2003年の夏、イスラエルからバルセロナにやって来た12歳の少年ガイ・アシュリン、彼はどこにでもいる同年代の子供たちとはすでに少々違う人生を送ってきている。何が違うか、まず第一にこの年齢にして自国イスラエルだけではなく、父親の仕事の関係でベルギーやオランダなどの外国生活経験があることだ。フットボール好きな彼だからして、ベルギーとかオランダのクラブに在籍した経験ももつ。そして二つ目、彼はこの年齢にしてすでに将来のイスラエルフットボールを背負ってたつ“明日の星”として期待されるようになっていることだ。ちょっと気が早い気もするけれど・・・。
エリという父とスサーナという母の間に生まれたガイがイスラエルフットボール界で“明日の星”として知られることになるのはナショナルチームアンダーカテゴリーでの試合での数々の活躍だ。個人スポンサーとしてリーバイスが名乗りをあげ、ヨーロッパのいくつかのクラブも彼の獲得に名をあげるものの、ガイはリーバイス以外のすべてのオファーを断っている。彼の夢はバルサに入団すること、ベルギーやオランダ生活時代にテレビでよく見たバルサの試合が忘れられない。だが残念ながらバルサのオファーはやって来ていなかった。それでも父親のコネで何とかバルサインフェリオールカテゴリーとの接触に成功したガイ。彼へのバルサ入団の条件はアンドラでおこなわれるバルサフットボールスクールでのテストに合格することだった。エリ、スサーナ、そしてガイの3人の兄弟と共にイスラエル一家はアンドラに向かう。2003年の夏のことだった。
フットボールスクールでのテストにはトルト氏の弟子であるマルティネス・ビジャセカと共に、バルサインフェリオールカテゴリーの責任者であるジョセップ・コロメールやギジェルモ・アモールも参加している。イスラエル一家の喜びはその夜にホテルにかかってきたジョセップ・コロメールの電話で爆発することになる。
「バルサはガイ少年との契約をしたいと思う。」
それが電話の内容だった。バルサインフェリオールカテゴリー責任者たちのガイに対する期待の大きさ、それは彼の両親たちにバルセロナ市内にアパートを与えていることからも読み取れる。エリとスサーナ、そしてガイと弟のメイルと共にイスラエル一家はバルセロナ住民となってしまう。
バルサインファンティルBでプレーすることになったガイの親友はクリスティアン・テージョだ。インファンティルBが誇るゴレアドール、それがクリスティアン・テージョ。彼らがスペイン中に名を売ることになるのがこの年の暮れにおこなわれたカナル+主催の“フットボール7”の大会だった。バルサインファンティルBはこの大会に優勝し、クリスティアン・テージョと共にガイが主役となった大会でもあった。大会役員から優勝バッジが一人一人わたされるとき、涙顔のガイは“カナルチキート”でも紹介されていた。知り合いが一人もいなく、言葉もまったくわからないバルセロナの地にやってきて、彼にとってやっと苦労が報われた瞬間だったようだ。今シーズンからインファンティルAカテゴリーに昇格するガイはバルサ期待の星、だが、まだ小さい星だ。(04年08月)
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