5月7日 土曜日

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時代の流れ

水曜日、ジョアン・ラポルタは中国に飛んでいる。マーケティング部門の責任者エステベ・カルサーダがもう何日も前から北京入りしていることを考えれば、すでに下工作が終わり最終的な詰めをおこなうために会長自ら飛んでいったのだろう。“ベイジン”となるのか“ベイジン2008”となるのか、はたまたロゴデザインがどうなるのかそれはわからないものの、いずれにしても中国関係のユニ広告がつくことは時間の問題であったことをすでにチキートコーナー(2004−05シーズン中間総括・2005/2/19)で触れているから今さら驚くことでもない。

もし、ガスパー政権の経営方針の誤りで生じた多額の借財がこのユニ広告というものを現実化させてしまったのだろうと思っている人がいるとすれば、それはたぶん間違いだろう。ラポルタ政権誕生から彼ら理事会がこれまでおこなってきた色々な“変革”を見てみれば、クラブ財政がマイナスであろうとプラスであろうと、そういうこととは関係なくユニ広告案は進められていたに違いないと思われる。この若き理事会構成員の発想はこれまでのバルサ理事会を構成していた世代のそれとは明らかに違いが見られる。現理事会員の多くの構成員は海外で学生時代を送った人々であり、その中でもアメリカ留学組が多い。歴史の重みでフーフー言っているヨーロッパではなく、近代合理主義の固まり的発想をもったアメリカで学んだ世代が中心となっていることが特徴だ。

ラポルタ政権の発想の根元となるのはカタラニズモであることは誰もが知っている。だがカタルーニャ文化をアイデンティティーとする発想を基本として、スペインあるいはヨーロッパだけではなく、全世界的に“世界のバルサ”として成長させることが彼らの本来の願いだと言っていいと思う。可能な限りのタイトル獲得を目指すビッグクラブとしてだけではなく、経済的にも世界的な規模での評価を得られるクラブとしたい。もちろん一人の金持ち、あるいは企業そのものがクラブを運営する“スポーツ株式会社”ではなく、ソシオがクラブの持ち主とするソシオ体制であるバルサであるから、マンチェスターやチェルシー、あるいはバイエルンなどというクラブと金庫の中身を争うにはそれなりの限界がある。だがそれでもかつての会長であったヌニェスは、ソシオ体制のクラブとして可能な限りの手段を駆使して誰もがうらやむ大きな金庫を作り上げてきた。当時としては想像を超えた金額のテレビ放映権を獲得したり、ユニフォームなどを提供してくれるスポンサーからの多額な援助も獲得してきた。そして今、時代は大きく変わってきている。時代の変化と共に“求められる”クラブ首脳陣のスタイルも変わることを時代が要求する。

財政的観点から見て世界一のクラブにして欲しいなんぞとはコレッポッチも願わない一人のバルサファンとして、そして少しは他のクラブとの違いを見せてきたバルサを応援してきた一人のファンとして、やはりユニ広告は納得できるものではない。この2年間、多額の借金に苦しんでいると言われてきたラポルタ政権だが、それでもチェルシーに続いて世界二位の選手補強資金を使ってきているし、もちろんユニ広告料金などというものはナシでやって来ている。このままやっていこうと思えばユニ広告なんぞいらないはずだ。だが可能な限りの合法的手段を駆使して資金を増やそうとしている現バルサ政権であるから、更なる収入を得る道を選ぶのも自然の成り行きだ。したがって、クラブの借金返済が済めばユニ広告も取れるかというと、そんなことは絶対ないだろう。ソシオ全員アンケートをしてみなければ正確な数字はでないものの、これまでメディアがおこなってきたアンケートを信用するとすればユニ広告に賛成というソシオも大勢いるようだし、そもそも借金返済のためのユニ広告ではないのだから。

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