Tarjetero(タルヘテーロ)

カード大好き審判

審判が高々と右手を挙げて選手に示すTarjeta(タルヘッタ)カードには次の二種類がある。Tarjeta amarilla(タルヘッタ アマリージャ)イエローカードTarjeta rola(タルヘッタ ロハ)レッドカードだ。そしてこれらのタルヘッタを気前よく何枚も出す審判をタルヘテーロという。

この代名詞を付けて呼ばれることになる審判は大体において評判の良くない審判と言うことになる。それはタルヘッタを出す数が多いからということももちろんあるが、それ以上にタルヘッタを示す際の規準そのものが一定していないという意味も含められるからだ。例えば、試合開始1分と試合終了1分前に同じようなファールがおこなわれても前者は無視し、後者のみにタルヘッタを示す審判。例えば、前半にはタルヘッタに値するファールには無視を決め込み、後半に入るとタルヘッタを出しまくる審判。あるいはその逆の審判。つまり90分の間に規準がコロコロと変わる審判ということになる。

そしてもう一つのタルヘテーロの傾向、それはテレビ中継がある試合に限って気前よく振る舞ってしまう審判だ。審判を見るために高いチケットを買ってスタディアムに向かうフットボールファンはいない。目立たなければ目立たないほど良い審判となるのに、主役となりたがってしまう審判がいることも確かなこと。タルヘッタとは彼を一躍スポットライトを浴びさせてくれる小道具なのだ。

ここ何年かのスペインリーグで毎試合まるで江戸っ子のように気前よくパッパッパと右手を挙げていた代表的な審判、それはすでに現役を引退しているロペス・ニエット審判かも知れない。だが不思議なことに彼にはこの代名詞がつかなかった。その理由を考えるに、一つは両チームの選手に対して“公平”にタルヘッタを示した審判であること、もう一つは彼にとってタルヘッタを示す“規準”がはっきりしていたからだろう。試合開始1分でのファールでもペナルティーはペナルティーであり、タルヘッタはタルヘッタであるという信念があり、90分間にわたって黄色と赤い花が派手に舞う審判だった。