Piscina(ピスシーナ)

プール

主にペナルティーエリア内での“みせかけ倒れ”を言う。イングランドではダイブとよんでいるようだから、そこからのスペイン的な意訳から来たのかも知れない。うまくピスシーナを完成させると二つのご褒美がもらえる。最も大きい報酬、それはペナルティーキックの権利を審判からいただけること。そしてもう一つ、黄色であれ赤であれ、どちらかのタルヘッタが相手選手に与えられること。ちなみにタルヘッタを多く出す審判をタルヘテーロとよぶように、ピスシーナを好んで何回もやる選手をPiscinero(ピスシネーロ)とよんでいる。

まったくもってラテン的な特色を持った芸の一つだが、個人的にこれまで最高のピスシーナ芸を見せてくれたと思う選手は、やはりラテン人選手だったメキシコ出身でレアル・マドリに在籍していたウゴ・サンチェス。彼のピスシーナ芸はなかなかのもので芸術の域にまで達していたといっても過言ではない気がする。とにかくうまかった。相手選手に触っていないようであり触っているようでもあり、足を引っかけられたようでありないようでもある実に微妙な芸を見せてくれた。

テレビ中継がPPV(ペー・ペル・ビュー)有料方式という形でおこなわれるようになり、すべてのフットボールの試合が、ライブであれ録画であれダイジェスト形式であれテレビ画面を通して見られるようになってから、このピスシネロには厳しい時代となってきている。スタディアムでダイレクトに見た限り間違いなくペナルティーと思われたものが、テレビ画面を通して何回も繰り返されるスローモーションを見てみると明らかなピスシーナだということが判明してしまうからだ。しかも最近はピスシーナしたということでタルヘッタまで獲得してしまうというマイナス面もあらわれた。それでもなくならないピスシーナ現象。もし審判がペナルティーと認めてくれればあとで何と言われようとやったもん勝ちだからだ。でもデコはやめたほうがいい、下手だから。