Toque(トッケ)

タッチ

クライフ時代に最も使われた言葉は何かといったら、たぶんこの言葉ではないか。少なくても最も使われた言葉の一つであることは間違いない。タッチ、つまりボールタッチ。だが彼が言うトッケという言葉はそれだけでは言い表せない複雑怪奇語。彼のしゃべるスペイン語はスペイン語であってスペイン語ではないからだ。オランダ語に通じていてしかもクライフファンの人が彼のしゃべるオランダ語はオランダ語であってオランダ語でない、というのを聞いたことがあるから何語でしゃべってもクライフ語になってしまうのだろう。

彼特有のクライフ語を理解するのは大変なことだ。彼のオリジナル本を日本語訳にした本に誤解あるいは誤訳されていることが多いのはそのせいだろう。残念ながら「クライフ語事典」というのにいまだお目にかかったことがないから想像の範囲での理解しかできない。

トッケ、それは基本的にボールのワンタッチ処理を意味するし、ボールを大切にしろという意味もある。試合中にベンチから飛びだして両手をお腹の前あたりで交互に振るしぐさをしながら「トッケ、トッケ、トッケ」、あるいは「トカ、トカ、トカ(トカールという、触るという意味の動詞)」と叫ぶときは、ボールを回せという意味になる。またある選手を例に出して「彼にはトッケがない」というとその選手には「センス」がないことにもなる