っている選手ながら、特にエストレーモ選手に要求される“スピードの変化・リズムの変化”というものを持ち合わせていないのが残念と言えば残念。今シーズンをもって契約が切れる彼は、クラブからのオファーを断り、すでにベンフィカとの仮契約を済ませているとも言われている。例え、ベンフィカに行かないとしても、バルサに残ることはないだろう。しかし、果たして一部リーグでやっていける選手なのかどうか、個人的には非常に難しいところだろうと思っている。

ジョナタン・ソリアーノ(1985年9月24日生まれ)
エスパニョールでデビューした頃のような“キレ”が戻ってきた今シーズン。二部リーグでの最多ゴール選手ながら、ペップバルサに招集される気配はない。それでもその希望を捨てず、来シーズンもバルサBに残ると語っているが、たぶんそれはないだろうと思う。これほどの選手を、一部リーグの地味なチームが放っておくわけがない。ラーシングとか、ヘタフェとか、ヒホンなどというチームではじゅうぶん通用する選手だと思う。

サウル・バルジョン(1985年5月24日生まれ)
エストレーモ選手として今シーズン加入してきた選手だが、出場チャンスはこれまで数えるほどしか与えられていない。たまにプレーしているところを見ても、もちろん目立つ選手でもない。もう26才という年齢だし、サヨナラ、ご苦労さん、ブエナ・スエルテということでいいのではないだろうか。

ベンジャ・マルティネス(1987年8月23日生まれ)
今シーズンで契約が切れるし、例え、何かの間違いで契約期間が残っていたとしても、サヨナラ、ご苦労さん、ブエナ・スエルテ第一番候補。

カルロス・カルモナ(1987年7月5日生まれ)
このカテゴリーでプレーする選手にしては、高額な移籍料を支払って獲得してみたものの、負傷期間が3か月近くあったことを差し引いても、少々期待はずれのシーズンをおくっている。シーズン開始当初、初めてプレーしている彼を見て、何やらかつてのリケルメの臭いがする印象を受けたが、負傷から戻ってきた彼のプレーを見たときには、何ということはない、ただのセントロカンピスタ兼デランテロ選手となっていた。それでも来シーズンは残ることになるのだろう。


 バルセロナ 04月23日 14時00分

来シーズンのバルサB(上)

●監督

唯一確かなのは、ルイス・エンリケ監督がいなくなるということだけで、新しい監督候補は、前に触れたように、何人かリストアップされているようだが、この4月の段階では、まだ発表されていない。個人的にはそれほど興味の無いテーマだが、それでもチャッピー・フェレールが来てくれれば何となく嬉しい。もっとも、今シーズンフベニルAの監督を務めているオスカーでも良いし、フベニルB監督のセルジでも良しとしよう。まあ、誰でも良いか。

●ポルテロ

ルーベン・ミーニョ(1989年1月18日生まれ)、オイエル・オラサバル(1989年9月14日生まれ)、ジョルディ・マシップ(1989年1月3日生まれ)という3人のポルテロがいるが、シーズン途中からローテーション気味に起用されていたこともあり、これといった突出したポルテロが見あたらない。ミーニョとオイエルの契約期間はまだ1年残っているが、マシップは今シーズン終了と共に切れる。予想としてはミーニョだけが残ることになり、オイエル、マシップの二人は、放出となるのではないだろうか。いずれにしても、ルーチョ監督がいなくなることから、来シーズンからはポルテロのローテーション起用という異常な事態はなくなるだろう。

●デフェンサ

マルティン・モントーヤ(1991年4月14日生まれ)
カード制裁を受けた時と負傷時以外は、絶対の右ラテラルスタメン選手だったモントーヤだけに、バルサB在籍2年目となる来シーズンも、彼がこのポジションを務めることになる。ただ、バレンシアをはじめ、多くのクラブが彼の獲得を狙っていることや、アルベスの延長契約がおこなわれたこともあるし、今シーズン限りでクラブを去る可能性もあるだろう。もし、バレンシアあたりで継続性を持った起用をされれば、それも決して悪くはないと思う。もちろん、レンタル、あるいは買い戻し権利付きの移籍というスタイルをとることが基本。何と言っても、バルサカンテラ組織から久しぶりに育ってきた、キラキラ星ラテラル選手なのだから。

マーク・バルトラ(1991年1月15日生まれ)
フォンタスと共に、今シーズンの絶対スタメンセントラル選手。181cmという、もともと身長の高い選手だが、顔が小さいからもっと大きく見える。今シーズンも順調に成長をとげた選手で、攻撃面ではシャキーラ、じゃなかったピケと同じように良い面を持っている。だが、肝心の守備面では、まだお粗末なところが見えるのも事実。彼もまたモントーヤと同じように、他のクラブからのオファーが多いようだが、彼の場合は、もう少しバルサBで修行を積んだ方が良いのではないだろうか。

マーク・ムニエッサ(1992年3月27日生まれ)
シーズン開始当初は大いに期待された選手ながら、負傷という不運を背負ってしまった。負傷後何か月かして戻ってきたが、その後も軽い負傷で欠場していることが多かった。ただ、彼が元気なときには、セントラルではなく、チーム事情もあったのだろうが、左ラテラルをやらされている。決して悪いできではなかったが、やはり彼はセントラルの選手。シーズン後半には、フォンタスがペップチームに招集されることが増えたため、彼本来のポジションに戻ってきていた。来シーズンは再びゼロからのスタートし、気分を一新して頑張るべし。

アンドレウ・フォンタス(1989年11月14日生まれ)
ペップチームでの選手として出場したときに、デランテロへの素晴らしいロングパスをだしたことがあるが、そのシーンがバルサBチームで見られるわけではない。毎試合見ているわけではないが、彼のロングパスがうまくいったのを見たのは、あの試合が初めてと言っていい。スピードはまったくない選手だが、ポジショニングがいいのだろう。守備的にはセントラル選手として合格点をあげられるだろうが、どうも積極性がないというか、安全に安全にというタイプであり、ダイナミック性には欠けている。それでも来シーズンはペップチーム合流という可能性が大だというから、彼が成功するかしないかは、かつてのプジョーと同じように、学習能力次第だろう。

アルマンド・ロサーノ(1984年12月16日生まれ)
出場する時にはカピタンマークをつけている選手ながら、なにゆえこの26才の選手がバルサBチームにいるのかが不思議だ。二部カテゴリーでプレーするバルサBだから、ベテランの味が必要だと言ってしまえばそれまでだが、戦力として考えた場合、とても必要な選手だとは思えない。彼のレベルにあったチームを探してあげて。

カルラス・プラーナス(1991年3月4日生まれ)
シーズン開始当初は、このプラーナスが左ラテラルとしてスタメン起用されることが多かった。だが、試合をこなしていくにしたがい、ベンチ要員、あるいは招集外ということも希ではないシーズンをおくっている。誰に似た選手かといえば、かつてのペーニャによく似ている。守備面では問題ないが、バルサ特有のサイドからの攻撃ということになると、それほど目立つ仕事をしていない。プラーナスにとっては、バルサB選手としての最初のシーズン。まだ、さよならご苦労さんするには早すぎるし、来シーズンが彼にとって勝負の年となるかも知れない。

アブラン・ミネロ(1986年9222日生まれ)
プラーナスの代わりに左ラテラルのポジションを獲得したのがこのアブラン。ガスパーが会長をしているクラブから今シーズンやって来た選手だが、ラテラルだけではなく、セントロカンピスタとしても起用されている。どちらのポジションでもそれなりにこなしているが、彼ならでは、というほどの印象あるプレーには、お目にかかることはできなかった。来シーズンはエスパニョール移籍という噂も流れているし、ひょっとしたら、1年のみのバルサB生活となりそう。残っても良し、サヨナラ、ご苦労さん、ブエナ・スエルテでも良し的な選手。

エドゥ・オリオル(1986年11月5日生まれ)
本来ならデランテロ部門で紹介される選手ながら、今シーズン後半から、左右のラテラルを時々やる試合があり、それなりの面白いプレーが見られたので、ここに登場。エストレーモ選手としては、いかんせんゴール能力に欠けているが、サイドからの攻撃参加ができるラテラルとしては、なかなか光るものがある感じだ。しかも左右どちらでも起用できるところが便利な選手。無理してさよならご苦労さんすることはないし、貴重な12番目の選手として残留させるべきだろうと思う。


 バルセロナ 04月23日 00時00分

ティアゴ・アルカンタラ

2005年の夏に入団してきたティアゴという、14才の少年が所属した最初のカテゴリーはカデッテB。モントーヤ、プラーナス、テロン、バルトラ、リベロラ、ロメウ、パチェッコ、ガイ、テージョ、ロチーナなどという素晴らしい選手によって構成されていたチームだ。それから6年たった今年の4月に20才となった彼は、来シーズンからペップチーム昇格が決まっているという。

最初のシーズンから、素晴らしく才能あふれる選手だということを、そのプレースタイルから証明していた。そして同時に、いくつかの弱点もはっきりと見て取れる選手でもあった。そう、素人目にも非常にわかりやすい選手だったと言える。

試合ごとに、あるいは試合中にも、他の選手に比べて非常に波のある選手であること。個人技に突っ走る傾向がとてつもなくある選手であること。バルサの中盤の選手でありながら、相手選手に対するプレッシャーや、ボールを奪う能力はほとんど皆無であるということ。つまり、運動量の非常に少ない選手であり、チームの一員としての自覚に欠けていた。これまで、あきらかに才能豊かでありながら、こういうマイナス面を矯正できず、将来を期待された多くのキラキラ星選手が消えていくのを、バルサコーチ陣は経験してきている。したがって、才能あふれる選手にありがちなこれらのマイナス面を、いかに矯正していくか、それがそれぞれの彼の属するカテゴリーの監督の使命となっていた。

2007−08シーズン、ペップが監督を務めるバルサBチームに、16才という若さでデビューを飾っている。翌シーズンからルイス・エンリケがバルサB監督となるが、彼のもとでは、100%バルサB選手と認められるようになった。だが、シーズンを通しての試合出場時間は決して多くはない。最初のシーズン、つまり2008−09シーズン、出場時間1311分(17試合スタメン、8試合途中出場)と記録されている。そして2009−10シーズンとなるとさらに少なくなり、838分(8試合スタメン、5試合途中出場)しか出場していない。この出場時間数の少なさには、3つの理由があった。負傷期間が長かったこと、スペインアンダー代表に招集されることが多かったこと、そして、バルサAチームへの招集が何回かあったこと。いずれにしても、この決して多くはない出場時間が示すように、ルーチョバルサでの絶対スタメン選手とはならなかった2シーズンをおくっている。

そのティアゴが、昨年の10月からペップバルサチームでの練習に参加してきている。ルーチョバルサには“バルサB所属の選手でありながらも、練習に参加していない選手は試合招集しない”という、良いか悪いかは別として、一つの掟があるため、彼は当然ながらバルサBでの試合には出場しなくなった。その期間は、何と4か月も続くことになる。ある試合には“ベンチ招集”され、ある試合では“観客席招集”となるこの4か月。スタメン出場はもちろん、途中出場という機会も希な4か月だった。どこのカテゴリーであれ、試合に出場することが必要な19才という若き選手に対して、この4か月は何を意味したのか。それは、どうやらペップが考案したテスト期間というのが一般的な見方のようだ。

昨シーズンが終了した6月、ティアゴはバルサとの新たな延長契約を結んだことは、メディアが伝えている。そしてこの契約が有効となるための一つの条件があることも発表されている。それは次のようなものだ。
“来シーズンからバルサAチーム所属となることを、2011年1月31日までにクラブが発表すること。”
つまり、この期限までにクラブがそのことを決意しない限り、私の息子は他のクラブに行く権利を持ちますよ、というティアゴの父親マジーニョの決意表明といって良い。

ルーチョバルサでの少ない試合出場時間ながら、ティアゴの弱点は徐々に矯正されてきていた。カデッテカテゴリーやフベニルカテゴリーで、ティアゴの監督を務めてきた人々の努力が実り、そしてルーチョ監督によって更に矯正度は高くなってきていた。残る問題は、彼のキャラクターと、マネジャーを務める彼の父親を中心とするティアゴを囲む環境の問題だ。そして、それが果たして本当に問題としてあるのかどうか、それを確認するのがペップの役目であり、そのためにこの4か月という期間が定められたようだ。

前述したように、この期間、ティアゴはほとんどの試合、ベンチか観客席に座っている。試合に出場することがあっても、後半途中からというのがほとんどだった。だが、彼はその短いプレー時間だけだったにもかかわらず、その才能をかいま見せるプレーを披露している。それより何よりも、そんな境遇におかれながらも、一度としてふてくされたり不満を口にすることもなく、毎日の練習を真面目に励んでいたようだ。そして“問題”の一つとされていた、彼を取り巻く周りの関係者からも、不満の声は聞かれなかった。フットボールディレクターのスビサレッタと、ティアゴの父親マジーニョは現役時代バレンシアで一緒にプレーしており、良好な関係を維持していたことも、“問題”が発生しなかった原因の一つかも知れない。

10試合出場となったテスト期間4か月。ペップ監督によって合格印が押された。1月中旬、ティアゴ・アルカンタラが来シーズンからバルサAチーム登録となることが発表されている。そしてこの発表がおこなわれてからすぐに、ティアゴのバルサB行きもまた発表されている。ペップバルサでは出場時間が少ないため、ルーチョバルサで毎週末でプレーするための“カテゴリー落ち”となったが、ここでもティアゴはふてくされることなどなく、ルーチョバルサチームの中心選手として、何試合か活躍している。そして再びペップバルサチームに招集されるのに、それほど時間は必要なかった。

ティト・ビラノバが次のように語っている。
「18才や19才といった若手選手が先を急ぐのは、決して良い傾向とはならない。新たな環境にとけ込むために、若手選手には時間が必要だ。それは彼のためであり、そして彼を取り巻く人々のためであることは、これまでのラ・マシアの歴史が証明している。あのイニエスタでさえ、本格的にスタメン選手として落ち着いてきたのは23才だったじゃないか、」

若干20才のティアゴ・アルカンタラ。来シーズンからカンプノウ常連選手の一人となった。だが、スタメンを勝ち取るのには時間がかかるだろう。ビラノバが語るイニエスタのように、徐々に徐々に、決して不満を漏らすことなく、一部常連選手の一人となっていけばいい。


 バルセロナ 04月22日 14時00分

5年のサイクル

3月の終わりだったか、4月の最初だったか、イタリアメディアでのペップ発言が問題になったことがあった。
「バルサ監督としてのサイクルは終わりに近づいてきている。」
と、まあ、簡単に総括してしまうと、こういう内容の発言であり、これだけをとって、マドリメディアはペップの退団説をぶち上げてくれた。まったくもって単純なヤツらだ。

「試合が終わって、試合に出場した選手たちは満足顔で家路に向かう。彼らと同じように監督の仕事も終わり、家に帰る前にコーチたちと、とりあえずワインを軽く飲みながら、勝利の満足感を楽しむんだ。そう、完璧な試合だった。また勝利することができた。監督として満足感いっぱいの一時だと言っていい。だが、そこへ一人の選手がやって来たとする。この試合には出場機会を与えられなかった一人の選手がやって来る。不愉快そうな顔をしてね。
『また試合に出場させてくれなかった。ベンチに座ったままで、90分間試合を見続けるだけの選手のことを、監督はいったいどう思っているのか?』
そういう不満を漏らしたとしよう。その不満が痛いほどわかる自分としては、その選手の不満というか怒りというか、そういうものを抱えて家路につくことになる。そして、その道のりで自分に問いかけるんだ。
『彼の信頼を取り戻すためには、何をしたらいいんだ?』
一つだけ確かなのは、監督として、そういう選手に間違っても言えないことがある。
『落ち着けよ、次の試合には出場できるようにするからさ。』
こんなことは言えない。我々は大人なんだし、何よりも厳しいプロの世界に生きる人間なんだ。だから、そんなことは言えない。起用しなかった理由を説明することもできないさ。何を言おうが、つまるところその選手は、起用した選手を信頼し、起用されなかった自分は信頼されていないという結論に達するだろうからね。

例えば、自分がバスケチームの監督だったら、招集したすべての選手を起用することができる。だが、フットボールの世界では不可能だ。20人も22人もいる選手のなかで、起用できるのは半分強にしか過ぎない。何試合も続けて試合に出場できなかった選手が、自分は監督に信頼されていない、と感じることがあっても不思議じゃない。これは自分にとっては辛いことさ。とてつもなく辛く感じることなんだ。監督としては、すべての選手に信頼感を持っているのに、彼らの何人かには具体的に、つまり試合に出場させることで、その信頼感を示すことができない。こういう状況は、自分にとってはまさにドラマチックなものさ。だから、個人的には、一つのチームを指揮するのは5年がサイクルだと思っている。なぜなら、これ以上の長い期間が続いたとしたら、彼ら選手たちも私に我慢できなくなるだろうし、そういう彼らにも私自身が我慢できなくなると思うんだ。」
これはペップ監督のお言葉であります。

彼はサバデル銀行という個人スポンサーを持ち、その銀行がおこなった発表会の席上でこう語っている。確か、去年の暮れあたりのことではなかっただろうか。カタランメディアはもちろん、マドリメディアにも掲載されているはずの発言だ。ペップのバルサ監督就任期間プランは5年。今シーズンは彼が監督になってから3シーズン目。折り返し地点を過ぎている。つまりゴール地点の方がスタート地点より近いことを意味する。
「バルサ監督としてのサイクルは終わりに近づいてきている。」
決してこれまで嘘をついてきたわけではないし、隠してきたことでもないし、スキャンダラスな発言でもない。誰でも知っていることではなかったか。

選手たちにとって練習休みの日にも、オフィスに朝から顔を出して、夜遅くまで次の対戦相手の分析をし、シーズン中は週7日間働いてきた監督だ。クラブのために、チームのために、そして何よりも応援するバルセロニスタのために、すべてのエネルギーを1日24時間注ぎ込んでいる監督だ。10年ぐらい続いているであろうアーセナルの監督や、20年以上続いているであろうマンチェスターの監督みたいに、ペップが10年も20年もバルサの監督の座に居続けるなんて、いったい誰が望むだろうか。

監督のサイクルは、少なくてもバルサの監督のサイクルは、かつてクライフやライカーが示してきたように長くて5年がいい。そしてファンは、監督がすべてのエネルギーを注ぎ込んでくれるその5年間を楽しめばよい。ルイス。エンリケは3年で一つのサイクルの終焉とした。素晴らしかったこの3年間でいさぎよく去るのは、ファンにとっても気持ちよいものだ。ペップバルサの命も残るところ1、2年。国王杯クラシコの試合が、バルセロニスタの望むような結果に終わらなかったにせよ、そんなことで彼への評価が下がることなどあり得ない。ここまで、これまでにないほどの素晴らしいプレゼントを我々バルセロニスタに提供し続けてくれているペップ。まだ彼からの、いや彼らからのプレゼントが尽きたわけではない。

グラシアス!ペップ!


 バルセロナ 04月22日 00時00分

サンジョルディ

4月23日はサン・ジョルディの日。なぜか最近はこの日の前後に大事な試合を抱えるバルサという傾向が見られるが、それは別として、この日は、女性が男性に本を、男性が女性にバラをプレゼントすることで有名(?)。ということで、今年も例年どおり各種バルサ本が出版されております。まず、その一つがラ・マシアをテーマとした"El cami dels campions"(またカタラン語だ!)、日本語タイトルにすると”チャンピオンへの道”となる。
「チャンピオンズ決勝戦に8人ものカンテラ選手が出場した快挙は、決して偶然の現象ではなく、30年間以上にわたってのカンテラ組織関係者の努力のたまものと言っていい。」
と、この本の帯にかかれているが、まだ読んでいないので、今回は紹介できない。なかなか面白そうだ。

どうやら今年はラ・マシア関係の出版が流行になっているようで、"Los cracks de La Masia"という本も、エスポーツ紙が発行している。この”マシアが生んだクラックたち”という本はカタラン、カステジャーノ両方で発売されているが、言ってみれば写真集に近いので言語は関係ない。違法とは知りつつ、ここでほんの少し紹介してしまおう。


 バルセロナ 04月21日 14時00分

スペイン対カタルーニャ

スペイン対カタルーニャの戦い、この国王杯決勝戦をこのタイトルで表現することは、政治的にもファン意識としても正しいものとなるだろうが、フットボール的には何の意味も持たない。レアル・マドリがスペイン人だけで構成されているわけでもなく、もう一方のチームにしても、カタランだけで構成されているわけでもない。特にマドリのスタメンを見れば、スペイン人といえばカシージャス、ラモス、アルベロア、アロンソの4人しかおらず、残りはすべて外国人選手。奇妙なことにカタランチームのバルサの方にはスペイン人選手が多いが、カタラン出身選手はチャビ、ブスケ、ピケの3人しかいない。したがって、フットボール的にはこの表現は正しいものとはならない。だが、ファン意識としては、まさにスペイン対カタルーニャの戦いとうつる。それは、マドリメディアにしてもカタランメディアにしても同じだし、何人かの選手たちにとっても同じなのは、昔と変わっていないようだ。

少し前に、バルサとマドリによって戦われた21年前の国王杯決勝戦の記事を、バルサ百年史から引用したが、掲載しなかった最後の部分をここで引用してみる。

この試合が終了したときに、記者のインタビューにマドリのキャプテンであるチェンドがこう発言している。
「この栄誉ある国王杯がスペイン以外のチームに持っていかれるということが非常に悔しい」
時代はもう1990年に入っている。だがカタルーニャとマドリの関係は変わらない。

今はチーム責任者としてベンチに座っているチェンドが、当時こう語ってから21年後の今回の国王杯決勝戦、マドリの選手グラネロが試合後に自らのツイッターにこう書いている。
「国王杯カップが国内に残ることができた。」
百年史での言葉をアレンジすれば、“時代は21世紀に入っている。だがカタルーニャとマドリの関係は変わらない”。

2年前の国王杯決勝戦、バルサ対ビルバオ。カタルーニャとバスクという、独立意識の高い地方に本拠地をおくクラブによって戦われた決勝戦。スタジアムに国王が入場してきたとき、そして国歌が流れたとき、これまで聞いたこともないような怒濤のブーイングがスタジアムを襲ったのは記憶に新しい。国王関係者はもとより、スペインフットボール協会関係者も苦々しい思いをしたであろうことは、簡単に予想できるが、再びそのような経験を繰り返さないために、今回は国歌の音量を2年前とは比べものにならないほどのものにしている。音量で勝負、そういうことになった。その音量を示すのに120デシベルと発表されているが、そんなことを言われてもシロウトには何のことだかわからない。例えるなら、スペインのロックコンサートで許されている最大音量より10デシベル多く、また、飛行機が離陸するときの音量とほぼ同じであると言う。

テレビ画面を通して見て(聞いて)いても凄い音量だったが、メスタジャに観戦に行って帰ってきた知り合いも同じ事を言っていた。非常識とも思われる音量の国歌が流れると同時に、バルサ側からは怒濤のブーイング、マドリ側からはそのブーイングに対するブーイング。片方にはスペイン国旗がたなびき、もう片方ではカタルーニャ州旗が揺れ動く。まさにスペイン対カタルーニャの戦い。そして120分の壮絶な試合結果、それはスペインの勝利となった。

面白いことに、この決勝戦はスペイン代表選手が色々な“ポジション”について展開されている。まず監督のデル・ボスケが観客席にドンと座り、カシージャス、ラモス、ピケ、プジョー(ベンチ)、カッデビラ(観客席)、ブスケ、アロンソ、チャビ、イニエスタ、ペドロ、そしてビージャ。ムンディアル制覇組勢揃いの巻き。

フットボール的にはモウマドリがペップバルサに勝利した試合。いつものことながら試合後のチャビの感想はこうだ。
「この試合で唯一フットボールをしようとしたのは我々だけだった。」
いろいろなフィロソフィーをもって戦われるフットボール。すべてのチームがバルサフィロソフィーと言われるもので戦ったら面白くない。いろんなスタイルで戦われるからこそ面白い。そのスタイルがどんなものであれ、ゴールを多く決めた方が試合の勝利者となるのがフットボールのルールだ。モウマドリはモウマドリらしく戦い、ペップバルサはペップバルサらしく戦い、彼らがゴールを決め、そして我々はゴールを決められず、彼らが勝者、我々が敗者。それだけのことを、グチャグチャと理由をつけて悔しがってはいけない。それはファンのみが許されることなのだよ。

悔しいが、それほど悔しくもない。残念だが、それほど残念でもない。マドリ相手の試合ながら、ショックなどまるで感じない。国王杯の試合だからかも知れない。宝くじに例えるなら、せいぜい3等賞賞金で、それには外れたけれど、リーグ制覇という2等賞金には当たったし、1等賞金となるチャンピオンズが目の前だからかも知れない。あるいは、国王杯制覇ごときに、まるで今シーズンの大成功を祝うかのように、シベレスでバカ騒ぎを演じているマドリ選手を見たからかも知れない。本当のクラシコは今から始まるというのに。

この決勝戦の試合内容を見て、敗戦という結果に終わりながらも、ユーロクラシコに対する楽観的な思いは増している。ベルナベウクラシコとこの決勝戦で、すでにモウマドリの戦い方が明らかになった。あらゆる手段をこうじて、バルサの良い部分をつぶしていこうという戦いが基本となるモウマドリの正体が明らかになった。優秀なペップスタッフがこの手の戦い方を分析し、有効な対抗策を練ってくれるだろう。バルサに不利的な要素となったメスタジャという狭いグラウンドでの試合ではなく、ベルナベウとカンプノウという広いスペースをもつスタジアムでのホーム&アウエーでの戦い、しかもバルサは二戦目が地元だ。そして、強い当たりは認めるものの、暴力的なファールや執拗な抗議にはカードを示すチャンピオンズの審判のもとでの試合。バルサにとって否定的になる要素は何もない。

インチャはこうじゃなくちゃいけない。例え、否定的なことがあろうとも、常にプラス面をいただくのが、インチャとして生き延びる正しい道だ。さあ、これからがいよいよ本番、ユーロクラシコだ!
バモス!


 バルセロナ 04月21日 00時00分

ルーチョバルサの終焉

多くのバルサBファンが密かに感じていたことが現実となった。ルイス・エンリケ監督のバルサフィリアル時代の終焉だ。今シーズン終了をもってバルサB監督を辞任するということは、まず3月15日、フットボール・ディレクターのスビサレッタが開いた記者会見で発表されている。
「来シーズンからの後任監督を決定させる時間に余裕があるようにということで、この3月の段階で、彼は辞任を申し出てきた。ルイス・エンリケという監督業を務める一人のプロとして、一つのサイクルが終了したという意味合いでの辞任だと語っている。彼との契約期間はまだ残っているが、彼の意志を尊重したいと思う。」

このスビサレッタの発言から2日たった3月17日、ルイス・エンリケがメディアの前に出てきて、1時間近くしゃべりまくっている。

「この3年間、素晴らしい経験をさせてもらった。バルサの関係者には非常に感謝している。あらゆる意味で最高の環境のもとで働くことができたのは、一人のプロ監督として最高の経験だったと思っている。個人的には、一つのサイクルが終了したのだとも感じている。例えば、今シーズンの目標は二部Aカテゴリー残留というものだったが、すでに何試合も残した段階でその目標は達成することができた。来シーズンからは新たな環境のもとで、新たな目標を設定して生きていこうと思う。と言っても、将来のことは、まだ何にも決まっていない。そんなことはまだ先のことだし、いずれ時間が解決してくれるだろう。今シーズン限りでバルサを離れることになるが、自分の心は常にバルサとヒホンにあるし、家族が住むバルセロナが自分の町となり続けていくだろう。ビスカ・バルサ!」

後任監督の名前が何人か噂されている。ラ・マシア出身であり、ペップとは同期でもあるルイス・カレーラス。現在は二部Bカテゴリーに在籍するサバデルで監督を務めている、そして、オランダで監督業修行中のチャッピー・フェレールをはじめ、バケーロ、エウセビオ、ウンスエ、セルジ、オスカー、そして、そして、あのウリスト様までそのリストに登場してきている。

「8年間プレーすることができた上に、現役生活そのものを閉じることができたクラブで、新たに監督としてスタートすることができるようになった。こんな幸せなことはない。何と言っていいか、まあ、我が家に戻ってきた感じだ。」
2008年6月18日水曜日、バルサフィリアルチームの監督就任記者会見で、ルイス・エンリケはこう語っている。だが、監督経験などまったくない彼のスタートは、決してバラ色に輝くものとはならなかった。

下のカテゴリーから上がってきたカンテラ選手をほとんど起用せず、外部から獲得してきた補強選手を中心にチームを構成し続けたこと。試合内容もお粗末な上に、結果が思うようにだせず、冬の段階では、カテゴリー降格ラインに足を突っ込むような状態だったこと。だが、よく考えてみれば、ペップが三部のチームを率いたシーズンも、スタートは似たようなものだった。そして時間の経過と共にカンテラ選手の起用度が増え、自然と結果もついてくるようになったように、幸運にもルーチョバルサも同じ道をたどることになる。シーズンが終了してみれば、二部昇格プレーオフラインには入れなかったものの、5位という位置につくことが可能となった。そして、ルーチョ監督2年目となる翌シーズン、バルサBは久しぶりの二部Aカテゴリー昇格を果たした。

彼に感謝しなければならない選手は多い。守備的ピボッテからセントラルというポジションに配置することで、輝きを見せるようになったフォンタス。試合ごとに絶対の信頼を勝ち取るようになったバルトラ、モントーヤ、ムニエッサ、ロメウ、セルジ・ロベルトをはじめ、常時起用され続けたことで活躍し始めたノリートやソリアーノ。その他にも何人かいるだろうが、いずれにしてもルーチョ監督のおかげで、将来カンプノウへの道や、他の一部チームへの道が開きかけている選手たちがいる。

今シーズン終了と共に、ルーチョバルサが終焉することになった。だが、いつの日か、再びルーチョバルサと呼べる時代がくるかも知れない。バルサトップチームを率いるルイス・エンリケ監督の姿が見られる日が来るかも知れない。それまで、とりあえず・・・
アスタ ルエゴ!
ブエナ スエルテ ルーチョ!


 バルセロナ 04月20日 14時00分

マスチェラーノ

カンプノウにやってくる多くの常連たちに、特に人気がある選手の一人といっていいマスチェラーノ。カンテラからはなかなか出てこない抜群のリーダーシップを持ち、断固とした強いあたりのプレースタイルを持つ、こういうタイプの選手は人気がある。だが、そういう常連たちの誰が、このシーズンの煮詰まってくる4月の段階で、ペップチームにおける彼の重要性を予想しただろうか。キニエラと同じように、国王杯に向けたペップチームのスタメンを予想するのは難しいが、多くのメディアやバルセロニスタが、ピケに同伴するセントラルはこのマスチェラーノと予想していた。

プジョーの思わぬ長い負傷期間に加え、これまたビックリのアビダルの病気欠場。これまで、ペップ監督は3人の選手を彼らの代わりにセントラル起用してきている。ブスケ、ミリート、そしてこのマスチェラーノ。

バルサのセントラルは他のクラブのそれと比べ、仕事内容が異なるのは、これまでさんざん言われてきたことだ。90分間という試合時間の中で、デフェンサとしての仕事時間が、他のクラブのそれより圧倒的に短いこと。それはそうだ、統計によれば、ここ連続160試合以上にわたって、相手チームより圧倒的なボール支配率を記録しているチームだけに、デフェンサ自体の仕事時間は少ない。とは言っても、どんな試合であれ、攻められることはあるわけで、他のポルテロと比較して仕事時間の少ないバルデスと同じように、他のクラブのセントラルより高度の集中力が要求されるポジションでもある。

そして、位置的にはかなり高いラインに配置されるバルサのセントラル。的確なポジショニングと同時に、オフサイドラインを崩さない鋭い読みが要求されるだろう。アビダルは別としても、ピケやプジョー、そしてミリートやマスチェラーノは、決してスピードを武器とする選手ではないのだから、的確なポジショニングが要求されるのは、簡単に推測される。

ミリートは個人的にも気に入っている選手だし、カンプノウ常連たちにも好感を持たれている選手である。だが、ここにきての下降線は誰しもが認めるところだろう。長い負傷期間のせいなのか、あるいは30才を過ぎた年齢のせいなのか、彼の持っていたスピードの衰えは誰の目から見ても明らかだ。自らも感じているであろう、そのスピードの衰えをカバーしようとするためなのか、オフサイドラインを壊すかのように、下がり気味となってしまうことが多く見られるようになってしまった。ディフェンサラインの高いペップバルサにおいては致命的な欠陥となってしまう。

ということで、フィジカル的には何の問題もないであろうセントラル本職ミリートではなく、シロウトセントラルであるブスケが起用されることになった最近の試合。ポジションニングや集中力という点では申し分ない彼だが、そこはそれ、ブスケだからチョンボがつきものだ。それがシャクター・ドーナッツ(私はこう呼んでいます。いったいどんなドーナッツなんでしょう?)戦ででてしまった。後半に入って、再びペップ監督の“発明’が試されることになる。これまたシロウトセントラルであろう(バルサに来るまでの彼の試合はほとんで見たことがないが、たぶんシロウトと言っていいだろうと予測している)マスチェラーノが起用された。常にマークする相手デランテロの前に位置し、ボールを奪うだけではなく、的確な場所にそのボールを処理するプレーが見られた。プレッシャーも中途半端じゃない。ポジショニングにも何の問題もないかのようだ。ちなみに、バルサに来た最初の頃にはタルヘッタを多くもらっていたが、試合をこなして行くに従い、リーガの審判がイングランドのそれと違うということに気がつき、ここ最近ではタルヘッタの数も驚くほど減ってきている。きっと頭の良い選手なのだろう。

マスチェラーノのセントラル起用により、ブスケが彼本来のポジションである守備的ピボッテの位置に戻れることができた。まさに一石二鳥というものだ。だが、セントラルをマスチェラーノにしようがブスケにしようが、彼らにとっては仮のポジションに過ぎないことに変わりがない。そう思っていたところ、ベルナベウクラシコの前日の練習に突然のごとくプジョーが登場してきた。

アーセナル初戦に戻ってきそうな感じだったプジョーだが、最終的に試合招集さえされずということになった。あれ以来。選手はもとより、ドクターたちやトレーナーたちはプジョーに関しては触れなくなり、つまるところ、情報がないからメディアにもプジョーニュースが載らなくなってしまった。ここまで唯一、彼の事に触れたのはペップだけだ。
「二歩前進一歩後退という毎日。100%の状態になるのがわかるのは当人のプジョーだけだし、どの試合を復帰目標にしているかという状態ではない。」

と言うわけで、ここ何週間にもわたってプジョーニュースは壊滅状態だったところ、15日金曜日の合同練習に参加してきた。そして、更に驚くことに、リーガクラシコでのいきなりのスタメンとなった。後半途中で負傷退場ということになったが、どうやらたいしたことはないようだ。

国王杯クラシコ、ユーロクラシコに向けてカピタン・プジョーが戻ってきたのは大きい。が、マスチェラーノがセントラルで起用できる可能性がでてきたことも、非常に大きい。プジョーは何と言っても3か月間にわたって負傷をしていた33才の選手。マスチェラーノの存在がペップはもとより、バルセロニスタにとっても大きいものとなってきている。


 バルセロナ 04月20日 00時00分

こちら三面(国王杯編)

国王杯のチケットはソシオ専用に売り出されたが、バルサ割り当ての2万枚の数倍の希望者があり、いつものように抽選によって幸運ソシオが選ばれている。そして一方、バルサ各選手に割り当てられるチケットは、一人20枚と当初発表されていたが、それは少ないんじゃない?と、選手間に不満があったようで一人50枚となった。選手たちが何と言っても主役なのだから、それはそれで良しとしよう。だが、この割り増し枚数による被害を受けたのは、400人近くいるバルサ職員だった。

ラポルタやクラブ理事会員の親戚やお隣さんたちが、スペイン名物コネを利用して、ラポルタ政権時代にクラブ職員になったのは、すでに知られた話だが、ルセーが会長になった今でも、契約により、多くのコネ職員がいまだに残っていると言われている。まあ、これも時間が解決する問題として良しとしよう。さて、選手への割り当て枚数が増えたために、彼らへの割り当て枚数が減ってしまった。当初は一人一枚は割り当てられる計算になっていたようだが、それが全部で150枚となってしまった。400人で150枚だから、当然ながら彼らもまた抽選でゲットしなくてはならない身分となった。そして、もし抽選に当たったとしても無料ではなく有料。ケチというか、経済観念豊かというか、ルセー体制はなかなか厳しいものであります。

バレンシアは、マドリッドからは東に、バルセロナからは地中海沿いに南にいったところに位置するが、どちらからでも約250キロ程度と距離的にはほぼ同じ。さて、バルセロニスタがどうやってメスタジャに向かうかというと、ほとんどが自家用車ということで、その数1万5000バルセロニスタ。残りのうち3000人チョイがカンプノウから出発するバスに乗り、1000人チョイがサンツ駅からでる電車を利用するという。

もちろんその中には、ごく普通のまともなバルセロニスタ以外に、騒ぐことをメイン観戦とするボイショス・ノイスのような連中もいるわけで、バルセロナが試合会場ではないにもかかわらず、臨時警戒態勢が警察官たちによって敷かれることになる。このことだけの警戒態勢なら、バルセロナだけの警察官でもじゅうぶんだろうが、すでにカタルーニャ州に位置する他の町からも多くのおまわりさんが上京してきているようだ。

それはなぜか。それはバルサがめでたくも国王杯優勝したときのバカ騒ぎ警戒態勢に備えてだ。普通の国王杯優勝などではバカ騒ぎなど起きないバルセロナの街だが、今回はコパクラシコということで、リーグ優勝なみに騒ぎが起きるのではないかというのが警察の予想。リーグ優勝やチャンピオンズ優勝ともなると、街の中心地カタルーニャ広場をメインに、広場に続く観光通りランブラスなどに、何千人、何万人と集まってくるのがこれまでの例となっている。そしてバカ騒ぎが煮詰まるほどに、酔っぱらった連中やドラッグでいっちゃってるヤツによる暴力沙汰が起こるのも常。商店のシャッターが壊され、街灯が倒され、キオスコが襲われ、最後には警官たちとの衝突によって負傷者多数というのも、これまでの常。つまり、前菜1がバカ騒ぎ、前菜2が暴力沙汰、そしてメインは警官との衝突、デザートは拘置所で、というのがこれまでのラジカル組のメニューパターン。

昨シーズン優勝が決まった日にも、もちろんこの“イベント”が繰り返されているが、、警察官の放ったゴムボール弾が目に直撃し、失明してしまったというシャレにもならない事件があった。それでは今年からはもっとソフトな警戒態勢にしましょう、となるかというと、そうとはならず、逆にゴムボール弾より強力な新しい武器が持ち込まれるという。

かつてのベトナム戦争時に使用された銃を、デモ警戒にあたる警察官用に改造したもので、スペインには10挺しかまだないようだが、これまで使用されたこともないので、今回がデビューとなる。最長距離80mまでで、命中率はゴムボール弾より良い。しかも当たっても痛いだけのゴムボール弾とは違い、このデビュー銃の弾に当たると体が動かなくなるらしい。首から上に向かって撃ってはいけないゴムボール弾同様、と言っても失明した人がいるわけだが、この銃も当然ながら首から下だけを狙うことが義務づけられているという。

ゴールが決まった瞬間にベンチから飛び出し、右手人差し指を立てながら走っているモウリーニョや、恐れ多くもメッシーに対して「お前はアホか!」とほざいているぺぺを的に、是非とも一度撃ってみたいものだわい。


 バルセロナ 04月19日 14時00分

国王杯決勝戦

いかにユーロクラシココーナーとはいえ、やはりコパクラシコ決勝戦のことにも触れないとバチが当たる。何と言ってもバルサとマドリによって戦われる国王杯決勝戦は、1990年を最後にして今回まで戦われたことがないのだから。それでは当時のどんな状況で迎えた試合だったのか、バルサ百年史をひもといてみよう。

1990年4月5日、バレンシアの本拠地であるルイス・カサノバで国王杯の決勝戦がおこなわれようとしている。バルサとマドリによって争われる決勝戦だった。マドリはほぼリーグを手中に収めているのに対し、バルサにとって、そしてクライフ個人にとっても非常に重要な試合であった。もしこの決勝戦に敗れるようなことがあれば無冠に終わるシーズンとなる上、宿敵マドリに二つのタイトルを持って行かれるということを意味していた。

クライフバルサにスキャンダラスが尽きることは希だ。この試合前まではほぼスタメンで出場していたカンテラ上がりのミージャが、この試合に呼ばれなかった。このシーズンが終わると共に契約が切れるミージャの契約延長交渉は、シーズン開始当初からおこなわれていた。選手一人一人の契約交渉にも顔をだすクライフが提示していた年俸とミージャ側のそれがかなり離れていたことにより交渉が長引いていたのだ。そして4月始めを交渉の最終期限としていたクライフが、ミージャ側が妥協してこないのを見て彼をチームから除外してしまう。マドリとの秘密交渉も噂となっていたミージャだが、結局この決勝戦から除外されシーズンが終わるまで再びグラウンドに立つことはなかった。翌シーズン、この噂が現実となり、ミージャは白いユニフォームを着ることになる。

そんなこととは別に、バルサにとっては重要な試合だ。そして試合そのものも激しいものとなった。審判の見ていないところでウーゴ・サンチェスがアロイシオを負傷させ、前半早くも交代していた。だが幸運なことに、イエロのひじ鉄とキックは見逃さなかった審判、前半終了間際に彼は退場させられていた。後半11人と10人の有利な戦いとなったバルサは、アモールとサリーナスのゴールにより2−0でトシャック率いるマドリを敗る。

この試合が終了したときに、記者のインタビューにマドリのキャプテンであるチェンドがこう発言している。
「この栄誉ある国王杯がスペイン以外のチームに持っていかれるということが非常に悔しい」
時代はもう1990年に入っている。だがカタルーニャとマドリの関係は変わらない。

これまでのバルサの歴史によく現れてきたように、このシーズンも国王杯を獲得することによってどうにか救われたものとなった。だが優勝記念パレードがおこなわれたサン・ハイメ広場に集まったバルセロニスタの喜びは100%とは言えない。マドリの5年連続リーガ制覇を許したクライフバルサに対する批判は大きかった。一部のバルセロニスタだけであったとはいえ、この祝賀会に集まった人々の中から、クライフ辞任の声が広場に流れる。

ヌニェスが自らの会長の延命をクライフに託したことにより、断固としてクライフ辞任を拒否し続けたわけだが、もしこの国王杯に負けていたらどうなったのか、それは今となっては誰にもわからない。そしてこのサン・ハイメ広場に集まったバルセロニスタの誰一人として予測できなかったであろうこと、それはマドリの黄金期がマドリッドーバルセロナ間を結ぶシャトル便に乗って、次のシーズンからバルセロナに訪れるということだった。

あれから21年たった今でも、この決勝戦のことはよく覚えている。クライフの首がかかった試合であり、そして無冠に終わる可能性があったシーズンでの重要なタイトルとなっていたからだろう。ひとつ忘れていたのは、当時はメスタジャではなくルイス・カサノバという名でバレンシアのスタジアムが呼ばれていたこと。そんなことはともかく、マドリはこの決勝戦がおこなわれた年の2年後となる1992年に、ヒホン相手に再び決勝戦を戦い、めでたく国王杯制覇を果たしているが、この優勝が最後のものとなっているから、単純計算して約20年近くこのタイトルから見放されていることになる。

さて、このバルサ百年史を読み返してみると、非常に興味深いことに気がつく。21年前の決勝戦のことながら、現在の両クラブが置かれている状況と置き換えてみると、まったくもって興味深い。ヌニェスをフロレンティーノと置き換え、クライフをモウリーニョと置き換えてみると、現在のバルサがマドリに、そしてマドリがバルサという感じになるではないか。自らの延命をモウリーニョ獲得に託したフロレンティーノ。もし、この国王杯に敗れ、ユーロクラシコでも敗退し無冠というシーズンとなれば、モウリーニョ継続ということも怪しくなると同時に、会長の存在そのものにいたっても疑問符がつくところとなるだろう。

だが、21年前の状況と決定的に異なることは、両クラブともまたチャンピオンズ制覇の可能性が残されていることだ。バルサであれマドリであれ、もしこの国王杯決勝戦に敗退することになろうと、チャンピオンズ制覇を成し遂げれば、国王杯のことなんぞスッキリクッキリ忘れることができる。多くのバルセロニスタに、コパクラシコをとるかユーロクラシコをとるかと問えば、何の疑いもなく後者と答えるだろう。ユーロクラシコに勝利できるなら、このコパクラシコのおまけとして、来シーズンのスーペルコパクラシコもマドリにあげてもいいと答えるだろう。

だが、あのリーガクラシコを見せられた今、このコパもスーペルコパも、なぁ〜んにもモウマドリにはあげたくない。一つのタイトルもあげたくない。例え、価値の低いタイトルとはいえ、なぁ〜んにもあげたくない。先のことなど何も考えずベストメンバー(ピントスタメンは仕方がないとしよう)で戦うべし。今シーズンの初のタイトル獲得に向けて全力をあげるべし!


 バルセロナ 04月19日 00時00分

クライフは語る

せっかくこのコーナーを立ち上げたのだから、やはりクライフに登場してもらおう。多くのバルセロニスタに、良い意味につけ悪い意味につけ、偉大なる影響力を持ち続ける彼だから、彼のコメントを掲載するのは義務というものだ。

ベルナベウクラシコでのモウリーニョがとったシステムは、これまでメディアなどに登場してきた“バルサ称賛”の声を遙かに越えるものだった。地元での試合ながら、しかもリーグの行方を決める試合でありながら、7人のデフェンサを用意して戦おうとしたその姿勢には、バルサに対する恐怖が、誰の目にも明らかだったからだ。少なくてもこの試合までは、マドリディスタにとって、ベルナベウの試合でこのような姿勢での戦いは許されなかったはずだ。あのカペーロの監督時代にも許されなかったことだ。

もちろん、モウリーニョという人物はバカではない。それどころか非常に頭の良い人物なのだろう。試合前日のスキャンダラスな記者会見は、クラシコ試合後のそれを思い通りに動かせるようにしようとした猿芝居なのだろう。質問を受け入れる人物と受け入れない人物を明確にし、なにゆえこれほど多くのデフェンサ選手を用意して戦かったのか、という質問などされないような環境作りをし、その場で語られるのは10人で戦わなければならないだとか、試合間隔がバルサより短いとかいう、つまるところフットボールそのものとは離れたところの話題に尽きた記者会見が、彼の望んだように展開された。

一言で言えば、彼はフットボールの監督ではなく、タイトル獲得請負人であると言っていい。フットボールが、それを観戦する人々に興奮とスペクタクルを提供するスポーツであるとするのなら、彼は間違いなく、そういう意味でのフットボールの監督ではないだろう。

確かにモウリーニョが語るように、彼の指揮するチームはバルサ相手となると10人で戦うことが多い。その理由は彼にもわかっているだろうし、フットボールを知るものなら誰でも理解できることだ。まるで、クラブ年間予算がもっとも少ないチームのように、ひたすら後ろに選手を配置し、相手にボールを渡すことを一つの武器とし、相手が支配するボールを奪って素早いカウンターアタックを攻撃の特徴とするなら、相手チームよりファール数が多くなるのは当然のことなのだから。特にバルサ相手なら、その傾向が強まるのも致し方ないことだ。そこで、ペップには10人相手の練習をすることを勧めたい。11人対10人となるスタイルのシステムとアイデアをはっきりとするために、このタイプの練習をすべきだろう。ベルナベウでの試合で相手が10人となってから、それまでのバルサらしさが消えてしまったものとなった。10人のマドリが11人の時より試合を支配する形となったのは、バルサに何かが欠けていたのだろう。

選手たちに、この試合はもう我々のものだという意識が強くなりすぎて、余裕を持ちすぎたのかも知れない。だが、自分の経験によれば、一人欠けると人数的にはマイナスになるが、一人一人の選手の勢いというものは増すことになる。メンタル的にもフィジカル的にも“迫力’が増すことになるのだ。それではどうすれば良かったのか。それは単純なことだ。いかに芝の状態が悪かったとはいえ、ボールのスピードを普段通りにする努力が必要だった。そして、選手たちのポジショニングは11人相手の時と同じにすべきある。決して後ろに下がって守ろうなどとしてはいけない。もちろん、どんな場面でも、一対一の勝負をする必要はない。なぜなら我々は相手より一人多いのだ。ノーマークとなっている選手が必ず一人いることを意味する。人数的優位を考えての、素早いボール回しをすることによって、相手選手たちは11人の時より更にボールを追いかけて走り回らなければならない。10人となったときの彼らの“迫力”は、時間の経過と共に消えていく。

ところで、モウリーニョはバルサ試合戦前には10人でのシステムを研究しないといけないと語っているが、彼には10人ではなく9人での練習を勧めてみたい。なぜなら、もしぺぺがこの前の試合のように、あのポジションで、あのプレースタイルを続けるのなら、普通であれば、試合終了時にグランドにいられることはあり得ないからだ。

先日のクラシコを見ていて、ムンディアルでのオランダ対スペインの試合を思い出してしまった。一人のオランダ人として、そしてオランダフットボールに生きてきた人間として、恥ずかしい思いをした試合だった。我々の特徴の一つであったボール支配を拒否し、それをすべてスペインに渡してしまったあの恥ずかしい試合。もちろんオランダ代表は敗戦を味わっている。だが、その結果以上に、これまでオランダ代表が築いてきたイメージを壊してしまったことが、悔しくもあり、とても恥ずかいことだった。そして、奇妙なことに、あのボール支配をこころがけて戦ったスペイン代表に拍手を送った人々が、モウリーニョマドリに拍手を送っている。

いずれにしても、ベルナベウコラシコはバルサにとってパーフェクトなものとなったと総括しよう。ペップバルサにとって、今シーズン最良の試合とはとても言えないものの、この世界最高額といっていいメンバーを擁しながらも、相手の良い部分をつぶそうという発想で戦いを挑んできたマドリに対し、自らのフィロソフィーを貫いて引き分けとなったバルサ。しかも、リーグ制覇の可能性は試合前より断然濃厚になった。少なくともリーグ戦においては、誰が最も強者で、そしてそのライバルはといえば。それほどでもないということを証明したと言える。

ヨハン・クライフ
2011年4月18日
エル・ペリオディコ紙


 バルセロナ 04月18日 14時00分

クラシコ一発目

ミスター・ポマードが試合終了の笛を吹いた瞬間、テレビ画面に映ったベルナベウ観客席に総立ちとなっているメレンゲ族から、グラウンドに向けての大きな拍手がわき起こったのが見られた。そして数秒後、テレビ画面はバルセロニスタが陣取るスペースをアップする。
"Campeooones, campeooones, oe-oe-oe´!"
"Campeooones, campeooones, oe-oe-oe´!"
"Campeooones, campeooones, oe-oe-oe´!"

両チームの置かれている状況をこれ以上はないという感じで表している風景。1ポイントであれ獲得すればリーガは間違いなくいただき、と理解するバルセロニスタ族。そして一方では、地元の試合でありながら相手チームにボールを渡し、しっかりと守り続けるシーンが延々と続く試合展開を見せられながらも、アァ〜、頼むから負けないで欲しい、と願い続けるメレンゲ族。いやいや、その気持ちよくわかります。私たちにも決して遠くない昔、そういう状況におかれたことがあったのだよ。思えば、バレンシア相手のリーガ最終戦でのロスタイムで決まったリバルドのチレーナゴールに、気が狂ったように喜び合ったこともあった。が、翌日冷静になってみれば、決して優勝をしたわけではなく、チャンピオンズ参加の権利が得られる4位に入っただけのことだった。だから、試合終了後の彼らメレンゲ族の喜びもよくわかる。だが、一晩明けて冷静になってみれば、クラシコ6連敗を逃れただけだということに気がつくだろう。栄光のレアル・マドリを応援するファンとしての誇りをいまだに持ち続ける者なら、時間の経過と共に、しらふで酔っていた自分を見るだろう。そう、しっかりと落ち込みなさい。今のマドリとバルサには天と地のような差があるのだから、落ち込むのは仕方がない。

このクラシコ一発目の最大のスペクタクルは、モウリーニョが姑息にも、グラウンドの芝を刈らず、水もまかないことを命じた試合前ではなく、ビジターチームが80%のボール支配をした90分間でもなく、試合前日と試合後の記者会見にあった。

試合前日の恒例記者会見に、モウリーニョが参加してこないという噂は、その日の朝からささやかれていた。そして夕方の5時、カランカと共にモウリーニョも参加するが、監督は発言しないという、何ともはや、異常とも言っていいクラブ発表がおこなわれた。それから2時間後、記者会見が始まる。多くの外国人記者も一緒になって、総勢60人近くの記者たちが集まっている。

クラブの予告通り、カランカの左にモウリーニョが陣取るが、一切しゃべらない。質問にももちろん応じない。記者席をにらみつけながら、座り続けるモウリーニョ。この場に集まったベテラン記者たちが突然立ち上がり、ボイコットを決めたのはこの記者会見が始まってから5分もしない頃だった。大勢の記者たちが立ち去っていく。残ったのは、アス紙とプント・ペロータというマドリ万歳のテレビ番組スタッフと、そしてわけのわからないまま座り続けている外国人記者だった。異常な風景、異常なスペクタクル。

そしてクラシコ一発目試合後の記者会見。ここにはモウリーニョが登場してきている。相変わらず不愉快そうな顔をして記者団を前に座っている。だが、ここに集まったすべての記者の質問に答えることはしなかった。マルカ紙の記者を始め、ボイコットして去っていった記者たちの質問を、一切無視し続けるモウリーニョ。沈黙だけが支配する異様な記者会見場が、テレビ画面に映し出される。ジェントルマン・モウマドリを象徴する異様な風景。それにしても、何ともケツの穴の小さい嫌な野郎だこと。こういう輩に何かの恨みを持たれると、ジワジワチクチクとされそうで気持ちが悪いってもんだ。教訓。こういうヤツと決して知り合いになってはいけない。

「チェルシー時代といい、インテル時代といい、そして今のマドリ時代といい、バルサ相手の試合となると我々はいつも10人で戦わなければならない。もう、この不公平な扱いにはウンザリだ。」
わずか15分程度の記者会見であったにもかかわらず、記憶にあるだけでもこのセリフが10回は繰り返された。カンプノウマニータ試合以来、ことあるごとにスペインフットボール協会や審判組織はもとより、UEFA組織の“バルサ保護政策”傾向をチクチクと批判してきた彼だから、決して目新しいことではないとしても、いつも同じ事を聞かされる方もウンザリだ。

「我々が11人でプレーしている間は、両チームとも非常にバランスのとれた試合内容だと思っている。我々にしてもそうだが、バルサにとっても非常に難しい試合となっていた。だが、彼らは10人相手となると、ボール回しというテクニックでは世界一のチーム。我々にとっては更に難しい試合となってしまった。」
11人対11人でも、80%のボール支配率。フムフム、いろんな理解のしかたもあるもんだ。

「この試合に至るまで、我々はバルサより1日試合間隔が短かった。したがって彼らより疲労度が多かったことに加え、10人で戦うことを強いられたことにより、次の国王杯でも彼らより疲労度が多くなってしまった。しかも、我々は国王杯に向けての普通の練習に加え、10人で戦うシステムの練習もしなくてはならない。選手の疲労度という点で考えると、我々は悲観的にならざる終えない。」

まだまだグチャグチャとほざいているが、もうこのくらいでじゅうぶんだろう。相手をしているとこちらの疲労度も高くなるというものだ。が、よく考えてみれば、次の試合でも、そしてその次の試合でも、更にその次の試合でも、この泣き虫モウ節が聞かされることになれば、それは我がペップバルサの好調を示すことになる。だから、こんなロクデナシ節に付き合えるのは幸せとしておこう。


 バルセロナ 04月18日 00時00分

スタート!

これから2週間強にわたる、ワクワクする時間を旅する前に、ここまでに至る道を振り返ってみよう。今のこの時間を、我々バルセロニスタに提供してくれたペップバルサに感謝するためにも、ほんの少しだけ過去を振り返ってみよう。と言っても、このHPがスタートした頃の、バルセロニスタにとって思い出したくもないような悲惨なガスパー時代に戻る必要もなく、今シーズンがスタートした頃でじゅうぶんだ。

バルサの主要選手が多く出場したムンディアルが開催されたことにより、プレステージ期間こそ例年並みだったとはいえ、選手たちの足並みがそろうのは異常なほど遅かったシーズンである。しかも、クラブ会長選挙という催しまでおまけとしてあり、監督こそ継続性をもったものの、クラブ理事会員、スタッフ、特にフットボール・ディレクターがチキからスビサレッタへと移行したこともあり、放出選手や獲得選手のアイデアが実行に移されるのに、普通のシーズンより多くの時間が必要だった。更に付け加えるなら、2年連続して“9番選手”を変えなければならなかったシーズンでもある。

しかも、6つの獲得可能なすべてのタイトルを得て、リーグ優勝も2年連続勝ち取った選手たちがメインとなって構成されているチームだ。もし、物事の頂点に立つのが非常に難しいことであるとするならば、それを維持するのは更に難しいこだ、と言われているように、すべてを勝ち取った選手たちの勝利へのメンタル面を維持するのも、並大抵のことではなかったと想像できる。

だが、ペップバルサは、シーズン前の多くのバルセロニスタの不安を吹き飛ばすかのように、快調に飛ばしてくれている。リーグ戦6試合を残したところで、バックミラーに映るレアル・マドリとの差は8ポイント。彼らの残り対戦相手と我々の対戦相手を見れば、3年連続リーグ優勝はすでに決まったと言っていい。そして国王杯と言えば決勝戦進出、チャンピオンズも4年連続準決勝進出という快挙を勝ち取っている。思い起こせば、スペクタクルな試合内容と試合結果の連続だった。セビージャ、レアル・マドリ、ソシエダ、エスパニョール、パナティナイコス(チャンピオンズ)、セウタ(国王杯)、ベティス(国王杯)、アルメリア(国王杯)相手に5ゴールのマニータの試合、そしてリーグ戦アルメリア相手には記録的な0−8という結果の試合。スペクタクルなのは試合結果だけではない。ボタ・デ・オロやバロン・デ・オロの賞を独占し、フエラでの無敗記録、リーグ戦での連続勝利数記録、獲得ポイント数記録、他にもいくつかの記録があるのだろうが、思い出すだけでもこれだけある素晴らしい記録の数々。

そして迎えた4月。リーグ制覇は試合が減るごとに濃厚となり、国王杯決勝戦とチャンピオンズ準決勝が待ち受ける4月。しかも両方とも対戦相手がレアル・マドリときている。ただのレアル・マドリでもなく、バルセロニスタにとっては因縁だらけの泣き虫モウが率いるレアル・マドリだ。これ以上の舞台設定は望みようもないこの4月。

セマーナサンタと夏休みとお盆とクリスマスと正月と誕生日がいっぺんにやって来たような、こんな状況設定にお目にかかれるのは、今後10年、20年、いや30年たってもないかも知れない。試合がやって来るまでに神経質になることもあるだろうし、どんな結果がまっているかと想像するとピリピリするかも知れない。だが、大事なのは、ひたすらこの時間を楽しむことだ。そう、ひたすら楽しんでしまうのが一番だ。

ユーロクラシココーナーのスタート。今日から約2週間強と長い期間にわたるコーナーとなるが、連日クラシコ関係のニュースでは、提供する方も読む方も空気が入りすぎてしまうので、適度にカンテラニュースを含めていくことにしよう。


 バルセロナ 04月14日 00時00分

ユーロクラシコ イントロ

歴史的なバルサ大勝利に終わったカンプノウクラシコから、早くも4か月強の時間が過ぎようとしている。監督経験10年というモウリーニョにとって、初めて味わった3点差以上の敗北。しかも5−0という、何ともキリがよく、どこまでも痛々しい数字での負け試合を経験したのだから、いかに時間が経過しようとも、心の傷は癒えることはない、と、まあ、想像できる。今シーズンがスタートし、このカンプノウクラシコにいたる間にも、理屈の通らない多くの不満をメディアを前にして語ってきた彼だから、この歴史的な敗北の後でも、彼の口から飛び出す泣き言は、依然として衰えを見せないのは当然かも知れない。

そして、もちろん、深い傷を負ったのは泣き虫モウだけではなく、彼の獲得と共に悪魔に魂を売ることを決意したフロレンティーノにしても同じだ。

根拠のない多くの泣き言をメディアを前にして垂れ流してきたモウマドリを、少なくともジェントルマンのクラブとして、その多くの垂れ流されたものを浄化するために、火消し役として活躍してきたのがバルダーノだった。その彼を「監督の発言を支持しない生意気なディレクターだよ〜ん、ウェ〜ン、ウェ〜ン、ウェ〜ン」とフロレンティーノに泣きつき、今後自分の視界から消すことを要請。そして、その要請者と同じ深い傷を持つフロレンティーノは、これまで彼の腹心中の腹心と言ってもいいバルダーノを事実上切ることに同意してしまう。5−0の傷はどこまでも深い。とてつもなく深い。

今後は記者会見席上に同席しないこと、フエラの試合での移動の際には、チームとは行動を共にしないこと。そう、バルダーノは完全に切られてしまった。それでは「私は何のためのディレクターなのか?」そうは問わないバルダーノ。200万ユーロとも300万ユーロとも言われている彼の年俸が、そんな野暮な問いかけを許さない。

「栄光に輝く我がレアル・マドリのジェントルマン性を疑う一部の人々がいるようだが、それはまったくの誤解というものだ。20世紀最優秀クラブに対するこれまでの不公平なおこないや、外敵からの納得できない攻撃を防ぐのも、正しいマドリディズモというもの。我々クラブ首脳陣は泣き虫モウを全面的に支持するものである。アラー、マドリッッッッッッッッ!」
これが、わざわざ記者会見を開いてのフロレンティーノの発言だった。

つまり、こういうことだ。

バルサ相手の試合で、まるで勝利をプレゼントするかのような試合内容を展開するチームの監督を批判するのも、

マドリのスーパースターが試合中に受けるファールの数が、バルサの10番選手が受けるものより多いことをブツブツと批判するのも、

監督の言動を100%支持しないディレクターを放置したままにしているクラブ体質を批判するのも、

勝利した試合後の記者会見で“13回にわたる誤審”があったとして、その試合を担当した審判をグダグダと批判することも、

首位を突っ走るクラブの監督に対する対応と、マドリの監督に対するそれがまったく違うとして、フットボール協会や審判組織を批判することも、

マドリの監督に対する対応と、他のヨーロッパクラブを指揮する監督に対するそれが違うとして、UEFAをナンダカンダと批判することも、

記者会見で不満ばかりをつぶやくことを批判したマドリ番ベテランジャーナリストを、“あんたはマヌケだ”と侮辱することも、

「我々はライバルチームよりもいつも試合間隔が短く、選手たちの疲労が激しくなるスケジュールを強いられている。」とまあ、根拠のない不満を吐くことも、

チラーッと思い出すだけでこんなにあることも、ジェントルマンクラブと自認する彼らにとっては、当然の不満や批判であり、まったくもって正しいマドリディズモということになる。だが、当然ながらそうは考えないジャーナリストもいる。全国紙エル・パイスのマドリ担当ディエゴ・トーレスというベテランジャーナリストがその一人だ。泣き虫モウマドリをシーズン開始当初から疑問符を付けている人物でもある。

例えば、2011年2月28日付の記事で次のようなコラムを発表しており、かいつまんで日本語にすると次のようになる。

リアソールでの0−0という結果で終わった試合は、マドリの選手にとって、まさにそれまで恐れていたことが現実となったものだった。地元ベルナベウを離れてのフエラでの試合、対戦チームが亀の甲羅のようにしっかりとデフェンサを固めてくる試合における、モウチームの攻撃的システムの弱点が暴露されてしまったのだ。相手チームからボールを奪ったその瞬間、前線にいるロナルド、あるいはディ・マリアにボールを放り投げることしかアイデアが浮かばない多くのマドリ選手。なぜならこれまでおこなってきた練習の大部分が、相手チームの攻撃を固く防ぐためのデフェンサシステムの改善、そして相手チームからボールを奪った瞬時に始まる素早いカウンタアタックの繰り返し。だが、相手デフェンサが、90分間自陣ゴールエリアを守り続ける展開を打破する練習はおこなわれていない。

モウチームは昨年の夏、ロサンジェルスのカリフォルニア大学でプレシーズンをおこなっている。これまでスペインリーグで戦っている何人かの選手たちは、このシーズンからやって来た新監督が、果たしてどのような“ボール回し”をするフットボールを指揮するのか興味深く、そして期待を持ってこのプレステージを待ち受けていたと語っている。何と言っても天下のレアル・マドリなのだ。多くの弱小チーム相手の試合では、少なくともビッグチームらしく、ボール支配を基本に試合そのものを支配するシステムを備えていなければならない。チェルシーやインテルなどのように、カウンターアタックだけではスペインリーグではやっていけないことを知っている選手たちだった。

だだプレステージが開始されてみると、デフェンサ選手を中心に、いかに相手の攻撃を防ぐかというアイデアのもとに、ほとんどの練習時間がさかれることになる。いっぽう。オジルをはじめ、ロナルド、ディ・マリア、ベンセマには完全な自由の動きが与えられ、相手選手からボールを奪ってからの、ノーマークとなった彼らへのボール放り込み作戦が繰り返しておこなわれる練習が続いた。2月の段階で、デフェンサを固めまくる相手にボール支配を試み、素早いボール回しを通してデフェンサの隙間をかいくぐるような練習はいまだにおこなわれていない。

これまでのフエラの試合、マジョルカ戦(0−0)、レバンテ戦(0−0)、アルメリア戦(1−1)、オサスナ戦(1−0)、そして今回のコルーニャ戦、すべて否定的な結果に終わったフエラの試合が、モウチームのすべてを語っている。

このコラムが発表されてからの初のクラブ記者会見で、泣き虫モウは次のように語った。
「あの記事を書いたジャーナリストは練習を見ているわけがない。なぜなら我々の練習は完全にシャットアウト状態でこれまでおこなわれているのだから。したがって、あのような内容の記事を書くと言うことは、クラブ首脳陣の誰かがチクッたとしか考えられない。」
ディエゴ・トーレスの書いたコメントを否定も肯定もしないモウリーニョ。そして、そのクラブ首脳陣というのはバルダーノを指していることは明らかだ。

このコラムを発表して以来、記者会見場でのディエゴ・トーレスの質問は禁止されている。彼だけではなく、モウマドリに批判的なコラムを発表した何人かのジャーナリストも、同じ状態におかれてしまった。これも考えようによっては、正しいマドリディズモの一つなのだろう。

だが、モウチームを批判するジャーナリストは、ほんの一部に過ぎない。憎きバルサの黄金期を前にして、深く沈み込んでいる多くのマドリディスタたちに、再びマドリの全盛期到来の可能性を提供するのがマドリメディアの役目だとすれば、彼らは見事にその期待に応えている。2年連続でリーガタイトルを奪われ、国王杯はもとよりチャンピオンズの戦いでも、栄光のマドリの名前が消えかかり、そしてクラシコとなれば、このところ負け続きの試合を見せられている可哀想なマドリディスタ。そんな彼らを元気づけるのがマドリメディアの使命だ。

前回のクラシコの復習をしてみよう。つい先日、カタラン語ながら“Tips de Mou"という、マドリメディアがコメントしてきたことを資料的にまとめた本が出版されたので、それを参考にしてみる。とっても面白いのだ。

トマス・ロンセロ(アス紙 2010年10月8日)
ラ・マシアブームだ。何かとラ・マシアの存在や、そこから育ってきた選手のデビューが話題となり、バルサのフィロソフィーに拍手喝采となる今日この頃。だが、冷静に物事を見てみると、このブームはどこかおかしい。

モウリーニョがフアン・カルロスを招集している。16才からマドリカンテラ組織に在籍している正真正銘のカンテラ選手。だが、彼のことは話題にならないかわりに、バルサB選手ノリートのデビューが話題になる。ラ・マシアブームのなせるワザである。このノリート選手、2年前に20万ユーロの移籍料を支払って獲得した、現在24才となるバルサの選手。この選手をラ・マシア育ちと持ち上げるメディアが多くあるのはどうしたことか。そう、確かにプジョーやチャビ、イニエスタ、バルデス、メッシー(注・ペドロ、ブスケ、ボージャン、ティアゴなどをお忘れではないか?)といった、正真正銘のラ・マシア出身選手、つまりカンテラ出身の選手がいることはいる。だが、ピケはマンチェスターから多額のユーロをだして買い取った選手であるし、更に多額のユーロを出して獲得しようとしているセスクなどを考えてみると、すべてがすべてラ・マシア出身ということにはならない。バルサカンテラ組織万々歳の、この作られたブームにはウンザリだ

シロ・ロペス(TVマドリ 2010年10月24日)
カンテラに注目を注ぐことはある意味興味深いことではある。ペドロの運動量に、イニエスタやチャビのワンタッチフットボールに、そしてメッシーのゴールに、これらカンテラ組織から出てきた選手たちに拍手をおくるバルセロニスタにアンチをおくるつもりはない。そう、心ゆくまでカンテラ選手たちに期待と拍手をおくればいいだろう。だが、我々レアル・マドリは違う道を行く。クリスティアン・ロナルド、イグアイン、オジル、ディ・マリア、そしてカカ、彼らクラック選手たちが繰り広げるワイルドな試合展開を、我々マドリディスタは好むのだ。

創造性のないワンタッチフットボールを続ければいい。あの見ていて退屈なワンタッチフットボールを展開し続ければいい。我々マドリディスタが好むのは、ダイレクトでスピードのある攻撃だ。それこそが21世紀のフットボールであるということに気がつかず、淡々と続く退屈なワンタッチフットボールに将来はない

ホセ・ミゲル(マドリ・バルサ・コム 2010年11月13日)
なにやらカタルーニャの方からは景気の良い大太鼓の音が響いてくるようだ。恐怖に震える者のみが発する景気の良い大太鼓の音。それは、モウマドリに恐怖を持つカタルーニャの人々。それは、地元カンプノウでのクラシコの結果を思い、頭の中はうつろで、心は恐怖でふるえる多くのバルセロニスタ。何と言っても監督はモウリーニョだ。インテルの監督としてバルサを粉砕したモウリーニョだ。バルサ攻撃陣を手に取るように把握し、その防ぎ方を身につけている唯一の監督だ。バルセロニスタがふるえる気持ちになるのは仕方のないことだろう。

したがって、普通の、ごく普通の試合展開となれば、モウマドリが圧倒的に有利な試合となる今回のクラシコ。そして、彼らバルセロニスタの唯一の希望は、彼ら有利となる笛を吹く審判の存在となる。それだけが望みの綱となる彼らだから、とてつもなく憂鬱な気分となり、それを隠すかのように大太鼓を叩き続ける。我々は栄光あるレアル・マドリ。再びクラシコの勝利(注・記憶に間違いがなければ、ここのところ3連敗という結果となっているはずだが・・・)は間違いない。

ミゲール・セラーノ(マルカ紙 2010年11月21日)
モウリーニョを批判する人々がいる。世界ナンバーワン監督の肩書きを持つモウリーニョに嫉妬する人々だ。しかも彼が在籍するクラブが20世最優秀クラブとなれば、その嫉妬は倍増する。だが、現実を見てみれば、彼を支持する人々の数が批判する人々より圧倒的に多いことに気がつくだろう。カタルーニャ州内での闘牛支持の人々の数が反対の人々より多いにもかかわらず、反対勢力の人々の叫び声が必要以上に大きいことから、より目立つことになるように、モウリーニョ支持の人々の数も批判的な人々のそれより圧倒的に多いにもかかわわらず、嫉妬に狂った下品な叫び声は目立つことになる。これらの人々は、オポルトではもちろん、チェルシーやインテルファンの人々にとっては、いまだにモウリーニョは神のような存在となっているのをどう考えているのだろうか。

多くのマドリディスタはもうウンザリしている。嫉妬に怒り狂った、我らが監督モウリーニョ批判にウンザリしているのだ。我々にとって彼は最も愛すべき人物であり、かつてのフアニートに続くマドリディスタのシンボルとなりつつ人物なのだから。

ホセ・ミゲル(マドリ・バルサ・コム 2010年11月23日)
多くの専門家が予想するところによれば、今回のクラシコはレアル・マドリ圧倒的有利となっているようだ。モウリーニョによって新たなチーム作りがおこなわれてからわずか3か月。この短い期間であるにもかかわらず、一人一人の選手がチームのために一丸となってプレーしている。個人技はすべてチームのためにあるという傾向に、ここ最近は展開されるようになってきているし、これだけの素晴らしい選手が己の輝きをすべてチームのために活かそうとしているのが現在のレアル・マドリである。

だが、このチーム力の差だけではなく、レアル・マドリ圧倒的有利という下馬評は次のことからも成り立っている。それは、今回のクラシコはバルサ側からみれば単にバルサ対マドリというクラシコではなく、バルサ対モウリーニョという構図になっていることだ。チェルシーの監督として、そしてインテルの監督として、これまでさんざん痛い目に遭わせてくれたモウリーニョ相手のクラシコ。それが、多くのバルセロニスタにとって心がふるえる原因となっている。ひたすた悲観的に今回のクラシコをとらえるバルセロニスタ。試合開始と共に、モウマドリは圧倒的な攻撃力をみせ、カンプノウ10万観衆をふるわせることになるのは間違いない。そして、試合開始から90分後、バルサはとてつもなく深く、深刻な問題を抱えることになるだろう。これまでのサイクルが閉じ、宿敵レアル・マドリが繰り広げる新たなサイクルを傍観する立場となるのだ。

クリスティアーノ・ロナルド(マルカ紙 2010年10月24日)
今のレアル・マドリの状態は昨年のそれとはまったく違っている。チャンピオンズはもとより、リーグ戦でも一度として敗北を味わったことがない。最高潮にある現在のチームだから、今回のクラシコは我々にとって素晴らしい結果を生み出すものとなるだろう。最高の瞬間に、最高の場所で、我々は試合を戦うことになる。

トマス・ロンセロ(アス紙 2010年11月26日)
モウリーニョはマヌケでもなければ、紳士を気取った謙虚な態度を好む人間(それはライバルチームの監督だけでじゅうぶんだ)ではない。オブラードに包まれたような発言をするのではなく、正しくも思ったことをそのまま口にする人間である。
「バルサはいつも10人のチームと戦っている。」
このモウリーニョの発言はまったくもって正しい。それはバルサに対する批判ではなく、まして嫌みでもなく、これまでの歴史が証明している事実であるから、まったくもって正しい発言となる。

そして彼は正しくもこういう発言を続けている。
「彼らのワンタッチフットボールが登場してくるのは、いつも相手チームの選手が10人となってからさ。」
まさにそうだ。だが、それはともかく、こんなワンタッチフットボールのどこが楽しいのだろうか。ゴールを決めるのに、なにゆえ40回、50回ものパスが必要なのか理解に苦しむのが多くのマドリディスタというものだ。我々の好むフットボールは弓の矢のような早いスピードで相手ゴールを襲う、そのフットボールスタイルにある。あの100m選手のボルトより早く疾走するようなスピードあふれる攻撃が我々の好むフットボールなのだ。バルデス相手に何回の矢を素早く放ってくれるか、みどころはそれだけに尽きる今回のカンプノウ、いや違った、カンプモウクラシコ。この試合の翌日には、世界中の人々によって、ペップ0ーモウ1の話題で盛り上がることになるだろう。

フレデリック・エルメル(アス紙2010年11月27日)
2日後の月曜日、場所はバルサの象徴カンプノウ、この文句のつけようもない素晴らしいステージで、多くのフットボールファンが新たなサイクルの誕生を目撃することになるだろう。何千年も前から暗黙の了解とされている自然の現象、それは一つのサイクルの終焉と共に、新たなサイクルが誕生すること。このクラシコという素晴らしいフィエスタで、そしてカンプノウという素晴らしいステージで、この自然の現象に遭遇することになる多くのフットボールファンは、大いに神に感謝しなければならない。2010年10月29日深夜、ペップバルサに今の季節通りの寒い冬が到来し、そしてモウリーニョマドリには季節外れの春が到来する。

11月29日月曜日22時試合開始
バルサ5−0マドリ
1−0 チャビ(9分)
2−0 ペドロ(18分)
3−0 ビージャ(54分)
4−0 ビージャ(57分)
5−0 ジェフレン(90分)

トマス・ロンセロ(アス紙 2010年11月30日)
この“暗黒の月曜日”のことを忘れる日が来るのは、遠い遠い将来となりそうだ。いや、果たしてその日が来ることさえ怪しく感じられる。5−0というスキャンダラスな試合が終わってからすでに何時間もたっているものの、多くのマドリディスタの心に突き刺さった矢はまだ抜かれていない。このスキャンダラスな試合結果もさることながら、90分の間に伝わってきたモウマドリの覇気のなさが、マドリディスタの心を更に暗いものにする結果となっている。これまで無敗だったモウマドリがマドリディスタに希望を与えてくれていたのは、その無敗という結果以上に、一人一人の選手が見せる“戦士”としての戦いの魂と、勝負をあきらめない不屈の精神ではなかったか。だが、この試合ではまったくといってその姿勢が見られることがなかった。

今は正直にバルサの優位を認めよう。旬の時期を迎える何人かの選手たちがチームを支え、現時点においては我らがマドリを越えていることを認めよう。だが、これで終わったわけではない。我々は栄光あるレアル・マドリ。これまでの歴史が示してきたように、逆境に耐えながらもいつか我々マドリディスタに笑顔が戻ってくる日が来る。その日は決して遠くない。今から5か月後の来年4月におこなわれるベルナベウクラシコ、この試合に勝利することで復讐を成し遂げ、そしてリーグ制覇を同時に決めてしまえば最高だ。

 

さてさて、いま始まろうとしているこのクラシココーナーは“リーグの行方を決める”ベルナベウクラシコのために向けられたものではない。8ポイントも差があるということ、この試合の4日後にはコパクラシコが控えていること、そして何よりもチャンピオンズセミファイナルが待ち受けていることにより、このベルナベウクラシコは中途半端な状態の試合だ。コパクラシコも国王杯決勝戦とはいえ、チャンピオンズセミファイナルとなるユーロクラシコの前には少々色あせてしまう感じだが、まあ、そうとはいえ、クラシコはクラシコ。ベルナベウクラシコをスタートに、メスタージャでの国王杯決勝戦にも気持ちよく勝利し、ベルナベウ→カンプノウと続くユーロクラシコ180分の勝負になぁ〜んとしても勝利し、ウエンブレーへの道を走り続けることを期待しよう。

さぁ、このユーロクラシココーナーでみんなで楽しんでしまおう。